第13話

62 : 名人(東京都):2007/03/21(水) 22:15:27.42 ID:A7BS6UP00
今3人はバーボンハウスでモララーの訪れを待っている。
話し合った結果、モララーの元へ向かうよりもこちらへと誘き寄せた方が楽だという結論に達したからだ。
その結論に達してからは早かった。
ショボンがバーボンハウスの『設定』を魔王の城という『設定』に変えてしまったのだ。

勇者は結局の所『目的の設定』によって魔王を倒すことを定められている。
つまり勇者をやっている以上魔王へと必ず挑まなければいけないのだ。

63 : 名人(東京都):2007/03/21(水) 22:15:57.53 ID:A7BS6UP00
( ^ω^)「よく考えたらここで待ってるだけじゃモララーがいつ来るかわからないお」

(´・ω・`)「そこは大丈夫。彼には30分以内にここに来ないとおちんちんが爆発する呪いをかけておいたから」

(;^ω^)「この人って一体……」

来たるべき戦いに備え、バーの道具を全て片付けた。
今までの暖かみのある店の代わりに、無機質で広々とした空間へと変貌を遂げたバーボンハウス。
そんな空間の中で何とも言えないやり取りを交わしているところに、ギコが何者かの気配を察したらしく声を上げる。

(,,゚Д゚)「そろそろ真面目モードになれ。どうやら来たようだぞ」

瞬時に静まる空気。
3人の視線は一斉に扉へと向けられる。

64 : 名人(東京都):2007/03/21(水) 22:16:22.79 ID:A7BS6UP00
外から風が吹き込む。風は強いらしい。月は雲に隠れているのか夜空の下の大地は真っ暗だ。
扉が開いた。それだけで様々な情報が入ってくる。
そんな情報溢れる闇夜の中から人影が浮かび上がってきた。

( ・∀・)「……」

勇者、モララーだ。

(´・ω・`)「やぁ、ようこそ、『バーボンハウス』へ ……いや、もうここは魔王の城だったっけ」

(#^ω^)「やっと皆の分の仕返しができるお」

相手が誰であろうと普段通りのペースを崩さないショボン。
対照的に友達の仇を目の当たりにして静かに怒りを抱くブーン。
右手には数子が力強く握られている。

(;,,゚Д゚)「それにしてもこんな行き当たりばったりな作戦でよく来たな」

( ・∀・)「おちんちんが爆発したらたまらないからね」

予定通りに事が進んでいるのが少し不安になったギコ。
13話目にしてやっと初セリフなのに、その内容がとても微妙なモララー。

バーボンハウス。いや、魔王の城で今役者は揃った。

65 : 名人(東京都):2007/03/21(水) 22:16:49.97 ID:A7BS6UP00
( ・∀・)「あなたが魔王か」

勇者という設定上、直感で魔王がわかってしまうものなのだろうか。
村人、店主、2人を無視して魔王に語りかける勇者。
その目は魔王から視線を外すことはない。

(,,゚Д゚)「あぁ、そうだ。だが今日は俺は主となって戦うことはしない」

勇者の視線に負けずに相手をしっかりと見据えて言い放つ魔王。
その場の空気が段々と重くなっていく。

( ・∀・)「それはどういうことだい?」

(#^ω^)「僕が戦うんだお。この話は僕が主役なんだお」

66 : 名人(東京都):2007/03/21(水) 22:17:25.26 ID:A7BS6UP00
そして姿を変えるブーン。

(主^ω^)「これでこそ主役だお!」

(´・ω・`)「こんな空気が合作のパロするなんて身分不相応だよ。やめておきな」

(;^ω^)「正直すまんかったお」

(,,゚Д゚)「それよりこのままじゃ空気がグダグダになっちまう。ちゃんとやるぞ」

( ^ω^)「わかったお」

( ・∀・)「……」

会議が終わるまで待ってくれている勇者。
曲がりなりにも正義なんだから案外良い奴なのかもしれない。

( ^ω^)「じゃあモララーがギコさんに問うシーンからやり直すお」

67 : 名人(東京都):2007/03/21(水) 22:17:57.73 ID:A7BS6UP00
( ・∀・)「それはどういうことだい?」

(#^ω^)「僕が戦うんだお。この話は僕が主役なんだお」

2人の会話に割って入るブーン。
その瞳はしっかりとモララーを見据えている。

( ・∀・)「君は確か…村人をやっていた人じゃないか。村人如きが勇者に挑むなんて気でも触れたのかい」

勇者から投げ掛けられた言葉を気にせずに、ブーンはゆっくりと目を閉じる。

( -ω-)「ジョン、マイケル、田中、トム、ポール、吉田…… 僕が今から仇を取ってやるお。だから見守っていてくれお」

そしてその瞼が持ち上げられる。
友に誓った勝利を得る為に。

(#゚ω゚)「僕がお前を倒してやるんだお!!」

戦いが、始まる。

68 : 名人(東京都):2007/03/21(水) 22:18:34.82 ID:A7BS6UP00
(#゚ω゚)「うおぉぉぉぉぉおおおお」

地を強く蹴り、ブーンが勇者へと飛び出す。
その勢いを数子の握られた右腕に乗せて地面と水平に振る。

( ・∀・)「棍棒か。甘いね」

向かってくる数子の脅威を、勇者は剣を鞘に収めた状態のままで受け止める。
そして動きが止まったブーンに対して、受け止めた反動を利用して右足を軸に足を蹴り出す。
隙だらけな上に、元々戦うスキルを身につけていないブーンはこの攻撃をまともに受けてしまう。

( ゚ω゚)「ゴフッ……ハァハァ……」

防御力など皆無に等しい村人に百戦錬磨の勇者の蹴りが当たったのだ。
村人はたったの一撃で立つ力を失ってしまった。

70 : 名人(東京都):2007/03/21(水) 22:19:09.62 ID:A7BS6UP00
( ・∀・)「もう立てないの? 最初の勢いだけだったのかな」

地に伏せる村人をあざけ笑う勇者。
しかし村人はそれに反応するほどの余裕は残されていなかった。

( ゚ω゚)「モルスァ……」

( ・∀・)「本当にもう立てないのか。じゃあ呆気なかったけどこれで終わりにしとこうか」

鞘から剣を抜き、村人の首元に鋒を向ける。
あと数センチ刃を下ろせば頸動脈は切れ、更に刃を下ろせば村人の頭部と身体が別れを迎えてしまうであろう。

71 : 名人(東京都):2007/03/21(水) 22:20:47.91 ID:A7BS6UP00
(´・ω・`)「ちょっと待って」

今にも村人の命が摘まれようとする瞬間、ずっと出番の無かった男が口を挟む。

( ・∀・)「なんだい? 今から大事なところだから止めてもらいたくなかったんだけどな」

(´・ω・`)「勇者は人の命を無駄に奪うのは設定でできなくなっているはず。それでも君は彼の命を奪おうとするのかい?」

( ・∀・)「彼は僕に向かってきた。寄ってくる害虫は駆除するのが一番じゃないか。この行為には設定も関係ないと思うよ」

(´・ω・`)「そうか、じゃあ残念だけど設定を変えさせてもらうよ。君はジ・エンドってやつだ」

そうショボンが言い放った瞬間、勇者を強い光が襲った。
その光は何処か禍々しく、何処か神々しい。そんな矛盾を秘めているように輝いていた。

72 : 名人(東京都):2007/03/21(水) 22:21:19.77 ID:A7BS6UP00
(,,゚Д゚)「魔王なのに空気扱いってのも酷いと思うぞ。とりあえず俺の出番増やす為に攻撃くらっとけ」

光を放った張本人が軽く愚痴を漏らす。
どうやら戦いを手伝うと宣言しておきながら出番が少ないことが不満だったらしい。

(,,゚Д゚)「しかし、直撃したと思ったのにな」

魔王の目線の先にはほぼ無傷の状態で立っている勇者。
確かに攻撃は当たっていたはずなのに。

( ・∀・)「ビックリしたな。さすが魔王だよ」

勇者の左手には煙を上げている盾が握られている。
驚異的な反射神経で魔法を受けたようだ。

73 : 名人(東京都):2007/03/21(水) 22:22:03.89 ID:A7BS6UP00
( ・∀・)「やっとメインディッシュだね。なんで魔王がこんな所で村人と仲良くやっているのかはわからないけど、とにかく倒させてもらうよ」

魔王を見据え剣を握り直す勇者。
その剣先は魔王にしっかりと向いている。

(,,゚Д゚)「いや、俺の出番はもう終わりのようだな」

魔王は勇者の宣戦布告を受け流し、ショボンの方へと目を向ける。
先程の魔法のあたりから目を閉じて『設定』をいじっていた彼が、作業を終了させて目を開いている。

(´・ω・`)「お待たせ様。やっぱり『相対の設定』を変えるのは大変だったよ」

ショボンの開かれた口から、設定の変更を告げられた。

74 : 名人(東京都):2007/03/21(水) 22:24:11.40 ID:A7BS6UP00
(;・∀・)「え? 何を言って…… うわぁぁぁぁあああ!!」

(;,,゚Д゚)「みょおぉぉぉぉおおおお!!」

突如奇声を上げる勇者と魔王。
彼らは今、ブーンが昼に感じた快感……感覚を感じているのであろう。
その感覚が止む頃には全てが変わっていた。

(*・∀・)「今のは一体なんだったんだ」

(*,,゚Д゚)「こいつは気持ちが良……悪くなる感覚だな」

75 : 名人(東京都):2007/03/21(水) 22:26:15.37 ID:A7BS6UP00
夜だった外に陽が昇る。
しかしその太陽に灯されていた灼熱の炎は熱を失ってしまい、地球に温もりを届けることはなくなっている。
つまりは光を発することはなく、地球は夜のまま朝を迎えてしまうという混沌とした状況に陥ってしまう。
ちなみに余談だがあらゆる店ではPS3がバカ売れしてWiiが在庫処分されている。

これが常識の域にまで達している『相対の設定』を変えた結果だ。
もちろん店の中でも変化は起きている。

76 : 名人(東京都):2007/03/21(水) 22:27:07.97 ID:A7BS6UP00
(;・∀・)「なんだこれは……」

右手にはゴボウ、左手には傘を握った勇者が呆然としている。
強く高価な彼の所持品は、全て設定が相対すると判断された物に取り替えられてしまっている。

(;,,゚Д゚)「これは無いわ……」

見上げるほどあった身長も失われ、膨れ上がった筋肉も全て持って行かれた魔王が愕然としている。
今まで数多多くの勇者を倒してきた彼の肉体は、設定によって最弱の物となっている。

77 : 名人(東京都):2007/03/21(水) 22:27:32.08 ID:A7BS6UP00
(´・ω・`)「『能力の設定』なんて変える必要なかったんだよ。『相対の設定』を変えれば必然的に強者は弱者になるんだからね」

設定を変えた張本人がゆっくりと口を開く。

(;・∀・)「設定を変えた……? まさか勇者が全くいなくなったのも君のせいか」

思わず勇者は疑問の声を上げる。
急に変化を遂げたこの世界に戸惑いを隠しきれなかったのだ。
しかし、勇者の問い掛けはショボンに流されることとなる。

(´・ω・`)「それに村人はまさしく正義と悪の『設定の狭間』だ。よって彼は設定を変えても何ら変わらない。
      後は最弱となった勇者を討ち取れば良いだけだね。じゃあブーン、出番だよ」

そしてショボンはブーンへと言葉を投げ掛ける。
そこには『能力の設定』は何ら変わらず、瀕死だった状態だけが『相対の設定』によって完全に回復しているブーンの姿があった。

78 : 名人(東京都):2007/03/21(水) 22:27:55.50 ID:A7BS6UP00
( ^ω^)「ショボンさん、ありがとうだお。あとはこの最弱勇者を倒すだけなんだお」

ショボンへと返答をしたかと思った瞬間、彼はまた地を蹴り勇者の元へと駆け出した。
右手には『相対の設定』のために低価の棍棒から高価な鈍く輝く鎚へと姿を変えた数子が握られている。

(;・∀・)「くっ……うわぁぁぁぁああああああ!!」

思わず盾のつもりで傘を広げたモララー。
もちろん強さを増した数子の前では意味をなさない。
傘を突き破り数子が勇者へと最強の物理的暴力を与えにいく……


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