第六話『フーンの町/謎掛け編・上』

242 名前:1 :2007/03/05(月) 15:38:39.18 ID:WJ8Hz12G0
第六話『フーンの町/謎掛け編・上』

モテナイ村で自転車を手に入れた後の数日間、わかんないんですの旅は比較的順調に続いていた。
重いリュックは荷台に載せているので肩が非常に軽く、徒歩よりもはるかに早く平地をすいすいと進んで行く事が出来た。

(メ ><)「とっても速いんです!」

ドクオに自転車の乗り方を教わった際、慣れるまでに何度も転んだお陰で、わかんないんですの顔は傷だらけになっていた。
しかし何度転んでも諦めず、最終的には乗りこなせるようになったのである。

(メ ><)「これで世界樹まで急ぐんです!」


それからわかんないんですは地図を頼りに北へ北へと旅を続けていった。
大きな町に小さい村に、いろいろな所を訪ねては情報を集めていった。
そんなある日、ふらりと立ち寄ってある町の酒場で、わかんないんですはある一人の男と出会ったのだった。

245 名前:1 :2007/03/05(月) 15:42:39.14 ID:WJ8Hz12G0
<丶`∀´>「おい親父、もっと酒をよこすニダ」

( ゚д゚)「お客さん、さっきからすげえ飲んでるけど、御代はあるんだろうね?」

<丶`∀´>「見ての通りウリは貧しい旅人ニダ。こんな哀れな者から金を取ろうだなんて酷い奴ニダ」

( ゚д゚)「金を払わなんなら酒を出す訳には行かないよ」

<# `∀´>「そうやって何度か弱いものを差別すれば気が済むニダ!!」

店主からは呆れによってそれ以上反論する気力が失われていた。その代わりに無言の視線で不快感を客に伝えた。

( ゚д゚ )「……」

<# `∀´>「こっちみるなニダ!」

( ><)「あの人とっても怖そうなんです……」

わかんないんですは少し離れた所でその様子を見ていた。あの客には関わらない方が良いと判断し、そっと酒場を出ようとしていた。
しかし出口をくぐろうとした瞬間に、後ろから思い切り肩を掴まれてしまったのであった。

<丶`∀´>「おいお前、ちょっと金貸してくれるニカ?」

(;><)「うわあああ! なんです!」

<丶`∀´>「本当にちょっとで良いニダ、でないとウリはあの親父に絞められてしまうニダ」

(;><)「えっ、でも僕もあんまりお金を持っていないんです」

<丶`∀´>「頼むニダ! 一生のお願いニダ!」

247 名前:1 :2007/03/05(月) 15:46:23.09 ID:WJ8Hz12G0
もともと決断力が弱く、押されてしまいがちな性格のわかんないんですには、男の頼みをはっきりと断るだけの勇気が無かった。
その上男が余りにしつこく迫ってくるので、困り果てた挙句にわかんないんですは財布を出してしまったのであった。

( ><)「いくら必要なんですか?」

<丶`∀´>「3万ウーピールーピーニダ」

(;><)「高いんです、ちょっと無理なんです」

<丶`∀´>「良いからとっととよこせニダ!」

そう言うと男はわかんないんですの財布に手を伸ばし、その中から適当に紙幣を掴み取った。
そして素早くその店から飛び出していったのであった。

(;><)「……2万5千ウーピールーピーも借りていったんです」

( ゚д゚)「あーあー、お客さんまで……」

それを見ていた店主がわかんないんですに声をかけてきた。

( ><)「あの人が何処に行ったのかわかんないんです」

( ゚д゚)「どうせもうこの町にはいないだろうよ、ペッ」

( ><)「え? 僕にお金借りたまま行っちゃったんですか?」

( ゚д゚)「んなわけねーだろ。お前さん金を盗られたんだって」

(;><)「ええっ!?」

248 名前:1 :2007/03/05(月) 15:50:04.03 ID:WJ8Hz12G0
( ゚д゚)「あいつ最近この町に来た奴でね、素行は悪いし何かあるとすぐいちゃもんつけてくるしで困ってたんだよ。
     結局ここの代金も踏み倒しやがったし」

(;><)「そんな汚い真似をする人がいるなんて……」

わかんないんですの発言を聴いた店主は、思わずその感情を無言の視線で表現してしまった。

( ゚д゚ )「……」

(;><)「こっち見ないで下さいなんです!」

( ゚д゚ )「お前、世の中舐めとんのか? あんなのよりもっと酷い奴だってゴロゴロいるんだよ」

( ><)「僕の村の人達はみんな優しい人ばかりなんです。あんな事する人なんていないんです」

( ゚д゚ )「いいねー、平和なとこにいたんだねー」

店主は顔の向きを戻し、ふうと溜息を付いた。

( ゚д゚)「ま、これから気をつけるんだな。もしまたあいつに会ったらぼこぼこにして川に流してやりな」

(;><)「そんな怖い事出来ないんです」

250 名前:1 :2007/03/05(月) 15:53:27.40 ID:WJ8Hz12G0
わかんないんですがその町を出たのはその日の夕方であった。
本当はもっと長く滞在する予定であったが、資金を盗まれてしまった為それはもうできなくなってしまったのである。

( ゚д゚)「え? 世界樹を探してるって?」

別れ際にわかんないんですに旅の理由を訪ねた店主は、その答えを聞いた驚きを無言の視線で表現した。

( ゚д゚ )「……」

(;><)「こっち見ないで下さいなんです!」

( ゚д゚ )「癖だから無理」

そして顔の向きを直してからこんな話を聞かせてくれた。

( ゚д゚)「そう言えば昔、世界樹の研究をしてるって奴がこの店に来た事があったなー」

( ><)「え? どんな人なんですか?」

( ゚д゚)「若い男だったよ、兄弟揃ってきていたな。フーンの町に住んでるって言ってたかな」

( ><)「わかんな……わかったんです。有難う御座いますなんです」

わかんないんですは地図でフーンの町の位置を確認し、自転車に乗って北を目指した。

( ><)「だんだん世界樹に近付いてきてるんです」

フーンの町はここから更に北へ進んだ地点、ボスケテ山のふもとに広がる大きな町であると地図に記されていた。

251 名前:1 :2007/03/05(月) 15:57:45.83 ID:WJ8Hz12G0
わかんないんですがフーンの町に到着したのは、その二日後の事であった。

( ><)「…凄い所なんです」

そこは今まで立ち寄ったどの町よりも大きく、そして人で溢れ返る場所であった。
のんびりとしたぽっぽ村の雰囲気とはうって変わって、
あらゆるものの存在感がぐいぐいとこちらに向かって押し付けられてくるように感じられた。
建物と建物はかなり近接して建てられており、しかもたくさんの人が歩いているのでその僅かな隙間さえ埋め尽くされ、
全てがぎゅう詰めになっているように見えた。

( ><)「あっ、そうなんです。世界樹の研究をしている人を探すんです」

わかんないんですはその人ごみの中へ飛び込み、聞き込みを始めた。
最初は人の流れに押されてなかなか声をかけられずにいたが、それでも近くを通りかがった人の何人かに声をかける事が出来た。
そして世界樹の研究をしている兄弟の事を尋ねると、その答えはすぐに返ってきたのであった。

「それなら東の屋敷の流石兄弟の事だろ?」

誰もがその名前を口にし、そして「あれは変わりものだから関わらない方がいい」と告げるのであった。

( ><)「どうしても会いたいんです。お屋敷の場所を教えてくださいなんです」

そう尋ねると人々は一応場所を教えてはくれるものの、でも行かない方がいいよと念を押すのである。

(;><)「なんかちょっと不安になってきたんです…」

ともかくわかんないんですは教えて貰った通りに東へ向かい、兄弟が住んでいると言う屋敷を訪ねる事にした。

252 名前:1 :2007/03/05(月) 16:01:32.92 ID:WJ8Hz12G0
丁度その時、わかんないんですのお腹から胃の運動によって空気が動く音が聞こえてきた。

(;><)「……その前にお腹が空いてきたんです」

わかんないんですは近くの店で食事を取る事にした。
この町の物価は今まで立ち寄ったどの町よりも高く、先日金を盗まれた件もあって、一番安いスープしか注文する事が出来なかった。

( ><)「スープじゃ腹もちが悪いんです……またすぐお腹空いてしまうんです」

しかし運ばれた来たスープを一口すすった瞬間、わかんないですの不満は一気に吹き飛んだのであった。

( ><)「とっても美味しいんです!」

( ゚д゚)「お気に召されましたか」

料理を運んできた男が横から話し掛けてきた。

( ><)「(なんかこの人どこかで見たような気がするんです……)はいなんです!」

( ゚д゚)「そうで御座いましょう。ウプキボン川の中流から汲み上げられた水を使用しておりますから」

( ><)「うぷきぼ……なんなんですか? わかんないんです」

( ゚д゚)「おやご存じないとは。ウプキボン川はこの町に流れている世界的に有名な美しい河川で御座います
     川の水は古来より飲用水として普段からこの町で利用されていますが、その質と味は最高のものです」

料理を食べ終えた後、わかんないんですを店を後にして再び屋敷探しを再開したのであった。

( ><)「あの人前に会った人と似ているけど……でも喋り方も違うし、こっち見なかったんです」

253 名前:1 :2007/03/05(月) 16:07:04.24 ID:WJ8Hz12G0
屋敷はそれはすぐに見つける事ができた。それは他の建物よりも少し離れた所に建てられていた。
わかんないんですはその玄関の前に立ち、そっと呼び鈴を鳴らした。

( ><)「突然すいませんなんです。お話がしたいんです」

すると扉の向こう側からなにやらどたどたという激しい足音が響いてきた。そして物凄い速さで扉が開いたのだった。

(´<_` #)「全くしつこいぞ! いい加減帰ってくれ!」

その瞬間わかんないんですは開いた扉にぶつかって跳ね飛ばされた。

(;><)「キャー! デジャヴなんですー!」

そのまま地面に叩きつけられ、わかんないんですの意識は少しずつこの世から遠ざかっていった。

(´<_` )「おや? 違う人?」

(#)><)「…………きゅー……」

(´<_`;)「おい、大丈夫か」

頬の痛みと、何やら騒いでいる家主の声はだんだん小さくなっていった。わかんないんですはそのまま気絶してしまった。

(´<_`;)「ううむ、仕方が無い。とにかく手当てをせねば」

254 名前:1 :2007/03/05(月) 16:10:40.34 ID:WJ8Hz12G0
( ><)『この木にいっぱい蜜柑がなっているんです』

(*‘ω‘*)『ちんぽっぽ♪』

( ><)『体当りしたらきっとたくさんの蜜柑が落ちてくるんです。ちんぽっぽちゃんやってみてくださいなんです』

ΣΣΣ====(((*‘ω‘*)『ちんぽっぽおおおお!!!』

(;><)『……え、違うんです、僕じゃなくてこっちの木に……』

どかぼいんっ


( ><)(そう言えば昔から良くちんぽっぽちゃんにどかぼいんされていたんです……)

(´<_` )「なかなか起きないな」

( ><)「う……ん」

(´<_` )「と言った矢先に目を覚ましたか」

わかんないんですが目を覚ますと、高い高い天井が視界に飛び込んできた。
頭の下には枕があり、暖かい布団もかけられており、どうやらベッドに寝かされているようであった。

256 名前:1 :2007/03/05(月) 16:14:29.36 ID:WJ8Hz12G0
(´<_` )「君、気分はどうだ?」

そして呼びかけてくれた声に反応して顔を横に向けると、玄関の扉を開けた人の姿を見る事が出来た。

( ><)「ここは……何処ですか?」

(´<_` )「君がベルを鳴らした家の中だ。どうだ、立てるか?」

( ><)「あっ……はいなんです」

わかんないんですはゆっくりと上半身を起こした。体が揺れた襲撃で一瞬顔の側面に痛みが走ったが、大したものではなかった。

(´<_` )「そうか、良かった良かった」

( ><)「あのすいません、あなたが世界樹の研究をしている人なんですか?」

(´<_` )「如何にも、俺が世界樹の研究者・流石だ」

( ><)「良かったらお話を聞きたいんですけど、構わないですか?」

(´<_` )「ふむ……ではこっちにきてくれ」

わかんないんですは男に案内されて隣の部屋へと移動した。
その部屋のドアを開くと、等間隔に並べられて空間を埋め尽くしている高い本棚と、部屋の中央にポツリと置かれた机と、
その机に向かうもう一人の男の姿が見えた。
わかんないんですを案内した男は机に近寄ってもう一人の男の隣に並び、机を挟んで改めてわかんないんですと向かい合った。

257 名前:1 :2007/03/05(月) 16:18:17.54 ID:WJ8Hz12G0
          ∧_∧
    ∧_∧  (´<_`  )
   ( ´_ゝ`) /   ⌒i
   /   \     | |
  /    / ̄ ̄ ̄ ̄/ |
__(__ニつ/      / .| .|____
    \/____/ (u ⊃


( ´_ゝ`)「ようこそ。俺がこの家の主であり世界樹の研究者、流石兄者」

(´<_` )「そして改めて、俺は弟者と言う。よろしくな」

( ´_ゝ`)「君の名前はなんと言うんだ?」

( ><)「わかんないんです」

( ´_ゝ`)「ほう、わかんないんです君か。よろしく」

(´<_` )「そんな名前の訳が無いだろ兄者。自分の名前が判らないとは、悪い事を訊いてしまったな」

(;><)「ごめんなさいなんです。わかんないんですって言う名前なんです」

(´<_`;)「……正直すまんかった」

既にお決まりとなっている自己紹介を終えた後、わかんないんですは勧められた椅子に座った。
兄者は机の上に置いてある折り曲げられた板のようなものを更に折り曲げて二つに畳んで、わかんないんですの顔を見た。

258 名前:1 :2007/03/05(月) 16:22:29.22 ID:WJ8Hz12G0
( ´_ゝ`)「さて、われわれの話を聞きたいそうだが、君も世界樹を探しているのか?」

( ><)「はいなんです」

( ´_ゝ`)「そうか……では具体的にどんな事が知りたいのだ?」

(;><)「えーっと……わかんないんです」

(´<_` )「それではこっちも教えようがないな」

(;><)「すいませんなんです。僕まだ世界樹の事よく知らないんです」

( ´_ゝ`)「君は世界樹についてどのくらいの事を知っているんだ?」

( ><)「えーと、物凄い力を持っているっていう事と、ここから離れた北の島にあるっていう事だけなんです」

その発言を聞いた時、兄弟は顔を見合わせて何かをひそひそ声で話し始めた。
そしてその話が終わったのか、弟者が再び顔をこちらへと向けて質問をしてきたのであった。

(´<_` )「君はどうも世界樹の位置を知っているらしいが、それはどうやって知ったのだ?」

( ><)「地図に書いてあったんです」

(´<_`;)「……そ、それはどんな地図だ? 何処で手に入れたんだ?」

( ><)「世界樹に行ったっていう人の孫が持っていたものなんです。良かったら見てくださいなんです」

わかんないんですは鞄からクーの地図を取り出して二人の前に差し出した。

259 名前:1 :2007/03/05(月) 16:26:25.08 ID:WJ8Hz12G0
その地図を手にとるや否や、兄弟は真剣な表情でそれを見つめていた。そして何かを真剣に話し合い始めたのであった。

(´<_` )「見ろ兄者、かなり正確に描かれているぞ」

( ´_ゝ`)「この座標はハニャーン港の文献とも一致しているな。やはりあの地図が一番正しかったのだな」

(´<_` )「という事はあの記述も真である可能性が高くなったな」

(;><)「あのー……ちょっと良いですか?」

(´<_` )「あ、ああすまない。何だ?」

( ><)「それでその、世界樹の事に付いて教えて貰いたいんですけど……」

しかし二人はわかんないんですの質問にはすぐには答えず、再び顔を合わせて何かを相談し始めたのであった。

(´<_` )「どうする? あの子はかなり本気のようだぞ」

( ´_ゝ`)「ふむ、なかなか礼儀も正しいしな。この地図を持っている所を見るとただものではあるまい。俺は別に構わんぞ」

(´<_` )「それならこうするのは……」

(;><)「あのー……」

わかんないんですはだんだん寂しい気分になってきていた。それは二人組み作った際の余りになった人の気持ちそのものであった。
そしてようやく長い話を終えて、再びわかんないんですに話し掛けてきた。

( ´_ゝ`)「よし、君に世界樹についての情報を与えよう」

( ><)「本当なんですか!?」

260 名前:1 :2007/03/05(月) 16:30:23.69 ID:WJ8Hz12G0
(´<_` )「但し一つ条件がある。この地図を我々に譲って欲しい」

( ><)「え……」

(´<_` )「これは研究に大いに役立つ貴重な資料だ。どうか譲ってはくれないか?」

わかんないんですはしばらくの間俯いて何かを考えていた。しかし顔をしっかりと上げて前を向くと、はっきりとこう言ったのだった。

( ><)「それは出来ないんです」

( ´_ゝ`)「む?」

( ><)「その地図は借りたものなんです。だからあなた達にあげる訳には行かないんです」

(´<_` )「それならこちらも情報を与える訳には行かないのだが」

( ><)「でも駄目なんです。それを必ず返すって約束したんです。それだけはあげられないんです」

わかんないんですは椅子から立ち上がると、深くお辞儀をした。

( ><)「どうもすみませんでした。お邪魔しましたなんです」

そしてそのまま二人に背を向けて扉の方へ向かって歩き始めた。

( ><)(結局何もわからなかったんです……でもクーさんとの約束は守らなきゃならいけないんです)

扉の取っ手に手をかけてそのまま部屋を出ようとした、その時であった。

261 名前:1 :2007/03/05(月) 16:34:04.94 ID:WJ8Hz12G0
( ´_ゝ`)「ちょっと待ちたまえ」

突然兄者が声をかけてきたのであった

( ><)「えっ?」

( ´_ゝ`)「君は約束を守る為に、自らの目的を断念するつもりなのか?」

( ><)「そうじゃないんです。僕は世界樹を絶対に見つけたいんです」

( ´_ゝ`)「では何故今の取引を断ったんだ?」

( ><)「お話は聞きたいんです。でもやっぱり約束は破っちゃいけないんです。だからお話は聞かないで世界樹まで行くんです」

( ´_ゝ`)b「……おk、その心意気受け取った。そこに座ってくれ」

(;><)「……ええっ?」

わかんないんですは唖然としながらも、取り敢えず兄者に言われた通りに椅子に座り直す事にした。

262 名前:1 :2007/03/05(月) 16:37:52.77 ID:WJ8Hz12G0
しかし弟者は兄者の独断にうろたえているようであった。

(´<_`;)「お、おい兄者」

( ´_ゝ`)「どうした弟者よ」

(´<_`;)「本当に話すつもりなのか? それでは俺達の今までの方針が……」

( ´_ゝ`)「弟者よ、この子は今までの奴らとは違うぞ。先の質問の答えで俺は確信した」

(´<_`;)「しかし……」

( ´_ゝ`)「さっきの奴の事で機嫌が悪いのはわかる。しかしこの子は関係ないだろう」

(´<_` )「……それはそうだが」

( ´_ゝ`)「それにお前この子を気絶させてしまったのだから、その詫びもしなくてはならないではないか」

(´<_` )「……判った」

弟者も何とか納得したらしく、軽くうなずいていた。

263 名前:1 :2007/03/05(月) 17:01:25.47 ID:WJ8Hz12G0
それから二人は揃ってわかんないんですの方に向き直った。

( ´_ゝ`)「さてわかんないんです君。君はこれからこの地図に書かれている世界樹の島まで行く訳だな?」

( ><)「はいなんです」

(´<_` )「ここから大陸の端までは陸路で行ける訳だが、その後この島までどうやって行くつもりだ?」

(;><)「えーっと……船に乗って行けば良いと思うんです」

(´<_` )「操縦の心得はあるのか?」

(;><)「ないんです」

( ´_ゝ`)「……それも大きな問題だが、もし君が船を操縦できたとしても島まで辿り着ける可能性は極めて低いのだ」

(;><)「ええっ!? どうしてなんですか?」

すると弟者が一旦机から離れて本棚の傍へ行き、ある一冊の書物を取り出した。
それを持って机へ戻ってくると、わかんないんですの前であるページを開いて見せた。

(´<_` )「これはハニャーン港で手に入れたものなのだが、これには世界樹についての様々な記述があるのだ」

わかんないんですもその本の中を覗いてみたが、今までに見た事の無い文字ばかりが並んでいて内容を理解する事が出来なかった。

(;><)「これ何語なんですか? わかんないんです」

(´<_` )「地方の古い言葉で記されているから判らないのも無理はないな……」

(;><)「だったら僕に見せる意味が無いんです」

265 名前:1 :2007/03/05(月) 17:05:17.30 ID:WJ8Hz12G0
(´<_` )「文字ではなくこちらの挿絵を見てくれ」

わかんないんですは弟者が指した部分を見てみた。そこには港周辺の地図と思しき図が載せられていた。

(´<_` )「ここに書かれている島が世界樹の島だが、その周りを囲むように円が書かれているだろう?」

( ><)「はいなんです。これは何なんですか?」

(´<_` )「この書によればそれは『見えない壁』なのだそうだ」

( ><)「……壁?」

(´<_` )「船で島へ近付いて行くと、ここから先にはどうしても進めないと言う場所があるらしい。挿絵はその場所を図示しているのだ」

(;><)「えええっ? 本当にそんな場所があるんですか!?」

その話はにわかには信じがたいものであった。
そもそも架空のものとされていた世界樹が実在する事が既に信じがたい事であり、今更何が起こっても不思議ではないのかもしれない。
それでも超越的な事象と言うのはそう簡単には信じられないものなのであった。

( ´_ゝ`)「その図に書かれた島の位置は、多くの文献から推測される島の位置と一致している。
      更にハニャーン港は島から最も近い位置にある港だ。信憑性は高い」

(´<_` )「おそらく世界樹の持つパワーにより、島の周辺に結界のようなものが形成されているのではないかと思われる」

(;><)「……よくわかんないんですけど、島にはいけないって事なんですか?」

それは絶望的な事実であった。今まで数々の苦難を乗り越えてきたわかんないんですとはいえ、人知を超えた力には勝てる筈も無かった。

( ><)「……ううっ……折角ここまで来たのに……」

266 名前:1 :2007/03/05(月) 17:08:57.90 ID:WJ8Hz12G0
どれだけ地道な努力を重ねようとも、たった一つの絶対的な壁に阻まれれば全てが水の泡となると言うその理不尽さ。
わかんないんですは思わず涙を流しそうになった。
しかしその時、兄者がぽんと肩を叩いてくれたのであった。

( ´_ゝ`)「そんな顔をするな。落ち着け」

( ><)「だって……ぼく……ちんぽっぽちゃん……」

( ´_ゝ`)「この書には世界樹の島へ辿り着いた者がいると言う記録も残されている。
      それに君は先程『世界樹に行った人の』孫から地図を貰ったと言っていたではないか」

( ><)「……あ」

スナオの町で出会ったクーは、祖父が息子の命を世界樹の実で救ったから自分が生まれたのだと話していた。
もし誰も世界樹の島へ行けなかったのだとたら、わかんないんですがクーと出会う事も無かった筈である。

( ><)「じゃあ、見えない壁を何とかできる方法があるって事なんですか?」

(´<_` )「ああ。書にはその方法も記されている」

( ><)「それはなんなんですか? 教えて下さいなんです」

(´<_` )「港のある地方では十年に一度、海の神に供え物をする儀式が行われるそうなのだ。
      その際に十年寝かせた特別な酒を用意するのだそうだ」

( ´_ゝ`)「その酒には霊的なパワーが宿っていて、それを壁に向かってぶつけたら先に進めるようになったのだそうだ」

( ><)「じゃあ港でそのお酒を手に入れれば良いんですね!」

267 名前:1 :2007/03/05(月) 17:12:33.48 ID:WJ8Hz12G0
しかし兄弟はその意見に対して揃って首を横に振ったのであった。

( ´_ゝ`)「残念ながら、現在ではこの儀式は行われていないのだ」

(´<_` )「同時にその酒の製法も失われてしまっている。
      もし判ったとしても十年寝かせなければならないと言うのだから、とても間に合わないな」

(;><)「そんなあ……」

わかんないんですはがっくりと肩を落とした。
先程から希望が見えたり隠れたりの連続で頭が疲れきっており、そのまま床に倒れてしまいそうなほど体の力が抜けていた。

(;><)「結局島には行けないんですか……」

(´<_` )「文献に残された方法の中で、現在実行可能なものは存在していない」

( ´_ゝ`)「確実な方法は我々にも判っていないのだ」

( ><)「そんな……僕は……今まで何の為にがんばって……」

更にわかんないんですの首の力が抜けて俯いてしまった。
しかし絶望に打ちのめされかけているわかんないんですの耳に、兄者の声が聞こえてきた。

( ´_ゝ`)「……確実な方法は判らないが、可能性のある方法ならば判っているぞ」

( ><)「えっ!?」

わかんないんですが素早く顔を上げると同時に、弟者が説明をし始めた。

268 名前:1 :2007/03/05(月) 17:16:21.54 ID:WJ8Hz12G0
(´<_` )「文献に残された見えない壁を突破法に共通しているは、何かしらの大きなパワーを持ったものを使用していると言う事だ。
      つまりそう言ったものを手に入れれば、島へ行く事ができるかも知れない」

( ><)「凄いパワーのあるものを探せば良いんですね?」

( ´_ゝ`)「ああ。というか探すまでも無く、この近くにある」

( ><)「それは一体何なんですか!」

わかんないんですがそう尋ねると、弟者は机から離れて壁の方へと近寄った。
壁にかけられている大きなカーテンを開けると、大きな窓が姿を現した。

(´<_` )「フーンの町に流れるウプキボン川の水だ」

弟者によって開け放たれた窓の向こうには町の景色が広がっていた。そして町の中を悠々と流れている大きな川の姿を見る事が出来た。

( ><)「川の水……? そんなに凄い力があるんですか?」

(´<_` )「ああ、ウプキボン川の水質は非常に良好で美しい事から世界的に有名なのだが……知らなかったのか?」

(;><)「ごめんなさいなんです、知らなかったんです」

( ´_ゝ`)「まあ気にするな、世の中には30まで童貞でいると魔法使いになれるという事を知らない者もいるのだからな」

(´<_` #)「そんな事を信じるな!」

(;><)「どうていって何なんですか? わかんないんです」

(´<_` #)「君も訊くんじゃない!」

269 名前:1 :2007/03/05(月) 17:20:23.89 ID:WJ8Hz12G0
弟者が机に戻ってきたところで、改めて説明が始まった。

( ´_ゝ`)「遠くの方に山が見えるだろう? あれはボスケテ山といって、古来より不思議な現象が数多く発生する霊山として有名なのだ」

(´<_` )「あの山では多くの薬草が取れ、他の地には見られない生物が多数生息している。
      おそらく山の発するパワーによって生物が特殊な進化を遂げたからだと考えられている」

( ´_ゝ`)「そしてボスケテ山を水源とするウプキボン川にもまた、大きなパワーが宿っているのだ」

( ><)「成る程なんです。そう言えば川の水で作ったって言うスープはとても美味しかったんです」

( ´_ゝ`)「おお君も飲んだのか。あの店は中流の水に拘っているからなあ、絶品だぞ」

( ><)「中流だと何か良い事があるんですか?」

( ´_ゝ`)「ああ、川の水は上流へ向かえば向かうほど水質も良くなり、味もより素晴らしいものになるのだ」

(´<_` )「それは即ち、より上流で取れる水ほどパワーが強いという事になる」

( ><)「じゃああの山の高い所へ登って、そこの水を汲めば良いんですね」

( ´_ゝ`)「ああ……」

わかんないんですは今の話で元気を取り戻していたが、しかし二人の表情は決して明るいものにはならなかった。
むしろやや暗くなっているようにも見えた。

270 名前:1 :2007/03/05(月) 17:25:12.44 ID:WJ8Hz12G0
( ><)「……どうかしたんですか?」

( ´_ゝ`)「実はな、我々の計算によると見えない壁を破るのに必要なパワーを持った水を採取するには
      かなり高い所まで登らなければならないんだ」

( ><)「高いって……どのくらいなんですか?」

(´<_` )「最低でも水源の500メートル以内、大体8合目辺りだ」

(;><)「8合目? それってどのくらいなんですか?」

(´<_` )「ここから見て頂上に近いところの、ちょっとくぼんでいる辺りだな」

平坦な地で育ったわかんないんですは登山の道のりを示す「合」と言う単位を知らなかった。
だが弟者に示された場所の高さを見て、8合と言うのが大きな量であると知ったのであった。

(;><)「とっても高いんです!」

271 名前:1 :2007/03/05(月) 17:29:01.16 ID:WJ8Hz12G0
それから三人は話し合い、明日の朝に三人揃って山へ向かい、川の水を汲みに行く事に決めた。

( ´_ゝ`)「おそらく8合目につくのは夕暮れになるだろう……明日に備えてしっかり眠るといい」

( ><)「はいなんです!」

わかんないんですは二人に空いている部屋に案内され、そこのベッドに入った。それを見た二人は部屋を出てそっとドアを閉めた。

(´<_` )「しかし兄者、本当に行くのか?」

( ´_ゝ`)「この子を一人だけで行かせる訳にも行かないだろう。俺達が案内をしなければならない」

(´<_`;)「しかし俺達はそこまで高い所へ行った事はないし、なによりずっと家に篭ってばかりの兄者の体力が持たないだろう」

( ´_ゝ`)「それは弟者も同じではないか」

(´<_` )「いや俺は頻繁に外出しているからな。この部屋と寝室の往復しかしていない兄者と違って」

(# ´_ゝ`)「……弟者よ、それは正確ではない。俺は風呂にも台所にも行くぞ」

(´<_` #)「どちらにしろこの家から出る事は滅多に無いだろう」

(# ´_ゝ`)「……それがどうかしたか? 家に篭る事は犯罪ではないぞ」

(´<_` #)「……自分は楽をして人に負担を押し付けると言う大罪だ」

部屋のすぐ外での二人の言い合いは、ベッドの中のわかんないんですに筒抜けであった。

(;><)(……明日は大丈夫なんでしょうか)

272 名前:1 :2007/03/05(月) 17:33:42.20 ID:WJ8Hz12G0
そんな不安も生き物の基本的欲求である眠気に前には大した障害とはならず、その後すぐにわかんないんですは眠りに付いたのであった。


しかしその眠気さえも吹き飛ばすほどの大きな音が屋敷中に響き渡り、わかんないんですは深夜に目を覚ましてしまった。

(;><)(う、うるさいんです……)

どおんどおんと言う何かものを叩く音が響き、家具を揺らしていた。この状況の中でもう一度眠りにつくのは至難の技であった。
更に呼び鈴を鳴らす高い金属音がそれに混じるようになった。
音のする方向ともあわせて、何者かが玄関を叩いているのだと言う事が何となく予測できた。

(;><)「一体何なんですか?」

わかんないんですはベッドから起き上がり、部屋のドアを開けて廊下へ出て行った。すると丁度そこに兄者がいるのが見えた。

( ´_ゝ`)「わかんないんです君、君も起きてしまったのか」

(;><)「はいなんです。とてもうるさいんです」

( ´_ゝ`)「追い返してくるから少し待っていてくれ」

兄者は一人玄関へと向かい、玄関の鍵を開けた。開いた扉の向こうには、どこかで見た事のある人物が立っていた。

<丶`∀´>「ウリをここに泊めるニダ!」

それはフーンの町にくる前の町で出会った、酒場でわかんないんですの金を盗んで男であった。

273 名前:1 :2007/03/05(月) 17:37:25.35 ID:WJ8Hz12G0
( ´_ゝ`)「悪いがニダーさん、俺の家は宿屋ではない。泊まりたいなら他を当たってくれ」

<# `∀´>「どの宿もウリが金を持ってないからと泊めてくれなかったニダ!
      さっきやっと泊めてくれる所を見つけのにまたすぐに追い出されたニダ!」

( ´_ゝ`)「それはあなたの態度が良くなかったからではないですかね」

<# `∀´>「態度が悪いのは向こうニダ! ベッドのシーツの端にしわが寄っていたり、窓が曇っていたりしたニダ!」

( ´_ゝ`)「……少しくらいしわが付いていても眠れるし、この寒い季節なら窓も曇って当然ですが」

<# `∀´>「宿の奴も同じ事言ったニダ! 謝罪と倍賞を要求しても責任をとってくれなかったニダ!」

( ´_ゝ`)「……まあとにかく、それで困って家へきたと?」

<丶`∀´>「頼むニダ、一生にお願いニダ」

( ´_ゝ`)「あなた昼に来た時も一生のお願いと言っていたでしょう。一度しかない一生に何回『一生のお願い』をするつもりですか」

<# `∀´>「へりくつを言うなニダ! お前もそうやってか弱いものを差別しているニカ!!」

276 名前:1 :2007/03/05(月) 18:01:34.89 ID:WJ8Hz12G0
玄関先での口論はその後も延々と続き、最終的には男が疲れて去って行くとい言う形で終結した。
兄者は玄関に鍵をかけなおすと、腕を思いっきり上げて伸びをしながら戻ってきた。

( ´_ゝ`)「すっかり目が覚めてしまったな……早く寝なければ」

(;><)「あの人こんな所でも大騒ぎしているんですか……」

( ´_ゝ`)「ん? 君もニダーさんを知っているのか?」

( ><)「この町に来る前に会ったんです。その時はお金を盗られたんです」

( ´_ゝ`)「……それは災難だったな」

( ><)「兄者さんはあの人に何かされたんですか?」

( ´_ゝ`)「ああ、君が訪ねてくる少し前にニダーさんがやって来てな。俺達に世界樹についての情報を尋ねてきたのだ」

( ><)「あの人も世界樹を……?」

( ´_ゝ`)「ただ俺達は基本的に研究の内容を人には教えない主義でな。
      その上あいつの態度が非常に悪く、無礼にも程があって……それで追い返したのだ」

( ><)「……追い出したくもなるんです」

277 名前:1 :2007/03/05(月) 18:05:40.87 ID:WJ8Hz12G0
その時、わかんないんですは兄者の言葉に疑問を感じた。

( ><)「あれ? お二人は研究を人に教えない主義なのに、どうして僕には話してくれたんですか?」

( ´_ゝ`)「……悪いが、今はとても眠くて……話は明日しようではないか」

( ><)「あっ、はい……」

( ´_ゝ`)「お休み」

兄者はそう一言残すと、そのまま階段を上がって自分の寝室へと戻って行った。

( ><)「おやすみなさいなんです」

わかんないんですもまた、明日に備えて眠りに付いたのであった。

第六話 終


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