第10話

2 : タイムトラベラー(東京都):2007/03/16(金) 19:19:45.00 ID:q3nAXqxx0
村人Aと魔王が手を組んだ頃、故郷のVIP村では村人Bが悩んでいた。

('A`)「武器や防具は 装備しないと 意味がないよ」
(;'A`)(何で今日は残業なんだ……? 普段はとっくに帰ってるはずなのに)

彼もまた設定によって動かされている身だ。
設定では今頃の彼は自由を手に入れている時間のはず。
しかし、何故かまだ彼は村人業を続けていた。
村人Bに対しての設定が何処かずれていたのだ。

3 : タイムトラベラー(東京都):2007/03/16(金) 19:20:11.17 ID:q3nAXqxx0
普段の設定では確実な安全を約束されている村人業。
だが、イベントによって命を落とした村人Aの両親。

普段の設定では攻めてくる勇者を待ち受けるだけの魔王。
だが、イベントによって手下に村を攻めさせてしまったギコ。

それはつまり、設定の異変はイベントの訪れを表す。

('A`)「武器や防具は 装備しないと 意味がないよ」
('A`)(ん? こんな時間に村に来る奴なんて珍しいな)

その掟は村人Bに対しても例外ではなかった。

5 : タイムトラベラー(東京都):2007/03/16(金) 19:20:49.64 ID:q3nAXqxx0
( ・∀・)「……」

初めてVIP村を訪れてきた時、村人Aの家を当然の如く荒らした無法者。
勇者モララーが再びVIP村に訪れてきたのだ。
当時に比べ、更に勇者としては成長を遂げたようである。

見ただけでわかる変化でも剣はより鋭く高価な物になり、盾はより分厚く硬い物になっている。
なにより彼に増えたまだ古くない傷跡の数が今までの戦闘を物語っていた。

('A`)「武器や防具は 装備しないと 意味がないよ」
('A`)(勇者……か? なんかよくわからないけど凄そうな奴だなぁ)

勇者は村人Bの言葉を流しつつ横を通り抜けて行く。
特に何をするわけでもない村人Bは、友人の村人Aがしたようにただ何となく勇者の行き先を眺めていた。

6 : タイムトラベラー(東京都):2007/03/16(金) 19:21:14.32 ID:q3nAXqxx0
その勇者はさも当然のように村人Bの家へ向かい、扉に手を掛けた。
そして家の中に吸い込まれるように消えていく人影。

('A`)「武器や防具は 装備しないと 意味がないよ」
(;'A`)(え? え? そこって俺んち……)

聞こえてくる破壊音――

('A`)「武器や防具は 装備しないと 意味がないよ」
(;'A`)(ちょちょちょちょ……アッー!)

彼の心の叫びは誰に届くこともない。

8 : タイムトラベラー(東京都):2007/03/16(金) 19:21:51.17 ID:q3nAXqxx0
場面は変わり、魔王の自宅。
そこでは家主が来訪者に対し、訪ねてくるまでの経緯を聞いていた。

(,,゚Д゚)「設定について聞きたい理由はわかった。だが、何故ここに来ようとした?」

( ^ω^)「それは前にも言った通りバーボンハウスのマスターに勧められたからなんだお」

(,,゚Д゚)「だから何で俺の所なんだ……? 俺はただあそこで情報を聞いただけなのにな」

(;^ω^)「マスターは確かずっと調べてるから知ってて聞けって言ってたお」

(,,゚Д゚)「日本語でおk」

ブーンの驚異的な頭の弱さから来る記憶力の不安点はセーブによって補われていた。
しかし、絶望的な言語能力まではセーブではカバーしきれないようである。

9 : タイムトラベラー(東京都):2007/03/16(金) 19:22:23.12 ID:q3nAXqxx0
(,,゚Д゚)「とりあえずお前の記録を『ロード』させてもらうわ」

( ^ω^)「ろーど?何のことだお?」

(,,゚Д゚)「お前はバーボンハウスで何を聞いてきたんだ?」

( ^ω^)「情報だお」

(#,,゚Д゚)「何の情報か聞いてるんだ。このピザが!」

村人の要領の悪さに苛立ちを隠しきれない魔王。
当たり前である。

11 : タイムトラベラー(東京都):2007/03/16(金) 19:22:59.82 ID:q3nAXqxx0
(;^ω^)「僕が聞いたのは『相対の設定』と『能力の設定』と『機能の設定』だお」

(;,,゚Д゚)「『機能の設定』知ってるのに何で『ロード』知らないんだよ……」

半ば呆れ始めた魔王を見て焦り出した村人は、必死になって弁解を始めた。

(;^ω^)「『機能の設定』を聞いたって言っても、色々あって途中までしか聞けなかったんだお。
       それに僕のカーソルを動かす速度は天下一品だお!」

(,,゚Д゚)「そんなこと知るか馬鹿。とりあえず説明しといてやる。ちゃんと聞いとけよ」

( ^ω^)d「任せとけお」

(,,゚Д゚)「お前、その手は宣戦布告と受け取って良いのか?」

(;^ω^)b「間違えたお」

12 : タイムトラベラー(東京都):2007/03/16(金) 19:23:30.13 ID:q3nAXqxx0
(;,,゚Д゚)「ハァ……じゃあ『ロード』について話すぞ」

小さく溜息をついて話を戻す魔王。
村人はその溜息を聞かなかったことにした。

( ^ω^)d「よろしく頼むお」

(#,,゚Д゚)「……」

遂に魔王の堪忍袋の緒が切れた瞬間である。

13 : タイムトラベラー(東京都):2007/03/16(金) 19:24:26.32 ID:q3nAXqxx0
――10分後――

(#)ω(#)「それでは本題に戻ってもらいまして、魔王様のありがたきお話をこの下衆なキモ豚にお聞かせくださいお」

(,,゚Д゚)「あぁ、まず『ロード』っていうのは『セーブ』と同じで『機能の設定』の内の1つだ」

やっと説明に入り出す魔王。
様々なストレスを村人で発散したのか、どこかスッキリとした顔つきである。

(,,゚Д゚)「『ロード』はな、『セーブ』によって記録されたデータを読み取ることが出来る機能なんだ。
      『セーブ』で記録された物なら他人のでも読み取ることが出来る」

(#)ω(#)「サトラレktkrwww」

(,,゚Д゚)「黙れ」

(#)ω(#)「……」

14 : タイムトラベラー(東京都):2007/03/16(金) 19:25:05.94 ID:q3nAXqxx0
(,,゚Д゚)「あと、この『ロード』ってやつは誰でも出来るわけじゃない。勇者とか俺みたいな魔王とかの特別な設定の奴らだけしかできないんだ」

(#)ω(#)「じゃあ僕は『ロード』出来ないのかお?」

(,,゚Д゚)「お前みたいなどこにでもいるような村人程度じゃ無理だな」

あっさりと村人の疑問を否定する魔王。
更に彼は言葉を続ける。

(;,,゚Д゚)「それと、いつまでその顔でいるつもりだ? 見ていて不快だぞ」

(#)ω(#)「じゃあ次のレスで元に戻すお」

(,,゚Д゚)「把握した」

17 : タイムトラベラー(東京都):2007/03/16(金) 19:25:41.68 ID:q3nAXqxx0
(*^ω^)「ではさっそく僕の赤裸々なデータを読み取ってくださいお」

(,,゚Д゚)「じゃあ今からロードするから目を瞑れ」

( -ω-)「……? コマンドを出すのかお?」

(,,゚Д゚)「その必要はない。そのままでちょっと待ってろ」

言われるがままに目を瞑り、時が来るのを待つブーン。
普段なら長方形が見えてくる頃である。
しかし、彼の瞼の裏に映った物は長方形ではなく異国語であった。

18 : タイムトラベラー(東京都):2007/03/16(金) 19:26:07.23 ID:q3nAXqxx0
【NOW LOADING】
そこには確かにこう書かれていた。

( -ω-)「NOW LOADING? 何のことだお?」

(,,-Д-)「そのままで待ってろって言ったろうが」

ギコはいつの間にかブーンと向かい合う形になり、彼もまた目を瞑っていた。
続々とギコの中にブーンが蓄積してきた情報が流れてくる。

19 : タイムトラベラー(東京都):2007/03/16(金) 19:26:46.50 ID:q3nAXqxx0
そして全ての情報が流れきった頃、【NOW LOADING】の文字がブーンの見えている世界から完全に消え去った。

( -ω-)「もう目を開けて良いのかお?」

(,,-Д-)「あぁ、じゃあ開けてくれ」

閉じられていた瞼を上へ持ち上げる。
広がってくる視界の中で彼らが最初に捉えたのは、至近距離で向き合って座っている男達を見て驚愕としているツンの姿であった。

ξ゚д゚)ξ

( ^ω^)(,,゚Д゚)「こっち見んな」

21 : タイムトラベラー(東京都):2007/03/16(金) 19:27:36.10 ID:q3nAXqxx0
ξ;゚听)ξ「私に離れるように言ったのはこういう事だったのね……」

なにやら良からぬ勘違いをしている模様である。
男達が弁解をする間も無くツンはまた部屋から出て行ってしまった。

ξ゚听)ξ「あんた達にドン引きだわ。気分悪いからまた外すわね」

ξ///)ξ「べっ……別に2人の邪魔しないように出て行くわけじゃないんだから!」

残された2人を包むのは戸惑いの空気。

22 : タイムトラベラー(東京都):2007/03/16(金) 19:28:09.72 ID:q3nAXqxx0
(;^ω^)「こんな状況に直面してまでツンデレを貫き通すなんてなかなか凄い信念だお」

(;,,゚Д゚)「それよりもあんな誤解を持たれたままじゃ今後の親子関係が物凄く気まずいことになるんだが……」

2人が動揺を隠しきれずに対談していた頃、自分の部屋に戻ったツンは

ξ*゚听)ξ「魔王×村人かぁ……」

間違えた方向で興奮していた。

23 : タイムトラベラー(東京都):2007/03/16(金) 19:28:59.10 ID:q3nAXqxx0
(,,゚Д゚)「後で誤解は解けば良いか…… とりあえずお前のデータ読み取っておいたぞ」

突然の娘の来訪で確実に焦っていた魔王。
だが、前向きに考えた結果、問題は後回しにすることにした。

(*^ω^)「おっおっおっwww なんか照れちゃうんだお」

(,,゚Д゚)「うるさい死ね。喜ぶな」

(*^ω^)「ゴメンね。ブーンはじめてデータ読み取られたから、ゴメンね」

(,,゚Д゚)「黙れ。頬赤らめるな。殺すぞ」

24 : タイムトラベラー(東京都):2007/03/16(金) 19:29:30.80 ID:q3nAXqxx0
( ^ω^)「そういえば設定の説明聞きに来ただけなのに何話も跨ぐってどういうことだお?」

gdgdな会話が続きすぎて全く展開が進んでいないことに気付いたブーン。

(,,゚Д゚)「そんなもん知るか。じゃあ本題に戻るぞ」

( ^ω^)「お願いしますお」

(,,゚Д゚)「まずお前のデータには矛盾がある」

(;^ω^)「……はい?」

25 : タイムトラベラー(東京都):2007/03/16(金) 19:30:50.45 ID:q3nAXqxx0
いきなり自分のデータの矛盾を指摘され、衝撃を受けているブーンを放置して話を続ける。

(,,゚Д゚)「まず第2話のこの文を読み直せ。マスターが設定について語っているところだ」




(´・ω・`)『設定っていうのはこの世界の言わば秩序なんだ。この設定がないとこの世界は纏まりを見せずに崩壊してしまうらしい。
      設定では会話を早くすることが出来るとか基本的なことから、それぞれの人生における目標のような大きなものまで決められているらしいよ』



( ^ω^)「ショボンさんがどうかしたのかお?」

(,,゚Д゚)「あぁ、こいつは明らかに何かを隠しているぞ」

(;^ω^)「えぇ!? でも、第4話の地の文で

      『そしてその人々に彼は自分の持つ情報を出し惜しみすることはなかった。』

      なんて書いてあったんだお。ショボンさんが何か隠しているわけないお」

27 : タイムトラベラー(東京都):2007/03/16(金) 19:32:03.76 ID:q3nAXqxx0
(,,゚Д゚)「それは今までの話なんだろ。情報を聞きに来た奴の中で出し惜しみしたのはお前と俺が初めてなんだろうな」

( ^ω^)「魔王さんも出し惜しみされたのかお?」

(,,゚Д゚)「俺もあのマスターからはお前が聞いた事と同じ事しか伝えられてないからな。あの矛盾してる文を除いて」

(;^ω^)「だから何処が矛盾しているんだお?」

(,,゚Д゚)「よく読め。前半は設定の大まかな説明で後半は設定の出来ることを説明してるだろ」

(;^ω^)「おー」

未だよくわかっていないブーンにギコは更に呆れつつ、答えへ導くためのヒントを出す。

28 : タイムトラベラー(東京都):2007/03/16(金) 19:32:37.90 ID:q3nAXqxx0
(,,゚Д゚)「お前はバーボンハウスで何の設定について聞いたんだ?」

( ^ω^)「『相対』『能力』『機能』の3つだお」

(,,゚Д゚)「それを踏まえつつ文の後半を良く読め」

>設定では会話を早くすることが出来るとか基本的なことから、

(,,゚Д゚)「ここは機能の設定の1つについて例を挙げているな」

( ^ω^)「そういえばこれは機能っぽいお」

(,,゚Д゚)「じゃあ次だ」

29 : タイムトラベラー(東京都):2007/03/16(金) 19:33:16.39 ID:q3nAXqxx0
>それぞれの人生における目標のような大きなものまで決められているらしいよ

(,,゚Д゚)「これは何の設定に当て嵌まると思う?」

(;^ω^)「……? 何にも当て嵌まらないお」

(,,゚Д゚)「そうだ。これは『目的の設定』についてのことを説明してるんだからな」

( ^ω^)「『目的の設定』かお?」

(,,゚Д゚)「簡単に説明するとその者が送る人生に置いてやるべき目的を提示しているのが『目的の設定』だな。
     俺なら勇者を迎え撃つことだし、お前なら村の案内をすることだ」

手短に新たな設定の説明を済ます。
そこで不意に感じた疑問をブーンは投げ掛けた。

30 : タイムトラベラー(東京都):2007/03/16(金) 19:34:56.93 ID:q3nAXqxx0
( ^ω^)「でも、魔王さんは直接ショボンさんに聞きに行った時に矛盾に気付かなかったのかお?」

(,,゚Д゚)「俺は設定についてのことは大まかに解っていた状態であそこのマスターに情報を求めた。だがお前は殆ど知らない状態で聞いた。
     そんな無知なお前に説明する為の文に思わぬ矛盾が出たんだ。俺にはあんな説明されなかったぞ」

(;^ω^)「無知でサーセンwwwwwww」

(,,゚Д゚)「『目的の設定』を知っているのにもかかわらず情報を隠したバーボンハウス……怪しいな。
     そういえば、そろそろお前は仕事の時間だろ。村に戻らなくて良いのか?」

( ゚ω゚)「アッー! あともう少しで始まっちゃうお!」

(,,゚Д゚)「村まで俺も一緒について行ってやる。お前1人じゃ数子振り回しても無事に帰れるかわからないだろ。
     それにちょっとバーボンハウスに行っておきたいからな」

( ^ω^)「魔王さんが一緒についてきてくれるなら助かるお。正直数子は重いから振り回すのはしんどいんだお」

31 : タイムトラベラー(東京都):2007/03/16(金) 19:35:22.47 ID:q3nAXqxx0
そして彼らは村へと出発した。
既に東の空は闇は薄くなり、明るさが増してきている。
急がないとフィールド上でブーンは村人業を営み始めてしまうだろう。
タイムリミットが迫りつつある中、2人は魔物に出会いつつもひたすら村へと向かっていた。


魔物E「がおー」

(メ,,゚Д゚)「痛っ!!」

(;^ω^)「魔王なのに魔物に襲われてて良いのかお……」

(メ,,゚Д゚)「今はオフだからな」


……ひたすら村へと向かっていた。


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