8 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 01:22:36.32 ID:z8MDhwJsO
地上に人類自らの手で壊滅的な打撃を加え、破壊し尽くした大破壊。
それにより地下に住まう事を余儀なくされた人々の、地球から火星へ移住するテラフォーミング計画。
数世紀の時を経て、ようやく人が生活できるまでに回帰した地上への進出。
未知領域からの恐るべき攻撃と破壊と対抗。
そして謎の兵器群による破壊活動…。

それらの目まぐるしい歴史の影には常に争いがあった。
企業同士の利権争いやテロ集団との抗争。世界を管理する組織と新興勢力の激突。
地上には多くの血が流れ、その事実が消える事はない。争いなくして発展はあり得ないと人は言う。だが争いは人類を破滅に導く手段ではないのだろうか。
それでも人類は抗らい、闘争を繰り返した。終わりを知らぬ破壊と再生の果てに人は何を見るのか。
それらの戦いの中で比類なき力を持ち、あらゆる戦場で活躍する者たちがいる。
彼らは“アーマード・コア”通称ACと呼ばれる人型汎用戦闘兵器に乗り込み、企業や管理組織、またはテロ集団からの依頼を受けて幾多の戦場を駆る。
“レイヴン”
これが彼らの、何者にも縛られない傭兵たちの総称だった。依頼さえあればどんな汚い手段や市民の虐殺でさえも厭わない烏たち。彼らは、その性質から多くの人々からは忌み嫌われ、恐れられながら今日も戦場を舞う────

9 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 01:24:04.60 ID:z8MDhwJsO
『投下ポイントに到着。ここからは輸送機です。幸運を』
( ^ω^)「こちらブーンドライブ、待たせたお」
『こちらブラクラ。遅れてすまない』
 
輸送ヘリから二つの機影が落下する。
二機とも地上に衝突する前にブースターを吹かし、そのまま大破するという愚は犯さない。それでも小さくはない衝撃が襲うが、慣れたものだ。
着地と同時にピリピリと張り詰めた空気が肌を刺す。彼らは、世界の運命を左右する戦場へ赴こうとしているのだ。
 
事の発端は一年前に逆上る…。

10 :ACとかのアルファベットは全角の方がいいかな?:2007/02/07(水) 01:25:20.93 ID:z8MDhwJsO
('A`)「よぉ、お疲れ」
(;^ω^)「おっおっ…今日の依頼はちょっと危なかったお…。MTを20機以上相手にしたお…」
('A`)「でも相手はMTだけだろ。一度に襲ってきたのか? それともACでも出たか?」
 
MTとはマッスル・トレーサーの意であり、実用性に長けた作業機械である。
いつからか改良によって戦闘能力に特化したものも現れていた。それが更に進化し、コア・システムという原理に辿り着く。コアと呼ばれる、あらゆる場面に対応した部品の接続が可能な物が生み出された。
やがてその汎用性により兵器利用の道を歩んだ末、コアを中心に戦闘を目的として組み立てられた完全武装兵器がACなのである。
 
( ^ω^)「馬鹿言っちゃいけないお。一度な訳ないお。
それだったら僕はもう死んでるし、だいたいACと戦うなんてアリーナ以外じゃ考えられないお!」
(;'A`)「そ、そうか。そりゃ悪かった…」
('A`)「でも最近レイヴンが死にまくってるって話を聞いたからな。もしかすると企業側のACが出てるんじゃないかってよ」
( ^ω^)「今月だけで5人も死んだらしいお」

11 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 01:26:42.09 ID:z8MDhwJsO
('A`)「6人だ。昔だとこれくらい普通、いやもっと多かったらしいが、今じゃ異常な数字だな」
 
たった今帰還し、顔色の悪い男と話している青年の名は内藤ホライゾン。仲間からはブーンと呼ばれていた。そして労いの言葉をかけているのはドクオといい、つい最近アリーナのトップになった凄腕レイヴンだった。
企業からの依頼を仲介する組織、レイヴンズVIPは現在ある問題を抱えている。それはレイヴンの弱体化だった。
企業とはそれぞれが軍事力を有している組織であり、過去には大破壊により機能しなくなった国家に代わり明確な計画性を持って人類を地下へと導き、それによって力を蓄えた彼らは国家に代わる権力を持つ事になる。
国家に代わり人類を管理していた彼らは激しい抗争を繰り広げある時には合併して一つの管理組織となったりもした。
しかし時代の移り変わりと共にその管理組織は姿を消し、新たな企業が生まれた。そこでも彼らは互いを憎み合って争った。

12 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 01:28:58.13 ID:z8MDhwJsO
だが今ではレイヴンズVIPを介して条約が結ばれ、企業間の争いは少なくなっている。
軍事バランスは保たれ─尤も、各企業に所属するレイヴンによってそれぞれではあるが─秩序ある理想の社会まであと一歩と言えるだろう。多くの命を犠牲に、ようやく人類は此処まで辿り着けたのだ。
そのため資源などの利益はほぼ平等。開発技術による差はあったが目立って大きな力関係はなかった。
各企業もそれを良しとしている訳ではないが、互いに協力し合う事で利益が生まれる事もあるので表立って口を出す者はいない。
そうなってくると今まで企業の依頼を受けてきたレイヴンの出番は必然と少なくなる。
依頼といえば専ら開発の邪魔となる小規模の武装集団や不法占拠者の排除だ。これではレイヴンの腕も上がろうはずもない。
ブーンは現在アリーナランク17位であり、現在のレイヴンの中ではそれなりの実力者だ。しかしそのブーンでさえMT20機程度で危なくなる実力。レベルの低下は明らかだった。

16 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 01:31:49.24 ID:z8MDhwJsO
そして弱体化しているにも関わらず、簡単な依頼ばかりなので戦死するレイヴンは少ない。その為、レイヴンズVIPの抱えるレイヴンは飽和状態であった。
まともな実力を持つレイヴンと言えばトップランカーであるドクオやその下位近くにいる者、そして企業専属レイヴンだけという現状なのだ。
 
( ^ω^)「ところでドクオは何しにVIPに?」
('A`)「いや、ちょっと依頼…というか連絡があってな。幹部連中の会議に参加しろだと」
( ^ω^)「幹部の? 珍しい事もあるもんだお。どんな会議だお?」
 
ブーンは興味深々といった様子で聞き返す。そこに…
 
(,,゚Д゚)「通路の真ん中でだべってんじゃねーぞゴルァ!」
/ ,' 3「ホッホッホ…若いの、短気はイカンぞい」
(´・ω・`)「君はいつもカルシウム不足だね、ギコ」


18 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 01:34:21.31 ID:z8MDhwJsO
('A`)「ギコと爺さん、それにショボンじゃねーか。もしかしてアンタらも呼ばれたのか?」
 
適当に挨拶を済ませるドクオの背に、何かが飛び付いた。首を締められる形だったが、その小柄な体では締め落とすには些か体重が足りない。しかしそれでも気管は圧迫されるので少し苦しい。
彼にいきなりこのような真似をする人物は一人しか心当たりがなかったので、誰かはすぐに分かった。
振り返りもせず面倒臭そうにドクオは言う。
 
('A`)「降りろヘリカル。毎度毎度首締めるのはやめてくれ…」
*(‘‘)*「久しぶりです! お兄ちゃんも呼ばれたですか?」
('A`)「お前も? てことは…」
 
ドクオはヘリカルをぶら下げたまま振り返る。そこには二つの人影があった。

20 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 01:36:12.70 ID:z8MDhwJsO
川 ゚ -゚)「私たちもだ」

ξ゚听)ξ「そんな所に突っ立ってないでどきなさいよ!」
(*'∀`)「よ、よぉ…。お前らもか」
 
ドクオは後から現れた女性二人の内の一人を見ると、急にモジモジしだした。視線はストレートの長髪で無表情を崩さない女性、クーに向けられている。一方彼女といえば全くの無関心ではあるが。

しかしこの面々が一度に集まるとは誰が予想しただろう。彼ら─ブーンを除いて─はいずれもアリーナランク一桁の実力者なのだ。
 
ξ゚听)ξ「あらブーン。アンタも? まさかねぇ…」
(;^ω^)(なんか僕だけ呼ばれてないみたいだお…)
(;^ω^)「えーと…僕は任務が終わってACを格納した帰りだお」
 
VIPに所属レイヴンは規則としてACはVIPに保管しなければならない。これはレイヴンによるクーデターを未然に防ぐ為の措置だった。
 
ξ゚听)ξ「ふーん。ま、当然よね。この中じゃアンタだけ半人前だもの。私たちが集められたって事はSランク任務だろうし、アンタじゃ無駄死にするのがオチね」
( ^ω^)「相変わらずツンは心を抉るのが上手いですね」

21 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 01:39:05.36 ID:z8MDhwJsO
(*^ω^)「ところでツン、この後ヒマかお? ヒマなら一緒にご飯でも…」
ξ゚听)ξ「ハァ? すぐに出撃するかもしれないのにヒマな訳ないでしょ?
それに何で私がアンタなんかと食事しなきゃならないのよ。冗談は休み休み言いなさい」
(;^ω^)「…そ、そうだおね。じゃ、僕は帰らせてもらうお」
 
⊂二二二( ;ω;)二⊃「おっおっおっ…」
 
ブーンは涙を見られないように素早く踵を返し、全速力で去って行く。
 
('A`)「おいツン…」
ξ゚听)ξ「な、何よ」
('A`)「あの言い方はないだろ…。ヒデェ女だなお前は」ξ゚听)ξ「本当の事を言っただけじゃない! それとも『あなたも一緒に出撃して下さい』とでも言えばよかったわけ!?」
('A`)「そういう訳じゃないけどな…言い方ってもんがあるだろ。たぶんブーンのヤツ今ごろ泣いてるぜ」
ξ;゚-゚)ξ「…泣きたきゃ泣けばいいでしょ」
('A`)「………」
(´・ω・`)「可哀想なブーン」
(,,゚д゚)「同情の余地はあるな」
ξ;゚听)ξ「わかったわよっ! …後で謝っとくわよ」
 
ドクオたちの視線に耐えれなくなった訳ではないが、ツンは折れた。
 
ξ;゚听)ξ「べ、別にちょっと可哀想だと思ったとかじゃないn」
ξ////)ξ「っっきゃあ!!」

22 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 01:40:53.62 ID:z8MDhwJsO
弁解しようとした彼女の胸は、後ろからがっしりと鷲掴みにされている。
悲鳴を上げてその腕を振りほどくツン。
 
( ゚∀゚)「よーう、お前ら! 今日もいいおっぱい日よりだな!」
('A`)「ジョルジュか。やっぱお前も呼ばれたんだな」
( ゚∀゚)「おう! 会議とかにゃあんま興味ないが、幹部の秘書にすげぇ巨乳がいるだろ? あの姉ちゃんのおっぱいは最高だからな! それを拝めるってなれば黙ってる訳にはあいだだだだだだだだ!!」ξ#゚听)ξ「ア・ン・タ・ねぇ〜!!」
 
このいやに陽気な男、ジョルジュの手をツンは限界まで捻り上げる。そして足を払うとマウントポジションをとってビンタと拳の連打を繰り出した。
 
(;゚∀゚)「あぅ! やめてッ! ぶぇ! 助け…もうしませ…アッー!」
 
およそ10分に及ぶ猛襲を浴びせると少しは気がすんだらしく、ツンはクーに目配せしてからヘリカルをドクオから引き剥がし、二人を連れて足早に立ち去った。
 
(♯)∀(#)「ぐふぅ…」

23 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 01:43:29.74 ID:z8MDhwJsO
(♯)∀(#)「痛ってぇ〜…。くそぉ…あんの貧乳女め…」
('∀`)「おw前w誰wだwよwwwwww」
(,,゚Д゚)「ギコハハハ! ざまぁねぇなwwwwwww」
/ ,' 3「助平も結構じゃが相手を選ばんとのう…ホッホッホ」
(´・ω・`)「うん、自業自得だね」
 
しかし全く懲りていないのか、パンパンに顔を腫したジョルジュは拳を握り締めて力説する。
 
(♯)∀(#)「いいや俺は悪くない。おっぱいは正義だ! それを求める俺もまた正義ッ!」
('A`)「なんだその理屈」
(♯)∀(#)「さて…ヘリカルは無乳だし次はクーの巨乳を」
(#'A`)「コラジョルジュ…殺すぞ…」
(♯)∀(#)「あん? なに怒ってんだ? 目の前におっぱいがあればこの腕が黙っちゃいないぜ!」
(#'A`)「その腕へし折ってやろうか」
(´・ω・`)「まあまあ、喧嘩はよくないよ。僕でよければ尻を貸そう。もしこれ以上続けるなら尻を貸してもらう」
 
ショボンは目を光らせながらトーンを一つ下げて囁いた。以前からホモ・セクシャルの噂があった彼の言葉に有言実行の色が含まれているのを感じ取り、二人の顔からサッと血の気が引く。
 
(;'A`)♯;)∀(#)「すいませんでした」

25 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 01:45:12.29 ID:z8MDhwJsO
(´・ω・`)「僕としては続けてもらっても構わないよ? クフフ…」
(;'∀`)「いや、俺ら、仲良し」
(;)∀(#)「おう! 喧嘩なんかする訳ないぜ! な!」
 
固く握られた二つの手を見せつけながら早口で捲し立てる。
ショボンの仲裁?で喧騒は収まった。しかしそこにまた争いを持ち込もうとする者が一人。
 
( ゚д゚)「フン、レイヴン同士が仲良くお喋りか」
 
侮蔑の表情で鼻を鳴らす年配の男。彼こそが元トップランカーであり、現在2位の数少ない古参レイヴンの一人だった。

26 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 01:47:09.32 ID:z8MDhwJsO
/ ,' 3「おお、ミルナ。やはりお主も呼ばれたか」
( ゚д゚)「…当然だろう。
しかし商売敵であるレイヴン同士が仲良しこよし、か。随分と丸くなったもんだな、荒巻のダンナよ。ええ?」
/ ,' 3「これこれ。商売敵などと、滅多な事を言うものではないぞい。
時代は移り変わっていくものじゃ」
( ゚д゚)「時代…か。昔はよかった。ダンナとは共に任務を遂行した事もあったな。
あの頃のダンナはまさしくレイヴンの名に恥じない男だった…。強く、非情で、他の者を寄せ付けない覇気があった。だがなんだ今の貴様はッ!!」
/ ,' 3「時代の波に逆らうには、チとこの老体にはキツくてのう。
この波も流される分には居心地はよいぞ。どうじゃ、お主もワシらの中に入らんかの?」
( ゚д゚)「…もう過去の荒巻スカルチノフは死んだ訳か。
いいだろう。死ぬまで平和ボケした屑共と馴れ合っているがいい」
 
憤激と失望の入り混じった顔でミルナは立ち去った。

27 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 01:49:34.10 ID:z8MDhwJsO
(,,゚д゚)「なんだアイツ? 今まで廊下で会っても無視するようなヤツだし、無口かと思ってたら急に妙な事喚き散らしやがってよ」
(´・ω・`)「君以上に血の気が多い人かもね」
(,,゚д゚)「なんだとゴルァ…」
(♯)∀(#)「そういやドクオ。お前、こないだアイツとの対戦だったよな?」
('A`)「ああ…だが俺の不戦勝だ。ヤツの任務が長引いたとかで現れなかったんだ。
それで再戦する事になったんだが、再戦の日にもヤツは現れなかった。
それで俺は最大の壁を越えずにトップランカーって訳だ。笑っちまうだろ?
てかレイヴンならそれくらい知っとけよ」
 
ドクオは近年希に見る実力者であり、うなぎ登りでランカーを倒してきた。ミルナとドクオの対決は観客も大いに楽しみにしていたので、二度の試合放棄には失望した者も多い。
ミルナはトップランカーだったがレイヴンズVIPも甘くはない。普通、再戦となれば試合が終わるまで依頼は断るものだが、彼は依頼を受けて出撃したのだ。
どのような依頼かは知る由もないが、戦う意思なしと判断されて問答無用にトップの座を空け渡す事になったという。
それでもドクオとミルナの対戦を心待ちにしている者は多く、いつかミルナがドクオに挑む時を固唾を飲んで待っているという現状だった。

28 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 01:50:03.87 ID:z8MDhwJsO
('A`)「…っと、長話しすぎたな。そろそろ行かねーとやべぇぞ。おい爺さん起きろ」
 
ドクオが話している間、眠ってしまった荒巻を起こすドクオ。
 
/ ,' 3「…ZZZ…おお、飯かの?」
(;'A`)「…ボケたふりはやめてくれ。爺さんがやるとリアル過ぎるからよ…」
 
ドクオは苦笑すると皆を連れて小走りで会議室へ向かった。

29 :愛のVIP戦士:2007/02/07(水) 01:50:47.65 ID:z8MDhwJsO
( ^ω^)「今日の依頼は…」
 
ブーンは歯ブラシをくわえながらPCを起動させて予定を確認する。
 
( ^ω^)「アウトロー・マテリアルの依頼だお。また武装勢力排除かお…お?」
 
依頼内容の最後にある一文に目をやるブーン。
そこには敵MTの数が多いと予想される為に僚機を用意したと書かれてある。
 
(;^ω^)「確かにこないだみたいに大量のMTが出て来たら命がいくつあっても足りないお。僚機は…兄者かお」
 
多少ビビっていたブーンは僚機がある事で強気になり、快く依頼を承諾した。


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