( ^ω^)は街で狩りをするようです
- 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 15:39:46.05 ID:Wr9tV1Ob0
- __,, , , , _ 、 ,,, ... ,, _ ..,_
ー=、 、ー-、`ヽ、、ヽ`!i' , ,i",r'",-'"=ミ
`ヽ`ヾ`、 ! ヽ ! l! i! !_i_/_<'"``
`,ゝ、iliー'" "、,"、', i, リ
!/!,li ,;;-=o=-,ッィ=。ゥィ
__ i、`!', '; `ー /;;!i、''; ,! 出番が無い……出番が無いのなら……
ー''`ヽ`,ーi'`''"!、ヽ , `一'、 / __ ――――俺は>>1に居続けるッ!!
`il `i ! ヽ、  ̄ ̄ / iヽ、/ ,.ヽ_
i! !` `ーァ、-ー' ! ノ!トi,!'",ノ-、
,..=、i! iヽ-、 rィ',;'!ヽー-、! `/_,i' _,.!'、 ( ^ω^)は街で狩りをするようです 第17話 投下します
ーニー-、._ `ヽゞニ-、.;' i! ! , `ト_ノ`x-'" ノ まとめはこちら 内藤エスカルゴさん
=ニヽ、 , `, /ヾ=ソ ノ !/ !、`ー`''イ、 http://www.geocities.jp/local_boon/boon/Hunt/top.html
-ー-、 `i, / / ヽ `イ_, i -'" ̄`! ! ヽ
ゝノ /-'" ` ' ! ヽ !
ガイル「こうして居座れば俺の人気はうなぎ上り! あけましておめでとうございます!!」
( ^ω^)「はいはい分かりましたお。このスペースは好きに使うといいお」
ガイル「サンキューブーン! これでガイル系小説は始まるな!」
???「――――そうはいかんざきいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
ガイル「「お、お前は――――ッ!?」」(^ω^;)
- 2 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 15:40:33.15 ID:Wr9tV1Ob0
- 登場人物一覧
――― チーム・ディレイク ―――
( ^ω^)B00N-D1:通称ブーン、本名不明。年齢20歳。戦闘員。
セカンドに対する強い免疫を持つ強化人間「システム・ディレイク」。
人類が発見されたボストンに到着し、現地の人々と接触する。
体の修理を受け、その礼として地下研究区画内のセカンド狩りを引き受ける。
ξ゚听)ξツン・ディレイク:年齢19歳。チームリーダー。
ブーンを強化人間に改造した弱冠19歳の天才科学少女。
過去セカンドに襲われ両腕を失い、義手を着用。貧乳。嫌煙家。
父親サイボーグ技術の権威であるフィレンクト・ディレイクを父に持つ。
('A`)ドクオ・アーランドソン:年齢21歳。武器開発担当。
豊富なアイディアで強力な武器や乗り物を開発し、ブーンの戦闘をサポートする。
ツンをからかうお調子者の変態。空気を読まない。
ショボン、阿部と共に、「クー・ルーレイロ」なる人物とクローンシステムの真相を暴こうと企む。
- 3 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 15:41:37.02 ID:Wr9tV1Ob0
- ――― セントラルの人々 ―――
( ・∀・)モララー・スタンレー:年齢30歳。セントラル議会・議会長補佐。
バイオテクノロジーの権威「ラウンジ社」の元社員で、優れた科学者。
自身の研究成果である「Hollow-Soldier」を従える。
( 〓 )Hollow-Soldier(虚ろな兵士):年齢不明。
モララーにより生み出された超人。
クローンテクノロジーにより量産され、部隊として編成された。
クー・ルーレイロなる人物がクローンのオリジナルとなっているらしい。
(´・ω・`)ショボン・トットマン:25歳。バーテンダー。
不味いと不評のバー、バーボンハウスの店主であるダンディな男。
その実態はガチホモであるが、精を出しているのは酒造りである。
ドクオに仕事を依頼するが、困難であると判断し、阿部さんに助力を頼む。
阿部さん 阿部高和:28歳。カレー屋の店長。
ksmsカレー阿部というカレー屋を営むイイ男。
その実態はガチホモであるが、精を出しているのはカレー作り…だけでは無い様子。
経歴は、ショボン同様に不明である。
- 4 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 15:43:04.62 ID:Wr9tV1Ob0
- ――― ボストンの人々 ―――
( ´_ゝ`)アニー・サスガ:26歳。サイボーグ技師。
セカンドウィルス拡大に備え、ハーバード大学の地下研究区域を改造。
ボストンにウィルスが蔓延して以来、5年の時を地下で過ごす。
セカンド化した弟「オットー」にサイバーウェアを搭載し、何かしらの処置を行っている。
(*゚ー゚)シーケルト・ゴソウ:26歳。サイボーグ技師。通称しぃ。
学生時代、生物工学においてサイボーグ技術を学んだ美しき秀才。
地下生活前から同期のアニーとは恋人の関係にあるが、
オットー、ギコらを含めた複雑な四角関係の中心人物であった。
(,,゚Д゚)ギコ・アモット:26歳。戦闘用サイボーグ。
ハイスクール、大学をシーケルトと共に恋人として過ごしていたが、
アニーの出現により、恋人としての縁を切られてしまった。
サイバーウェア“System-Hollow”を搭載し、感情に囚われない合理的戦闘を可能にしたサイボーグ。
( ><)ビロード・ハリス:9歳。
アニー達と地下研究区域で生活してきた少年。詳細は不明。
ソリッド・スネーク:本名、年齢共に不明。通称スネーク。戦闘用サイボーグ。
元傭兵という事以外に不明な男。
唯一の喫煙者である彼は煙たがられ、追いやられている。
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 15:43:56.90 ID:6PyJ87lx0
- 支援
- 6 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 15:45:29.46 ID:Wr9tV1Ob0
- 第17話「戦う理由」
( ^ω^)「アニーの弟が、感染者……」
敢えてブーンは、「感染者」と言った。
「セカンド」とは奴等――街に蠢く野獣を指す名であるからだ。
シーケルトもそれを踏まえて感染者とセカンドを差別的にしているのは、
感染したオットーを生存者としてカウントしている事で明白となっている。
( ^ω^)(つまり此処の人達は……アニーは……)
(*゚−゚)「――アニーは、オットーを治そうとしているわ」
ブーンの予想は、シーケルトの発言により事実へと変化した。
シーケルトは夢中でゲームをやっているビロードの隣に、腰を下ろす。
肺の空気を一気に抜くような溜息の後、抑揚を押えたトーンで話し始める。
(*゚−゚)「アニーは私を手伝わせようとしないの。危険だからって」
(*゚−゚)「……それと、オットーを見せたくないからって」
シーケルトは視線をブーンからずらして虚空を見つめた。
紅色の健康的な唇から、それに似つかわしくない気怠い吐息が再び吐き出される。
- 7 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 15:47:15.34 ID:Wr9tV1Ob0
-
( ^ω^)「……見せたくない程、酷いんですかお?」
何が、どのように、酷いのか。
具体的に聞かず、あくまで抽象的な質問を、恐る恐るブーンは投げかけた。
あまり間を空けずして、シーケルトが答える。
(*゚−゚)「……分からないわ。私が最後にオットーを見たのは、五年も前よ。
その時、オットーはマスクを被っていたし。
感染した後どうなったのか、知ってるのはアニーとギコ君だけなのよ……」
むう、とブーンは低い唸りをたてて相槌した。
(*゚−゚)「でも、アニーが言うには、変異の進行は止まったみたいなの。
後は自我をどう回復させるか……これをサイバーウェアで挑戦しているわ」
(;^ω^)「進行が!? どういう事ですかお?」
ブーンは思わず、身を乗り出して尋ねた。
突然大声を出されたシーケルトは表情を強張らせ、口を開けて固まった。
また、ブーンの椅子の足が床を鳴らした際に、ビロードとスネークがゲーム画面から目を離した。
スネーク「ビロードは強力な免疫を持っている。
その免疫を注入することで、変異を食い止められるようだ」
驚き戸惑っているシーケルトに代わって返答したのは、スネーク。
この男が煙草の事と冗談の他に口を開くのは、ブーンにとって心外であったが――
それよりも、とブーンはスネークから目を離し、自分の対面でゲームに夢中になっているビロードを見つめる。
- 8 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 15:48:39.98 ID:Wr9tV1Ob0
-
( ^ω^)「ビロードが免疫を……?」
ぽつりと、そして上ずった声が虚空に漂う。
自分の他に強力な免疫を持つのはツンくらいしか知らなかったブーンには、
少しばかり信じがたい事実であるのだ。
スネーク「ビロードの免疫は、アニーの治療の為だけに使われているんじゃない。
俺達はビロードの血や細胞から精製した抗体を身体に打ち、感染を予防している」
(;^ω^)「そ、そんな予防法が可能なのかお!?
(;^ω^)(僕の免疫では出来なかったお……)
再び身を乗り出し、声を大にして驚くブーン。
というのも、スネークの言う予防法(ブーンの免疫を使った)は、
過去にツンが動物実験で失敗に終えているという事実が存在しているからだ。
( ^ω^)(ともかく、だからギコさんは僕をここに運べたのかお……。
服も髪も体液と血に塗れてたお。普通は感染してるお)
- 9 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 15:49:37.14 ID:Wr9tV1Ob0
-
( ><)「もう! 何の話なんですか!?」
ゲームを中断され、苛立った様子でビロードが言った。
スネークの背に掛かっているバンダナをグイグイと引っ張っている。
スネーク「お前の大嫌いだった注射の話だ」
(;><)「ゲェェ! あれはもう勘弁なんです!」
椅子を飛ぶように離れ、食堂の片隅に逃げるビロード。
安全を確保し、携帯端末でブーンに貰った「alphabet」を再開させる。
スネークが、視線をブーンに戻した。
スネーク「クローンで多量に抗体を精製するまで時間が掛かったがな。
大学ってのは便利なものだ。どんな文献も揃っている」
(*゚ぺ)「クローン環境を整えたのは私とアニーだったけどねー。
貴方は煙草ばっかり吸ってて何もしなかったくせに、
よくもまぁ時間が掛かったなんて言ってくれるじゃない?」
口を尖らせ、シーケルトは如何にも不満そうな調子で言った。
スネーク「そうカリカリするなシーケルト。美人が台無しだぞ?」
- 10 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 15:50:49.82 ID:Wr9tV1Ob0
-
(*゚ー゚)「あら、私は怒った顔も素敵ってよく言われるけど?」
スネーク「アニーにか? そいつはどうだか……俺は怒り顔は好きじゃないな。
そうやって笑っていた方が君はずっと美しい」
(*゚ー゚)「スネーク、もしかして口説いてるの? 私にはアニーがいるんだけどなー」
スネーク「ああ。性欲をもてあましてるんでね。
どうだい? アニーじゃなくて俺と――」
(*゚ー゚)「ええ? 冗談でしょ? まぁ、アニーがいなくっても貴方は煙草臭くって好きになれないわね!
ブーン、貴方も吸いすぎは身体に毒よ? 程ほどにしなさいね?」
2人のやり取りに呆気を取られていたブーンは、
急に会話の矛先を自分に向けられ、再度ハッとした表情を浮かべる。
アニーとシーケルトが恋人同士である事もブーンは気になったが、それよりも、
( ^ω^)「あ、はぁ、吸いすぎでサーセン……。
あの、ところで、サイバーウェアで自我を回復させるって……」
もう1つの疑問――自我を回復させるという理論について、尋ねた。
- 11 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 15:52:42.34 ID:Wr9tV1Ob0
-
(*゚ー゚)「あ、ごめんなさい。話が逸れちゃってたわね」
一拍置き、シーケルトは続ける。
(*゚ー゚)「アニーは、System-Hollowでオットーの感情を制御しようとしているの。
ウィルス感染者が理性を失ったように欲望に暴走してしまうから、
そういった感情をカットすれば自我を取り戻せるんじゃないかって、アニーは考えたの」
有効的な使い方だとブーンは思うが、
スネーク「ここにオットーがいないから何となく察しが付くだろうが、
5年近く続けて成果らしい成果は未だに出てないらしい」
スネークの言うとおり、そのように予想はしていた。
(*゚ー゚)「感染者に合ったプログラムを組むのが難しいんでしょうね……。
抗体と併用してるみたいだけど、どうも上手く行かないらしいの……」
最後に大きな溜息を付け、シーケルトが口を閉じた。
( ^ω^)「そうなんですかお……」
アニーが有効な治療法を確立していれば、とブーンは内心で嘆いた。
ジョルジュも抗体で変異こそ止めているが、いつセカンドに豹変しても不思議ではないと、ジョルジュ自身が述べていた。
科学的根拠は無いが、感染者自身の予察の方が信憑性があるように、ブーンには思えるのだ。
あまり悠長に治療法を検討している余裕は無いはずだと、そのように思えるのだ。
- 12 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 15:53:56.39 ID:Wr9tV1Ob0
-
(*゚ー゚)「ねえ、セントラルでは有効な治療法は無いの?」
シーケルトが尋ねた。
シーケルトも、自分と同じように期待しているのだなと、ブーンは思う。
( ^ω^)「残念ながら……」
誰から見てもブーンの表情と声は、暗く、重かった。
同様の相槌が、シーケルトの口から吐き出される。
スネーク「おい、若いの」
煙草の箱を手に、スネークがブーンに声をかける。
ソフトケースから1つ、煙草のフィルターが伸びている。
スネーク「吸うか?」
( ^ω^)「僕の煙草のクセに、よくもまぁ抜け抜けと……」
- 13 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 15:55:11.41 ID:Wr9tV1Ob0
-
スネーク「そう硬い事言うな。
上等な煙草なんて久しく吸ってなかったもんでな」
( ^ω^)「……分かったお。一本頂くお」
ブーンは自分の方に向いて伸びているフィルターを掴み、ケースから引いて取った。
そのまま煙草を口元に運び、いつも通り胸ポケットの辺りに手をやった。
いつもなら感じるライターの硬い手応えが無い事に気づくと、アニー達に着せられた白衣である事を思い出した。
スネークは何も言わずにライターを取り出し、点火してブーンの手元に近づけてやった。
煙草が火に触れようとした時、
(*゚ー゚)「煙草、『喫煙所』でお願いね?」
シーケルトがブーンの口から煙草を取り上げるのだった。
スネークは息を吐きながら立ち上がり、親指で食堂のドアを指し示す。
喫煙所もとい自室に行くぞ、という合図だ。
シーケルトはブーンに煙草を返し、手を振って2人を送り出すのだった。
( ^ω^)(ってか、しぃさんも“スネークの部屋”とは呼ばないのかおwwwwwwオッサン哀れwwwwwwww)
- 14 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 15:56:53.81 ID:Wr9tV1Ob0
- ※
「喫煙所」の札を貼ったドアが、スネークに開かれる。
封を開けたように、部屋に立ち込めた煙草の苦い悪臭が外に流れる。
(;^ω^)「ウゲェッ! こいつはヤニ以下の臭いがプンプンするお――ッ!!」
喫煙者であるブーンも、さすがに顔を歪ませてしまった。
確かに、部屋というより喫煙所と呼んだ方が相応しいと、ブーンは思う。
スネーク「防臭剤でもあればいいんだがなぁ」
通称「喫煙所」と呼ばれるスネークの部屋は、ブーンが思ったよりも小奇麗だった。
若草色のカーテンで四方を淡く飾り、中央には小さなテーブルが1つと椅子が2つ。
一方の壁際には機械仕掛けの薄いベッド、小さな白色のクローゼットにも電気が通っているようだ。
対面の壁に立て掛けられているのは、大小様々な形状を持つ数多くの銃器。
40年代の戦争において主流だった、少し古い型の銃器も見れる。
スネークが元傭兵だという事を裏付けるラインナップである。
スネーク「しかし、煙草だけは止められんな。あ、ドア閉めてくれ。シーケルトにどやされる」
そう言い、ブーンにジッポライターを投げ渡す。
髭で渋く整えられた口元に、既に火の付いた煙草が苦い煙を宙に漂わせている。
( ^ω^)「サバイバル生活とはいえ、喫煙者は何処だって追いやられるもんかお」
カチリと、ライターを点す。
ブーンは久しぶりの煙草の味に、充足した息を吐く。
- 15 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 15:58:53.50 ID:Wr9tV1Ob0
-
スネーク「――言わずとも分かると思うが、ビロードは孤児だ」
脈絡も無く、スネークが切り出した。
内容が内容だけに、ブーンは面食らってしまう。
口から白煙を昇らせた後、スネークは続けた。
スネーク「5年前、俺はボストンに身体の調整を受けに来ていた。
調整が終わった丁度その日だったか……市内にウィルスが拡大し始めたのは……。
あまりにも突然の事だった。街は何処も彼処も大騒ぎだ」
淡々と、それでいて悠々と話すスネーク。
落ち着きというよりは「冷静」を感じさせる佇まいは、ジョルジュに通じる部分があるとブーンは思った。
元傭兵や元軍人の醸し出す特殊な知的さ、ブーンの中の「恍けたオッサン」というイメージを粉々にした。
スネーク「何処か安全な場所を探している途中、俺はビロードに出会った。
当時は4歳のアイツは、死んでいる母親に助けを縋っていた」
( ^ω^)「父親は?」
スネーク「元々、父親を知らないそうだ」
( ^ω^)「そうなのかお……気の毒だお」
スネーク「……小さく非力なビロードは、母親に縋る以外の術を知らなかったのだろう。
巣で育てられるべき雛鳥がいきなり空を飛ばされるのと同じで、
物心付いたばかりの幼子が独りで生きようとするのは、不可能な事だ」
スネークは深く吸煙して間を置き、続ける――――
- 16 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:00:55.75 ID:Wr9tV1Ob0
-
人間の恐怖に満ちた叫喚と、化物どもの食欲に飢えた唸り声。
道々は血液で赤く塗り替えられると共に、生臭い悪臭を立たせていた。
文字通り、ボストン市は阿鼻叫喚の地獄と化していた。
感染には個人差があるらしいが、余りにも化物どもの増殖が速いように思えた。
気づけば市内を逃げ回る人間よりも化物の数の方が上回っていたが、
それは一重にウィルスで変異を引き起こしただけとは言えないだろう。
まるで狂ったように――いや、狂っていたのだが、奴等が盛大に人食を始めたのも、
市内の人間が急速的に減ってしまった原因の一つだったろう。
俺も奴等から逃げるべく、市内を奔走していた。
生物として飛躍的な進化を遂げた奴等に有効な兵器は少なく、
戦えば俺自身も化物になっていたか、あるいは喰われて骨一つ残っていなかった。
その時、俺は、首を失った母親に駄々をこねる子供に出会った。
ビロードだ。
ビロードは母親の血に染まりながら、くっ付きもしない母親の頭を何度も首に付けようとしていた。
母親に助けを求めながら、な。
- 17 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:02:11.13 ID:Wr9tV1Ob0
-
異様な光景だった。
まるで人形の首を直すかのように、人間の頭を付けようとしていたんだからな。
幸いだったのが、俺にサーモグラフィが付いていた事だった。
何処から流れた噂だか分からんが、人間と奴等を区別するには「熱量」を見れば良いと知っていた。
( ><)「ママ! 早く首を元に戻すんです! 早く一緒に逃げるんです!」
ビロードは、青だった。
母親の血が付着した部分を除いてな。
――ところで、外見こそ人間であっても、体内にウィルスが潜伏している可能性もあるらしいな。
街行く人間をサーモグラフィを通して見ると、殆どが真っ赤さ。思わず目を疑った。
高熱でも出したのか気だるそうに街を行く奴もいれば、元気に走り回る奴もいる。
個人差があるとはいえ、サーモグラフィのような物が無ければ、潜伏の判断は見極めがたい。
ビロードの母親は真っ赤だった。
ウィルスに侵された母親の血を被ったビロードは、青だった。
この時、ビロードには免疫があるのだと俺は気づき、ビロードを救うべきだと考えた。
- 18 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:03:38.80 ID:Wr9tV1Ob0
-
「おい、ちっこいの、何をしている?」
俺がそう尋ねると、ビロードは驚き、やっと傷口に合わせられた頭を落としてしまった。
多くの戦場を駆けた俺ですら不快に思う音だったが、ビロードは平然としていた。
( ><)「ママの首を戻すんです!
ママと一緒に逃げるんです! 邪魔しないでください!」
ママの頭を手で抱え、ビロードはそう言った。
母親の顔は恐怖に歪んだ表情だった。
「……パパはどうした?」
( ><)「パパは元からいないんです」
唐突な母親の死を受け入れられず、気が狂ってしまったのかもしれない。
母子家庭で育ったのなら、尚更だ。
「ちっこいの、ママの首は戻らない。ママは死んでるんだ。俺がお前と一緒に逃げてやる」
( ><)「……ママを置いていけないんです」
甘えん坊とも、母親思いの息子とも言える奴だった。
いや、4歳児だ、甘えだったのだろう。
- 19 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:03:56.69 ID:Wr9tV1Ob0
-
「これを、ママだと思うと良い」
( ><)「…………」
慎重に母親の首根元に掛かったペンダントを取り、
ビロードに渡してやったが、納得いかない表情を浮かべていた。
ちっぽけなペンダントでは母親の代わりにならないと考えたんだろう。
「……物には意思が宿る。ちっこいの、そのペンダントの中にママが居るんだ。
これでママはいつでもお前と一緒にいるだろう?」
「だから形見って言うもんだ。大切にしておけ、ちっこいの」
そう教えると、ビロードは愛しそうにペンダントを握り締めた。
4歳児らしく、こういうファンタジーめいた話に弱かったのだろう。
取れた首を元に戻そうとしていたくらいだからな……いや、縋る物があれば何でも良かったのかもしれん。
母親の亡骸を後に、俺とビロードは安全な場所を目指して駆けた。
- 20 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:05:14.07 ID:Wr9tV1Ob0
-
行く手を防ぐ異形を、時には殺し、時には避け、
俺達はマサチューセッツ州を北方向――つまり、カナダの方角へ向っていた。
北の方はまだ安全だと噂だったからな。
しかし今思えば、あの拡大速度なら何処に行こうが無駄だったろうが……。
「死ねええええええええええええ―――――ッ!!」
ケンブリッジに出る為に、大橋を渡ろうとした時、俺達はサスガ兄弟に出会った。
橋に差し掛かる手前のストリートで、“カマキリ”のような姿をした醜いセカンドと対峙する男がいた。
まだ生きている弟を守ろうと、マシンガンを手に戦っている、アニーだった。
“カマキリ”は、俺達にも気づいていた。
相手にしたくはなかったが……アニー達の次は俺達だ、撃たざるを得ない状況だった。
狙撃ライフルで麻酔弾を打ち込むだけで済んだのは、幸いだった。
「た、助かった……アンタは軍隊の人間か?」
「元傭兵ってところだ」
「それより、こっちの血塗れのガキにはウィルスの免疫があるようだ。
コイツを安全な場所に連れて行ってやりたいんだが、その車に乗せてもらえないか?」
- 21 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:06:31.56 ID:Wr9tV1Ob0
-
「め、免疫だと!? 本当か?」
「ああ、俺の目にはサーモグラフィが備わっている。ウィルスの潜伏を見抜ける。
そっちに倒れてるのは家族か? 生きているようだが、ウィルス感染しているな……」
「……そっちはオットー、俺の弟だ。俺はアニー、アニー・サスガだ。
ハーバードの地下研究区画を改造してある。そこが安全だ。すぐ行こう」
「弟はどうする?」
「…………連れて行く。その子に免疫があるなら、弟の治療も可能かもしれん」
「おいおい、勘弁してくれ。俺まで感染してしまう」
「安心しろ。弟はトランクに積む。あっちに着いてからの面倒も、俺がやる。
それと、トランクにはスーツとマスクがあるから、アンタ達も着てくれ」
――――
――
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-
.
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:06:44.13 ID:STKLexM0O
- 久しぶり支援
- 23 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:07:51.61 ID:Wr9tV1Ob0
- スネークは、すっかり短くなった煙草を灰皿に押し付けた。
そして新しい煙草を咥え、火をつけた。
スネーク「そうして、俺とビロードはハーバードに逃げ込んだ。以来、5年以上も地下生活さ」
スネークは、浅く吸煙し、鼻から静かに煙を出した。
ブーンの物欲しそうな顔を見ると、スネークは無言で煙草の箱を投げ渡した。
( ^ω^)「そうだったのかお。
しかしまぁ、何でまた急にこんな話をしてくれたんだお?」
箱から一本取り、質問と共に箱をスネークに投げた。
スネークは痰の絡んだ咳払いをした後、
スネーク「俺達の事を知りたかったのだろう?
しかし過去の出来事は全て辛い思い出。皆、口にはしたくないだろう。
アニーは、ギコとシーケルトについて何か言ってなかったか?」
ブーンは部屋の片隅を数秒見つめ、そして心当たりのある会話を思い出した。
( ^ω^)「確か、ギコさんが感情をカットしている事は、あんまり口に出さないで欲しいって」
こくりと、スネークは首を上下させる。
スネーク「ギコとシーケルトは、元々恋人だったらしい。
今、シーケルトの恋人はアニー……何となく察しがつくだろう」
- 24 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:09:23.77 ID:Wr9tV1Ob0
- なるほどな、と、ブーンは納得した。
昔の恋人が感情を失ったサイボーグになってしまった―――しかも、System-Hollowの設計には
シーケルトも関わっていたとなると、彼女の心境は複雑であろう。
スネークは、続ける。
スネーク「ここの人間は、各々が複雑で暗い思い出を持っている。
少人数の共同生活だ、あまりギクシャクしたくないだろう?
自然と暗黙のルールが出来上がったのさ」
( ^ω^)「まあ、当然というか、自然な事だお」
そこで、2人は同時に煙を吐き、一息ついた。
閉め切った部屋に、白煙がすっかり充満してしまっている。
スネーク「だから、“何も無い俺”が話した。
友人と呼べる人間は、ウィルスとは別に亡くしている」
( ^ω^)「傭兵稼業の時に、かお?」
スネーク「いや、とあるNPO団体に所属していた頃にな。
中東やアジア諸国の武装組織が所有する核兵器を破壊して回っていた」
( ^ω^)(30〜40年代に騒ぎになってた核兵器かお……?
そういえば、バトルスーツの構造はアレにちょっと近いってツンが言ってたお)
ブーンは、バトルスーツのような巨大兵器を破壊するスネークの姿を想像した。
次第に、「スネークって実は凄いサイボーグなんじゃ?」と、思い始めるのだった。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:10:20.99 ID:STKLexM0O
- 支援
- 26 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:10:23.79 ID:Wr9tV1Ob0
-
スネーク「――若いの。セカンドを殺す事について、どう思っている?」
( ^ω^)「……いきなり何だお?」
スネークの不意打ちに、ブーンは戸惑いながらも少し苛立った調子で、返した。
スネーク「元々セカンドの多くは人間だが、彼等は今でも生殖し、繁栄しようとしている。
生物的な本質は俺達人間と特に変わっていないし、彼等にも意思がある」
スネーク「俺達人間は、彼等を殺すべきなのか? お前はどう思っている?」
ブーンは、間を空けずに口を開く。
( ^ω^)「……殺さなければならないお。
僕達だって、大切な人達を守らなきゃならないんだお」
ふむ、と、スネークは相槌し、
スネーク「だが、オットーはどうだ? 奴もセカンドと見なすべきなのか?
殺すべきなのだろうか? お前はどう考える、若いの」
再び、問うた。
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:11:09.47 ID:STKLexM0O
- しえん
- 28 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:11:54.73 ID:Wr9tV1Ob0
-
( ^ω^)「それは――」
流石にブーンは、この質問には顔を顰め、押し黙ってしまった。
感染者なのか、セカンドなのか、どう捉えれば、また、接すればいいのか――。
ウィルスに犯されながらも人として生きているジョルジュとは違う、「セカンドオットー」のケース。
オットーに対しどうすべきなのか。
ブーンは今、答えを出せそうになかった。
嫌な沈黙が場を支配しようとしたが、すぐにスネークが切り出した。
スネーク「……しかしまぁ、結局、生物は戦い続けなければならないようだ。
セカンドになろうと何になろうと、互いの意思や愛を守る為に戦争、また戦争。
宇宙のどこぞから飛来したウィルスであっても、生物の根本は変わらんもんだな」
話題はオットーから逸れる。
ブーンは不謹慎と思いながらも少し安心した。
( ^ω^)(それよりこのオッサンの言う事……)
スネークの一連の言葉は全て、
ブーンがここ最近の戦いにおいて強烈に感じた事であった。
スネーク「若いの、俺はもう寝る。
煙草吸い終わったら出て行け。話は、また今度だ」
- 29 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:13:32.04 ID:Wr9tV1Ob0
-
半ば追い出されるように「喫煙所」を出たブーンは、使えそうな部屋を見て回ることにした。
しかし、ガラス壁から覗く部屋は、どれも実験機器などでゴタゴタとしており、とても人間が寝る環境ではない。
何処で寝れば良いものか、ブーンはシーケルトに尋ねようと食堂に戻ろうとしたが、
( ´_ゝ`)「よう、ブーン」
何処からとも無く現れたアニーに、声を掛けられた。
アニーの後ろには、相変わらず無表情なギコがいる。
( ^ω^)「アニー、もう作業は終わっ――」
ブーンは言い切る前に、口に出して良いのか思案すべき内容だった事に気づく。
開いた口を手で塞ぎ、横目でアニーの表情を窺う。
( ´_ゝ`)「ああ、弟の事、聞いたのか……うん、今日はこれで終わりだ」
別に怒っている様子はなく、ブーンの知る限りではいつものアニーの調子だ。
ブーンは安堵し、口を塞ぐ手を後頭部に持ってゆき、
( ^ω^)「すみませんお。色々、しぃさんから聞いてしまいましたお」
長い髪で隠れた頭皮を掻きながら、申し訳無さそうに述べた。
人工皮膚なので特に痒みも無ければ、掻いている感覚もブーンは感じない。
心理が作用した、ただの動作だ。
- 30 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:15:05.95 ID:Wr9tV1Ob0
-
( ´_ゝ`)「いや、別に構わないよ。俺も秘密にするつもりはなかった。
ただ、下には行かないで欲しい。弟を見て欲しく無いんだ」
( ^ω^)「分かりましたお……ところでアニー、僕は何処で寝ればいいかお?」
(;´_ゝ`)「あ、そっか! すっかり忘れてたよ!」
( ^ω^)「ちょwwwwww」
( ´_ゝ`)「悪い悪い。あー、つ下の階に何部屋か寝床になってるから、探してみてくれ」
( ^ω^)「把握しましたお……ああ、それからアニー。
早速ですが明日、倉庫内のセカンドを駆除しようと思いますお」
( ´_ゝ`)「そうか、よろしく頼む。じゃあ、明日の朝8時、食堂に来てくれ。
朝食を取りながら作戦会議だ!」
( ^ω^)「把握ですお。それじゃ、おやすみなさいお、アニー、ギコさん」
( ´_ゝ`)「おやすみ。しっかり休んで明日に備えてくれ」
「それから煙草は“喫煙所”でな」と、アニーは食堂の方へ向っていった。
ギコは終始無言だったが、去り際にはブーンに軽く手を振っていた。
ギコとしては適した別れの告げ方だったのだろうと、ブーンは考えた。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:15:21.68 ID:STKLexM0O
- しえーん
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:15:30.60 ID:Qz0kjZ5Z0
- 支援
- 33 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:15:39.16 ID:Wr9tV1Ob0
- ※
指定された階を探索すると、すぐにブーンは、カーテンが掛かった部屋を幾つか見つけた。
その内の、空色のカーテンが掛かった部屋が気に入り、その部屋を使う事にした。
部屋には薄い簡易ベッドに、小さな箪笥が一つずつあるのみ。
天井で眩い光を放つ小さなライトがやたら存在感を醸す、簡素な部屋だ。
( ^ω^)「ふー……」
少し埃を被った薄い簡易ベッドで仰向けになり、携帯端末を弄る。
テキストソフトを起動し、深みのある青色の画面にツラツラとタイプしてゆく。
議会に提出する、レポートだ。
ボストンに到着した事、恐ろしき“でっていう”なるセカンドの事。
フィレンクトのSystem-Hollowと、それに関わった2人の学生。
System-Hollowを搭載したサイボーグのギコ、免疫を持つビロード、そしてオットーの事を――。
ブーンは見聞きした事を全て、有りのままに綴った。
最後に、「彼等の救出を検討して欲しい」と書くのも忘れなかった。
粗方であるが推敲し終え、送信。
一息つこうと、癖で胸の辺りに手を伸ばすが、いつもの服ではない事に気づいた。
つまり、いつもそこにあるはずの煙草が、無いのだ。
- 34 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:16:33.78 ID:Wr9tV1Ob0
-
( ^ω^)「ああークソ! やっぱりオッサンにやるんじゃなかったお!!」
ドサリと、腕をベッドに落とした。
誰かにバイクまで案内して貰おうとも考えたが止して置き、
送信したレポートを再び読み返し、一日を振り返る事にした。
( ^ω^)(フィレンクトさんの研究……ツンは知ってたのかお?)
感情をカットするサイバーウェア、System-Hollow。
これを搭載したサイボーグは、恐怖や狂気といった戦いにおいて独特の感情に左右されなくなるだろう。
また、System-Hollowによりブレイン・マシン・インターフェースという理論が実現すると、フィレンクトは言っていたようだ。
これについて、ブーンは、ツンから何か聞いた例は無かった。
フィレンクトの研究の内、いくつかは電子ファイルとしてラボに保管されているが、
どれもがシステム・ディレイクに関する内容である。
( ^ω^)(ビロード……『セントラル』にも、ビロードみたいな孤児は多いお)
早く『セントラル』に連れて行ってやって、沢山友達を作って欲しいと、ブーンは思う。
幼くして母を無くし、同年代の友人が1人とていないのは、余りにも不憫だ。
- 35 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:17:43.23 ID:Wr9tV1Ob0
- そして、ビロードの免疫――セカンドウィルスの感染を防ぐ強力な免疫。
『……君は、たまたま生まれながらにして抗体を持っている。
だから君には、セカンドと戦う使命があると僕は思うよ……他人頼りの、勝手な言い分だけどさ……』
ショボンの言葉を、ふと、ブーンは思い出した。
( ^ω^)(ビロードには戦って欲しくないお)
まだ年端の行かぬ子供だからか、ブーンはそう思った。
自分の経験した血腥い日々――それを思い返すと、
戦闘用サイボーグになる事も、バトルスーツ等の機械で戦う事も、して欲しくない。
( ^ω^)(感染しない者がセカンドと戦うべきだとするのなら)
――――戦うのは、自分だけでいい。
スネークとギコだって、抗体を打ってまで戦わなくてもいい。
セカンドの恐怖を感じるのも、罪悪に責められるのも、自分一人でいい。
それがきっと自分の、システム・ディレイクの役目なのだろう。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:17:48.13 ID:Qz0kjZ5Z0
- 支援
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:18:26.79 ID:RhGvdhYS0
- 支援
- 38 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:18:44.85 ID:Wr9tV1Ob0
-
『俺がセカンドになった時は、容赦なく殺せ』
『……俺がセカンドになっちまったら、ハインリッヒやガイルと一緒にいられねえ。
だから、お前が殺してくれ。俺は人じゃなくなるんだ。
理性を失って本能のままに、凶暴に生きるセカンドになるんだ……殺されるのが一番良い』
『誰かを守りたいと思うのなら、セカンドを撃つ事を躊躇うな』
『そうでもしないと、大切な人を失っちまう事になるぞ』
『いいか。セカンドってのは人を不幸にする存在でしかない。
ハインリッヒは兄を失った。俺は、俺自身がセカンドになっちまった。
これ以上“セカンドの蔓延”を防ぐのは、お前の使命だ』
胸に刻んだジョルジュの言葉を改め、ブーンは覚悟する。
もし、治療が不可能なら、「セカンドオットー」は今すぐにでも、殺すべきなのかもしれない。
“蔓延”を、防がなければ――――それが自分の役目であり、使命なのだから。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:18:49.09 ID:Qz0kjZ5Z0
- 支援
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:19:01.87 ID:STKLexM0O
- しえん
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:19:19.33 ID:Qz0kjZ5Z0
- 支援
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:19:55.33 ID:RhGvdhYS0
- 支援
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:20:03.52 ID:Qz0kjZ5Z0
- 支援
- 44 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:20:30.72 ID:Wr9tV1Ob0
-
※
翌日、ブーンは携帯端末の着信音で目覚めた。
宙に投影されたモニターを目の前に引っ張り、馴染みのあるアイコンにタッチする。
『ξ゚听)ξ おはよーナイトウ。大分危険な状態だったみたいだけど、
腕の立つ技術者がいるようで安心したわ……にしても、お父さんの名前が出てくるなんて……」
モニター上のアニメ絵のツンが、眉間に指を当てて悩んでいる。
『ξ゚听)ξ ラボの資料を探ったけど、System-Hollowに関する物は無かったわ」
『ξ゚听)ξ ねえ、ナイトウ。System-Hollowに関するデータを持って帰れないかしら?
あ、何かに使う訳じゃないわ。ただ興味があるだけなのよ」
「出来たら持って帰るお」と、ブーンはモニターのツンに呟いた。
『ξ゚听)ξそれと、 『セントラル』にオットーさんを連れてくるのは難しいでしょうね。
そこでは5年間問題が起こってなくとも、『セントラル』は受け入れてくれないかも……」
- 45 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:21:10.82 ID:Wr9tV1Ob0
-
ブーンも同感であった。
そもそも議会の3分の一以上が軍人で構成されている。
即ち、「閉鎖」を提案・施行した者達で構成員を占めているのだ。
加えて元空軍大佐であり、現セントラル議会長の荒巻・スカルチノフの存在がある。
( ^ω^)(今にして思えば、クイーンズ脱出時の消極的な荒巻の姿勢……妙に納得出来るお)
戦闘員の減少と、『セントラル』の保安危機の増大。
この2つは少なからず相対的な関係にあるだろう。
特に軍は、直接セカンドと戦った事もあり、奴等の恐ろしさを身を持って学んでいる。
セカンドに対して臆病になるのは、至極当然と言っていいだろう。
『ξ゚听)ξ んで、彼等の救出作戦なんだけど、多分今日中に決まると思う。
アンタはそれまで、そこの安全確保に努めて頂戴。区画内のセカンド掃討、頑張ってね」
ブーンは、シーケルトに申し訳ない気持ちを抱く。
臆病なセントラル議会が救出作戦を実行するか、可能性は決して高くないからだ。
『PS、カレー美味しかったわ……素敵な形してるわよねーξ#゚ー゚)ξビキビキ
ハインの馬鹿笑いも久々に聞けたし楽しい食事だったわよ!! 氏ね!!』
( ^ω^)「作戦成功wwwwwざまあwwwwwwwwww」
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:21:49.26 ID:Qz0kjZ5Z0
- 支援
- 47 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:21:56.54 ID:Wr9tV1Ob0
- ブーンはモニターを閉じ、ベッドから降りる。
小さな丸鏡が壁に掛かっているに気づき、食堂に向う前に寝癖の有無をチェックした。
美人のシーケルトに嫌われるのは、何故か損だと思ったのだ。
肩や胸に掛かった毛先に間抜けなカールが掛かっている。
手櫛を髪に何度も通すが、どうやら水とドライヤーが無ければ直らないようだ。
( ^ω^)「フッ、この程度の寝癖、イケメンには問題あるまいて!」
鏡から顔を離し、ブーンは部屋を後にした。
階段を駆け上がり、一つ上の階へ。
カーテンの掛かった部屋――彼等5人の部屋――の殆どが、出入り口を開いている。
シーケルト、アニー、ギコ、ビロードの部屋だ。
生体反応が無い事から、既に食堂にいるのだろうと、ブーンは推測する。
そして、若草色のカーテンが掛かった通称「喫煙所」。
閉め切られたその中に、ブーンはスネークの気配を感じていた。
( ^ω^)「……めちゃくちゃ煙草吸いたいお」
そう呟き、喫煙所の戸を開いた。
酷く苦味のある臭気がブーンの鼻をつき、彼のハンサムな顔を大きく歪ませた。
そんな悪臭が漂う中、スネークはベッドに腰掛けて目覚めの一服していた。
- 48 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:22:59.73 ID:Wr9tV1Ob0
-
スネーク「チッ……ほら、一本だけだ」
ブーンの物欲しそうな顔を見るなり、スネークは煙草の箱を投げ渡した。
( ^ω^)「人の煙草だというのに……」
煙草を取り出しながら、ブーンが悪態を吐く。
ふと、テーブルの上にライターがあるのに気づき、許可無くそれを使用した。
口内と肺に広がる、濃厚な香りと苦い味わい。
数時間ぶりの煙草のせいで、少し頭や足元がふわりとした感覚を、ブーンは楽しむ。
スネーク「今日、区画内のセカンド駆除をやるんだってな」
( ^ω^)「だおだお。朝食しながら作戦会議だお」
スネーク「駆除には俺も行く」
「へっ?」と、思わず素っ頓狂な声を出すブーン。
スネークはそのまま、続けた。
スネーク「なあに、心配はいらん。ギコよか俺は遥かに有能なサイボーグだ」
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:23:10.43 ID:Qz0kjZ5Z0
- 支援
- 50 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:23:34.25 ID:Wr9tV1Ob0
-
確かに、スネークは有能なサイボーグ――いや、傭兵だったのだろう。
数多の戦場を駆け抜け、そしてセカンド騒動でも生き残ったサイボーグなのだから。
( ^ω^)「断るお。感染の恐れもある、危険過ぎるお」
とはいえども、相手は実態の知れないセカンド。
それにギコの話によれば、“でっていう”に歯が立たなかったと聞くではないか。
ブーンは、スネークを戦力として見なす事を出来なかった。
スネーク「抗体を打てば、感染は予防出来る」
( ^ω^)(ああ、そうだったお)
無意識に、舌打ちするブーン。
便利な技術や知識も、時としてただ面倒な物に成り下がるものだと、憤慨したのである。
( ^ω^)「そういう問題じゃないお」
ウィルスは防げようと、死んでしまっては元も子もない。
みすみす死にに行くような真似を、誰が許可出来ようか。
( ^ω^)「オッサンはきっと足手まとい。僕だけで十分だお」
スネーク「……そうか」
そう一言だけ残してスネークは自室を出た。
ブーンはただ一人、苛立った気分で煙草を吸うのだった。
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:23:55.91 ID:P8mWYvUZ0
- おおっ来てた
支援!!
- 52 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:24:13.58 ID:Wr9tV1Ob0
- ※
( ´_ゝ`)「おはよう、ブーン。良く寝れたか?」
食堂には、既に空の皿を前にコーヒーを啜るアニーの姿があった。
( ^ω^)「おはようございますお。ええ、お陰様で」
ざっと、ブーンは部屋を見回す。
まず、ギコと視線が合うと、ギコは無表情で手を軽く振って見せた。
ギコは湯気立つマグカップを片手にしていた。
携帯端末が起動しており、モニターには自分の身体の稼動状態を表した物が映っている。
次に、ビロード。
( ><)「ブーン! アルファベットはEとG、どっちを使うべきなんですか!?」
目が合うや否や、開口一番、ゲーム「alphabet」について尋ねるのだった。
すっかりゲームが気に入ったようで、ブーンも布教の甲斐があるものだと嬉しく思うが、
(*゚ー゚)「こらこらビロード、後にしなさい」
シーケルトに制されてしまった。
彼女のその様は、やんちゃな子をあやす母のようである。
- 53 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:25:17.43 ID:Wr9tV1Ob0
-
( ^ω^)「使いづらいけど、Gがオススメだお。
G隊は活躍の場が多いから、経験値溜まりやすいお」
( ><)「把握したんです!」
(*゚ー゚)「もう、しょうがないわねぇ……ごめんなさいね、ブーン。
ちょっと待っててね、すぐに朝食を用意するわ」
( ^ω^)「あ、どうもですお。すみませんお」
シーケルトは踵を返し、ドレスを翻すように美しい髪を靡かせ、キッチンに向っていった。
仕草の一つを取っても絵になってしまう美しさである。
同時に、その面倒見の良さから母性を感じるのだった。
( ^ω^)「そういえば、スネークは?」
ステルスで隠れている気配も無いので、ブーンはアニーに尋ねた。
( ´_ゝ`)「俺らより早く朝食済ませて、出て行ったが」
( ^ω^)「あれ? 何処に行ったんだお?」
( ´_ゝ`)「さあ?」
それより、と、アニーが話を切り替える。
( ´_ゝ`)「早速、本題のセカンド退治について作戦会議といこうか。
昨日話した事の補足みたいなもんだけどな」
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:25:22.18 ID:Qz0kjZ5Z0
- 支援
- 55 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:26:00.07 ID:Wr9tV1Ob0
- ※
( ´_ゝ`)「よーし、まず場所だ。現地まではギコに案内して貰う予定だけど、一応な」
携帯端末のモニターを拡大表示させ、壁一面に地図を展開した。
ブーンの想像以上に、複雑に入り組んだ学園である。
ボストン市内に侵入した時、ブーンは蟻のようになった感覚を覚えたが、
この学園はまさに蟻の巣を彷彿させる、緻密で広大な構造だ。
アニーは長い棒を使い、地図の一部に円を描く。
すると、楕円で囲われた箇所が、拡大表示された。
( ´_ゝ`)「ここが、俺達のいる地下研究区画だ」
更にアニーは、表示されている箇所のとある部分を、薄赤色でマークを引いた。
マークを引かれたのは、全4車線の「通路」である。
( ´_ゝ`)「この通路は、セカンドの侵入を防ぐ為に分厚いシャッターで封鎖されている。
封鎖をアンロックした瞬間、通路にセカンドが雪崩れ込んでくるかもな」
(;^ω^)「それはおぞましいお……」
( ´_ゝ`)「すまん。脅すつもりはなかった。
ところでアンロックだが、これにはギコが担当する」
(,,゚Д゚)「…………」
一同、ギコに視線を向ける。
しかしギコは変わらず無言を保ち、軽く手を振って見せるだけであった。
- 56 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:26:55.38 ID:Wr9tV1Ob0
-
( ´_ゝ`)「通路を抜けると、そこはもう倉庫だ。倉庫は見ての通り、結構広い。
倉庫には食料や様々な物資を詰め込んだコンテナが多数ある他、特に無いな」
倉庫の辺りを、棒で2回トントンと叩く。
モニターの映像が切り替わり、倉庫内部の構造が拡大・立体表示された。
アニーの言う通り、倉庫は広い――いや、広大といったほうが言いだろう。
そこには巨大なコンテナが乱立しており、他には輸送機のような乗り物がいくつかあるようだ。
( ´_ゝ`)「ブーン、コンテナを破壊しないようにセカンドを駆除してくれ。
物資を取りたいのにコンテナをぶっ飛ばされたら、元も子もないからな」
( ^ω^)「ゴクン……了解ですお」
内容物が無くなった器をスプーンでカンッと鳴らし、ブーンが答えた。
( ´_ゝ`)「俺からは以上だ。何かあるか?」
そう言い、モニターを切るアニー。
間を開けずに、ブーンが質問する。
( ^ω^)「えっと、セカンドはどんな奴ですかお?」
( ´_ゝ`)「ギコのメモリにはムカデのような奴等が映っていたが……。
俺に聞くより、後でギコに詳しく教えてもらうといい」
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:27:09.61 ID:P8mWYvUZ0
- 支援
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:27:35.25 ID:STKLexM0O
- しえーん
- 59 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:28:15.35 ID:Wr9tV1Ob0
-
( ^ω^)「分かりましたお……じゃあ、早速行って来ますお。
日が当たってなくっても昼間に行った方がいいお」
( ´_ゝ`)「そうだな……よし、ギコ、案内してやってくれ」
(,,゚Д゚)「OK。行こう、ブーン」
必要な時に必要な事だけを喋るのがギコなのだな、とブーンは思う。
しかし、やっと口を開いたかと思えば、口調はあまりにも無機質だ。
System-Hollowは、自由にオンオフを切り替えられない物なのだろうかと、ブーンは疑問した。
戦闘の時のみ、オンにすれば良いのでは?――と。
(*゚ー゚)「くれぐれも気をつけてね、ブーン! ……ギコ君!」
( ^ω^)「ええ……ありがとうございますお。じゃあ、行って来ますお」
――しかし、自分には未知のサイバーウェアであり、彼等の間には複雑な事情が存在するらしい。
仕様上の問題なのかもしれないし、何か意図があって常時オン状態にしているのかもしれない。
( ^ω^)(後でギコさんに……ギコさんが答えなかったら、アニーに聞いてみるお)
そうして2人のサイボーグは、食堂を後するのだった。
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:28:15.84 ID:4RWozpai0
- 支援
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:28:23.49 ID:6PyJ87lx0
- 支援
- 62 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:28:38.23 ID:Wr9tV1Ob0
- ※
地下研究区画は20にカテゴライズされた階層から成る巨大施設である。
階層は更に細かく分化されており、殆どの階層が大体3つのフロアで構成されている。
フロア間の移動は階段、階層間の移動はエレベータとなっているのだ。
アニー達が改造したのは、その内の僅か1つに過ぎない。
更に、現在、地下研究区画で稼動している階層は2つ。
アニー達の居住区と、倉庫区だ。
アニーらの居住区の一つ上の階層に、倉庫区は位置している。
その為ブーンとギコは、エレベータの前にいた。
ギコが制御盤を操作し、エレベータの巨大な門を開く。
重厚な合成金属の壁が左右に開き、中を覗かせると、
( ^ω^)「おお、BLACK DOG! 我が愛機よ!」
広々としたエレベータの片隅に、2つのバイクが。
一つはBLACK DOG、一つはギコが操る深紅のバイクだ。
相棒との数時間ぶりの再会。
愛犬を愛でるように、ブーンは漆黒のボディを撫でてやった。
ブーンとネットワーク接続を完了し、ハンドル部に埋め込まれたモニターが一瞬蒼く光る。
BLACK DOGにAIなどの知能は無いが、まるで笑みを浮かべて主人を迎えたような反応を示した。
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:28:42.79 ID:Qz0kjZ5Z0
- 支援
- 64 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:29:27.60 ID:Wr9tV1Ob0
- ギコがエレベータ内の制御盤にタッチすると、エレベータは閉門し、
重たく硬質な音を伴って緩やかな上昇を開始した。
(,,゚Д゚)「スネークのバイクが無いな」
ギコが、不意にそう呟いた。
ブーンは疑問符を口から発し、ギコの次の言葉を待つ。
(,,゚Д゚)「あいつ、倉庫に向ったな」
(;^ω^)「まさか、先にセカンドの駆除を始めたのかお!?」
(,,゚Д゚)「いや、そこまで馬鹿な奴じゃない。恐らく倉庫前で待機しているはずだ」
ブーンは舌打ちし、溜息を吐いて思案を始めた。
何と言ってスネークを帰らせようか、その算段である。
(,,゚Д゚)「安心しろ。俺が引っ張って連れて帰る。お荷物だろう?」
ブーンの心を見透かしたかのように、ギコが述べた。
安心を促す言葉にブーンは思案顔を消し、再び溜息を吐いた。
( ^ω^)「そうしてくださいお……ああ、何か面倒なオッサンだお……」
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:29:34.62 ID:cz4O1u1l0
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- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:29:35.51 ID:STKLexM0O
- しえん
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:29:46.82 ID:Qz0kjZ5Z0
- 支援
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:30:25.27 ID:Qz0kjZ5Z0
- 支援
- 69 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:30:31.76 ID:Wr9tV1Ob0
- エレベータの上昇が止まった直後、門が重低音を響かせながら左右に開く。
そして目前に広がるのは、見渡す限りの虚空である。
壁に埋め込まれた装置が淡い光を放っている他、床に車線が引かれているくらいだ。
(,,゚Д゚)「ここからはバイクで行こう」
言われずとも、ブーンはバイクで行くつもりであった。
先が見えない程に長い通路である。それに、倉庫内は此処よりも大きいのだろう。
ギコはバイクを起動する前に、腰に下げたケースに手を突っ込んだ。
中から取り出したのは、蒼い光を放つ注射器である。
(,,゚Д゚)「俺達は3時間に一度、抗体を注入することを義務付けている。
セカンドウィルスは未だ感染経路が不明なようだから」
そう言い、ギコは注射器を首筋に押し当てる。
蒼い液体が見る見る減ってゆき、半分を注入したところで注射器を離した。
準備を終え、2人はそれぞれエンジン音を鳴り響かせる。
金属の硬質な壁に、甲高い回転音が反響し、ブーンの耳を劈いた。
いつも通りの心地よい音色であると、ブーンは安堵する。
何せ、BLACK DOGは先日の戦いで傷だらけになってしまったのだ。
不具合があるかもしれないとブーンは心配だったが、それは杞憂であった。
- 70 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:31:15.66 ID:Wr9tV1Ob0
- 車線を無視してバイクを走らせる事、数分。
長いと思われた通路だったが、すぐに終着地は姿を現すのだった。
それと、バイクに、不審なダンボールが一つ。
(,,゚Д゚)「何をしているんだ、スネーク」
「……やるなギコ。俺のカモフラージュを見破るとはな」
薄茶色のダンボールから発せられたのは、くぐもった男の声。
煙草でしゃがれた特徴的な声が、この者をスネークだと、ブーンに告げるのだった。
(,,゚Д゚)「帰るぞスネーク。ブーンに迷惑だ」
その言葉に反応し、ダンボールが宙に舞う。
ダンボールカモフラージュが解け、頭の天辺から爪先まで黒尽くめの男が現れた。
スネーク「断る。別に俺はそいつの、ブーンの為に戦うわけじゃない。
俺は俺の意思でここに来たんだ。文句は言わせんぞ」
スネークは力強い口調でそう述べ、胸に巻きつけたホルダーからナイフと取り出すと、
グリップを握りこんで刀身から電流を迸らせた。
(;^ω^)「ちょ、どういうつもりだお!? 訳分からんお!」
攻撃的な威圧感を帯びた剣先を突きつけられ、ブーンは思わず戸惑う。
スネーク「若いの、俺と力比べをしようじゃないか。
お前が勝ったら俺は潔く帰る。だが俺が勝てば、俺も戦闘に参加する」
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:31:54.43 ID:P8mWYvUZ0
- 支援
- 72 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:32:15.25 ID:Wr9tV1Ob0
-
何を言っているんだ、とブーンは一瞬呆れるが、
( ^ω^)「……分かりやすくて良いお。いいお、フルボッコにしてやるお!」
聞く耳を持たぬ者に説得するよりも、
敢えて彼の提案に乗り、ケリを付ける方が手っ取り早いとブーンは考える。
(,,゚Д゚)「おい――」
( ^ω^)「大丈夫ですお。傷つけたりはしませんお……――行くおオッサン!」
バイクから飛び降り、スネークに向って駆けるブーン。
言葉とは裏腹に、手加減をする様子が無い事は、迅雷の如く素早い移動が代弁している。
硬質な爪先が地を蹴るスタッカートが断続的に鳴り、瞬く間に両者の距離は詰まる。
弾丸のように迫るブーンに対し、スネークは落ち着きを払って構えている。
ナイフを胸元に構えてずしりと腰を落とし、迎撃を狙っているのだ。
小さくも武器を持つスネークに僅かながらリーチがある為、この後攻を取ったのだ。
その攻撃射程内にブーンが踏み入れた瞬間、
スネークは蒼い電流を纏った小さな刃をブーンの胴体に目掛け、振るった。
( ^ω^)「食うかお、そんなの!」
しかし、ナイフはブーンに命中せず。
その場の者達の耳を突いたのは、蒼い電流が虚しく空を焼く音のみ。ブーンの叫喚は無かった。
攻撃を遥かに上回る速度で上体を思い切り下げ、ブーンはナイフをよけたのだ。
視覚と思考の一部をコントロールするサイバーウェアが情報を収集・整理し、状況に対して最適な動作をブーンに提示。
プログラムと神経系統による制御が、提示する超人的動作を可能にしているのである。
- 73 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:32:43.93 ID:Wr9tV1Ob0
- ブーンはナイフ攻撃を掻い潜り、腹部を目前に捉える。
スネークが迎撃や防御に転じるよりも早く、ブーンはスネークの身体をスキャンしながら、攻撃動作に入った。
その情報を元にコンピュータが算出した各部位のデータが、左目の視界に次々と展開されてゆく。
( ^ω^)(よし、このまま腹部を……!)
ブーンが調べたかったのは、各部位の強度である。
真剣勝負とはいえ、スネークに重傷を負わせてしまうのが何かと気が引けてしまうブーンは、
スネークの身体強度に見合った攻撃を繰り出したいと思ったのだ。
最も頑丈な部位にそれなりの攻撃を加えればスネークは黙り、勝負も無事に幕を下ろすだろうと判断したのである。
たとえ既にスネークが、強烈な電撃を繰り出していても、だ。
( ^ω^)(吹っ飛んで大人しくなれお! オッサン!)
小さく引いた右腕を素早く押し出し、掌で腹部を攻撃せんとするブーン。
しかし、
(;^ω^)「おおっ!?」
ブーンは、軸足に強い衝撃を受け、そして流転する世界を見た。
ぐるりと世界が一回転した後、目の前にあるはずの凹んだ腹部は存在せず、目に映るのは遠くの天井のみ。
- 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:33:29.06 ID:RhGvdhYS0
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- 75 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:33:53.77 ID:Wr9tV1Ob0
-
スネーク「無闇に突っ込むからだ。己の力を過信し過ぎているんじゃあないか?」
顔に張り付く黒マスクの下で、口の端を釣り上げてスネークが述べた。
(;^ω^)(カウンター……サブミッションが狙いだったかお)
一瞬ブーンの思考と意識が困惑していたが、コンピュータは状況を即座に伝えていた。
ブーンが突き出した腕は、何処からか現れた「スネークの腕」に捻り上げられてしまった。
最初のナイフによる迎撃はデコイ、本命はサブミッションによる拘束だったのだ。
ブーンは、右肩関節と右手首を“キメ”られ、なおかつスネークに背後を取られた不利な状況にある。
(;^ω^)「ぬうう……でも、そんなのじゃ止まらな――」
威勢良く放たれんとしたブーン言葉が、ふと途切れた。
そう、サイボーグはちょっとやそっとの事で痛みを感じず、また、怯まない。
ましてや、セカンドとの闘争を長年続けてきたブーン程のサイボーグであれば、
旧式サイボーグであるスネークのサブミッションなど、結び目の無い縄を抜けるよりも容易い事なのである。
スネーク「甘い甘い。さあ、観念しろ」
――だからスネークは、ブーンが動く前に、ナイフを目の前でギラつかせてやったのだ。
いや、この場合においては、迸らせるという表現が正しいか。
ブーンの目の前で、電磁ナイフの刀身から放電させているのだ。
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:34:52.76 ID:P8mWYvUZ0
- 支援
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:34:56.23 ID:cz4O1u1l0
- なんでC++はプリントエフ関数じゃないんだ?
シーアウトだとなんかやりにくいしどうしてcout<<"こうなるんだよ"<<endl;
これが気に食わないんだよ。
でもC言語の文字列のとこで意味不明になったからC++にするよ
C++からはじめたほうがいいという声も多いしね。
- 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:35:18.46 ID:m/JYdfqB0
- 初遭遇でマジうれしい
- 79 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:35:32.08 ID:Wr9tV1Ob0
- 両者は、その状態を維持して硬直した。
(;^ω^)(動こうと思えば動けるお……でも)
目の前のナイフが邪魔なのだ。
いくらブーンとはいえ、体に電流を流されてしまえば、再びアニーの世話になる必要がある。
従って、この状況において最適な、いや、唯一の手段――
それは、Boosterプログラムによる右腕の強化でスネークの腕を一瞬にして破壊し、
サブミッションから脱出するという、何とも物騒な内容である。
コンピュータが提示する手段は他に、無い。
しかし真剣勝負とはいえ、そこまでやる道理は無いとブーンは思い、
( ^ω^)「……負けだお」
敗北を宣言するのだった。
ブーンが抵抗する気が無い事を悟ったスネークは、まずゆっくりとナイフを下ろした。
次にサブミッションを解くと同時にブーンの背を強く押し、自分に有利な状況を確保する。
(;^ω^)「何だお!? こっちの負けだって言ってるんだお!」
逆手にナイフを握り、未だ臨戦態勢を取るスネークに対し、
ブーンは呆れながら怒鳴りつけた。
スネーク「騙し討ちかもしれんからな……半分冗談だが」
その一言で、ブーンは妙に納得してしまった。
元々は戦闘のスペシャリストだ、如何なる状況においても油断禁物、といったところなのだろう。
- 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:35:38.74 ID:cz4O1u1l0
- ちなみに俺は二回目だよ
- 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:35:40.61 ID:Qz0kjZ5Z0
- 支援
- 82 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:36:31.01 ID:Wr9tV1Ob0
-
スネーク「CQC、対人用の近距離戦闘術だ」
スネークの言葉は、先ほどのサブミッションについての補足である。
対しブーンは溜息を吐き、呆れ顔でスネークに尋ねる。
( ^ω^)「……オッサン、今から戦いに行く奴等は人間じゃないお。
あんな対人用の戦闘術が通用すると思ってるのかお?」
スネーク「馬鹿言え。セカンドにはセカンドの戦い方をする」
流石にそうするかと、ブーンは思う。
切り口はどうあれ、スネークを何とか止められないものか、ブーンは模索を続ける。
スネーク「ともあれ若いの……今の勝負、俺の勝ちだな。
これで文句無し。俺も戦いに行かせて貰うぞ」
( ^ω^)(ああ、まずったお……)
ブーンは小さく舌打ちし、後悔する。
もっと慎重に攻撃していれば良かった、と。
何より、スネークの技量について少し見誤っていたことを。
また一つ溜息を漏らした後、ブーンはスネークに質問した。
( ^ω^)「オッサン、一つ聞かせて欲しいお。
何でそこまでセカンドと戦いたがるんだお?」
- 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:37:06.08 ID:STKLexM0O
- しえーん
- 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:37:16.41 ID:m/JYdfqB0
- さるしえん
- 85 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:37:26.65 ID:Wr9tV1Ob0
-
スネーク「……俺は、セカンドと戦いたい訳じゃあない」
スネークは、近くに転がしておいたダンボールを畳みながら、静かに口を開いた。
畳んだダンボールを脇に挟むと、バイクのタッチパネルを操作して武器庫を開いた。
スネーク「生まれながらにして戦闘兵器のような存在だった俺にとって、
戦いこそが誰かを守る手段……唯一自分を表現出来る方法だった」
鳥の羽のように開いた武器庫には、所狭しと武骨な銃が羅列してある。
しかし一つ、四角形に広く取られたスペースが。
スネークはそこに、はめ込むようにしてダンボールを仕舞った。
スネーク「誰がビロードを守る? ぽっと出てきたお前に任せてられるか。
お前はまだまだ信用に足りる男じゃあない。俺に負けるくらいなんだからな」
語末で、スネークは意地悪そうに口の端を上げた。
スネーク「若いの、お前は何の為に戦う?」
そして唐突な質問を投げる。
しかしブーンはたじろぎもせず、すぐに答えた。
( ^ω^)「同じ理由だお。人を守りたいと思うから、セカンドと戦うんだお」
そして、ブーンは思う。いや、思い直すのだった。
ここで死ぬかもしれないのは、自分とて同じ。
それでも――――守る為に戦うのであれば、彼を止める理由は無いはずだ、と。
- 86 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:37:57.08 ID:Wr9tV1Ob0
-
スネーク「ギコ、お前はどうする?」
(,,゚Д゚)「先ほどアニーの指示された通り、ここで通路の開閉を担当する」
スネーク「そうか」
しかし、とスネークは一拍置き、
スネーク「ギコ、お前は何の為にサイボーグに……いや、感情をカットした?
アニーの指示に従う為ではないだろう?」
(,,゚Д゚)「ああ。俺はここの人達を守りたく、サイボーグと化した」
スネーク「なら、何故お前も戦場に出ない?」
(,,゚Д゚)「今回のセカンド狩りはブーンでなければ不可能。
俺は自分の役割に徹する。スネーク、お前も戦いに必要無い筈だ」
( ^ω^)「…………」
ギコと同感、とブーンは言いたかったが、何かが胸に痞え、それをさせなかった。
ギコの言葉は、感情を失ったサイボーグらしい発言だった。
しかし、サイボーグになった決意とは裏腹に、今のギコの態度はあまりにも消極的ではないだろうか。
System-Hollowの弊害……なのか――?
それとも、感情を排除した合理的な思考プロセスが打ち出した結論を、述べただけだろうか。
ギコの表情や声のトーンからは、何も窺えない。
- 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:38:41.09 ID:m/JYdfqB0
- 支援
- 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:39:27.98 ID:Qz0kjZ5Z0
- 支援
- 89 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:39:34.74 ID:Wr9tV1Ob0
-
スネーク「ギコ、だが俺は行く……通路を開けてくれ」
バイクに跨り、スネークが言った。
(,,゚Д゚)「ああ。別に止める理由が無い。
もっとも、ブーンが一人で行くと言うのなら話は別だが……」
ギコは、ゆっくりとブーンの顔に視線を向けた。
ブーンは考える素振りは見せず、即答する。
( ^ω^)「確かに一人の方が良いお……でも、僕は勝負に負けたお。
だからオッサン、スネークは一緒でいいですお」
スネーク「フン、俺は何もお前と共に戦おうと言っていないがな」
( ^ω^)「じゃあ僕が勝手にサポートするお」
ブーンがそう言うと、スネークとブーンは顔を見合してニヤリと笑い合うのだった。
( ^ω^)「ギコさん、アンロックをお願いしますお」
ギコは無言でコクリと頷くと、3人が対面する特殊合金製のシャッターへと近づいていった。
一部の壁には制御盤らしき物が埋め込まれており、そこには赤色のランプが小さく輝いている。
ギコが左腕の携帯端末を弄り、一枚のモニターを出して何か打ち込んでゆく。
ブーンはそれを、パスワードのような物だろうと推測する。
推測どおり、ギコが英数字の打ち込みを終わると、シャッター中央下部が滑らかに動いてゆく。
- 90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:39:56.21 ID:STKLexM0O
- しえん
- 91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:40:15.79 ID:6PyJ87lx0
- 支援
- 92 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:40:16.37 ID:Wr9tV1Ob0
- セカンド達の侵入を塞ぐ役割を担った幾重のプレートが、段々に開けてゆく。
やがて、巨大な門に風穴が開いたかのような小さな通り道が現れた。
全4車線から成る通路らしいが、一車線分の規模で開かれたようだ。
バイク2台分の横幅を持つその通路は暗闇が充満しており、先が見えなくなっている。
ブーンは視界を暗視モードに切り替え、その奥を見据えた。
通路の奥に、再び壁――いや、扉がある。
いつぞや一軒家で見たような、ボコボコの扉だ。
(,,゚Д゚)「扉は突破されていないようだな……奥まで行ったら連絡をくれ、こちらで扉を開く。
セカンドを駆除し終えたら、また連絡してくれればいい」
スネーク「了解した」
(,,゚Д゚)「二人とも気をつけろ。 奴等は体こそ小さいが硬く、そして数が非常に多い。
知恵は無いが、確かに強力なセカンドだ……特に口から出す粘液に注意しろ」
( ^ω^)「粘液?」
(,,゚Д゚)「口から約3メートル範囲に及ぶ体液を吐き出す。
蜘蛛が糸で獲物を捕らえるように、奴等は体液を使うんだ。
粘液と言うように、非常に粘着性のある体液でな……あれに捕まると厄介だ」
スネーク「確か、足を一本犠牲にして帰ってきたよな?」
(,,゚Д゚)「他に脱出する術が無かった。それ程、強力な攻撃を弄する敵だ」
- 93 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:41:18.21 ID:Wr9tV1Ob0
- そこで、唐突に会話は途切れた。
ギコが無言に戻ったのは、必要な情報を話し終えたからだろうとブーンは察し、
( ^ω^)「じゃあ、行って来ますお」
ギコに軽く手を振って見せた後、遠隔操作でBLACK DOGのエンジンを掛け直した。
――――セカンドを抹殺しに行く……そんなブーンの確かな闘志に呼応し、
BLACK DOGもエンジンを高鳴らせ、淡い蒼色を放つのだった。
スネークのバイクが先行して通路に入ってゆく。
遅れずブーンも暗闇の通路の中へ。
狭い通路から吹き抜けるのは、2つが混ざり合って奏でられるハイトーンの和音。
ギコは2人が通路内に行ったのを見届け、シャッターを戻して通路を塞いだ。
(,,゚Д゚)「…………」
一人きりになり、ギコは静かに立ち尽くす。
思考に身を委ねようともせず、ただ静かに。
静寂に溶け込むように――――。
- 94 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:42:07.43 ID:Wr9tV1Ob0
- ※
機械仕掛けの狩人達は、瞬く間に扉の前に到着した。
ブーンの思いの外、長い通路であったがバイクの機動力を持ってすれば短い物。
2人はすぐにギコに連絡しようとはせず、扉の前で一服を決め込む。
僅か2本の煙草のはずであるというのに、そこら一帯が真っ白に包まれる。
機械の目や鼻でなければ、咽びかえり涙ぐんでいるであろう。
( ^ω^)「オッサン、聞いていいかお?」
スネークはコクリと、頷く。
( ^ω^)「ギコさん……何かおかしいと思わないかお?
感情をカットしているとはいえ、アレじゃ自分の考えで動いていないような……。
何だか、そんな気もしたんだお……」
恐る恐るといった様子で、ブーンは述べた。
推測が謝っているのならば、ギコに対しあまりにも侮辱的な発言であるからだ。
スネーク「System-Hollowの唯一の弱点が、恐らくそれだ」
スネークが、すぐに返した。
スネークは続ける。
スネーク「感情を失う事でやがては自立的な行動が取れなくなる……。
最終的には指示待ちの機械のように、思考すら鈍化してしまうのではないかと、俺は思う」
- 95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:42:08.24 ID:STKLexM0O
- しえーん
- 96 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:42:37.22 ID:Wr9tV1Ob0
-
( ^ω^)「じりつてきな?」
スネーク「そう、自立だ。自分だけで何かをやろうとする判断の事だ。
これをしなくては、あれをしなくては……そういう考えに至らず、
誰かの言葉、若しくは数値などの指針が無ければ動かなくなってしまう」
( ^ω^)「……だから、僕達と一緒には来なかったのかお?」
ブーンは煙草を足元に捨て、それを踏み潰す。
スネークは腰のホルダーから小さな灰皿を取り出し、それに煙草を入れた。
スネーク「いや、あくまで推測だから真偽は分からん。
しかし、セカンドのデータや俺達のスペックなどから鑑み、
あの場に居残った方が合理的だとギコが言うのなら、俺も同感だ」
( ^ω^)「だけど、オッサンは戦いたいから……いや、
ビロードを守りたいから、ここに来たお」
スネーク「……感情をカットする事が、意志すら消してしまうのかもな。
アニーやシーケルトを守るという本来の意志を、な」
それでは本末転倒だ、とブーンは思う。
実際にそうであるとしたら、ギコが救われない。
サイボーグになったのも、感情を捨てたのも、全てが無駄ではないか。
- 97 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:43:15.85 ID:Wr9tV1Ob0
-
スネーク「ギコの事については俺も前々から疑問していた。
しかし考えるのは後だ……そろそろ行くぞ、若いの」
携帯端末を操作し、ホログラムのモニターを宙に出力させる。
「Call」という文字が数度点滅した後、モニターにギコの顔が現れた。
スネーク「こちらスネーク。扉の前に到着した……ロックを解除してくれ」
『了解した。扉、開けるぞ』
ギコの返信が終わると同時、モニターが消える。
直後、ブーンの目の前にある白色の凹みだらけの扉から、ガシャンと硬質な音が鳴った。
もう一度、ガシャンと鳴る。
更に2度鳴ると、扉は中央に亀裂を作ったかと思えば、左右に素早く開いていった。
ロックは解除され、目的地の倉庫が露になる。
ちょうど彼等の目の前には、朝の作戦会議で見た巨大なコンテナが暗闇の中で佇んでいた。
しかし、作戦会議で見た画像とは違い、穴だらけである。
無数の穴が生じている――まるで、虫にでも喰われたような、穴が。
第17話「戦う理由」終
- 98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:43:51.58 ID:Qz0kjZ5Z0
- 支援
- 99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:44:20.79 ID:STKLexM0O
- しえん
- 100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:44:32.52 ID:cz4O1u1l0
- 俺がファッキングしてやるよ
- 101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:45:10.90 ID:cz4O1u1l0
- 乙
- 102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:45:44.88 ID:Qz0kjZ5Z0
- 乙!
オッサンかっこいいぞ
- 103 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:45:53.07 ID:Wr9tV1Ob0
- ???「――――そうはいかんざきいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
ガイル「「お、お前は――――ッ!?」」(^ω^;)
,-┘└-, ,へ ,へ / //
''//| i''' / / ' 、' 〔/ / _,,,,,,,,,,,,,,_
υ .|__| ∠_/ '、_' / ,-'゙,,;;;;;;;;;;;,,,,,,、;~''く"'ー-、
,-┘└-, ,__匚二コ / ,ィ´ `ヽ;.,/~゙゙'''ー゙l
''//| i''' 二二_''''フ 7_// ,i、 ゙゙'''''ーi、,/
υ |__| / / / /^ `、
n ∠/ /. / _、,.;j ヽ
ll ,へ、 ., / ,-、 -'''" =-{_ヽ
ll ,へ丶、'> へ { / ハ '|;;\ ,r';;/ ̄''''‐-..,フ!
l| 丶,> //  ̄フ.rソ |;;;;;;;;\|;;;i _ `ヽ
|l // / { ' ノ.|;;;;;;;;;; i' l r' ,..二''ァ ,ノ
ll く/ > 丶-'..| ;;;;;;;;;;;〈,l /''"´ 〈/ /
l| 匚 ̄| \ .| ;;;;;;;;;;;〈| ! i {
|l 匚 | ト . .|;;;;;;;;;;;〈 |. | ,. -、,...、| :l
ll .匚__,| | |;;;;;;;;;;;〈 l i i | l
ll ,-┘└-, i |;;;;;;;;;;;〈 l | { j {
|l ''//| i''' { |;;;;;;;;;;;〈, i' `''''ー‐-' }
n. n. n υ .|__| l |::;;;;;;;;;;;〈 ,ヽ、__ ノ
|! |! |! l ::-,,、;;;;゙゙`ー-`ニ''ブ
o o o ,へ l :. `ー-,,,,,,,,,,,,,,,,/
ガイル「「うるせええええええええええええええええええ」」(^ω^;)
- 104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:46:17.40 ID:6PyJ87lx0
- 乙
- 105 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:46:32.43 ID:Wr9tV1Ob0
- ,-'゙,,,,,,,,、;~''く"'ー-、
./,,i´ `ヽ;.,/~゙゙'''ー゙l
|/_ ,i、 ゙゙'''''ーi、,/`
/ .| .',!,、 `゙''ミi、 .、゙l
.,,,-''''゙" ゙l,.゙l`V' ゙エエト .p"
,i´ /" | ''',!l゙ |゙
|,\ .|;;;; | .,/゙''-,,.゙l クックック・・・私は赤いサイクロンのザンギ・・・ザンギエフだハラショー!
|\;\ ゙l、;;;ヽ-''";_,―'ミ゙l
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( ^ω^)「なんでザンギエフがここにいるんだお?」
ザンギ「同じストリートファイターなのに、何故ガイルだけ優遇されているのだ? という話をしに来たのだよ!
私やバイソンなんて名前だけ出た死にキャラですぞ。いくらなんでも不公平ハラショー?」
( ^ω^)「ハラショーって言うなお! なんかムカつくお!」
ザンギ「だからガイル、私とストリートファイトで勝負だ・・・・っ!」
ガイル「な、何ぃ!? ストリートファイトで勝負だと!?」
ザンギ「そうだ! >>1の座を賭けた勝負をなああっ!!」
(;^ω^)「え、何コレ、続くの?」
〜つづいてしまう〜
- 106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:47:15.17 ID:cz4O1u1l0
- ・・・・は?
- 107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:48:46.39 ID:gjaim++FO
- (゚Д゚)?
- 108 名前: ◆jVEgVW6U6s :2009/01/02(金) 16:49:13.45 ID:Wr9tV1Ob0
- 以上で終わりです。
支援ありがとうございました&お疲れ様でした!
年明け前に投下したかったんですが、色々忙しかったもんで。
ということでまた次回。
なるべく早く続きを書きたいもんです・・・。
- 109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:52:35.99 ID:m/JYdfqB0
- >>108
マジ現行で一番好きだからがんばって
- 110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:55:04.46 ID:RV5vaN1O0
- 知らん間に来てた 読んでくる
先に乙
- 111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 16:59:17.48 ID:BIcaQxf1O
- 乙!
ザンギwwwwwww
- 112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 17:08:07.49 ID:STKLexM0O
- おつかれさん
- 113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 17:36:33.47 ID:7oe+sZM8O
- おお来てたかよむほ
- 114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 17:49:08.66 ID:cz4O1u1l0
- もっこり冒険島は実は存在する
- 115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 17:55:08.61 ID:7oe+sZM8O
- 乙
スネークカッコいいよスネーク
- 116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 18:00:31.52 ID:cz4O1u1l0
- 乙
特にスネークが射精するところが興奮した。
このSS得ろ杉じゃない?ちょっと控えてよね
なんかBLはいってるところがすき。
ギコのアナルがすっごい締まってるのが入れてるように解った