第11話【魔王編】

144 : 不老長寿(東京都):2007/03/18(日) 22:28:20.00 ID:phsAHsSq0
【魔王編】


( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」

村に着いた途端に突然決められたセリフを口にするブーン。
ロードした時点で村人の仕事は把握していたが、やはりそれは見ていて退屈極まりない物であった。

(,,゚Д゚)「じゃあな。仕事が終わったらバーボンハウスへ来いよ」

村人の仕事など見ていても意味がない。
そう判断したギコは早速VIP村に来た第一の目的を果たす為、バーボンハウスへと向かうことにした。
昨夜見つけた矛盾点について言及するつもりだったのだ。

146 : 不老長寿(東京都):2007/03/18(日) 22:29:01.34 ID:phsAHsSq0
思っていた以上に早くバーボンハウスへと辿り着いた。
基本的にシンプルな村の構造な上に一度は訪れたことがある場所なのだ。
予想以上に早く着くのは当然なことなのかもしれない。
木造作りの扉に手を掛け、少し力を込めて前に押す。
次第に見えてくる店内には例のしょぼくれた顔があった。

(´・ω・`)「やぁ、ようこそ、『バーボンハウス』へ」

設定についての情報を出し惜しみした男、ショボンだ。
何故出し惜しみしたのかはわからない。だが、確実にこの男は何か秘密を持っていた。

147 : 不老長寿(東京都):2007/03/18(日) 22:29:35.39 ID:phsAHsSq0
サービスのテキーラを差し出されると、一口だけ口に含み喉を潤した。
そして、何の前振りもなく核心に触れる。

(,,゚Д゚)「設定について知っていること、今度は出し惜しみせずに全部教えてくれ」

(´・ω・`)「……」

突然の情報を求める声を受けても、マスターは顔色1つ変えずにただ客を見つめていた。
その瞳は何も語ることは、ない。

しばらくの間、沈黙が続いた。

148 : 不老長寿(東京都):2007/03/18(日) 22:30:09.49 ID:phsAHsSq0
(´・ω・`)「目を瞑ってくれないか」

沈黙を破ったのはマスターの声であった。
しかし言葉の真意を汲み取れずに、思わず魔王は聞き返してしまう。

(,,゚Д゚)「何? ……コマンドでも出せばいいのか?」

そんな問い掛けにもやはりマスターは顔色を変えずに、その口から言葉を紡ぎ出すのみだ。

(´・ω・`)「良いから」

149 : 不老長寿(東京都):2007/03/18(日) 22:30:59.97 ID:phsAHsSq0
(,,-Д-)「……わかった」

正直腑に落ちなかったが、そう言って素直に瞼を下ろす。
目を瞑る事によって出来る彼の世界にうっすらと浮かび上がってきた物は完全に予想外の物であった。

(;,,-Д-)「なっ……!?」

思わず驚嘆の声を上げる。
彼が見たのは想定の範囲外の出来事。


【NOW LOADING】


ロード中の言葉であった。
しかし、自分はロードをしていない。ならば誰が?
考えるのと答えが出るのは同時だった。

マスターしかいない。

150 : 不老長寿(東京都):2007/03/18(日) 22:31:25.42 ID:phsAHsSq0
だが、

(;,,-Д-)「なんでロードが出来る? ロードは特別な設定の奴しかできないはずじゃ……」

彼はとっさにその疑問を口に出した。
ロードは勇者や魔王などの特別な者達のみ可能な芸当であって、一抹のバーのマスターに出来る代物ではないはずだった。

(´-ω-`)「ロードし終わったら話すよ」

そしてしばらくした後、消える異国語。

(´・ω・`)「やはり君は矛盾に気付いてくれたんだね」

元の世界に戻ってからの第一声は意外な言葉であった。

151 : 不老長寿(東京都):2007/03/18(日) 22:33:01.77 ID:phsAHsSq0
(,,゚Д゚)「気付いてくれたってどういう事だ?」

そんな疑問を彼が持つのは至極当然なことである。
しかしマスターは話の筋を変える。

(´・ω・`)「とりあえず僕が何故ロードできるのかを話そうか」

客の疑問に答える気はないのだろうか。
思わずギコが非難の声を上げそうになったが、気になっていたことでもあったので文句1つ言わずに聞く体制を取った。

(,,゚Д゚)「頼む。ロードは限られた奴らしかできないんじゃないのか?」

その疑問に対し当然のように答えらえた言葉が更にギコを混乱させることになる。

(´・ω・`)「じゃあ、僕がその限られた奴らだったらロードできてもおかしくはないよね」

152 : 不老長寿(東京都):2007/03/18(日) 22:33:34.39 ID:phsAHsSq0
まさか。この男はただのバーのマスターだ。
情報提供者という少し変わった設定だがそれほど特別な設定なわけでもない。
なのに目の前のマスターは限られた人種だと主張する。そして実際にロードもやってのけた。
一体何故?

ギコの脳内を様々な疑問が駆けめぐる。
そしてどんなに考えたところで、彼の考えはその疑問の答えへと導かれることはなかった。

(,,゚Д゚)「お前が特別な設定を持った奴になんか見えないんだが」

(´・ω・`)「じゃあもうハッキリと言うね。僕は君が探し求めている『設定』本体の所持者だ」

(,,゚Д゚)「え……?」

唐突に発せられるまさかの発言に思考が一瞬停止する。

153 : 不老長寿(東京都):2007/03/18(日) 22:34:04.35 ID:phsAHsSq0
自分の探していた、この世界の唯一無二の秩序。
『設定』がこんなそれほど栄えていない村の、それほど大きくないバーのマスターが所有している。
そんなこと今まで一度も想像したことがなかった。いや、想像なんてできるはずもなかった。

(,,゚Д゚)「なんでお前が『設定』本体を持っているんだ?」

(´・ω・`)「きみは『ぷろぐらまぁ』という言葉を知っているかい?」

この男はさっきからなかなか疑問に答えてくれない。
普段ならここらで苛立ちを覚え始めるギコであった。
だがショボンの話を聞く方が大切だと自分に言い聞かして、ストレスを黙って溜め込むことにした。

(,,゚Д゚)「そんな言葉初めて聞いたぞ」

(´・ω・`)「だろうね。『ぷろぐらまぁ』っていうのは『設定』を初めに作った人物を指す言葉らしいんだ」

154 : 不老長寿(東京都):2007/03/18(日) 22:35:47.00 ID:phsAHsSq0
そして言葉は続く。

(´・ω・`)「でね、僕のずっと遠いご先祖様がその『ぷろぐらまぁ』だったらしくて『設定』が代々受け継がれてきたんだよね」

(,,゚Д゚)「そんなご都合主義な設定があったのか…… でも、何故そんな情報を最初に隠していたくせに今は普通に話しているんだ?」

(´・ω・`)「迷っていたのかもしれないね。僕が設定を受け継いでからは特にイベントの数が増えてしまった事に。それを自分のせいと認めるのが怖かったのかもしれない。
      しばらく考える時間が欲しかったんだ。それで時間稼ぎの為にブーンを君の元へ向かわせた。矛盾をセーブさせてね。
      矛盾に気付いた君のデータを確認の為ロードしておきたかったんだよ。で、君をロードして僕のせいでブーンの大切な人も君の大切な人も奪ってしまったのがわかった。それで話すことに決めたんだ」

(,,゚Д゚)「俺の話は良い…… しかもセリフが長い。それにまだ少しお前が設定の所持者なんて信じ切れないな。証拠を見せて欲しい」

話を聞いた直後、一瞬ギコの顔が歪む。何か悲しい物事を思い出したように。
だが正直これ以上伏線を出されても回収するのが面倒なのでスルーすることにする。

155 : 不老長寿(東京都):2007/03/18(日) 22:36:46.40 ID:phsAHsSq0
(´・ω・`)「証拠か。そうだね、じゃあブーンの設定を少しいじってみようか。
      もう彼はただの村人にしては良くも悪くも活躍しすぎてるからね」

ショボンは証拠を見せるべく提案をした。
その提案はギコを少なからず驚かせた。

(;,,゚Д゚)「確かに証拠を見せろとは言ったが…… そんな適当なノリで設定を変えても良いのか?」

(´・ω・`)「まぁ僕が所有者なワケだし別に良いと思うよ」

(;,,゚Д゚)「……」

この時ギコは何故この男に『設定』の所有権が移ってからイベントの数が増えたのかがわかった気がした。

156 : 不老長寿(東京都):2007/03/18(日) 22:37:35.97 ID:phsAHsSq0
(´・ω・`)「じゃあちょっとの間待っててね」

そう言いつつショボンは目を閉じた。
そして待つこと数分、閉じられた瞼を持ち上げて再び口を開く。

(´・ω・`)「やぁ、待たせたね。とりあえずブーンにはロードできるように設定を変えた。戻してほしかったら……特に考えてないや」

どうやらブーンの設定を変え終えたらしい。
初めて目の当たりにした設定の変更は想像以上にあまりにも呆気なかった。

(;,,゚Д゚)「もう変えたのか? というか『設定』本体を見ていないんだが……」

(´・ω・`)「残念だけど君の予想とは違って本体は物質じゃないんだよ。そう、いつまでも『設定』は生き続けてる。僕の胸の中で!」

ギコの質問に対し、またもや何やら良くわからない返事が返ってきた。
先程から何とか苛立ちを抑えていたが、ここまでふざけられればさすがの魔王も我慢の限界。

157 : 不老長寿(東京都):2007/03/18(日) 22:38:03.24 ID:phsAHsSq0
(#,,゚Д゚)「そろそろふざけるな!」

いきなり切れだすギコ。
かなりカルシウムが不足しているのかもしれない。
そして何やら右手に力を込め始める。
その右手の周りに何やら靄のような物が発生したかと思った刹那、激しく発光しだす。

(#,,゚Д゚)「くらえ!」

右手から発せられた光がショボンへと飛んでいく。
ショボンは覚悟を決めたのか静かに目を瞑る。
否、覚悟を決めたのではない。抗ったのだ。

(;,,゚Д゚)「何?」

確実に当たった。
そう確信した瞬間、彼の放った魔法はショボンを避けて器用に扉にできている隙間を潜り抜け、何処かへと飛んでいってしまった。

158 : 不老長寿(東京都):2007/03/18(日) 22:38:35.87 ID:phsAHsSq0
(´・ω・`)「さすが魔王。凄いことするね。あんなのが当たったら大変だから魔法の設定を変えてブーンに当たるようにしといたよ」

さらっと酷いことを言ってのけたショボン。
しかし、今のやり取りで完全に魔王は怒りを沈めてしまった。

(,,゚Д゚)「そんなことまでできるのか…… 『設定』の所有者ってだけで凄いんだな」

(´・ω・`)「やっと納得してくれたみたいだね。じゃあブーンの仕事が終わるまで待っていようか」

ロードしたおかげでちゃんとギコの都合を理解しているようである。

(,,゚Д゚)「あぁ、ブーンにも教えといてやりたいからな」

そして魔王は村人を待つことにした。

160 : 不老長寿(東京都):2007/03/18(日) 22:40:45.55 ID:phsAHsSq0
マスターは普通の業務に戻る。
すっかり忘れていたが、ギコ以外にも客はいるのだ。
退屈していたギコは暇つぶしに爪に溜まった垢などを掃除して綺麗にしていたりした。

(´・ω・`)「そうだ、ナイス提案があるんだけど……」

そんな地味な行動を見かねたのかショボンがギコの元へと戻ってきた。
何やらギコに耳打ちをしている。

(;,,゚Д゚)「そんなことして良いのか?」

(´・ω・`)「だってその方が君達も色々と都合が良いでしょ」

どうやらギコは戸惑いを隠せないようである。
そんなとんでも発言をしたらしいショボンの方は全く表情を変えない。
2人の性格の違いが浮き彫りになった1日であった。

そして今のところギコに課せられた仕事は、ただ夜を待つのみである。

(;,,゚Д゚)「暇だ……」

1人で時間を潰し続けるギコであった。


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