第27話「変革の開始」
1 名前: ◆jVEgVW6U6s :2010/01/25(月) 02:58:45.10 ID:Rf1Sk0sp0
お久しぶりです
まったり投下します

まとめは内藤エスカルゴさん!
ttp://localboon.web.fc2.com/

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 03:01:47.38 ID:Rf1Sk0sp0
登場人物一覧

――― チーム・ディレイク ―――

( ^ω^)B00N-D1:通称ブーン。本名ホライゾン・ナイトウ。年齢20歳。戦闘員。
      セカンドに対する強い免疫を持つサイボーグ「システム・ディレイク」。
      BLACK DOGUの戦闘プログラム「アーマーシステム」でギコを撃破するが
      代償は大きく、現在プギャー総合病院で治療を受けている。

ξ゚听)ξツン・ディレイク:年齢19歳。チームリーダー。
       ブーンを改造した弱冠19歳の天才科学少女。
      今度の危機の原因は全てチーム・ディレイクにあり、その責任を全うせよと
      荒巻スカルチノフ議会長の非情な判決を言い渡されるが、あくまで反抗の意を示す。

('A`)ドクオ・アーランドソン:年齢21歳。武器開発担当。
   豊富なアイディアで強力な武器や乗り物を開発し、ブーンの戦闘をサポートする。
   ショボン、阿部と共に、「クー・ルーレイロ」なる人物とクローンシステムの真相を暴こうと企む。

( ><)ビロード・ハリス:年齢9歳。
     ウィルス騒動の孤児。セカンドに対する強力な免疫を持っている。
     彼の面倒はツン・ディレイクが見ることに。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 03:05:53.31 ID:Rf1Sk0sp0
――― チーム・アルドリッチ ―――

从 ゚∀从ハインリッヒ・アルドリッチ:年齢23歳。チームリーダー。
     対セカンド人型戦闘兵器「バトルスーツ」の理論提唱者であり、開発者である。
     新型バトルスーツ開発プロジェクトを着手している。本格的な開発は予算会後。
     ジョルジュに恋心を抱いている。


( ゚∀゚)ジョルジュ・ジグラード:年齢35歳。戦闘員パイロット。
    深紅の機体を操るバトルスーツ隊隊長だったが、セカンドウィルスに感染してしまった。
    「IRON MAIDEN」と抗体によりセカンド化を抑えこむが、無情にも変異は始まろうとしている。
    しかし、もし人の心を保つ出来るのなら、人として生きていたいと考える。
    6年前のセカンド騒動時に妻を亡くしている。

ガイル:年齢33歳。戦闘員パイロット。
     バトルスーツ隊隊長。
     先の戦いでは数多のセカンドを駆逐した。

春麗:年齢25才。戦闘員パイロット。
    バトルスーツ隊隊員。
    チーム内ではハインリッヒと双璧を成す美貌の持ち主である。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 03:09:05.54 ID:Rf1Sk0sp0
――― その他 ―――

/ ,' 3荒巻・スカルチノフ:享年63歳。セントラル議会・議会長。
   非情な振る舞いは全て自分の地位と安全を守る為であった。
   その生への執着を買われ、白髪の男にウィルス実験の被験者にされる。

( ・∀・)モララー・スタンレー:年齢30歳。
     バイオテクノロジーの権威「ラウンジ社」の元社員で、優れた科学者。
     自身の研究成果である「Hollow Soldier」を従える。
     白髪の男に従い、彼の為にモナーとセントラルをコントロールしようとする。

(  〓 )Hollow Soldier(虚ろな兵士):年齢不明
     モララーにより生み出された超人。
     クローンテクノロジーにより量産され、部隊として編成された。
     先の総力戦で全滅したかに見えたが、白髪の男の武力としてストックが残っていた。

( ´∀`)モナー・ヴァンヘイレン:年齢不明。
      あくまで現状を維持しようとする荒巻に反感を覚えていた彼は、
      市民の為ならばとモララーによる荒巻謀殺を容認する。
      モララーと共に独裁制の「新セントラル議会」を設立し、独裁者となる。

( ^Д^)プギャー・ボンジョヴィ:年齢不明。プギャー総合病院の院長。
     B00N-D1の治療を担当。

白髪の男:年齢不明。経歴不明。モララーを従える謎の男。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 03:11:42.28 ID:Rf1Sk0sp0


第27話「変革の開始」


各階層の天井を成す壁に、光が淡くじんわりと広がり始める。
直視しても眩くはない程度のその光は、今日も太陽に代わって市民に朝の訪れを告げるのだった。
それは穏やかでありながらも暖かみの無い、いつも通りの『セントラル』の朝である。

さて、それを皮切りに建物のシャッターや窓が物々しい音を立てて開かれた。
チーム・ディレイク及びアルドリッチの居る「プギャー総合病院」も、同様である。
疑似陽光とはいえど日差しは彼等の目を擽るのだが、一向に起きる気配が無い。

――ところで、ガイルと春麗はAM2時ほどに手術室から出てきており、
ブーンの手術室前で屯するハイン達に元気な姿を見せていた。
が、二人とも疲労困憊な様子で、ハインが取っていた病室へと早々に行ってしまったが。

そしてもう一人、ショボン・トットマンはというと。
彼はいくつかの装甲とサイバーウェアに軽度の損傷を受けていただけだったので、
その修理にはチーム・ディレイクのスタッフがあたった。

本来ならば友人であるドクオとツンが担当すべきだったかもしれないが、
彼等をブーンの元に行かせたいというショボンの善意が、そうさせなかったのだ。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 03:15:54.32 ID:Rf1Sk0sp0
 ※

( ゚∀゚)(チッ……皆呑気に寝てやがる)

ジョルジュは、自室があるマンションに帰っておいて正解だったと、
手術室前のベンチや床に寝転がる友人達を見て思う。
ウィルスが活発になるのは深夜であり、その規則性は昨晩も揺るがなかったのである。

ブーンの無事を思い集まっている中で余計な心配をさせたり、
こうして寝ている所を自分の絶叫で起こしたくないという、感染者なりの配慮であった。

( ゚∀゚)「隣、失礼するぜ、ハイン」

ハインリッヒの隣なら座れるスペースがある。
俯いて寝ている彼女を起こさぬように、ベンチのクッションに腰を落とした。
正面では、ツンが膝にビロードの頭を乗せたまま、寝てしまっている。
他にベンチは無く、みなの足元にはドクオ・アーランドソンが横になっていた。

('A`)「ああ、ジョルジュさん……戻ってきてたのか。おはようッス」

と、ジョルジュが確認している内に、ドクオがその気配で目覚めた。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 03:19:44.65 ID:Rf1Sk0sp0

( ゚∀゚)「ああ……悪いな、起こしちまった」

('A`)「いやいや、勝手に俺が起きたので」

ドクオは立ち上がって伸びをする。
油っこく光る髪に覆われた頭皮を痒そうに掻いた後、もう一度伸びをし、
ジョルジュの隣――ベンチではなく床――に腰を降ろした。


('A`)「……変異が進んでいるんですか?」

予期していない質問に、ジョルジュは面食らった。
フェイスカバーが外から中を見えない仕様で助かると、ジョルジュは思う。

( ゚∀゚)「勘付いてたのか……まぁ、フェイスカバーがこれじゃあな」

('A`)「それに、コイツは隠し事が下手ですからね」

憔悴した顔を浮かべて眠るツンを見て、ドクオが静かに言った。
それに対しジョルジュは何も言わず、フェイスカバーの中で舌を打つ。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 03:24:58.82 ID:Rf1Sk0sp0

('A`)「俺、アンタの事が嫌いだった」

混じりけの無い言い様に、さすがのジョルジュも眉を顰めた。
敵視されていた原因がチーム・アルドリッチにあるような、
そんな含みのある言い方がジョルジュは気に入らなかったのだ。

( ゚∀゚)「だろうな。俺もお前等が気にいらなかった」

かといって、「本当は好きでした」などという好意的な発言を今更貰っても気持ちが悪い。
いや、それどころか信憑性の欠片も無いので歯痒さを感じたりする事も無いだろう。
数年に渡って犬猿の如く小競り合いをしてきた間柄なのだから。

('A`)「でも、今じゃアンタは俺以上にブーンを理解してくれている。
    貴方じゃなければ、ブーンはきっと苦悩したまま立ち直れなかった」

しかし、次のドクオの発言ばかりは歯痒い気持ちになり、
ジョルジュはごまかすようにして舌を鳴らした後、間を十分に開けて返す。

( ゚∀゚)「理解? どうかな? 俺はウジウジと葛藤するブーンが大嫌いなだけだ。
     俺なら迷わず戦地に赴き、セカンドどもを殺し、ギコを殺そうとしただろう」

( ゚∀゚)「そう、俺なら、な……もはや叶わぬ自分の願望を
     ブーンに押し付けてるだけなんだよ。あまり俺なんかを期待するもんじゃない」

ジョルジュはフェイスカバー越しに自分の掌を一瞬見る。
無論、ドクオはその動作を見逃さかった。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 03:27:59.67 ID:Rf1Sk0sp0

('A`)「……どうあれ構わないさ。
    ブーンが、アンタを必要としているんだからよ」

( ゚∀゚)「ああ……? っつーかいきなり何だ、こんな話。気持ちワリぃ」

(;'A`)「ああ、いや、ジョルジュさんを必要としているのはブーンだけじゃない。
     ……ここにいる全員がアンタを必要としているから、その、」

('A`)「つまりその、絶対にウィルスに負けないで欲しいんです。
    ビロードの血とアンタの心があれば、皆一緒に居られるんですから」

ジョルジュは舌打ちし、

( ゚∀゚)「……努力する」

小さな声でそう言った。
照れ臭さをごまかす為にまたぶっきら棒な調子になってしまう自分にいい加減嫌気を指したが、
ともあれ、ジョルジュは感染者たる自分に対するドクオの心遣いを嬉しく思うのだった。

('A`)(相変わらず素直じゃねーなぁ)

不器用だが頼もしい。
それがドクオのよく知る、ジョルジュ・ジグラードらしさであった。

ドクオは微かに笑みを浮かべて、疑似陽光が照る外を眺めた。
大袈裟だと自分で思いながらも、今日の朝は希望に満ちているように感じるのであった。
――なにも、依存すべきは仕事ばかりではない。
我が友、ジョルジュ・ジグラードの未来に期待して生きていくのも、悪くないはずだ。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 03:32:39.76 ID:Rf1Sk0sp0
そんな心地よい思考に耽っていると、ビロードを除く全員の携帯端末がけたたましい快音を鳴らした。
ドクオは自分の携帯端末を乱暴に叩いて黙らせた後、
ツンとハインを起こさぬよう、彼女達の携帯端末の音も止めた。

音の正体はセットしていた目覚ましの物ではなく、メール。
『セントラル』の情報局から定時的に送られるニュースだという事は、見なくても分かっていた。

最近はモララー・スタンレーや荒巻スカルチノフの動向を探るべく、
政治関連のニュースに注目していたドクオは欠かさず目を通していた。
特に今度のニュースは昨日の今日の物だ。
むしろ待っていたと言わんばかりに、ドクオは宙にホロを映してメールを閲覧する。

(;'A`)「えっ!?」

だが、その内容は“見出し”で既にドクオの予想を遥かに越えた物だった。
ドクオの素っ頓狂な声に、冷静沈着なジョルジュも目を丸くする。
――ただならぬ事態が本日も起こっているのだろう。
字の羅列をひたすら追い続けるドクオを見れば、それは明らかだ。

( ゚∀゚)「英雄B00N-D1、大失態……本日正午に謝罪会見だと?」

ドクオに習ってメールを開くと、まず目に飛び込んできたのは無論、見出しだ。
ジョルジュは腹立たしさを覚えながらも、スクロールしてゆく。

昨日までのに渡る「ギコ襲撃の真相」を、市民の為に明らかにした内容だった。
加え、数多の犠牲者を出した事に対する謝罪会見を行うと、そう記している。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 03:37:06.95 ID:Rf1Sk0sp0
( ゚∀゚)「ふーむ……これは荒巻スカルチノフの差し金か」

昨日、今日と、ツンやドクオからそのような話が無い事を考えれば、
おのずと臨時会議で荒巻スカルチノフが画策したのだろうと想像が付く。
ブーンの肩を持つ側としては好ましくない展開に、ジョルジュは舌を打つ。

(;'A`)「い、いや! あ、荒巻スカルチノフは死んだ! 心筋梗塞だ!」

( ;゚∀゚)「なんだと……!?」

ジョルジュは、ドクオの言う記事まで画面を一気にスクロールさせる。

  『議会長、心筋梗塞で倒れる! 心労が祟ったか!?』。
  第一発見者はモララー・スタンレー。死後からおよそ1時間後に発見され、
  すぐにプギャー総合病院に搬送されるが蘇生処置の甲斐なく、搬送から30分後に死亡が確定。

ジョルジュは一字一句見逃さずに文字を読み取るが、疑問符ばかりが脳内を埋めてゆく一方であった。
もっともらしい事が細かに書かれてはいるのだが、にわかに信じ難かたいのだ。
――あの荒巻スカルチノフが心筋梗塞で倒れるなんて。

「心労が祟っての過労死」というプギャーのコメントを見れば、信憑性が高いように思えてしまうが、
しかし一方では「議会長は問題なく臨時会議を仕切っていた」と、とある議員がコメントしているのだ。

( ;゚∀゚)「なあ、他殺だと思うだろ?」

それでは他殺、いや、謀殺だと思いたくなるのが当然。
一度メールを読むのを切り上げてドクオに意見を求めたが、
当のドクオは唖然とディスプレイの文字を追うばかりである。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 03:41:48.15 ID:Rf1Sk0sp0
「ともかく、荒巻が死んだ。そして議会はどう動いたのか?」と、ジョルジュは再びメールに目を戻す。
スクロールすると、更に驚くべき内容が続いていたのだ。

( ;゚∀゚)「モナー・ヴァンヘイレンを頭首に置いた……独裁制を敷くだと!?」

(;'A`)「その補佐にモララー・スタンレー……他の議員は全てを賛同したってよ!
     エイプリルフールは2ヶ月以上先だってのに、タチの悪いジョークだぜ!」

――謀殺ではないのか?
ジョルジュの頭の疑念が更新されつつある。

先の大戦において荒巻と対立したという背景こそモナーは持つが、
彼の温和な人格を考慮すれば、モナーが謀殺を仕組んだなんて
それこそエイプリルフールのジョークでしかないのだ。

(;'A`)「補佐を務めるモララー・スタンレーの策略か……?」

まだ口には出していないが、ドクオはジョルジュと同く他殺を疑っていた。
そしてクローン兵の件を加え、この黒幕はモララー・スタンレー、という考えに至ったのだが、

( ゚∀゚)「いや、それも考え難い。奴は荒巻に従順だったろう?」

ジョルジュにあっさりと否定されてしまう。
それをドクオは意見の一つとして尊重するが、

――しかし。

あの従順さ自体、カモフラージュだったとも考えられる……。
ドクオは、どんな形であれ絶対にモララーを擁護したくないのだ。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 03:45:52.26 ID:Rf1Sk0sp0

(;'A`)「こんなにアッサリと権力を掌握されちまったって事は、
    恐らくモララー・スタンレーの部隊は健在しているんでしょう。
    モララー・スタンレーは今回のクーデターの為に武力を編成していたとも考えられます」

( ゚∀゚)「面白い推測だ。しかし、何の為にクーデターを?」

唸りを長く立てた後、ドクオはゆっくりと述べる。

(;'A`)「議会の現状に不満があったとしか……いや、でも、
    その点ならモナーさんの方が動機として足りうるのか……。
    記事にある彼のコメントを見てもそれが分かる」

( ゚∀゚)「あのモナー・ヴァンヘイレン氏がクーデターを敢行する為に
     モララー・スタンレーと結託し、武力を手に入れた。
     モララー・スタンレーも為政者の立場から見て、モナーが正しいと判断したって訳か」


(;'A`)「…………」

ジョルジュの意見を、自分の推理だけで否定するのは無礼にあたる。
そう思ってドクオは、押し黙った。

――モララー・スタンレーは優秀な為政者であり科学者でもある。
しかし、その内面は、部下を容赦無く実験材料として扱う歪んだ人間かもしれないのだ。

ドクオは人知れず考える――モララーには為政以外に目的があるのだろうと。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 03:48:07.54 ID:Rf1Sk0sp0

ξ;--)ξ「もうー何なのよ……朝っぱらから騒がしいわねぇ……」

从;゚∀从「ねっみぃ……あ、ジョルジュ戻ってきてたのか。おはよう」

(;><)「ね、眠いんです……」

眠る者に遠慮せず大声で話しこんでいたのを二人は気づかなかったが、
聡明な彼女達に意見を乞う為に、ドクオとジョルジュは叩いてでも起こすつもりだった。

(;'A`)「目擦ったらニュースを見ろ! 大事件だ!!」



ξ゚听)ξ「……第5階層にカカオ畑が出来たってニュースではないみたいね」

从;゚∀从「そんな事で人様の眠りを妨げるのはお前だけだろ。
      で、大事件って何だよ?」


ツンとハインリッヒは各々、欠伸をしたり目を擦りながら、
ドクオ達と同じくして携帯端末に届けられたメールを開くのだった。

 __

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 03:52:07.96 ID:Rf1Sk0sp0

 ※


从;゚∀从「――倒れていた荒巻議会長を最初に発見したのは、
       補佐であるモララー・スタンレー氏である」

从;゚∀从「彼はモナー・ヴァンヘイレンと共に、混乱を予想される
      議会をまとめたと発言。そしてモナーを頭首とする独裁制の
      政治体制「新セントラル議会」を設立した……か」

('A`)「どう思う?」

ドクオは間髪入れずにハインリッヒに尋ねた。

从;゚∀从「荒巻については何とも……それより、誰得の独裁政治なんだろうな。
      モララーとモナーは支持された議会員だが、独裁制となりゃ市民の暴動が起きるぜ。
      アタシ達の殆どが自由の国アメリカで生きた人間なんだから」

ξ゚听)ξ「そうかしら?」

从 ゚∀从「独裁制が受け入れられると思うの?」

ξ゚听)ξ「ほら、モナーさんのコメント見てよ」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 03:54:29.55 ID:Rf1Sk0sp0

从 ゚∀从「人命を第一に優先するために、今後の予算とスケジュールは大部分を兵力増強に徹し、
      これまで実施していた都市開発も、必要最低限のもの以外は全て中止させる。
      そうして余った予算の大部分は、実績のある兵器開発部に回す……ふむ」

ξ゚听)ξ「うん。アタシ達が置かれている状況を考えれば、それが最適なのよね。
      また昨日のような危機が訪れないなんて、絶対に否定できないんだから」

从 ゚∀从「ツン、モナー氏に肩入れする気持ちは分かるけどさぁ」

ξ゚听)ξ「そうじゃないわよ、ハイン。ま、それは否定しないけどね」


ξ゚听)ξ「もはやここはアメリカって考えるべきではないのよ。
       100万人程度の人間によるサバイバル生活の場、って考えた方がいいわ」

( ゚∀゚)「つまり、サバイバル生活においては時間の掛かる多数決と話し合いよりも、
     優秀な人間か一党による迅速な裁量が適している、って訳か」

从 ゚∀从「……相手はセカンドだしな。確かに、そう思えば納得できる」

('A`)「でもよぉ、市民が受け入れるとは限らないぜ、ツン?」

ξ--)ξ「ブーンの謝罪会見は、その材料としても利用されるんでしょうね」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 03:56:45.43 ID:Rf1Sk0sp0

ξ--)ξ「そりゃ、市民の怒りの矛先をアタシ達に向ける為って目的もあるでしょうね。
       でも、最強のサイボーグB00N-D1ですら五体不満足で帰還となれば、
       市民は『セントラル』も安全な場所じゃないって改めるでしょうよ」

( ゚∀゚)「会見は正午。手足を作る時間を与えなかったのは、そういう理由があったか」

从 ゚∀从「……なんか腑に落ちないっていうか、きったねー手だなぁ…!
      ツン、応じるのか? アタシは蹴っちゃっていいと思うんだけど?」

ξ゚听)ξ「……応じるわよ。ブーンもそうするって言うでしょうし。
      アタシも責任者として会見に出るわ」

( ゚∀゚)「昨晩、そんな連絡一切来てねえのは、
     死ぬ間際に荒巻スカルチノフがそう予定してたからだろうな。
     新議会も都合がいいと見て、そのまま会見を開催する方向で動いた、と」

ξ゚听)ξ「でしょうね。直にモナーさんから一報送られるでしょう」


('A`)「っと……噂をすれば我等がリーダーの登場だぜ」

一同は立ち上がって、ドクオの視線の方向へ目を向ける。
長い廊下の向こう側から、両脇をクローン兵で固めているモナー・ヴァンヘイレンが
B00N-D1の眠る手術室の方へと向っている。

みな口を閉じ、緊張した面持ちで新議会長との対峙を待った。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 04:00:19.87 ID:Rf1Sk0sp0
モナーが面と面を向わせたのは、チーム・ディレイクの最高責任者たるツンである。
彼女は決して温和でない顔つきで、モナーが切り出すのを無言で求めた。
するとモナーは一度申し訳なさそうに視線を落とすが、すぐに顔を上げて、

( ´Д`)「単刀直入に言おう……市民の混乱を沈める為に、ブーンの協力を得たい」

毅然とした態度で切り出す。
予め答えを用意していたツンは、間を置かないで返す。

ξ゚听)ξ「はい。今回の襲撃と、それで生じた被害の全ての原因は我々にあります。
       謹んで、謝罪の方に臨ませて頂こうと思います」

その場で動揺している者はモナーだけであった。
モナーは拒否とばかり思っていたのだ。しかし、同時に安堵する。
彼女達が激しく抵抗しようものならと、断腸の思いで武力を率いてきたのだが、
それが杞憂に終わって、ようやく全身を脱力させる事は叶ったのである。

(;´Д`)「……君達は、私とモララーの独裁制について不満は無いのかね?」

新たな問いを受けると、まずツンは全員に目配せした。
ジョルジュ、ハインリッヒは頷き、2人に習ってビロードも頷く。
ドクオは一人思考に耽っていたが、ツンの視線に気づくや否や、「あ、ああ」と同意を示した。

ξ゚听)ξ「対セカンド兵器開発に注力するのは賛成です。
      それに、時間を要する民主的な解決より、一人もしくは一党による裁量の方が
      セカンドの動向にも素早く対応できるでしょうから」

( ´Д`)「うん、それこそ私とモララーの狙いなんだ」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 04:03:13.96 ID:Rf1Sk0sp0

( ´Д`)「我々人類がこの先生き延びる方法、それは穴倉の快適さを
      追求する事ではなく、未知のウィルスに対抗する事にある」

( ´Д`)「如何なる異形に対しても100%の勝率を保証できて初めて、
      再び『セントラル』の生活はサバイバルから元の生活に戻ってゆくんだ」

从 ゚∀从「貴方が唱える100%の勝率は、どのように作るおつもりでしょうか?」

ずいとハインリッヒが前に出た。
モナーは「検討中だが」と前置きし、

( ´∀`)「私達議会は君に期待しているよ、ハインリッヒ君」

市民がよく知る本来の温和さを見せて、そう答えた。

从 ゚∀从「は、はい!」

ハインリッヒも彼につられるようにして明るく返す。
それは、失われつつある自信を取り戻す事が出来るであろう兵器、「バトルスーツU」の
開発スケジュールがぐっと縮まるという確信の表れであった。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 04:06:03.78 ID:Rf1Sk0sp0

モナーは釣り上がった口の両端を下げる。

( ´Д`)「……その為にも、ブーンには協力をして貰いたいんだ。
      彼が責任を負い、また、傷ついた体を見せる事で市民は、」

ξ゚听)ξ「――市民は納得し、そして気づくでしょう。
       穴倉での生活を楽しんでいる場合ではない。
       セカンドウィルスという脅威に対抗する為に、一丸となる必要がある――と」

ξ゚听)ξ「ブーンを、いえ、我々をお使いになってください、モナー議会長。
       それに、繰り返しますが私達には責任を果たす義務がありますから」

( ´Д`)「ツン君……」

ξ゚ー゚)ξ「お気になさらないでください。貴方なら『セントラル』を任せられます。
      貴方ではなく、荒巻スカルチノフでしたら独裁制を断固阻止しますけどね」

( ´∀`)「君は、荒巻氏のようにならぬようにと釘を刺しているのかね?
      それなら私は肝に銘じるまでもないな。もはや彼と私の考え方は相反してたからね」


モナーが言い終わると同時、ツン達が背を向ける方向からドアのスライド音が鳴る。
まず出てきたのはプギャー院長。
そして彼の後ろを、車椅子に座るブーンが続いている。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 04:09:47.81 ID:Rf1Sk0sp0


ξ;゚听)ξ「ナイトウ!」

(;'A`)(;><)「ブーン!」从;゚∀从

ジョルジュ以外の4人が、プギャーを押しのけてブーンに駆け寄る。
四肢が裂断されたままの痛々しい様子を案じているのか、ビロードは
ブーンの身体をそっと撫でている。

( ^ω^)「ビロード、心配しなくても大丈夫だお」

( 。><)「ブーン……無事で本当に良かったんです!」

しかし、慰められるのはすぐにビロードへと変わる。
ブーンは泣きじゃくる少年の頭を撫でてやりたかったが、
腕を持たないブーンは穏やかな表情を保とうと努力するのだった。

(;'A`)「ぶ、ブーン! すまねえ! 俺があんな無茶苦茶なモン使わせちまったばかりに!」

( ^ω^)「何言ってんだおドクオ。アーマーシステムのおかげで僕は生きているんだお。
      それより、僕の新しい手足を作るスケジュールでも考えてくれおっおっ」

('∀`)「……ああ! そんなんじゃ煙草も吸えねえし酒も飲めねえからな!」

いつもと変わらぬ穏やかなブーンの様子に、4人は安心した。

ブーンはドクオに笑みを返した後、ツンの横顔に視線を注ぐ。
その眼差しに気づいているはずなのだが、彼女は一向にブーンと目を合わせようとしない。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 04:12:36.60 ID:Rf1Sk0sp0

从*゚∀从「おい、何か言ってやれよっ!」

ハインもそれに気づいて、にこにこしながらツンの脇腹を肘でこづいて促す。
恥ずかしさのあまり、ブーンと顔を合わせられない、あるいは
何と声を掛けていいのか分からない、といった具合であるのは、ツンの紅潮した横顔が代弁している。

ブーンは一度ツンから目を離し、モナーを見る。
恐らく重要な話をしにやって来たのだから、これ以上自分達の為に
時間を割いてしまうのは申し訳が無かった。

モナーは少し疲れているように見えたが、柔らかな表情で頷き、
ブーンに多少の時間を許す事を示した。
ブーンは再び申し訳なさそうに顔を作って、モナーに無言で礼を言い、

(;^ω^)「……ツン、その、僕は――」

今度は自分から幼馴染にアプローチする。
しかし、言い終わる前に飛びつくように抱きしめられてしまった。

ξ;凵G)ξ「後遺症は無いのね……?」

( ^ω^)「……無いってプギャー先生が言ってくれたお」

辛抱していたのを発散させるように、ツンは嗚咽する。
しかし、プライドがそれを許さないのか、泣くのを堪えようとするので、控えめな嗚咽である。
顔を真っ赤にしていたのも、きっと涙を堪えていたからだろうと、ハインリッヒは納得した。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 04:15:59.48 ID:Rf1Sk0sp0

ξ;凵G)ξ「グス、心配、してたんだからぁ……。
       ボストンから帰ってきた時だって、こうしてあげたかったのに……」

ツンは声を細めてブーンだけに聞こえるように言った。

(;^ω^)「悪かったお……あの時は本当にバカだったお」

次第にブーンは、自分達2人を包むそれが、あたかも恋人同士であるかのようなムードで
ある事に気づいて恥ずかしさを感じ始める。
ブーンは目を泳がせて誰かの助けを求めようとするが、

(;A;)「ハインたん! 後遺症は無いのね!?」

  ひゃああああ抱きつくんじゃねえ!!从;゚∀从三○)A`)きゃんきゃん!!

唯一無二の親友であるドクオは予想通り茶化そうとしているし、
ツンの良き友人になったハインも、それに巻き込まれている。
モナーとプギャーは2人揃って和やかな目で自分達を見守っているばかりだ。

ふと、壁に背を凭れて自分の方を見るジョルジュに気づく。
ジョルジュは視線に気づくと、さっと目を逸らして外を眺め始めたが、
こっそり親指を立てて、ブーンに見せてやるのだった。

( ^ω^)(ジョルジュ隊長……!)

きっと、「よくやった」と言ってくれているのだろう。

  __

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 04:20:43.52 ID:Rf1Sk0sp0
 ※

(;´∀`)「あー、そろそろいいかね?」

ξ;///)ξ「っ、すみません!」

彼等幼馴染がおおよそ15分は抱き合った後、
痺れを切らしたかのようにモナーが恐る恐る声を掛ける。
ツンは抱きついた時より俊敏にブーンから飛び跳ねて、
真っ赤になった顔を前髪で隠す事に努めた。

( ´Д`)「それでだ……ブーン」

モナーの低い声で、和やかなムードが緊張感のあるものに転ずる。

( ´Д`)「詳しくは今朝のニュースを見てくれれば分かると思うが、
      私達議会は、ボストンから昨日までの一件を全て市民に伝えた。
      これは全市民の平等さを守るのが目的ではなく、都市の統治を案じて行った事だ」

( ^ω^)「荒巻議会長の判断ですかお? 正しい判断だと思いますお」

( ´Д`)「……そう言ってくれてほっとした。ありがとう」

モナーと場に合わせて、ブーンも綻んでいた表情を正す。
荒巻についての返答を待つが、モナーは中々口を開こうとしない。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 04:25:48.48 ID:Rf1Sk0sp0
不思議に思ったブーンはドクオやハインに目を配らせるが、
彼等もモナーと同じように難しい顔を浮かべるばかりだ。

( ゚∀゚)「荒巻スカルチノフ議会長は死んだ。心筋梗塞で……ですね? プギャー院長?」

(;^ω^)「ええ!? じょ、冗談だお?」

( ^Д^)「いえ、昨夜急死されました……心労が祟ったんでしょうね」

(;^ω^)「そんな……で、では、議会は今どうなっているんですかお?
      モララー・スタンレー氏が取り仕切っているのですかお?」

( ´Д`)「私を議会長、モララーを補佐に置いた独裁制を敷いたんだ」

( ;゚ω゚)「ど、独裁制だって!?」

モナーはゆっくりと深く頷いた。

( ´Д`)「君が出てくる前にツン君達にも言ったんだが、
      荒巻氏が進めていた都市開発よりも兵力の増強を優先すべきだと判断したんだ。
      セカンドどもに対応するには時間を要する多数決よりも、一党による裁量が適切だ」

(;^ω^)「それは納得できるのですが……」

腑に落ちないのは、荒巻スカルチノフの突然死である。
件の襲撃で心労が募り、倒れてしまった……プギャー院長がそう判断したのなら、
それを事実として受け止めるべきなのだろうが、しかし――、

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 04:28:01.03 ID:Rf1Sk0sp0

「議会長は」

ブーンの思考を、唐突にドクオが遮る。

('A`)「議会長は殺されたのではないのですか?
    荒巻のような、詭弁で民衆をコントロールして権力を守る
    やり方に満足できない誰かが、武力で独裁権を握ろうとして……」

自分の考えをドクオが纏めてくれているようだ、とブーンは思う。

ξ;゚听)ξ「ドクオ! 何てことを言うの!?」

(;'A`)「そこのクローン兵は他の議員を脅したりしたんだろう!?
    モララー・スタンレーにそそのかれたんですか!? モナーさん!」

(  〓 )「……」

ドクオはクローン兵の一人を指差して叫んだ。
ドクオの叫び声は病院の白塗りの壁と彼女達の白いスーツの内側に染み入ったはずだが、
クローン兵は誰一人として何かを言おうとせず、沈黙を保つ。

ξ#゚听)ξ「ドクオ!」

( ´Д`)「いや、いいんだ、ツン君。疑われて当然だ」

ξ;゚听)ξ「っ、モナーさん」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 04:30:53.54 ID:Rf1Sk0sp0

( ´Д`)「……荒巻スカルチノフ氏は心労で亡くなったと、我々は報道した。
      しかしこの際、誰かが荒巻スカルチノフを殺害したかどうかなんて、どちらでもいい事だ」

(;'∀`)「お、おいおい! 新セントラル議会は統治の為なら殺人を容認しちまうのかよ!?
     まっこと恐ろしいぜ! 恐怖政治の始まりだ!」

( ^ω^)「やめるおドクオ」

(;'A`)「ブーン……」

( ^ω^)「……僕はモナーさんに賛成するお」

(;'A`)「しかし……」

ドクオはクローン兵のフェイスカバーを一瞬だけ見た。

統治と安全の為に荒巻スカルチノフという傲慢な人間を抹消したのは、賛成できる。
しかし、モララー・スタンレーが何人もの人間を「事故死」にして
クローン兵という存在を作り上げたというのなら――奴を信用してはならないだろう。

('A`)(権力を握ろうと、以前から企てていたのか?
    クローン兵は実はその計画の核であり、荒巻やモナーさんは
    自分を目立たなくする為のカモフーラジュだったら……辻褄は合う、か……?)

――しかしながらモララーを豚箱にぶち込む為の証拠が今は無い。
材料を調達するまで議会と『セントラル』を動かして欲しくないが、
俺のような一研究員の考えじゃ叶うはずがない。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 04:37:58.98 ID:Rf1Sk0sp0
だとしても、手を打ちたい。それも、早急に。
クー・ルーレイロを始めとするスタンレー・ラボの研究員が、一個人の判断で
犠牲になってしまったのなら、それを材料にモララーを議会から失脚させる事が出来る。

杞憂に終われば――クローン兵がクー・ルーレイロではなく、
彼女を含む研究員の事故死が本当なら――それがベストだが……。


( ^ω^)「モナーさん」

ブーンが切り出し、ドクオも彼に耳を傾ける。

( ^ω^)「僕に出来る事があれば何なりと仰って下さいお」

( ´Д`)「……君には本日正午より会見という形で市民に謝罪して貰いたい。
      ツン君の承諾は既に貰っている。やってくれるね?」

( ^ω^)「ええ。今回の襲撃は僕のせいで起きてしまった事ですお」

( ´Д`)「私もフォローする……ああ、一つ頼みがある」

(;´Д`)「君にはそのままの格好で会見に臨んで欲しい……その、何というか、」

( ^ω^)「いえ、お察ししますお、大丈夫ですお」

( ´Д`)「すまない……これも『セントラル』の為だと思ってくれ。
       正午前になったら向えを寄こす。では、後ほど議会堂で」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 04:42:23.51 ID:Rf1Sk0sp0
モナーとクローン兵は踵を返す。
彼等が通路奥のエレベータに乗り、下へ降りたのを確認すると、
ビロードが傍にいたハインの袖をぐいと引っ張って尋ねた。

(;><)「ハインお姉ちゃん、ブーンの腕と足を直さないのはどうしてですか?」

从 ゚∀从「皆の気持ちを引く為だよ、ビロード。
      皆を守る為、手足を失っても戦いに勝利したヒーロー!
      何とも感動的で危機感満載だが、こう利用されるのは気持ちいいもンじゃねーなぁ」

( ^ω^)「……きっと、それが責任を負うって事なんでしょうお」

ブーンの発言を聞いて、ジョルジュが壁から背を離した。

( ゚∀゚)「結局、その辺は荒巻スカルチノフの思惑通りになった、って事か。
     更にお前等に懲役を科せば、奴もあの世で満足しただろうな」

( ^ω^)「議会と市民がそれを望めば、僕は謹んで受けますお」

( ゚∀゚)「お前もそれを望んでいるんじゃねえだろうな?」

(;^ω^)「まさか。僕は死に物狂いで働きたい気分ですお」

マスクの中、ジョルジュは苛々した気分で溜息した。

ξ゚听)ξ「望まなくても働かされるわよ。
       外をあちこみ飛び回る事になるでしょうね」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 04:46:15.52 ID:Rf1Sk0sp0

( ^ω^)「ところで、ショボンとガイルさん達は?」

ξ゚听)ξ「ショボンならウチで修理してるわ。じきに顔を見せてくれると思う」

从 ゚∀从「ガイルと春麗なら病室にいるぜ。会いに行く?」

( ^ω^)「そうですね、まだまだ時間もありますし」

ξ゚听)ξ「それではプギャー先生、お世話になりました」

( ^Д^)「彼に何事も無くて私もホッとしたよ。しかし、今後はあまり無茶な戦闘をしない方がいい。
      特に脳にダメージを与えるような事は、絶対にね」

ξ゚听)ξ「……分かりました。ありがとうございます」

一向は病室に向う為にエレベータ乗り場へ。
案内をするハインが操作盤の上行きのボタンを押すと、ドクオは下行きのボタンを押した。

ξ゚听)ξ「どこ行くのよ?」

('A`)「ラボ。ちょっとショボンの様子を見てくる」

( ^ω^)「近いうちに店を貸切にしてくれって頼んでくれお」

('A`)「ああ、そうだな」

( ^ω^)「……?」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 04:55:25.96 ID:Rf1Sk0sp0
先に下へ降りるエレベータがやって来た。
ドクオは中へ入り、「じゃあまた後で」と一言だけ告げて下へ向った。

( ^ω^)「どうしたんだお、ドクオの奴」

ξ゚听)ξ「何が?」

( ^ω^)「飲みに行く、って時はいつも嬉しそうにはしゃぐもんだお。
      でもさっきは何だか神妙な感じで、ドクオらしくなかったっていうか」

ξ゚听)ξ「荒巻が殺されたって思い込んでるんでしょうよ。
       それが事実だったらアタシもショックだけど、殺人は起きてないと思うわね」

話している内に下からエレベータがやって来る。
ブーンの車椅子はスペースを取るが、それでも中は広々としている。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 05:03:36.47 ID:Rf1Sk0sp0

( ^ω^)「どうして(だお)?」从 ゚∀从

ξ゚听)ξ「他の議員にやったように、クローン兵で脅せばいいだけじゃない。
       モナーさんは“私とモララーの独裁制”って言ってたから、脅したんでしょうよ」

( ^ω^)「なるほど」从 ゚∀从

程なくして、エレベータが当該のフロアに到着する。
ジョルジュ達3人が降りた後、ツンはブーンの車椅子を押してエレベータを降りた。
車椅子はブーンの頭部のサイバーウェアと繋がっているので、誰かに押してもらう必要は無い。

ξ゚ー゚)ξ

( *^ω^)(……今日のところは甘えておくかお)

エレベータのガラスに映った彼女の表情を一瞬見て、ブーンはシートに後頭部を沈めた。


 __

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 05:06:41.03 ID:Rf1Sk0sp0


ガイル「ようブーン! 元気……とはいえねえか、その姿じゃ」

病室へ入るなり、ガイルのはつらつとした声で5人は迎えられる。
てっきりベッドで臥せていると皆は思っていたのだが、ガイルは平然とした調子であり、
ベッドの脇で携帯端末と睨めっこする春麗も、全く痛みを感じている様子など無かった。

( ^ω^)「いえ、僕は……具合はどうですかお?」

ガイル「クローン製の足じゃ訓練しないと使い物にならないらしくってな。
     それでほら、とりあえず義足を付けて貰ったんだ」

ひょいと片足を上げて、物々しい機械の足を見せるガイル。
その時ブーンはハッと気づき、春麗の足に注目すると、やはり彼女も同様の義足を付けていた。
ガイルは得意気な顔で義足を見せたが、ブーンにとっては胸が張り裂けてしまう程のショックである。

ガイル「こ、これで俺もサイボーグだな! へ、へへへ……」

言葉も出ないブーンの心情を察したガイルは、顔を引きつらせて誤魔化した。
だが、ブーンはますます表情を重くする。
戸惑うガイルは助けを求めようとハインと春麗を交互に見るが、
彼女達は呆れた様子で首を左右に振った。

(; ω )「ガイルさん、春麗さん、本当に何と謝ったらいいのか……。
      貴方達が無くなってしまったのは、僕のせいだお……」

特に若い女性である春麗に、体の一部を機械にさせてしまったとなると、
果たしてどのように責任を取ればよいのか、分からなくなる。
今はとにかく謝る他無いと思い、ブーンは日本人らしく深々と頭を下げた。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 05:09:49.53 ID:Rf1Sk0sp0
春麗「貴方が謝る事は無いです、ブーン。
    確かに今回の危機は貴方が引き起こしたのかもしれませんが、
    こういった事態がいつ起きてもおかしくない世界なんですからね」

携帯端末を閉じながら、春麗が優しく言った。

春麗「その度に我々戦闘員は敵を殲滅する為に戦場に向うのです。
    これは義務であり給料の為であり、そして『セントラル』の為です。
    決して貴方の尻拭いなどではないのです」

次は、口を尖らせてハキハキとした口調で続ける。

ブーンは面食らって口をポカンと開けた。だがその一方で真綿が水を吸う如く、
速やかに春麗の言葉を理解してゆき、次第に自分が彼女と同じ気持ちであった事に気づいた。
危機を呼び込んだ後ろめたさは当然感じてはいるが、
自分の為に戦ってくれたと考えていたのは、おこがましかっただろう。

口元を緩めて、春麗は言う。

春麗「しかしです、ブーン。私達は感謝しているんですよ?
    貴方が居なければ本当に私達皆が死んでいたかもしれないんですもの。
    私、今は足一本で済んでホッとしているんですから」

( ^ω^)「春麗さん……」

ξ゚ー゚)ξ「うん、アタシもそこは誇るべきだって思うわ」

ガイル「う、うむ! 俺はそういう事を言いたかったんだ!
     俺って口ベタでなぁ! ハッハッハッハッハ!!」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 05:14:23.21 ID:Rf1Sk0sp0
ガイルの乾いた笑い声が虚しく響く。
ブーン以外が向ける白々しい目に逃げるように、ガイルは窓際へと立ち位置を移した。

从 ゚∀从「そういや、2人とも今日中に退院出来るのか?」

春麗「ええ、義足の動作チェック等ちょっとした検査を受けた後になりますが、
    1時間もしない内に病院を出られるかと思います」

ガイル「検査が遅れたら抜け出すけどな! 議会堂の前で応援するよ」

ブーンは無意識に春麗の方を見る。その視線に気づいた彼女は笑顔で頷いて見せた。
視線をガイルに戻すと、任せとけと言わんばかりに親指を立てている。

( ^ω^)「2人とも……ありがとうございますお」

なんと頼もしい仲間なのだろうか。ブーンは軽くお辞儀をする。

そうして和やかなムードになると、7人は談笑を楽しみ始めた。
新型バトルスーツの話から始まり、ツンがビロードの入学の話を打ち明けると、
ビロードは『セントラル』に来てから最も大きな声を上げて喜んだ。

その後はビロードの生活に関連した話が続く。
ツンの料理が不味いとブーンが切り出すと、皆で心配し始めたのだ。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 05:16:42.04 ID:Rf1Sk0sp0

从 ゚∀从「おいおいwwお前オムライスも作れねーのかよwwwwwwww」

ξ;゚听)ξ「うるさいわね! カレーなら得意よ! あとアレ!
       サンドウィッチ! サンドウィッチは超得意よ!」

(;^ω^)「ツン、とりあえず具を無視してココア粉を挟むの、やめるお」

ξ゚听)ξ「え、美味しいでしょ?」

(;^ω^)「ざけんなお。ツナとココアとか、殺人以外に用途が思いつかんお」

从*゚∀从「ぶひゃひゃひゃひゃwwwwwww
       おいおい、ひっでぇ言われ様じゃないのツンちゃ〜ん?」

( ゚∀゚)「ハイン……お前の手料理も相当なもんだったが」
     て
从;゚∀从 そ

ξ゚∀゚)ξ「やーい言われてやんのwwwwざまあwwwwwwwww」

从;゚∀从「う、うるせえ! 人を馬鹿に出来る立場かウンコ垂れ!」


春麗(この人達は頭が良い代わりに色々な物を失ってしまっているのね……)

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 05:20:48.49 ID:Rf1Sk0sp0


( ^ω^)「お……誰か来るみたいだお」

ブーンが、残っている右耳で物音に気づき、雑談は中断される。
同フロアにエレベータが止まり、利用者がこちらの方へ近づいているようだ。
ここ以外の部屋に気配が無い事からも、それが明白である。

ξ゚听)ξ「ショボンかしら?」

( ^ω^)「いや、歩き方の感じが違うような気がするお」

从 ゚∀从「じゃあ検診じゃねーかな」

廊下を鳴らす音量が高まる。
皆、来客の訪れを静かに待つ。

「……ガイルさん、春麗さんの検査をしに参りました」

病室に入ってきたのは、カルテを抱えた看護婦だった。
手の肌、髪の艶などを見る限り若く見えるが、
しかし、浮かない顔をしている為にどことなく老けているようにも見える。

それに、どういう訳か手足が少し震えている。
入室する前からだ――緊張するほど、検査には慎重さを要するのだろうか?

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 05:24:09.64 ID:Rf1Sk0sp0

ほぼ全員がそのように疑問していると、不意に看護婦は小さな電気メスを見せた。
どうやら抱えるカルテと彼女の胸との間に収めていたようだ。

ガイル「ゲェ、メス使うんすかぁ? 俺、そういうの苦手なんだよな……」

なるほど、刃物を扱うのなら緊張もするだろう。
経験不足の若い看護婦なら無理も無い。それにメスを扱う手術なんて、
プギャー病院よりもチーム・ディレイクの方が数をこなしているに違いない。

( ^ω^)(それにしても心拍数が異常に早い。大丈夫かお、この人――)

ブーンがそう思った矢先。
看護婦は電気メスのスイッチを入れて刃を振動させ、
叫びながらブーンに向って突っ込んできたのだ。

今、ブーンの両腕は肘から先が無く、両足の代わりは鈍い車椅子の車輪となっている。
しかし、視覚と情報処理システムは健在だ。
セカンドと比べれば、看護婦の動きはスローモーにしか見えない。

ブーンは車椅子を急発進させて距離を詰めると、左腕の肘でメスを打ち落とした。
直後にガイルと春麗が飛び出し、メスを拾おうとする看護婦を床に押さえつけた。

「離せ! 離せえええええええええッ!!」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 05:26:47.31 ID:Rf1Sk0sp0
すぐにツンが車椅子の取っ手を掴んで、ブーンを看護婦から引き離した。
一方ジョルジュは、人を呼ぶ為にナースコールを押す。

ξ;゚听)ξ「ナイトウ! 大丈夫!?」

(; ω )「大丈夫だお、ツン……それより……」

从#゚∀从「アンタ! どういうつもりだ!?」

ブーンにとって聞き辛かった事を、ハインが代わりに問い詰める。
離せ、と連呼し続けていた看護婦はそれを止め、
荒々しい息はそのままにハインの問いに答える。

「そいつは、そいつは私の夫の仇なのよ!!」

ジョルジュ以外の全員が息を呑む。
看護婦は涙を目に溜めて続けた。

「アンタが奴等をニューヨークに呼び寄せたせいよ!
 戦いに狩り出された私の主人は帰らぬ人となってしまったのよ!
 あの人を返してよ! 何が英雄よ!!」

(; ω )「ぼ、僕……は……」

――これが責任を負う、という事なのか。
罵声を受ける程度の予想はしていたが、殺されかけるとは思いも寄らなかった。
……いや、僕は恨まれるべき対象なのだ、これで普通なのかもしれない。

しかし、今は彼女に返す言葉が思い浮かばない。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 05:31:38.02 ID:Rf1Sk0sp0
「どうしまし――!?」

そこへ数人の看護婦がやってくる。
押さえつけられながらもブーンを呪う同僚の姿……その異常な光景を
目の当たりにして彼女達は言葉を失いかけるが、

( ゚∀゚)「警察を呼んでくれ。おたくの看護婦さんが殺人未遂だ。
     メスを構えて突撃すんのが医療ミスでも、警察を呼ばざるを得ねえよな?」

こくりと頷いて、ジョルジュの言葉に従う意を示す。
すぐに看護婦達は警察と、それから院長へ電話を入れた。


「主人を返して! 返してよおおおおおおおおおおお!!」

(; ω )「……」

ξ;゚听)ξ「……」

未亡人の泣き叫ぶ声が、フロアに隈なく広がる。
ブーン達と他の看護婦達は、それを黙って聞く他に無かった。

 __

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 05:34:58.78 ID:Rf1Sk0sp0


('A`)「ニュース見たか?」

(´・ω・`)「直接は見てないが、修理してくれてたスタッフに色々聞かせてもらったよ」

ドクオはラボへ戻っていた。
部下が進めていたショボンの修理を引継ぐ為というのもあるが、
主な目的は彼と話す為、である。

('A`)「トップはモナーさんだが、実質的に権力を握るのは
    武力を有するモララーだろう……モララーになるかもしれない、だな」

半ば強引にスタッフを追い出して静かになった作業室の中、
ドクオは絞った声をマイクに吹き込んだ。

(´・ω・`)「クローン兵は何が目的で作ったんだろうね?」

('A`)「単なる対セカンド用の戦闘兵とは考えたくねえ」

(´・ω・`)「そうだな……議会を制圧する為の武力、
      として開発したと考えるのが妥当かな。今の状況だとね」

('A`)「まあそうだろうが、俺が疑問してるのは別の事なんだ、ショボン。
    何の為に権力を握ろうとしたか、って部分さ。
    そこを突ければ、おのずと答えが見えてくるんじゃねーかな」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 05:38:12.48 ID:Rf1Sk0sp0

(´・ω・`)「何の為に、か……すると君は、モララーが
      僕達『セントラル』の為に独裁者となったとは考えていないんだね?」

('A`)「全ては『セントラル』の為に。そう考えられれば、どんなに楽な事か」

休み無くホロパネルを操作しながら、ドクオは言った。
指の動きに合わせ、ショボンの腹の上で機器達が踊っている。

(´・ω・`)「しかし不審な点が多すぎる、と」

('A`)「うん。特に、クー・ルーレイロらは事故死したとあるにも関わらず、
    クローンのオリジナルがクーの可能性が高い事だな。
    それに荒巻スカルチノフの心労死だって怪しい」

(´・ω・`)「モララー・スタンレーの周りは怪しい事尽くめだな。
      奴のデスクの引き出しを一つ開けただけで、豚箱にぶち込めるかもね」

ドクオはショボンのジョークに微笑し、間を置いてから続ける。

('A`)「今日、スタンレーラボへ侵入出来ればベストだったかもな」

(´・ω・`)「そう焦るなよ、ドクオ。チャンスはまた訪れるさ」

 __

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 05:42:33.59 ID:Rf1Sk0sp0


「息苦しいかと思われますが、会見終了まで護衛を付けさせて頂きます」

ξ゚听)ξ「ありがとうございます」

一時は騒然となった病室も、警察が駆けつけてからは元の清閑さを取り戻していた。
が、病室前に銃を携帯した警察官が陣取るという、稀な光景もある。
今度は、その息苦しさと緊張感に耐えねばならなかった。

しかしながら、こうしてようやく、ブーンは自分の置かされた状況に気づいたのである。
ギコ・アモットと数千のセカンドを撃退出来たのは自分一人の力ではなく、
多くの尊い犠牲――いや、本来存在し得ない犠牲の上で手にしたものだ。

ガイルと春麗は「敵と戦う事は戦闘員の義務」だと述べたが、
ブーンにとっては己の甘さが引き起こした戦いなのだ。
遺族からして見れば、家族はその尻拭いに付き合わされて殺されたのである。

( ;^ω^)「あの、刑事さん」

「何か?」

( ^ω^)「さっきの看護婦さんは……どうしてますかお?」

「彼女は警察署に連行したよ。疑いようの無い殺人未遂だからね。
 彼女の今後については裁判官が決めてくれるよ」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 06:08:35.15 ID:Rf1Sk0sp0

(; ω )「しかし……彼女が“ああなった”のも、僕のせいだお」

「……無論、情状酌量されるだろう。
 だがね、ブーン。ああいった者を放って置くわけにはいかないのだ。
 君が言い分を聞かせるまで殺されてはならんのだよ」

从;゚∀从「言い分って……他に言い方っつーもんがあんだろう?」

「いや、この際正直に言おう。君を恨んでいる人は少なくない」

刑事の言葉に、ブーン達の顔が曇る。

「しかし、多くの者が心の奥底では君ではなくセカンドを憎んでいるはずだ。
 君と『セントラル』の今後に期待しているよ、ブーン」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 06:11:29.18 ID:Rf1Sk0sp0
そう言い残して刑事が去ろうとすると、扉からノック音が。
誰かが返事をするよりも早く、扉は開かれる。

「ミス・ディレイク、会見まで1時間となりましたので、そろそろ議会堂の方へ」

ξ゚听)ξ「分かりました……ブーン、行きましょう」


(;><)「ブーン!」

ビロードは病室から出ようとした2人を呼び止めて、慌てて駆け寄る。
ポケットから黒いバンダナを取り出し、それをブーンの右腕に巻いてやった。

(;><)「こ、これで大丈夫なんです!」

( ^ω^)「……ありがとう、ビロード」

 __

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 06:20:40.80 ID:Rf1Sk0sp0
ツンは、病院正面入り口付近の警備の厳重さに息を呑む。
病室のとは比較にならない数なのだ。
恐らく、裏口も同様に守りを固めているのであろう。

しかも彼等は銃と盾を構えて、頑丈なダムの如く群集を食い止めているのだ。
そうしなければ市民は病院に雪崩れ込んで、ブーンを見つけ出して八つ裂きにするだろう。
ツンは、入り口から漏れて入る殺気だった気配を感じて、そう思った。

先に、護衛の者達が病院を出る。
ブーンとツンは彼等の前に出る事に意を決して、自動ドアを潜った。


『ワアアアァァァァァ――――――――!!』


2人は姿を見せるや否や、声の塊をぶつけられる。
ツンの耳では正確に聞き取る事は出来ないが、
しかし、時折クリアに聴こえる言葉は全てブーンを呪うものであった。

「息子を返して!!」

「お前の為に何人が死んだと思ってんだ! 死を持って償うべきだ!!」

ξ;--)ξ(この人達はナイトウが全部悪いと思いたいだけなんだわ……。
        セカンドなんかに言っても聞いちゃくれないもの。そう信じたいわ)

これが、モナー・ヴァンヘイレンの意図なんだろうか?
確かなのは、この罵声から決して背いてはいけない、という事である。
それが責任を負うという事の一環のはずだ。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 06:25:28.48 ID:Rf1Sk0sp0
だが、ツンはとても顔を上げていられなかった。
ブーンがしっかりと彼等に顔を向けて、真摯に言葉の一つ一つを受け止めているというのに。
そう頭では思っているのだが、ツンは無意識に車椅子を押す速度を速めてしまう。

――その時、市民の声が次第に小さくなってゆき、ざわめきに変わった。
ツンは恐る恐る彼等を見てみると、誰もが目を丸くしている事に気がついた。
彼等はブーンの容態に気づいて言葉を失ってしまったようだ。

「て、手足が……あ、あんなになるまで戦ったのか……」

「ど、同情を引こうとしているだけだ! き、汚い奴等……め……」

ある者は同情し、ある者は戸惑いながら真偽を推論し、またある者は罵声を浴びせ続ける。
――これも、モナー・ヴァンヘイレンや荒巻スカルチノフの狙い通りか。
えげつない手段だが、ブーンのこの姿は市民を扇動しやすいようにツンは思えた。

ツンは市民から目を離し、先ほどから乗車を促されている救急車に向う。
ブーンを車椅子ごと後部に乗せ、ツンも市民の目から
逃れるようにそそくさと車内に入り込んだ。

「アクセサーに乗車するのは難しいと判断したので、救急車での移動となります。
 第3階層へは、中央エレベータの運搬用リフトで上がりますので、ご心配無く」

ξ;゚听)ξ「はい……」

救急車が発進する。道を真っ直ぐ走っているようだ。
やがて喧噪が耳に入らなくなると、ツンは胸をほっと撫で下ろした。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 06:30:43.08 ID:Rf1Sk0sp0
落ち着きを取り戻したところで、ツンはブーンへ横目を流す。
しかしブーンは項垂れている。
長い金髪が顔を覆い隠していて、表情を窺えない。

(  ω )「…………」

何かを発しようとする気配は無い。
見かねたツンは声を小さく絞って話しかけた。

ξ;゚听)ξ「ナイトウ……そう気にする事ないわ。悪いのはアンタじゃない!
       悪いのはセカンドウィルスよ!」

(  ω )「……ツン、僕はそうは思わないお」

意外にも、ブーンの返答は早い。

(  ω )「戦いを引き起こしたのは僕の弱さ故であり、
      オットーがウィルスに手を出したのも、
      好奇心を抑えられなかった奴自身の弱さ故、だと思うんだお」

( ^ω^)「……ギコさんが過去に感情を捨てたのも、きっとそうだお」

ξ;゚听)ξ「ナイトウ……」

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 06:37:15.22 ID:Rf1Sk0sp0

ξ--)ξ「……そうね。確かに、人間の弱さが全ての原因なのかもね。
       ウィルスと出遭ったのは、可能性に賭けて太陽系外へ進出した
       その結果だから……ツキが無かった、としか言えないものね」

( ^ω^)「そうだお。可能性を追い求めるのと、好奇心に身を任すのは違うお。
      ……僕はね、ツン。オットーのように、ウィルスの持つ強大な力に
      依存しようとするのは許されない事だと思っているんだお、人としてね」

( ^ω^)「オットーを肯定してしまえば、ツンやフィレンクトさん、ドクオやハインさんの
      努力を否定する事になるお。それにジョルジュさん。
      ウィルスに冒されても、あの人は可能性を捨てずに生きようとしているお」

ξ゚听)ξ「ナイトウ……」

( ^ω^)「学は無けれど免疫がある僕が出来る事といえば、
      戦う事だけ……ツン達の武器で奴等を狩る事だけだお」

( ^ω^)「……人々の言う通りに死んで償うのは簡単。
      だけどそれじゃあ、オッサンに申し訳立たんお」

( ^ω^)「僕はオッサンやジョルジュさんのような強い人間になるお。
      だから心配するなお、ツン」

ξ゚ー゚)ξ「……別にアタシは心配なんかしてなかったんだから」

 __

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 06:46:31.58 ID:Rf1Sk0sp0


ブーンを乗せた救急車両が第3階層第5区域に到着した時、時刻はAM11:15を示していた。
会見開始まで30分以上もあるにも関わらず、第3階層の街は何処も彼処も群集で犇いている。
通常、研究者と議員でこの階層の利用者の9割を占めている。
唯一例外なのは、議会からの重大発表――例えば新委員長の挨拶――の時くらいだ。

今日のように全市民が集結しようとしたのは、過去に一度だけ。
ここが都市としてスタートした日、つまりセントラル議会が発足した6年前である。

(;'A`)「いってえ! ちくしょう、何て人ごみだよ!」

ドクオは強引に人を掻き分けながら叫ぶ。

(;´・ω・`)「議会堂前までまだ長いな……」

背の高いショボンが、ズームを起動しないで通りの奥を見据える。
議会堂のドーム状の天井は、まだ遠くの方だ。
ショボンは、人が通りを隙間無く埋める光景を眺望して、どっと息を吐いた。

(;´・ω・`)「だからもう少し早く出たほうがよかったんだ!」

(;'A`)「お前の修理で遅れたんだろうが!」

言い争いながら、2人は大通りをゆっくりと流れてゆく。

議会堂は中央エレベータ付近に建っている。
本来ならば中央エレベータを降りてすぐのアクセサー乗り場で下車できるのだが、
今日ばかりは交通整理がされている為、少し離れた場所から徒歩を強いられている。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 06:52:12.27 ID:Rf1Sk0sp0

(´・ω・`)「仕方ない……ドクオ、僕の手をしっかり握るんだ」

(;'A`)「ちょ、何だよいきなり気持ちわりッ――」

出掛かった言葉は、急激に身体を襲った衝撃で遮断される。
ドクオは、ショボンと共に空へ躍り出たのだ。

(;゚A゚)「ッ――――!?」

声を出せない程の圧力を全身で感じながら、
ドクオは必死にショボンの腕にしがみ付いた。

ショボンはビルの壁に激突する間際に反転して、ヒビが走る程に強烈な蹴りを壁に入れた。
議会堂の方角へ向ってひたすら壁蹴りが繰り返される。
その中、ドクオは「降ろしてくれ! まだ人ごみに揉まれている方がマシだ!」と、胸中で繰り返し絶叫した。


(;'A`)「し、死ぬかと思った……」

両手両膝を地面に付いて弱弱しく呟くドクオ。
ショボンが向った先のビルは議会堂に最も近く、見渡しの良い屋上である。
しかし今のドクオには、眼下に広がる光景を眺める余力は無さそうだ。

(´・ω・`)「はじめからこうすれば良かったね」

(;'A`)「軽々しく言ってくれるなぁ……。
    うう、朝食った“ゲロ”がマジでゲロになって出てきそう……」

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 06:57:30.24 ID:Rf1Sk0sp0


ガイル「ビロード! 俺の頭から手を離すんじゃないぞォ―――!!」

(;><)「はいなんです――――!!」 ブチブチブチブチ

ガイル「あぎゃあああああああ! 抜くな! 抜くんじゃないいいいいい!!」

ハイン、ビロード、ジョルジュ、ガイル、春麗は議会堂前で奮闘していた。
議会堂前はだだっ広い円形の広場となっている。
しかし、さすがに全市民を収めるキャパシティは持ち合わせておらず、
誰しもが体の痛みを訴える鮨詰め状態となっていた。

広場に入り込もうと、あるい押し出されんとする市民の攻防は熾烈の一言。
華奢なハインは既に疲労困憊で、気が滅入いる一方だった。
さらに、激しいのは場所取りだけではない。

「さっさと出てきやがれ―――――!!」

「モナー・ヴァンヘイレンとモララー・スタンレーを認めるなァ――!!
 権利は俺達で守るんだァ―――!!」

「独裁政治なんて認めねえぞォ―――――!!」

群集の喚声だ。それも、非難が9割を占める何とも聞き難い喚声である。
その中で特に目立つのは、独裁制を宣言した新セントラル議会を反対する声だ。
「民主主義を!」などという幕を掲げる者もちらほらといる。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 07:10:24.05 ID:Rf1Sk0sp0

从;゚∀从「新議会は大不評のようだな!」

( ;゚∀゚)「贅沢な生活を送れないとなっちゃ、黙ってらんねえんだろうよ!」

春麗「まさかここまで危機感が無いなんて思いませんでした!」

从;゚∀从「全くだ。信じられねえ。 荒巻スカルチノフの信者だよ、こいつらは。
      何だかんだ、皆して塀の中の暮らしに満足してやがったんだ……!」


ガイル「あ、おい! 始まるぞ!」


前触れ無く、議会堂両脇に設置された巨大モニターに無人の演説台が映された。
すると人々は途端に静まり返って正面の議会堂の方に注目した。

議会堂のドーム状の天井を支えるのは、等間隔に打ち立てられたコンクリの円柱である。
その中央には金属製の巨大な扉があるのだが、今は開かれている。
薄暗い議会堂の中から議会員達が慎重な足取りで現れると、群集は再びざわめき始めた。

先頭はモナー・ヴァンヘイレン。
彼の後ろにはモララー・スタンレーが、そしてブーンとツン、と続いた。
総勢10名の議会員、20名余りの白い兵士達が出揃った。

彼等は半々に左右に別れ、配置されたパイプ椅子に腰を下ろす。
ツンもブーンの車椅子を押すのを止めて、椅子に座った。

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 07:16:46.94 ID:Rf1Sk0sp0
舞台は扇状である。
本来、舞台中央には議会堂入り口まで階段が伸びているのだが、
機械仕掛けの舞台床が階段を隠して、今現在では床になっている。
舞台には数台のカメラと演説台、左右に巨大なスピーカーが設けられている。
それ以外に特筆すべき物は無く、目立った装飾や不要な人間を嫌う、実に簡素な作りとなっている。

つまり、群集が目を向けるのは舞台の人間のみとなる。
ツンは、少しでもいいから視線を遮断する物を立てて欲しい気分になった。
心細くなった彼女は、助けを求めるように隣のブーンを見た。
しかし彼の態度は至って真摯であり、自分のように群集から目を逸らそうとしていなかった。

ξ;゚听)ξ(責任を負う、って事なのよね……)

改めてそう胸に重んじ、ツンは再び真正面を向いた。

同時。アナウンスが鳴り響た。

「これより、議会からの発表を始めさせて頂きます。
 まず始めに、昨日の事件についてチーム・ディレイク所属、B00N-D1、
 ホライゾン・ナイトウがご説明致します」

進行役の女性が言い終わったのを確認し、ツンは立ち上がった。
ブーンと一瞬目配せし、ツンはブーンの後ろに周り込んで車椅子の取っ手を握った。
ゆっくりと舞台前の演説台へと向う二人。
二人に合わせるように、群集がどよめき始める。
それが最高潮になったのは、モニターにブーンの姿が映し出された瞬間だった。

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 07:24:55.93 ID:Rf1Sk0sp0
「お、おい……ブーンの奴、手足が無いぞ……」

「機械の手足がどうしたっていうのよ!?
 私は息子と夫を失っているのよ……機械の手足くらい……!」

「なあ、冷静に考えるとよ、セカンドは相当強くなってるって事じゃないか?」

「最高レベルのサイボーグが、ああまでなっちまったんだもんな」

「ただ単に奴等の数が多かったって事じゃねえの?
 3千ものセカンドを呼び込んだのはブーンだ、
 いらん犠牲を出してしまった責任はどうあれアイツにあると思うね」

あらゆる憶測と考えが、広大な円形の広場の中で静かに飛び交う。
その様を遠くから見ているドクオは、声を荒げて言った。

('A`)「怯えてばっかりって奴が大半だろうってのに、好き勝手言いやがってなぁ」

(´・ω・`)「仕方ないだろ。戦いに行っても死とウィルス感染の危険が高いんだ。
      ドロイドやブーンが戦うべきだと考えるのが普通だろう」

('A`)「まあ、そうだな……でもよ、お前のように無謀でも戦いに行く人間ばかりなら、
    昨日の戦況だってだいぶ違ったかもしれないじゃないか」

(´・ω・`)「無謀なだけじゃ葬式の規模が拡大するだけさ。
      勇敢さも大事だけど、真に必要なのは強力な兵器だと思うね」

('A`)「……そこは、モナー・ヴァンヘイレンの器量に期待するとしますか」

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 07:28:15.72 ID:Rf1Sk0sp0
マイクを通し、ブーンの吐息がスピーカーから発せられた。

――いよいよ重罪者B00N-D1のスピーチが始まる。
場はしんと静まり返り、人々の視線が全てブーンに向けられた。
敵対心や擁護……一人単位でならば、視線が持つ意味は数多く存在するに違いない。

しかしながら、ツンは、それまで冷静だったブーンまでもが、
彼等の視線が放つ、ひたすらに巨大な威圧感に圧倒されていた。
極度の緊張もある。
味方であるハイン達が見守ってくれていると考える余裕すら無かった。

ブーンが演説台の前で群集と向き合って、しばらく無音が続いた。
それは時間にしてたったの1分。
しかし、市民にとっては実にもどかしい1分である。

「おい! さっさと何か言いやが――」

(;^ω^)『皆さん』

遂に少数の者が痺れを切らして煽ったと同時、ブーンは口を開いた。
煽ろうとした者は咄嗟に口を閉じた。

(;^ω^)『皆さん、僕は、その……』

ようやく話し始めたかと思えば調子がもどかしいのだから、
市民は傾聴しようとしていた姿勢を改める事も考え始めた。
現に、何人かは声を大にして「いい加減にしろ!」などと煽っている。

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 07:31:39.74 ID:Rf1Sk0sp0

ξ゚听)ξ「……しっかりなさい。強い人間になるって言ったじゃない」

見ていられなくなったツンは、そのように耳元で囁いた。
突き放すような後押しが、かえって彼女らしいと、ブーンは思う。

心の内をありのままに伝える勇気は得た。
ブーンはモナーに向って頷いてから、マイクに口元を近づけ直した。
モナーは恐らく、僕を心配する視線を送り続けていただろうと、そう思っての配慮だ。

( ^ω^)『……今回の襲撃事件は僕のミスが発端です。
      心からお詫び申し上げます。ただ、謝るだけで責任を果たせるとは思っておりません』

( ^ω^)『ですので、非常に勝手な事ではあると承知の上、
      自分の考えと、今後について述べさせて頂きます』

落ち着くために、短い間を挟む。
ブーンは深呼吸してから再びマイクと、市民に顔を向けた。
場は、それまでの喧噪が嘘だったかのように静まり返っている。

( ^ω^)『……僕が危機を呼び込んだのは否定しようの無い事実です。
      僕の弱さが、結果的に脅威を招いてしまったのです』

( ^ω^)『ボストンで知り合ったソリッド・スネークという男は、自分を犠牲にして
      僕とビロード・ハリスを敵から守ってくれた……守って、死んでしまった……。
      僕よりサイボーグとして性能的に劣る男が、僕を守る為に死んでしまったのです』

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 07:34:50.10 ID:Rf1Sk0sp0

( ^ω^)『あの時、感染者を敵と見なし、そして倒す勇気を僕は持っていなかった。
      気づくのが余りにも遅かった……この世界で誰かを守るには、
      確固たる意思を持っていなくてはならないのだと、』

( ^ω^)『……昨日、ようやくその事に気づいたのです』

そこで、ブーンは一度口を閉じた。
ブーンが話すのを中断していると市民は気づき、一気にざわめく。
「一体ブーンは何の話をしているんだ?」と。

しかし、市民はひそひそと話すのをすぐにやめた。
探らずとも、彼自身が彼の言葉の意味を答えてくれるはずだ、と。

( ^ω^)『皆さん……!』

力強いブーンの口調。
余りにも唐突であった為か、攻勢を貫いてきた市民も気圧された。

( ^ω^)『皆さん、昨日のような脅威は招いてはじめて来るものではなく、
      我々が寝ている間に突然やってくる事だってあり得るのです!』

(;^ω^)「この6年間はありませんでしたが、いつだって保証なんか無かったのです!
      僕が言える事じゃないのは分かっています! しかし!
      今こそ一丸となって、備えるべきなのです!」


(;^ω^)「我々の共通の敵、セカンドに!」

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 07:40:21.47 ID:Rf1Sk0sp0

「奴等が……突然ここにやってくる……?」

再三、市民はどよめく。
ブーンの提示は、「一丸となって備えるべき」は、正しい事なのだろうか?
混乱とも言えるまでに市民は疑問する。

「今まで安全そのものだったじゃないか……有り得ないだろう……」

「しかし、ブーンの言う通り保証は何処にも無いんだ……」

それどころか誰しもが心の奥底では彼の言う事が正しいと思い始めていた。
いや、前より感じ始めていた事だったのかもしれない。
荒巻スカルチノフと共に作り上げた塀――塀の中で我々は夢を見ていたのではないだろうか、と。

( ^ω^)「ここ、『セントラル』は居心地の良い家のような場所です。
      この、一見頑丈な家が作り出している偽りの安寧に、僕達は甘えているのかもしれません」

( ^ω^)「本当の意味で僕達が安心して暮らせるようになる為に、
      共に学び、共に励み、そして共に敵を倒したい。
      僕は切実に、それを願います」

市民のざわめきは一層に大きくなる。
彼等は、衝撃を受けたのだ。

軍備拡張を促す者は過去にも現在にも存在していた。
それに同調する者は増えつつあったが、しかし大半が荒巻と共に保守を好んだ。
危険の無い夢の世界にいつまでも甘えたかったからである。

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 07:43:24.62 ID:Rf1Sk0sp0
「このままだと、いずれ私達も同罪になるかもね……」

「ああ……奴等に襲われて誰かが殺されても文句言えねえ。
 今回みたいな危険だって、今後あり得るんだ」

「いかなる状況でも対応できないとなると、いよいよ『セントラル』も終わりだ」

――ブーンの言う通りだ。
奴等が一斉に襲い掛かってくれば、『セントラル』とて薄っぺらな藁の家なのだ。
そして今回の戦地に赴いて帰ってこなかった者達こそ、それを証明した犠牲なのだ。


円形広場を包むざわめきは拡大の一途を辿る。
それに歯止めを掛けるようにして、ブーンが静かに声を発した。

( ^ω^)「僕は……僕は、どんなに強大な脅威が襲ってきても、
      怯まず、第一線で立ち向かい、皆さんと『セントラル』を守ると誓います」

( ^ω^)「必ず奴等を……セカンドを殲滅して、守ります。
      守れる自信はあります。何故なら、人間の可能性は無限なんですから。
      僕達は今まで生きて来れたのも、人間の知恵があったからなんです」

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 08:16:14.14 ID:Rf1Sk0sp0

言い切った後も、場を占めるのはざわめきだ。
だが、しばらくすると、まばらな拍手が鳴らされた。

ブーンと新議会の提案は、すぐに飲み込めるほど簡単なものではない。
ブーンの失態と罪も、すぐに許してやれるほど単純なものではない。

しかしながら、最大の敵であるセカンドと戦う事で罪を全うするブーンは、賞賛してもよい。
このまばらな拍手は、市民の複雑な心境をそのまま表していると言えよう。

ξ゚听)ξ「……まぁ、すぐに許してはくれないでしょうね」

マイクが拾わぬよう、ツンは耳打ちして言った。

( ^ω^)「許しを得ようなんて端から思っちゃいないお。
      本当の意味で罪を贖うには、こんな演説ではなく、街で狩りをして
      『セントラル』に傷一つ付けない事だお』

( ^ω^)「ただ、『セントラル』の問題について触れられて良かったお。
      皆のこの反応は、問題提示に揺れ動いている証、と見て間違い無い。
      後はモナーさんに任せるお、ツン。僕の言うべき事は全て言い尽くしたお」

ξ゚听)ξ「……そうね、席に戻りましょう」

その場を去る間際、ツンは市民を一望した。

……荒巻が作り上げた幻想にヒビは入った。
不安なのは、このまま塀を完全に崩壊させて、パニックに陥らぬように、
モナー氏が市民を結束させられるかどうかだ。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 08:18:32.03 ID:Rf1Sk0sp0
不安を残したまま、この場を後にするべきではない。
私達はまだ、やり残した事がある。
もっと強く、伝えられる事があるはずだ。

思い立ったツンは、ブーンの車椅子から手を離し、演説台に駆け寄った。

ξ;゚听)ξ「皆さん! 私はツン・ディレイクです! 私も一つだけ言わせて頂きます!」

(;^ω^)「ちょ、おまっ」

モニターに映るツン・ディレイクの姿に、会場全体が大きくどよめく。
遠方で傍観していたドクオ、ショボンも、
今の今まで人ごみの圧迫に耐えていたハインらも、己の目と耳を疑った。

(;'A`)「ゲエッ!? 何やってんだアイツ!?」

(;´・ω・`)「モナー氏も驚いているね。となると完全に小娘のアドリブだ」


( *><)「ツンさんなんです!!」

从;゚∀从「お、おいおいおい……ヘタな事言えねえのに大丈夫かよ?」

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 08:24:33.24 ID:Rf1Sk0sp0

ξ゚听)ξ「……システム・ディレイクは最強のサイボーグシステム
      であると自負しております。しかし、それは間違いでした。
      日々進化し続けるウィルスの脅威の前では、確約された勝利など存在しないのです」

ξ゚听)ξ「私は心の底で、必ずブーンが勝利すると思っていましたが、
      クイーンズ、ボストン、そして今回の戦闘……いずれも、勝利は紙一重でした。
      帰還が奇跡的であった事は、四肢を失った彼の姿を見れば想像がつくでしょう」

ξ゚听)ξ「彼の姿を利用して、皆さんの哀れみを得ようなどとは思っておりません」

ξ--)ξ「ただ、彼のこの姿から危機感は感じ取って欲しいのです。
       ブーンはバトルスーツと並ぶ『セントラル』最強の戦闘力ですが、
       もう一度言いますが勝利を確約するのは、もはや現状では難しいのです」


ξ;゚听)ξ「……お願いです! 奴等に勝つには、私達が安心して眠る為には、
       皆さん一人一人の協力が必要なのです!!」

ξ;゚听)ξ「節制すれば銃が生まれる! 弾丸が出来る!
       知恵を集めれば、より強力な銃だって生まれるんです!
       これ以上の競合は必要ありません! 今必要なのは協力、団結なのです!!」

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 08:30:48.55 ID:Rf1Sk0sp0

ξ;゚听)ξ「えー」

ξ;゚∀゚)b「以上、ツン・ディレイクでした!!」

ツンはブーンの車椅子の取っ手を乱暴に掴み取ると、颯爽と演説台の前から消え去った。
席まで戻ると市民達の目からは逃れたが、まだ数台のカメラが
自分の紅潮した顔を映し続けているとは、ツンの知る由も無い。

(;^ω^)「これ以上不安を煽ってどーすんだお……」

ξ;゚听)ξ「いいのよ! だって、要するに私達の本当の役割って、
       危機感を演出する事だと思うもの!
       この際大っぴらに言っちゃった方がいいんだって!」

(;^ω^)「モナーさんの意向に沿ってるのかお……?」

ξ゚听)ξ「沿ってるわい。アンタを最大限利用させてもらったわ。
       満身創痍なアンタを見せびらかすだけじゃダメだった、って事。
       あ、ほら! モナーさん見てみなさいよ! よくやったって顔してるわ!」

(;´ー`)


(;^ω^)「なんか、微妙そうじゃねーかお?」

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 08:35:39.16 ID:Rf1Sk0sp0
ブーンとツンが着席するまでを見届けたモナーは、
ようやく顔が僅かに綻んでいる事に気づいた。
次は自分の番だ。
モナーは顔を引き締め、解き放ちつつあった緊張を胸に取り戻した。

(;´ー`)(ブーン、ツン君……私は君達を尊敬する。
      私は、君達が無難な言葉ばかりを並べると思っていたが、
      全く怯まずに自分の考えを訴え通すとは……)

心なしか遠く聞こえるアナウンスに促され、モナーは腰を上げる。
足取りは良い意味で重い。
彼の厳格な振る舞い、挙動は、無意識のものだ。
これは、独裁者としての心得を一晩で作り上げた証拠、と言えよう。

(;´ー`)(利用する、とは言ったものの、君達は役割以上の事を果たしてくれた。
      利用だなんて、何とおこがましい考えだったのだろうか。
      今、市民が揺れているのは君達のお陰だ……後は、私に任せてくれ)

モナーが演説台に近づくにつれ、ブーンを賞賛する声が静まってゆく。
いよいよクーデターの首謀者、モナー・ヴァンヘイレンの言葉が聞ける。
待ち侘びた市民は恐ろしい程に静まり返り、モナーの言葉を待った。

しかし、モナーは全く動じず、おもむろに演説を始めた。

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 08:38:48.32 ID:Rf1Sk0sp0

( ´Д`)「言いたい事は殆どブーンとツン君が言ってくれたが……」

一度、モナー視線を市民からブーン達に向け、すぐに戻した。

( ´Д`)「セカンドはいつ、『セントラル』を嗅ぎ付けて襲ってくるか分からない。
       いつまでもNYが安全であるという保証は無い。
       事実、クイーンズ区では未だ多くのセカンドが存在している」

彼の声は実に野太い。
そして身振り手振りで話す様は非常に大仰だ。

( ´Д`)「我々新セントラル議会が民主主義を捨て、
      独裁制へ転じたのは奴等の攻撃に備える為である。
      熾烈な資本主義の構造を廃止しようとするのも、その為である」

( ´Д`)「……荒巻スカルチノフも、去り際に
      我々の考えに賛同してくれていたのだ」

その一言に、市民は驚愕する。

――我等が荒巻スカルチノフが、独裁政治を認めたというのか?
いや、違う。
独裁政治を取る事が正しいのだと、彼まで言うのか?

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 08:42:43.04 ID:Rf1Sk0sp0
市民の心の揺れ幅は、ますます大きくなっている。
この演説台から一望すれば、誰にでも手に取るように分かるだろう。

( ´Д`)(モララーの筋書き通り、か)

モララーは、死んだ荒巻スカルチノフの英雄像も利用すべきだと、
今回の演説のアドバイスとしてモナーに提案していたのだ。

荒巻がモナーら独裁者達に賛同したという話は、報道関係に扱わせなかった。
モナーの演説をスムーズに、あるいは牽引力の側面を強化させる為である。

( ´Д`)「諸君! 死んでしまえば夢もクソも無いのだ!
      敵は強い! 諸君が思っている以上に、遥かにだ!」

( ´Д`)「故に、ひ弱な我々人間が奴等に勝利するには、まず一丸となる必要がある!」

( ´Д`)「勝つ為には、知恵と資材を一箇所に寄せ集めなければならないのだ!
      生きる為には、全員が等しく辛抱しなければならないのだ!」

モナーは徐々に声を張り、そして身振り手振りを更に激しくしてゆく。

(#´Д`)「諸君! 『セントラル』で生きるという事はサバイバル生活なのだ!
      人口約100万人によるサバイバル生活だ!
      数十億の異形の者達と相手をする、サバイバルなのだ!!」

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 08:47:40.34 ID:Rf1Sk0sp0
遂には、こめかみに青筋を浮かべて叫ぶモナー。
握った拳を力のままに演説台に叩き付け、白髪を乱し、
形振り構わず自分の考えと『セントラル』の危機を訴える。


(#´Д`)「いつまでも偽りの安寧に甘んじていては駄目なのだ!
       過去の遺物に順じているばかりでは駄目なのだ!
       我々全員が未来を迎える為には! 我々全員が変わらなければならないのだ!」



(#´Д`)「諸君! 今こそ変革の時だ! 今こそ奴等に反撃する時だ!」



そこまで言い終えると、モナーは市民達を視線で撫でながら
荒々しい息を整える事に務めた。
しかし、市民が更に言葉を待っているような気がしたモナーは、
心肺の激しい運動を無視して、続きを、締めにあたる最後の言葉を述べる。


( ´Д`)「……再び、」

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 08:50:41.67 ID:Rf1Sk0sp0


( ´Д`)「再び、太陽の下で生きようではないか!
      疑似陽光などではなく! 本当の日の光を浴びて!」

最後は穏やかながらも、やはり力強かった。


『モナー・ヴァンヘイレン!!』

『フューラー・モナー!!』

彼の名と、ドイツ風の「フューラー」――ドイツ語は冗談であろう――で織り成す
大歓声がモナーに送られた。モナーはそれに対し、何度も頷いて見せた。


――総統、モナー・ヴァンヘイレン。

その権限は迅速に整備されてゆくはずだが、今、2つの事が断言できる。
『セントラル』最高の官職であり、今後はモナーが国政と軍事を統括してゆく、という事だ。

(;´Д`)(受け入れてくれたか……)

ともかく、『セントラル』は独裁という政治体制を受け入れたのだ。
問題は山積みであるが、きっと難無く迅速にクリアしてゆくだろう。
一丸となった『セントラル』には、そのパワーがあると、モナーは信じている。

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 08:53:56.08 ID:Rf1Sk0sp0

(;´∀`)(君達のおかげだ、ブーン! ツン君!)

演説台を離れず、一度モナーは身体の向きを変えて、
ブーンとツンに笑顔を見せた。

( ^ω^)(モナーさん、必ず『セントラル』を良い方向に向かわせてくださいお)

ξ゚ー゚)ξ(ようやく、『セントラル』があるべき姿に成ろうとしてますね)

お互いに軽く会釈した後、モナーは大歓声のまま演説台を後にした。
ふと、モナーはモララーが視線を送っている事に気がつく。
モナーは軽く顎を下げて意を伝えた。

( ´Д`)(モララー、『セントラル』はまとまったぞ!)

モララーは同様の方法でモナーに返してから、椅子を立つ。


( ・∀・)(変革に関して『セントラル』が重要だとすれば、“我が主”が
      貴方を選んだのは正解だな。予想以上の成果を挙げるだろう)

( ・∀・)(恐らく“主”はセントラル市民の意識を変革させ、武力を限界まで引き上げる事と、
      一方でウィルスコントロールによる変革の両方を狙っている。
      だが、真に期待を寄せているのはウィルスコントロールだ)

( ・∀・)(システム・ディレイク、ブルーエネルギー、バトルスーツ、
      そしてHollow-Soldier……。
      いずれも強力な兵器であるが、セカンドの成長速度の前には霞んでしまうからな)

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 09:07:55.50 ID:Rf1Sk0sp0
( ・∀・)(しかし、この世において人間の知恵は紛れもなく『最強』であった。
      セカンドウィルスと出会うまではな……)

( ・∀・)(では、その二つが融合したら?
      ……その時、究極の生物が誕生する。“主”の狙いは、まさにそれだ)

( ・∀・)(セカンドウィルスは、人類を破滅に追いやる死のウィルスではなかった。
      人類を次のステージに押し上げる為の、神からの贈り物――いや、それも違う)

( ・∀・)(さしずめ、人類の知恵が
      宇宙空間でもぎ取った第二の禁断の果実、と言ったところか)

思考の終了と同時に演説台に立つモララー。
自分の役割を果たす番だ、と、思考はすぐに切り替わる。

( ・∀・)「皆さんの歓声を答えとして取らせて頂きます。
      ご理解、心より感謝します。モナーに代わり、私が今後について説明致します」

( ・∀・)「さて……大きな変化に伴い、予算をゼロから組む必要があります。
      当初予定していた予算会を更に一週間遅らせ、
      来る2月の半ばに第一回予算会を開くつもりで動きます」

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 09:12:24.01 ID:Rf1Sk0sp0

( ・∀・)「その間、各社、各ラボの大多数を解体し、
      議会が存続を決定する各社ラボに人員を配置したいと考えています。
      配属については、一人一人の技術及び希望を考慮するつもりです」

( ・∀・)「急な変化に戸惑うかと思われますが、これも我々人類が生存してゆく為です。
      何卒ご理解の程、よろしくお願い申し上げます」

( ・∀・)「最後に一つ。今から亡き荒巻スカルチノフの葬儀を行います。
      身寄りの無い荒巻でしたが、皆さんが彼の家族であると私は信じたい。
      亡き我々の父の葬儀に、是非立ち会って頂きたい」

会場は再び大歓声に包まれた。
葬儀の段取りが行われている事を知ると、
ようやく荒巻スカルチノフの死を受け入れて涙を流す市民までいる程だ。

資本主義社会の再現から始まった彼の政治活動は、
『セントラル』を土台から作り上げていたと言える。
これは荒巻を否定する現在のモナーらも、認めている事である。

自分を守る防壁の構築と整備、権力の維持――それが行動原理だったとしても、
荒巻スカルチノフは紛れも無く『セントラル』の一番の功労者であったのだ。

市民全員による盛大な葬儀を終え、
本日の集会はその幕を下ろした。

 ___

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 09:16:04.81 ID:Rf1Sk0sp0
 ※

ガイル「批判的な声は絶えないだろうけど、
     それでも思ってた以上に賛同を得たな」

チーム・ディレイク、アルドリッチの面々は、ツンのラボに集まっていた。
皆、ショボンが持ってきた「ショボンの雫」という柑橘系のジュースを片手に、
談笑を楽しんでいる。内容は勿論、今後の『セントラル』の動向についてだ。

( ゚∀゚)「少なからず、皆が“塀の違和感”を感じていたって訳かね。
     それはそうと、モナー・ヴァンヘイレンは良い指導者になりそうだな」

一人、ジョルジュはジュース・グラスを持っていない。

(´・ω・`)「カリズマで言えば、荒巻スカルチノフに優る人はいないと思っていましたがね。
      モナーさんにあれ程の牽引力があるなんて驚きましたよ。
      そういう意味では、頼もしい限りです」

ショボンが、ジョルジュへの配慮をうっかり忘れてしまったのだ。

ショボンは謝罪しようとしたが、ジョルジュに「気にする事無いさ」と制された。
「いつか大盤振る舞いします」とショボンはジョルジュに約束を取り付け、
彼等のファーストコンタクトは無事に終わったのである。

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 09:18:44.78 ID:Rf1Sk0sp0

('A`)「新セントラル議会は人材も厳選するらしい。
    うまーく『セントラル』を使ってくれるだろうよ」

ドクオの新セントラル議会に対する言い草は、相変わらずどこか刺々しい。
ツンはムッとして、ブーンの修理作業を止めずに口を挟む。

ξ゚听)ξ「なによアンタ、まだ納得いってないの?」

('A`)「行く訳ねーさ。荒巻スカルチノフは殺されたんだ」

( ゚∀゚)「交代劇の裏側ではよくある事だ、ドクオ。
     『セントラル』がより良い方向に進もうとしているんなら、
     お前も荒巻暗殺を受け入れるべきだ」

(;'A`)「……ジョルジュさん、俺だって独裁制は正しいと思っている。
    でも、俺はモララーの言葉が白々しく感じてしまった!
    あんな奴が統括していって、果たして本当に良い方向に進むんだろうか!?」

从 ゚∀从「モララーが? どうして?」

(;'A`)「あ、それは……」

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 09:22:22.53 ID:Rf1Sk0sp0

ξ゚听)ξ「一つ言っておくと、荒巻氏を殺害する動機が見当たらないわ。
      荒巻が生きていたのなら、彼も他の議員と同じように
      クローン兵という武力で制圧すればよかったんじゃない?」

(;'A`)「あ…………そっか……そうなるな……」

荒巻は殺されたのではなく、過労で死んだ。
そう納得せざるを得ない意見である。

しかし、ドクオの胸の痞えは無くならない。
それどころか、ますます大きくなる一方だった。

(;'A`)(何かおかしいだろ、やっぱり。俺が違和感を感じている部分は何だ?)

ドクオが深く思案している。
誰の目にもそれが明らかで、誰もが何と声を掛けるべきかと悩む中、
ジョルジュが口を開いた。

( ゚∀゚)「……ふむ、ならば変えるまでだ、ドクオ。
     奴に致命的な落ち度があると分かった時、引き摺り下ろせばいい」

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 09:25:26.00 ID:Rf1Sk0sp0

(´・ω・`)「ジョルジュさんと同意見だ、ドクオ。
      ここでお前がジタバタしても、現状は変わらないんだ」

(;'A`)「ショボン……」


('A`)「……そうだな、悪かったよ、皆」

――確証の無い今は、現状を受け入れるしかないのだ。
唯一確かな事は、クローン兵がクー・ルーレイロであるという事。
それが、この件の真相を暴く切り口になるはずだ。

一刻も早く、何故クーがクローン兵となったのかが知りたい。

ドクオは、自分自身の為にも、強くそう願うのだった。


从 ゚∀从「……にしてもさ、アタシ、胸が高鳴ったよ!
      今こそ反撃の時だ! なんて、最高だった!」

場を盛り返したく、ハインリッヒは話題を戻そうとした。
春麗が「同感です!」と強く同調する。

从 ゚∀从「春麗、これから本格的に戦力整備が行われる。
      ウチにコストを回してくれる事をモナー氏自身が匂わせていたし、
      そうなればバトルスーツUの完成は早まるぞ! くぅー! 楽しみだぜェー!」

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 09:30:29.26 ID:Rf1Sk0sp0

( ゚∀゚)「バトルスーツUか。俺も乗ってみたいもんだ」

从;゚∀从「ジョルジュ……」

( ゚∀゚)「そんな顔するなよハイン。乗ってみせるさ。
     そう簡単にセカンド化するもンかよ」


ξ; )ξ(ジョルジュさん……)

ツンは指を動かすのをやめ、ジョルジュの部屋での会話を思い返す。

ジョルジュは、自分がセカンド化すると確信している。
それはあくまで肉体的な意味で、人間である事を諦めているのではない。
しかし、ウィルスを振り撒く異形と化せば、ビロードの免疫があれど『セントラル』にいる事は難しくなる。

人とは異なる外見……それだけで人々に酷く恐れられるのは、
非感染者の自分でも想像するのは容易。

彼がハインに言った事など、彼女への気遣いなだけ。
セカンドになってしまうまで、せめてもと、彼女達を励まそうとしているんだろう。

どんな思いでハインを励ましているのだろうか。
非感染者の私が想像するのは、また彼におこがましく思われるかもしれない。
でも、恐らく、言い表せないような焦燥と孤独を抱いているに違いないと、私は思う。

 __

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 09:34:26.93 ID:Rf1Sk0sp0
 ※


「やあ、プギャー」


( ^Д^)「これはこれは……何の御用でしょう?」

「ビロード・ハリスの細胞について、何か発見はあったかい?
 ウィルス感染を予防できる抗体には成り得る、それは間違い無さそうだが」

( ^Д^)「彼の細胞については私も同じ見解です。
      セカンド化に伴う理性消失を抑える事とは関係は無いでしょう」

「そうか。となると、やはり有力なのは意思。
 ギコ・アモットが憎悪を燃やして自身を保ったように、確固たる意思が理性の消失を防ぐのだろう」

「ジョルジュ・ジグラードが最適なサンプルになる」

( ^Д^)「私達では?」

「嬉しい申し立てだが、クー・ルーレイロが失敗した。
 君達では被験者を務める事は不可能だ」

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 09:37:54.33 ID:Rf1Sk0sp0


( ^Д^)「そうですか……ところで、集会はご覧になりましたか?」

「ああ、勿論だとも。勇敢なるセントラル市民だと言いたいところだが、
 今となっては実に滑稽に見えてしまうね……」

( ^Д^)「やはり、見限りましたか」

「うむ。大仰な言葉で奮い立ってはいるが、
 あれこそ現実逃避だ。彼等は未だに塀の中で夢を見ているんだよ」

「セントラルが団結しようとも、奴等の成長と繁殖の速度には到底追いつけない。
 時間はあろうとも資源が無い。資源を調達している間に、
 奴等は休み無く数を増やし続け、あるいは進化し続ける」

「そういう意味で、ホライゾン・ナイトウの言葉は気に食わなかった」

( ^Д^)「と、言いますと?」

「人間の可能性は無限……フッ、皮肉にしか聞こえんよ」

「確かに、我々人間は自身が持つ可能性を発揮し、あらゆる環境に適応してきた。
 しかし、もはやそれも限界だという事に誰もが気づいていない。
 このままでは、いずれ我々人類はウィルスに淘汰されてしまうのさ」

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 09:47:52.62 ID:Rf1Sk0sp0

「しかしその一方……人類の定義とは、理性と知恵を持っている事。
 B00N-D1の記録の中でギコ・アモットは自身を人間だと言っていたが、
 プギャー、私はそれを認めてやりたいと心から思ったよ」

( ^Д^)「理性と知恵を守る。それこそが人類の存続、と成り得るのですね。
      そしてその為にも、ウィルスコントロールを実証しなければなりませんね」

「うむ…… クローンを用いた抗老手術、人体強化……。
 人間が生きる上で最も重大な環境適応は、
 私の……ラウンジのバイオテクノロジーが完成したはずだった」

「そしてフィレンクト・ディレイクのサイボーグ理論も」

「ウィルスが現れるまでは全て順調だと思われていたが……
 我々人間がウィルスに頼らざるを得ないとは、なんとも皮肉なものだな」

( ^Д^)「胸中、お察しします」

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 10:01:47.35 ID:Rf1Sk0sp0
「ふふ、だがね、プギャー。私は今の人類の状況を悲観こそしているが、
 一方でウィルスに対する好奇心は強まっていくばかりさ。
 特に、ギコ・アモットという存在に出会ってからはね」


「私の頭脳を持っても手に負えなかったセカンドウィルス……!
 だが! B00N-D1がコントロールの手がかりを見つけてくれた!」

「ウィルスをコントロールした時! 人類は飛躍的に、加速的に進化と進歩を遂げる!
 私のクローンも抗老化も、フィレンクトのサイボーグ理論も比較にならない程に……!」

「牙や翼といった防衛機能を、遂に我々人類も手にする事が出来る……!
 ウィルスが蔓延したこの世界で我々が環境適応するには、
 もはや知恵だけでは足りんのだ!」


爪'ー`)y‐「プギャー、私は遂行しなければならない、変革を……全人類の『サード』化を!
      人の意思と知恵を保つには、セカンドウィルスを制御しなければならない!」


( ^Д^)「貴方以外の何者にそれが遂行出来ますでしょうか、
      我が主……フォックス・ラウンジ・オズボーン」


                                   第27話「変革の開始」終

99 名前: ◆jVEgVW6U6s :2010/01/25(月) 10:05:21.40 ID:Rf1Sk0sp0
や、やっとおわった
今日の夕方くらいから始めればよかったと大後悔

付き合ってくれた方、ありがとうございました&お疲れ様でした

ちょっと休憩してオマケも投下するお

102 名前: ◆jVEgVW6U6s :2010/01/25(月) 10:19:58.93 ID:Rf1Sk0sp0

 よい子のためのオマケ小説

 ィ'ト―-イ、
 以`゚益゚以
  (    ) は 街 で 狩 り を す る よ う で す
  u  u
                     第2話「変身! アーマーシステム!!」

103 名前: ◆jVEgVW6U6s :2010/01/25(月) 10:24:00.02 ID:Rf1Sk0sp0
 −前回までのイトーイ−

ウィルスが蔓延してしまったFC2シティ!
ブーンは異形から逃げながら、はぐれてしまったクーを探すが、
その途中、なんと車にはねられてしまった!

ブーンをはねた張本人、ツン・ディレイクは、
瀕死状態のブーンを救う為に戦闘用サイボーグへ改造した!


ブーンは怒り狂った!!

二頭身のぶちぎれた市松人形みたいな姿にされたからだ!!


そんな時! クーの声が聞こえた!!(ギャアピー
サイボーグ、システム市松と化したブーンは、
クーを救う為、街を駆ける……!!

104 名前: ◆jVEgVW6U6s :2010/01/25(月) 10:27:59.09 ID:Rf1Sk0sp0

   ィ'ト―-イ、
   以;`゚益゚以 ウオオオオオオオ!!
   ( O┬O
≡◎-ヽJ┴◎ キコキコキコキコ


ィ'ト―-イ、
以;゚益゚以「……ええい! チャリンコじゃ速度が出んお!
       っつーか走ったほうが速いんじゃねーかお?」

「待ちな、イトーイ」

ィ'ト―-イ、
以;゚益゚以「んお? どこからか声が聞こえたお?
       僕の幻聴でなければ自転車から聞こえたような……」

「その通りだイトーイ、お前の乗るチャリンコが喋ってるんだ!」

ィ'ト―-イ、
以;゚益゚以「き――――」

105 名前: ◆jVEgVW6U6s :2010/01/25(月) 10:32:40.28 ID:Rf1Sk0sp0

キュイン、カシュッ、カシュ、ガコン、ガコン、ウィーン

ブーンの跨っているチャリンコが、変形し始める。
ブーンが戸惑うのを余所に、変形は進み、そして――

                 ィ'ト―-イ、
                 以;゚益゚以 ∧_∧
                   /   つ.( ´∀`)
           .       ι\ \ヽ/⌒ヽ/\
       -=≡  /⌒ヽ,  / (__)   \\ ヽ/⌒ヽ,
     -=≡   /   |_/__i.ノ ,へ _    _/ \\/   | /ii
    -=≡.  ノ⌒二__ノ__ノ  ̄ ̄     \ヽ  |./ |i
   -=≡   ()二二)― ||二)        ()二 し二) ― ||二)
    -=≡  し|  | \.||             .|   .|\ ||
     -=≡   i  .|  ii               i  |  .ii
     -=≡   ゙、_ ノ               .゙、 _ノ


ィ'ト―-イ、
以;゚益゚以「き、きめえ……信じられないほどキモいオッサンに変形したお……」

( ´∀`)「オッサンじゃねえ! BLACK DOGと呼びな!」

――八頭身のオッサンになったのである。

107 名前: ◆jVEgVW6U6s :2010/01/25(月) 10:36:22.60 ID:Rf1Sk0sp0
八頭身のオッサンは実に速い。
全てを置き去りにするほどの速度で道路を駆け抜けてゆく。

ィ'ト―-イ、
以;゚益゚以「速ええええええええええええええええええ!!!」

( ´∀`)「空陸両用可変型戦闘バイクBLACK DOGだ。
      今日から狩りを共にするパートナーって訳よ、よろしくな、イトーイ」

ィ'ト―-イ、
以;゚益゚以「イトーイって呼ぶんじゃねえお!
       僕はブーンだお! っつーかイトーイって何だチクショウ!!」

( ´∀`)「市松システムの現バージョンが1101、つまりイトーイさ。
      どうだい!? なんともクールな響きだろう!?」

ィ'ト―-イ、
以;゚益゚以「ちっともクールじゃねえ!
       っつーかBLACK DOGとイトーイじゃ大差ありすぎでムカつくお!
       普通にブーンって呼んでくれお! ブーンって!」

( ´∀`)「チッ、お堅いぜ……まあ、今後ともよろしくな、“相棒”!」

ブゥゥゥゥーン

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 10:36:56.81 ID:Mp7S2iDO0
なんて時間に投下してやがんだw


支援支援

109 名前: ◆jVEgVW6U6s :2010/01/25(月) 10:38:56.90 ID:Rf1Sk0sp0

( ´∀`)「にしても、まあ」 シュボッ

( ´∀`)y-~~「ふうー……難儀なものだな」

ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「? 何がだお?」

( ´∀`)y-~~「ツン博士から聞いているぜ。
         命を救われたが戦闘用サイボーグにされちまったんだろ?」
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「ぶちぎれた市松人形フェイスじゃなきゃ、文句は無いんだお。
       ウィルスが蔓延ったこの世界で誰かを守るには、力は必要だお」

ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「……ジオシティで僕は見たんだ。軍隊が壊滅していく様を。
       FC2が“外壁”を作り終えたものの、
       ここだってウィルスが蔓延してしまうに決まってるお」

ジオシティ。ここから南におよそ50キロに位置する街であり、
ブーンとクーの生まれ育った故郷でもある。

ジオシティはメトロポリスの一角を担う、このニューソク合衆国の経済を支える重要拠点だ。
滅べば被害損額は数兆上乗せする事が予想されており、
国は是が非でも防衛したいところだったが……結果はブーンの言う通りだ。
もっとも、損額もクソも無い状況となったのは、言うまでも無い。

110 名前: ◆jVEgVW6U6s :2010/01/25(月) 10:42:59.13 ID:Rf1Sk0sp0
ウィルス北上のニュースを聞いた人々は北へと逃げた。
そしてジオシティ市民も、外壁に守られた安全な街、FC2の噂を聞いて逃げ込んだのだ。
ブーンとクーは、その中の一人である。

しかし、このFC2も侵入を許すであろうという
軍部の情報が何処かから漏れて流れてしまったのだ。
人々はパニック状態に陥り、「外壁」を押し開けて更なる北上を目指したのだ。

ブーンとクーがはぐれたのは、その喧噪の最中であった。

( ´∀`)y‐~~「やはり、軍はウィルスの北上を食い止められなかったか」

ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「……ねえ、BLACK DOG」

( ´∀`)y-~~「改まって何だい、相棒?」

ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「軍が全く歯が立たないというのに、僕に奴等を倒す力はあるのかお?
      ツン先生は、奴等から人々を救うにはこれしか無いと言っていたけど……」

112 名前: ◆jVEgVW6U6s :2010/01/25(月) 11:06:41.44 ID:Rf1Sk0sp0



   ______
  ||// ィ'ト―-イ、|ィ'ト―-イ、
  ||/  以`゚益゚以 以   以
  ||   (    )  | (    )
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ u―u'


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    こんな二頭身の身体じゃあ、ネタとしか思えねえんだお……


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113 名前: ◆jVEgVW6U6s :2010/01/25(月) 11:10:34.86 ID:Rf1Sk0sp0


( ´∀`)「安心しな、相棒」

BLACK DOGはまだ長く残っている煙草を吐き捨て、言った。


( ´∀`)「――その為の、俺だ」


ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「どういう事だお?」

( ´∀`)「なに、じきに分かる」

その時、ツンからの通信が、BLACK DOGに入る。

『ブーン君! BLACK DOG!
 人々がセカンドに襲われているという情報が入ったわ! 急いで!!」

( ´Д`)「……って事らしい相棒! お喋りは一旦終了だ!!
      口閉じてろよォ。――――飛ばすぜ!!」

ギュヒュウー―――ン!!

115 名前: ◆jVEgVW6U6s :2010/01/25(月) 11:12:50.46 ID:Rf1Sk0sp0
: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :


    クー……今、助けに行くお! 無事でいてくれ……!


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                 ィ'ト―-イ、
                 以`゚益゚以 ∧_∧
                   /   つ.( ´Д`)
           .       ι\ \ヽ/⌒ヽ/\
       -=≡  /⌒ヽ,  / (__)   \\ ヽ/⌒ヽ,
     -=≡   /   |_/__i.ノ ,へ _    _/ \\/   | /ii
    -=≡.  ノ⌒二__ノ__ノ  ̄ ̄     \ヽ  |./ |i
   -=≡   ()二二)― ||二)        ()二 し二) ― ||二)
    -=≡  し|  | \.||             .|   .|\ ||
     -=≡   i  .|  ii               i  |  .ii
     -=≡   ゙、_ ノ               .゙、 _ノ  300q/h

116 名前: ◆jVEgVW6U6s :2010/01/25(月) 11:17:04.14 ID:Rf1Sk0sp0

川;゚Д゚)「ぎゃあぴいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」


〜●《ドッピュピュッピュ!! ゴウセイシッピュッピュドピュッピュ!!》

クーは恐怖のあまり、絶叫する事しか出来なかった。
精子に酷似した形状を持つセカンドが、次々に男を取り込んで喰らい、
そして女を孕ませているのだ。

丸みを帯びた頭部、その後ろから伸びた「尾」を女性器に挿入し、
多量の精液を送り込み、孕ませる。
ウィルスを含んだ精液は瞬く間に卵巣内に侵入し、強制的に反応を起こし、
そして急速的に成長を遂げ――子が母親の腹を突き破って産声を上げるのだ。

逃げようにも、幾百ものセカンドが退路を塞ぎ、
人々はもはや奴等に食われるのを、絶望しながら待つ事しか出来なかった。

そして今、クーが陵辱と死の危険に迫っている。

川;゚Д゚)「誰かあ! ヘルプ! ヘルプクー!!」

〜●《ゴセッセイシドッピュンコドッピュユードピュ》
(こいつは美味そうな女だ! うひひひ! 犯してえwwwwww》


――セカンドの尾が、クーに近づく……!

117 名前: ◆jVEgVW6U6s :2010/01/25(月) 11:19:49.54 ID:Rf1Sk0sp0


「待てお!!」


川;゚ -゚)「え?」

「た、助けが来たのか!?」


〜●《――――ドビュッシー!?》(誰だ!?)

118 名前: ◆jVEgVW6U6s :2010/01/25(月) 11:23:18.30 ID:Rf1Sk0sp0


     ィ'ト―-イ、
     以`゚益゚以 「僕が相手だお!!」
     (   G
      u  u



川 ゚ -゚)「やだ……かわいい……」






\川;゚Д゚)/「だめだああああああああああ!!
         私の人生軽やかに終わった――――――!!!」

119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 11:23:18.14 ID:Mp7S2iDO0
イカ臭そうなセカンドだな


支援

120 名前: ◆jVEgVW6U6s :2010/01/25(月) 11:26:05.79 ID:Rf1Sk0sp0



〜●《ドッビュウwwwwwwwワロッシュwwwwwwwwww》
(二頭身の人形がなんか息巻いてやがるぜwww殺してやるwwwwwwww)


=〜●
===〜● ドッビュウウ!!
〜●


ィ'ト―-イ、
以;゚益゚以「クー! みんなを連れて安全な場所へ!!」


川;゚ -゚)「え!? わ、分かった!!」


川;゚ -゚)(あの人、どうして私の名前を……?)

121 名前: ◆jVEgVW6U6s :2010/01/25(月) 11:31:01.91 ID:Rf1Sk0sp0

ィ'ト―-イ、
以;゚益゚以(しかし! こんな数を相手に出来るのかお!?
       っつーか二頭身じゃ走る事もままならねーお!)


( ´Д`)「相棒! 先走って一人で行くんじゃn――」


(;´Д`)「――相棒! 『アーマーシステム起動』と叫ぶんだ!!」


ィ'ト―-イ、
以;゚益゚以「BLACK DOG!?」


(;´Д`)「早くしろ! そのままじゃ殺されちまうぞ!!」

ィ'ト―-イ、
以;゚益゚以「よ、よくわからんがやってやるお!
       ……アーマーシステム、起動!!」

122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 11:34:19.79 ID:Mp7S2iDO0
もしや二頭身と八頭身が合体するのか・・・ゴクリ



支援

123 名前: ◆jVEgVW6U6s :2010/01/25(月) 11:34:58.47 ID:Rf1Sk0sp0


――「アーマーシステム」という宣言と共に、BLACK DOGが変形を開始した。
その巨大なボディはエンジン部を中心に細かく四散し、空中で更に形を変えてゆく。

全てのパーツから青色のレーザーマーカーが発射され、
ブーンの体の各部位を照らしたのだ。
失った四肢にも、そこにあるもの仮定するかのようにマーキングしている。


〜● 《ドッピュピュピュピュ!! ザザザザームェエエン!!!!》
(悪あがきはよしなボーイ! 俺達の餌になるがいい!!)


「鎧」の形状を模ったパーツ各位が、ブーンの体を中心に集合する……!

128 名前: ◆jVEgVW6U6s :2010/01/25(月) 12:06:42.74 ID:Rf1Sk0sp0


            ィ'ト―-イ、             /\  /ヽ
             以`゚益゚以         ヽ、 lヽ'  ` ´   \/l
          ,ノ      ヽ、_,,,      ヽ `'          /
       /´`''" '"´``Y'""``'j   ヽ     |     _ノ ̄/   l
      { ,ノ' i| ,. ,、 ,,|,,. 、_/´ ,-,,.;;l     .l   / ̄  /   |
      '、 ヾ ,`''-‐‐'''" ̄_{ ,ノi,、;;;ノ      l   ̄/ /     |
       ヽ、,  ,.- ,.,'/`''`,,_ ,,/     ヽ.    /__/     .|
        `''ゞ-‐'" `'ヽ、,,、,、,,r'       |.            レ
          ,ノ  ヾ  ,, ''";l         |    / ̄/     l
         ./        ;ヽ       .|.   /  ゙ー-;   l
        .l   ヽ,,  ,/   ;;;l       |   /  /ー--'゙   |
        |    ,ヽ,, /    ;;;|      .|.  /_/       |
        |   ,' ;;;l l ;;'i,   ;|      |.     _      |
        li   /  / l `'ヽ, 、;|      /    /  /      l
       l jヾノ ,ノ  ヽ  l  ,i|     /    / /      ヽ
       l`'''" ヽ    `l: `''"`i     `l   / /      l
       .l ,. i,'  }     li '、 ;;' |       |   ̄       ヽ
        l ; j / _, -― ' ̄ ̄`ー‐-、_   |     ノ ̄/   /´
 , .--、,,__,,-' ̄;;"`´ ;; __  __, -―- 、;; ̄`l  / ̄  /   |
 ;;  ,__   ;;'    r ' ´;;; ヽ_ゝ_;;|    lヽ, / .  ̄/ /    |
;, Y´| l  __  /`'| |   |  l  l;|     l ヽ l .   /__/     /
  | |.;;l_,-'l | V | |.l .|   .|    l  i i   | ;lヽ|         l
 |.| ''.|/ l  |;;;| | | | ;|  |   | ;l l| i ;;;; l | l  !!  /ヽ │
;; i /   .il /| |.| |  |   i  |   | l i  '`i l /  ̄\/ ̄   ヽノ

129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/25(月) 12:07:13.75 ID:Mp7S2iDO0
こえーよwww

支援



130 名前: ◆jVEgVW6U6s :2010/01/25(月) 12:09:18.80 ID:Rf1Sk0sp0


            ィ'ト―-イ、
             以`゚益゚以   SALが超手強いので、今日はこの辺で。
          ,ノ      ヽ、_,,,  それではまた次回お会いしましょうぞ
       /´`''" '"´``Y'""``'j   ヽ
      { ,ノ' i| ,. ,、 ,,|,,. 、_/´ ,-,,.;;l
      '、 ヾ ,`''-‐‐'''" ̄_{ ,ノi,、;;;ノ
       ヽ、,  ,.- ,.,'/`''`,,_ ,,/
        `''ゞ-‐'" `'ヽ、,,、,、,,r'
          ,ノ  ヾ  ,, ''";l

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