第4話
- 210 : ◆qvQN8eIyTE :2007/03/01(木) 19:48:16.04 ID:iyez3l+z0
- 彼は抗うことを決めた。
己の人生を勝手に決めるこの世界の秩序に。
彼はその決断に後悔はなかった。
だが、秩序はそれを許しはしなかった。
( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」
そう、お勤めの時間である。
(;^ω^)(ショボンさんの話の続きが気になるお)
- 211 : ◆qvQN8eIyTE :2007/03/01(木) 19:48:38.06 ID:iyez3l+z0
- 昨夜……明け方と言った方が良いだろうか。
東の空は既に薄く白色に染まりつつある。
普段の彼なら『設定』ではまだ寝ている時間だろう。
しかし彼は起きていた。
彼自身の『設定』に少しでも抵抗がしたかったのだ。
彼の足はまたバーボンハウスへと向かっていた。
- 212 : ◆qvQN8eIyTE :2007/03/01(木) 19:49:01.91 ID:iyez3l+z0
- (´・ω・`)「やぁ、ようこそ、『バーボンハウス』へ」
このセリフも設定によって決められた代物だろうか。
そう考えると設定による影響力の大きさに少し決意が揺らぐ。
よく考えれば当たり前だ。
この世界は設定によって作られており、全ては設定が決めているのだから。
- 213 : ◆qvQN8eIyTE :2007/03/01(木) 19:49:22.34 ID:iyez3l+z0
- ( ^ω^)「今日は設定について聞きに来たんだお」
(´・ω・`)「そんなに設定について気になるのかい?とりあえずこのテキーラはサーb
( ^ω^)「そんなことより早く教えてくれお!」
(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」
(;^ω^)「サーセンwwwwwww」
- 214 : ◆qvQN8eIyTE :2007/03/01(木) 19:49:59.17 ID:iyez3l+z0
- そんな一通りの流れを行った後にショボンの口から本題について触れられる。
(´・ω・`)「設定については昨日も言った通りまだ良くわかっていないんだ」
( ^ω^)「それでも少しだけでも良いから設定についての情報が欲しいんだお」
単なる好奇心から来た疑問ではないことは明らかだ。
それほどの真剣な雰囲気を彼は漂わしていた。
ブーンは何か目的のために情報を得ようとしている。
職業柄ショボンは今まで色んな人を見てきたのだ。
そしてその人々に彼は自分の持つ情報を出し惜しみすることはなかった。
- 215 : ◆qvQN8eIyTE :2007/03/01(木) 19:50:32.48 ID:iyez3l+z0
- (´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「今のところ一番強く作用してる設定と言ったら『相対の設定』かな」
( ^ω^)「『相対の設定』……かお?よくわからんお」
(´・ω・`)「『相対の設定』とは設定の中でも最も有名で最も大切な設定だよ。これは覚えていて欲しい。
物事には全てに置いて相対する物があると言われているんだ。
例えばプラスとマイナス、N極とS極、朝と夜、そして正義と悪と言った感じにね」
( ^ω^)「それがどうかしたのかお?」
(´・ω・`)「その『相対の設定』によってこの世界は住み分けられることが出来るようになっている。
夜の後には朝が来るし、夜と共に朝を迎えるということはないんだ」
( ^ω^)「そんなの当たり前だお。でも、もし……」
- 216 : ◆qvQN8eIyTE :2007/03/01(木) 19:50:57.70 ID:iyez3l+z0
- そこまで言って彼は口を閉じた。
ーもしその設定を壊したらどうなる?ー
そんな疑問を彼にぶつけてしまえば勘の良い彼のことだ。
自分の目標を見抜かれてしまう可能性もあるだろう。
でも気になる……
彼の活発な知的好奇心ためか、その疑問は次第に彼の脳の中を征服し始める。
- 217 : ◆qvQN8eIyTE :2007/03/01(木) 19:51:20.05 ID:iyez3l+z0
- (´・ω・`)「もし……なんだい?」
( ^ω^)「やっぱり良いお。続けてくれお」
結果的に彼は自分の本能に打ち勝った。
今は知らなくても良い。いずれ知ることになるだろう。
そう考えた故の結論だ。
- 218 : ◆qvQN8eIyTE :2007/03/01(木) 19:51:50.41 ID:iyez3l+z0
- (´・ω・`)「……?まぁ良いや。今君は当たり前だと言ったね?そう、当たり前なんだ。
『相対の設定』は既に設定を越えて常識の域にまで来ている」
( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」
しまった。仕事の時間が来てしまったのだ。
もうこうなってはこの口は自分の物であって自分の物ではない。
この足は自分の物であって自分の物ではない。
彼の全てが設定によって操られる時間が来たのだ。
- 219 : ◆qvQN8eIyTE :2007/03/01(木) 19:52:34.84 ID:iyez3l+z0
- ショボンは彼の仕事が何かを理解している。
そして、その仕事によって起きる状態も。
プログラムされた予定通りの歩みを見せ、同じセリフしか言わなくなってしまった彼に後ろから声を掛ける。
(´・ω・`)「また夜においで。続きを話そう」
そしてバーに入ってきた新客にここはVIP村だということをブーンは伝え、出て行ってしまった。
- 220 : ◆qvQN8eIyTE :2007/03/01(木) 19:53:06.02 ID:iyez3l+z0
- ( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」
( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」
( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」
( ^ω^)「ここは VIPの村d(ry
いきなり変なピザに一方的に語られたある意味被害者な彼は、まだそのピザの温もりの残る椅子に腰掛け、最初の情報を得るための質問をマスターに投げかけた。
(,,゚Д゚)「何だあいつ?」
(´・ω・`)「やぁ、ようこそ、『バーボンハウス』へ」
そしてショボンもまたバーのマスターの業務に戻ることになる。
- 221 : ◆qvQN8eIyTE :2007/03/01(木) 19:53:33.38 ID:iyez3l+z0
- それが明け方のことだ。
そして今、ブーンは業務中だというわけだ。
影は東に傾きだし、風は冷たさを増していく。
だいぶ時間が経ったようだがまだ業務時間は終わりを迎えない。
- 222 : ◆qvQN8eIyTE :2007/03/01(木) 19:56:03.62 ID:iyez3l+z0
- ( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」
彼のセリフは風に乗り、尋ね人の耳元へと届けられるであろう。
しかし確実に尋ね人はその情報を不要な物と判断し、記憶の片隅にすら置いておくことはないだろう。
(;^ω^)(やっぱりこの仕事はなかなか存在意義がねぇお)
- 224 : ◆qvQN8eIyTE :2007/03/01(木) 20:03:33.52 ID:iyez3l+z0
- それでも彼は言い続ける。
『設定』は業務中の彼の自由を許さないから。
それでも彼は言い続ける。
『設定』の強大さをその身体に覚えさせながら。
( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」
( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」
( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」
( ^ω^)「ここは VIPの村d(ry
- 225 : ◆qvQN8eIyTE :2007/03/01(木) 20:04:05.56 ID:iyez3l+z0
- そして終了の時間。
彼は仕事からの解放と共にその身の自由を手に入れる。
(;^ω^)「疲れたお。でもショボンさんの所に行って話の続きを聞かなくちゃ」
自分の物に戻ったその身体に風を感じて、彼はまたバーボンハウスへと向かっていった。
- 226 : ◆qvQN8eIyTE :2007/03/01(木) 20:04:35.48 ID:iyez3l+z0
- (´・ω・`)「やぁ、ようこそ、『バーボンハウス』へ」
そこにはショボくれたマスターの顔。
彼はブーンの到着が前もってわかっていたようにテキーラを差し出す。
(´・ω・`)「とりあえずこのテキーラはサービスだから飲んで欲しい」
( ^ω^)「ありがとうだお」
(´・ω・`)「おや?今回は最後まで喋らせてくれたね」
(;^ω^)「そら毎回『ぶち殺すぞ』→『サーセンwwwwwww』コンボばっかりやってたら数少ない読者さんに見放されてしまうお」
彼なりにこの「( ^ω^)は村人Aのようです」のgdgdさに気遣ってくれたらしい。
ありがとう。ブーン。
- 227 : ◆qvQN8eIyTE :2007/03/01(木) 20:05:10.05 ID:iyez3l+z0
- そして、本題。
( ^ω^)「じゃあ早速『設定』についての続きを話してくれお」
(´・ω・`)「わかった。まずは『相対の設定』については話したよね」
そこでブーンは確かにその話を聞いた記憶があるのを感じた。
しかしその記憶はとてもぼやけていて、言うなればAVの結合部アップシーンのようにモザイクまみれでよく見えなかった。
そう、ご想像通り彼はかなり頭が可哀想な子だったのだ。
- 229 : ◆qvQN8eIyTE :2007/03/01(木) 20:05:55.13 ID:iyez3l+z0
- (;^ω^)「うろ覚えなんで産業でお願いするお」
(´・ω・`)「覚えろ
ぶち殺すぞ
帰れ」
(;^ω^)「ちょwwwwww」
(´・ω・`)「全く……もう一度教えるのは面倒だからこの話の最初の方を読み直しておいてくれ」
( ^ω^)「把握した」
- 230 : ◆qvQN8eIyTE :2007/03/01(木) 20:06:31.20 ID:iyez3l+z0
- そして彼は『相対の設定』の強大さを思い出した。
それは既に『設定』では収まらず、『常識』にまで範囲が及んでいるのだ。
しかもそれはまだ自分の抗うべき相手の全てではない。『設定』という括りの中の一部だ。
ブーンは自分の判断を後悔しかけた。
なんで僕がそんな物に挑まなきゃいけないんだお?
そんな疑問が浮かんだ時、友達との思い出が不意にフラッシュバックしてきたのだ。
- 231 : ◆qvQN8eIyTE :2007/03/01(木) 20:06:55.45 ID:iyez3l+z0
- いつも優しくブーンを見守ってくれたジョン。
いつも優しくブーンを見守ってくれたポール。
いつも優しくブーンを見守ってくれたマイケル。
いつも優しくブーンを見守ってくれたトム。
あと田中と吉田。
- 232 : ◆qvQN8eIyTE :2007/03/01(木) 20:07:21.96 ID:iyez3l+z0
- 自分の元を去った友達。
彼らに対する弔いになるかわからない。
でも僕は抗うことを決めたのだ。
そして彼は揺れかけた決意をまた固めた。
その決意はこれから揺るぐことはない。
そう、絶対に。
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