- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/09(水) 23:18:17.23 ID:Rrh3zDNr0
- ――――――――――――――――――――
[紫色の珠が光を放ち、目の前を浮かんでいる]
( ^ω^)「お?」
―やっと、会えたね
[頭に響くような声が聞こえる]
( ^ω^)「…君は誰だお?」
―名乗る程の者じゃないさ
( ^ω^)「ここはどこだお?」
―ここは、君の精神世界。つまり君の心の中さ
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/09(水) 23:18:52.31 ID:Rrh3zDNr0
- (; ^ω^)「……!?そうだ、ドクオとシラネーヨさんが!!」
―大丈夫だよ、君が全て片付けたから
( ^ω^)「僕が…?」
―君に少し聞いて欲しいことが有るんだ
( ^ω^)「…?」
―この世界の魔王という存在について…
( ^ω^)「魔王?」
―そう、けどその前に歴史を語る必要が有るんだ
―今の因果を作り出した王の話し
―……君はこの語りを知っているかい?
( ^ω^)「語り?」
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/09(水) 23:20:41.35 ID:Rrh3zDNr0
-
―僕は幼少の頃、魔物に父親を殺された。
―あの時の悲痛な叫び。僕はわすれられるはずも無かった。
―僕は大人になって、幼馴染みの子と再会した。
―昔から変わらない世話好きなところや勝ち気なところ、昔のようにありのままにいる
彼女の魅力に気付いた僕は程無くして彼女と契りを交わした。
―そして、僕らの間には家族が産まれた。
―その家族は、男の子と女の子の双子で、よく泣く元気な子だった
―魔物のせいで僕ら家族は離ればなれになってしまった。
―そして、長い年月を経て、僕らと彼らは再会した。
―僕の息子は勇者だった。
―僕の妻は天空人の子孫だったらしく、時が来たら勇者が舞い降りると言う伝承のままに息子は勇者として産まれたのだ。
―僕らは魔王を倒し、捕らわれの身で有る母さんを助ける決意を固めた。
―僕ら家族は、様々な苦難を乗り越えてきた。
―世界を支配しようと目論んでいた魔王を倒し、進化の秘法を用いる異世界の王を倒した。
―母さんという尊い犠牲を出しながらも。
―そうして僕達は平和を勝ち取った…。
- 6 名前:>>4PC買いました、前の携帯ぶっ壊しました:2008/07/09(水) 23:22:57.57 ID:Rrh3zDNr0
- ( ^ω^)「この話し…知ってるお」
―そう、今まで語り継がれてきた、かつての勇者を育て上げた王の話し
―この話しに続きが有るのを知っているかい?
( ^ω^)「続きかお?」
―そう、続きだよ。この話しはここで終わらないんだ
第五話「昔々〜前編〜」
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/09(水) 23:23:51.69 ID:Rrh3zDNr0
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[グランバニア城]
「坊っちゃん、本当にそれで良いのですか?」
「そうだよ、各地にバラバラに散らせて欲しいんだ」
「ですが……」
「グランバニアは一王家で有って、世界を支配する国家じゃない」
「天空の装備、太陽神の装備、それに魔界と繋ぐ三種のリング…」
「ここまで力を集める必要は無いと思うんだ」
僕は、僕の下に集った伝説の類いの装備を各地王家に渡すことを希望した。
グランバニアが世界を支配するならともかく、そんなつもりは毛頭無いのだから。
返す物は返し、隠すものは隠し、そうやって均衡を保とうとしたのだ。
それから数ヶ月が経つと、世界各地にてある噂が流れ始める。
「グランバニア王は各地の様子を監視している。魔王をも倒すその力を以て、世界を支配する気だ」
僕の保とうとした世界均衡はこの時点で崩れることになった。
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- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/09(水) 23:25:21.16 ID:Rrh3zDNr0
- [アルカパ]
[武器屋]
妻'ー')「朝帰りするなんてね、お帰りなさい」
( ´ー`)「ただいまだーよ」
('A`)「お邪魔します」
妻#'ー')「あら、空気読めない子の片割れじゃない?うちの旦那連れ回して一体どういうつもり?」
(;'A`)「え…あ、は?」
( ´ー`)「実は、この子ともう一人の子に助けてもらったんだーよ」
( ´ー`)「もうこんなことは無いように気をつけるーよ」
妻'ー')「そう?じゃあ、客人としてもてなさないとね」
(;'A`)(いつも、あんな感じっすか?)
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/09(水) 23:25:56.87 ID:Rrh3zDNr0
- ( ´ー`)「口は悪いけど、時折可愛いとこが有るんだーよ。特によr」
妻#'ー')「お待たせー!!」
[妻はお茶を力強く叩き付けた]
[湯飲みは割れてしまった]
妻#'ー')「あら、入れ直さなきゃね、おほほ」
(;'A`)「お気遣い無く…」
( ´ー`)「…本題に入るーよ」
[シラネーヨは本棚から幾つかの書物を持ち出した]
( ´ー`)「昔のことについてはこれを読むーよ」
('A`)「…………」
[ドクオは書物を読んでいる]
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/09(水) 23:28:30.86 ID:Rrh3zDNr0
- グランバニア王は勇者の父親として魔王と一戦を交え、これに勝利したと言う。
その報告は当人の口からわしの屋敷で説明を受けた。
世界は平和になりました、と。
わしはその夜、町の者を集め盛大な催しを行った。
彼らも王家の要人と言うことを忘れ、皆が皆、夜が明けるまで飲み明かした。
グランバニア王は
魔を友とし、人間の生きざまを見せんとするその勇姿。
王者としての威厳漂わすマントをたなびかせ、太陽の象徴とも言える冠、竜頭を象った杖、光輝く盾を身に付けており、
それはまるで太陽神のようであった。
('A`)(ん?ここでページがくっついてる?)
( ´ー`)「大事にして欲しいーよ」
[ドクオはくっついていたページを剥がした]
(;'A`)「…………………あー」
(;´ー`)「何してるんだーよ…ん?」
( ´ー`)「……………」
[シラネーヨは書物を読んでいる]
(;´ー`)「…知らなかったーよ」
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/09(水) 23:29:23.37 ID:Rrh3zDNr0
- (;'A`)「………ドンマイ」
わしは、わしの娘がこの男の花嫁になれなかったことを深く後悔した。
別に嫉妬の意味合いが有るわけではない。
ただ、ここまで聡明で、逞しい若者を私は見たことが無かったのだ。
今も、我が娘のフローラはアンディと仲睦まじく暮らしている。
アンディは、花婿候補では、彼の次に素晴らしい男だ。
それはそれで素晴らしいこと。
わしは目先の幸せを大切にしたい。
( ´ー`)「でも、大した中身じゃなくてよかったーよ」
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/09(水) 23:30:40.65 ID:Rrh3zDNr0
- ('A`)「…ここから破れと掠れが多いっすね?」
( ´ー`)「そこは解読しても対したことは書いてなかったーよ」
[シラネーヨは書物のページを進めた]
( ´ー`)「それよりこのページを見て欲しいんだーよ」
('A`)「………」
魔王が滅んだ。その話を聞いてから幾月が経っただろうか。
そんな折、わしが聞いた旅人の話しは耳を疑う物が有った。
『グランバニア王の世界支配』
何でも、世界を監視している王は神を名乗り、世界を丸々自分の傘下に置き、支配しようと目論んでいるらしい。
この話しはわしだけでなく我が娘フローラをも驚かせた。
あの方が、そんな傲慢なことをするはずが…と嘆き悲しむその姿、わしは忘れることが出来ない。
('A`)「世界支配?」
( ´ー`)「彼のグランバニア王は世界を救うという語りは知ってるかーよ?」
('A`)「家族が云々ってやつだろ?でも、まさか……」
( ´ー`)「そう、まさに仕組まれた出来事なんだーよ」
( ´ー`)「この手記には、王が無実の罪によって迫害される様子がまざまざと書き込まれてるんだーよ」
('A`)(冤罪ってやつか…)
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- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/09(水) 23:32:00.12 ID:Rrh3zDNr0
- 人々の噂と言うのは、人の心の不安を煽り、また、冷静な判断を無くさせるもの。
城下町にて、何度訊ねられたか分からないその頃にまた、事は進展を始めた。
[グランバニア城]
兵「伝令より通達です、ラインハット王家より書状が届いておるとのことです」
「あぁ、ヘンリーか。僕が読むよ、ありがとう」
兵「それと王様、お願いがございます」
「なんだい?」
兵「は…この度を以ちまして、兵としての任期を終え、故郷に帰りたく思います」
「………そうか、今まで御苦労様」
兵「はっ、失礼致します」
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/09(水) 23:33:23.39 ID:Rrh3zDNr0
- (兵が辞めていくのは、これで何人目だったっけ)
(それより、ヘンリーは何て…?)
[王は書状を読み上げた]
偉大なる王、そして我が友よ。
なんて、固い書き方は無しにするぜ?w
さて、お前ももう知ってるだろうけど、変な噂が飛び交ってる。
お前が世界を支配するっていう下らない内容だ。
最初は、遊びか何かと思ってたんだがなぁ…もう取り返しの付かないとこに来ちまったみたいだ。
俺のトコではグランバニアに攻め込めって暴動が度々起こるようになったし、どこの城かは分からないが、
軍備増強で来る時を待っている、なんて情報もある。
俺もお前がそんなことを考えていない、無実だと言うのは分かっているつもりだ。
けどな、魔王を倒すその力、魔物を仲間にしちまうその力、お前が魔族を率いる長だと思われてもしょうがない節が有る。
頼む、王位を退いてくれ。
そして、平穏な場所に逃げ込むんだ。
この御時世で、国同士が争うなんてしたら、それこそ世界が壊れちまう。
ラインハット王からの手紙は、僕を失意の底に堕とすに十分な内容だった。
かつての仲間、友達と言うには遠い位置に来すぎてしまったようだ。
(ヘンリー…まさか君まで………)
そして、最後の一文はこう締められていた。
俺はお前を信じている。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/09(水) 23:33:46.72 ID:IKahTwkdO
- 久しぶり!支援
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/09(水) 23:34:52.50 ID:Rrh3zDNr0
- その次の日の朝。僕は全世界に通達した。
王位返還、次期王は王子ではなく大臣である、と。
この発言は世界を安堵させた。
しかし、僕の心は晴れることがなかった。
そして、夜になった。
[グランバニア城]
[王室・バルコニー]
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/09(水) 23:36:24.20 ID:Rrh3zDNr0
- [気持ち良い夜風が吹いている]
「あなた…疲れてない?」
「大丈夫だよ、ビアンカ。僕は全然…」
「嘘、そうやって昔からあなたは強がる…」
「…それよりさ、これからのことだけど」
「やっぱり、どこかに行かなきゃ駄目だと思う」
「君もそう思うかい?」
「えぇ、やっぱり私達は力を持ちすぎたのよ」
「勇者・天空人どれもこれも非常識過ぎるわ」
「どこに行こう?」
「貴方が行くならどこでも良い…」
「ビアンカ……ありがとう」
――――――――――――――――――――