- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/12(火) 13:17:58.80 ID:65+LAKSy0
- 登場人物一覧
――― チーム・ディレイク ―――
( ^ω^)B00N-D1:通称ブーン、本名不明。年齢20歳。戦闘員。
セカンドに対する強い免疫を持つ強化人間「システム・ディレイク」。
セカンド観測用人工衛星「アルドボール」の打ち上げミッション中、
大型セカンドとの連戦により満身創痍となるものの、無事セントラルへ帰還。
ξ゚听)ξツン・ディレイク:年齢19歳。チームリーダー。
ブーンを強化人間に改造した弱冠19歳の天才科学者少女。
過去セカンドに襲われ両腕を失い、義手を着用。貧乳。嫌煙家。
ミッションを通じ、ライバルであるハインリッヒと和解する。
('A`)ドクオ・アーランドソン:年齢21歳。武器開発担当。
豊富なアイディアで強力な武器や乗り物を開発し、ブーンの戦闘をサポートする。
ツンをからかうお調子者の変態。空気を読まない。
免疫も無い非戦闘員だが、夜の街に行く勇気ある男。
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/12(火) 13:19:28.31 ID:65+LAKSy0
- ――― チーム・アルドリッチ ―――
从 ゚∀从ハインリッヒ・アルドリッチ:年齢23歳。チームリーダー。
対セカンド人型戦闘兵器「バトルスーツ」の理論提唱者であり、開発者である。
セカンドと化した兄「ミルナ・アルドリッチ」を亡くす。
ライバルであるツンと友好的に。
( ゚∀゚)ジョルジュ・ジグラード:年齢35歳。戦闘員パイロット。
深紅の機体を操るバトルスーツ部隊隊長。
ミッション中、セカンドウィルスに感染してしまった。
抗体を打たれるが、安否は不明。
ガイル:年齢33歳。戦闘員パイロット。
バトルスーツ部隊副隊長としてジョルジュをサポート。
ミッション中に遭遇した大型セカンドを、生身で倒した。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/12(火) 13:21:33.19 ID:65+LAKSy0
- ――― その他 ―――
/ ,' 3荒巻・スカルチノフ:年齢63歳。セントラル議会・議会長。
現議会長、元アメリカ空軍大佐。
任務と「セントラル」の為には非情になる男。
( ・∀・)モララー・スタンレー:年齢30歳。セントラル議会・議会長補佐
バイオテクノロジーの権威「ラウンジ社」の元社員で、優れた科学者。
自身の研究成果である「Hollow Soldier」を従える。
( 〓 )Hollow Soldier(虚ろな兵士):年齢不明
モララーにより生み出された超人。
クローンテクノロジーにより量産され、部隊として編成された。
ツン達の護衛として、ブーン達の回収を補助した。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/12(火) 13:23:21.32 ID:65+LAKSy0
- 第11話「抗体」
ブーン達が『セントラル』に帰還した翌日の朝。
『セントラル』はいつも通りに朝を迎え、大勢の人間が働き始めていた。
朝を迎えるといっても、実際に太陽を拝む訳ではなく、
人がそれぞれ時間に従って目覚めているだけだ。
例えば、チーム・ディレイクに属している研究員、ドクオ・アーランドソンの場合。
彼は毎日朝7時には床から起き上がり、液体化食料を手に取るとすぐにラボに向かう。
ドクオの長髪は特に目立つ寝癖はつかないものの、あまり洗髪しないので油っぽい。
おまけに頬や顎も十分に手入れされていないので、だらしない無精髭は絶えることが無い。
誰が見ても「不潔」なのだが、そんな人目などお構いなしに、ドクオは平然と道を歩く。
('A`)(うーん。やはり朝は“コーヒー味”に限るなぁ)
彼の部屋とラボの、ちょうど真ん中に位置する喫煙所で、腰を落とす。
そこで、液体化食料のノズルに吸い付く。
そのオカズ代わりに煙草を吸うのが、彼が決めた朝の習慣だ。
ちなみに液体化食料とは、人間が1食分に必要とする栄養素を、
ドロドロのゲル状にしてパックに詰めた『セントラル』の主食品の1つだ。
女の子に大人気なイチゴ味やアップル味、子供が大好きメロン味と、数多くラインナップを揃えている。
朝は皆、大抵これで済ましている。
ちなみにゲル状のそれが嘔吐物に似ているので、ドクオとブーンは“ゲロ”と呼んでいる。
('A`)(最近のゲロは“熟れたマンゴー味”が流行ってるのか?)
広い通路を行き交う人々が持つ液体化食料のパッケージを見ていた。
すると、その雑踏の中に見慣れた女性を見かけ、ドクオは声を掛ける。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/12(火) 13:24:55.56 ID:65+LAKSy0
-
('A`)「おーい、ハインリッヒー」
呼び声に気づき、ハインリッヒが人ごみから抜けて出てくる。
豊満な胸を強調した白衣の着こなしが、朝から少し刺激的だ。
手に持っている液体化食料は、栄養価の高い「ハチミツ生姜味」だ。
从 ゚∀从「よう。今からお前んとこのラボに行こうとしてたんだ」
派手な外見とは対照的な、気だるい声。
近くでハインリッヒを見ると、目の下がうっすらと黒味を帯びており、
誰の目にも疲れが見える表情をしていた。
('A`)「大して寝てないんじゃないの?」
从 ゚∀从「昨日の今日じゃ寝れねーよ。
あ、煙草マルボロだ。一本くれよ」
('A`)「あんたもニコチン中毒か」
ドクオはソフトケースを振って1本取り出し、ハインリッヒへ渡した。
別に頼まれてもいないが、ジッポの火を口元へ近づけ、煙草に火を点けてやった。
ハインリッヒは静かに息を吸い、少量の煙を宙へと浮かべる。
从 ゚∀从「いや、煙草は昔嗜む程度に吸ってた。
久々にマルボロ吸ったけどうめぇなオイwwwwwwwww」
久方ぶりの美味い煙草の味に、感嘆の声を上げる。
元気そうな様子を見て、ドクオはほんの少しだけ、安心した。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/12(火) 13:27:27.46 ID:65+LAKSy0
- ドクオが心配するのも当然だ。
セカンドと化した兄を見つけ、そしてその兄を失い、
今度は一番信頼していた戦闘員がセカンドウィルスに感染してしまったのだから。
('A`)(強いなぁ)
ドクオは、彼女の兄の事について触れようとしなかった。
ハインリッヒの気持ちを聞いたところで、何と言えばいいのか、
また言葉を見失うに決まっているからだ。
从 ゚∀从「ジョルジュ、どうなるのかな」
やはりハインリッヒの憂いの種は、ジョルジュの事である。
ジョルジュについては、どちらが切り出すと思われた。
ドクオは、先ほど得たほんの少しの安心を煙と共に吐き出した。
(;'A`)「どうだろうな……昨日診た限りでは何とも言えなかったが……」
その前向きでない言葉の並びに、ハインリッヒは押し黙ってしまう。
ドクオが一度深く吸煙した後、煙を吐き出しながら言葉を続けた。
(;'A`)「で、でも、ウチの研究員が寝ずに頑張ってくれてるみたいだし、ツンもいるし。
今までみたいな“感染したら終わり”なんて事にはならないと思うよ」
从 ゚∀从「そ、そうだよな、そうだよな!」
明るい意見に、ハインリッヒの顔が綻ぶ。
現実は現実として受け止める。
しかし、そこに理想や夢を持って良いという事は、ドクオも十分に学んだつもりであった。
- 12 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 13:29:36.30 ID:65+LAKSy0
-
('A`)「よし! 早くラボに向かおうぜ!
ジョルジュが気になるし、俺はブーンの修理をしにゃーならん!」
煙草を灰皿に押し付け、意気揚々と腰を上げた。
从*゚∀从「よっしゃー行こうぜ! えっと…あ、あれ…あー…」
ハインリッヒもドクオに続かんとベンチを立つが、何故かの意気消沈。
しばらく首を捻ったり「あー…」と唸り声を出しているのだが、
从;゚∀从「……すまん、名前なんだっけ?」
どうやら、名前をど忘れしていたようだ。
('∀`)「ドクオ・アーランドソン、21歳!
好きな物はマヨネーズとプリンだぜ!」
ドクオはきもい笑顔を見せつつ、今日は自室で引き篭もるべきか悩んだ。
- 15 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 13:32:08.01 ID:65+LAKSy0
- ※
『セントラル』へ帰還してから、ブーンは部屋に帰らずにラボに居た。
いや、正確にはラボに残されたと言うべきである。
( ^ω^)「…………」
強化ガラスが張られた手術室、そこの診療台の上で、ブーンは寝ていた。
損傷箇所の修理を受けているのである。
診療台の周りでは、忙しく機器が小刻みに動いており、
時折、ブーンの胴体から金きり音と共に火花が飛び散っていた。
ξヽ゚听)ξ(ココアうめぇww……ああ、草生やしてはしゃぐ元気が無いわ……)
ガラスの向こう側で、熱く淹れたココアを片手に、空いている方の手で手術機器よりも
忙しく手を動かしているのは、目の下にクマをこさえたツンだ。
第5階層の自室に戻らず、一睡もせずにぶっ通しで作業を続けていたのだ。
シャワーも浴びていないので自慢の巻き毛も崩れている。
そのせいか、ココアに紛れて頭の油っこい臭いが、ほんおりとツン自身の鼻をくすぐる。
しかし、ツンはそんな事に構いもせずに、没頭して作業を続ける。
- 16 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 13:34:07.11 ID:65+LAKSy0
-
( ^ω^)僕を直すのがツンの仕事だお!
早く直すおうんこ巻きぐそもーりもりwwwwwwww
ξ#゚听)ξ「ああああもう! あのニヤケた寝顔なんかムカつくわ!」
ツンには、何となくブーンの寝顔がそう言っているように思えた。
ブーンは、街へ出向いて戦う。それも死の危険を晒しながらだ。
時には数週間『セントラル』を離れ、獰猛なセカンドを始末しながら、
『セントラル』が欲している資源などの調査を行っている。
その中でブーンは、自分とツンの両親を殺害したセカンドを捜索していた。
それに対しツンは、傷付き故障したブーンの体を直すのを、自分の役目としている。
ひとえに直すといっても、戦闘データを参照しながら身体機能の向上やシステムのアップデートも
考慮しなければならない作業もあるので、少しばかり手間を要する。
ましてや、今回のように大きな故障ともなれば、パーツを1から組み立てなければならない事だってある。
ξヽ゚听)ξ「もうちょっとで終わるし、頑張るぞー!」
2人は「戦う者」と「直す者」と役割を担い、この5年間を戦い、そして生き抜いてきた。
「それは全ては復讐の為である!」とツンは言いたいだろうが、
2人の戦いは“すっかり居心地の良くなった『セントラル』の為”でもあった。
- 18 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 13:36:38.35 ID:65+LAKSy0
- チーム・ディレイクは、「セントラル議会」から言い渡されるミッションの完遂によって貢献していた。
期間や目標達成度、ミッション中の新たな発見などの付加価値といった、
あらゆる要素から鑑みた「成績」に応じて、チームは資材や資金を議会から与えられるのだ。
その成績は、年に2度ある「予算会」を通して、交付金・交付資材と共に発表されている。
研究をするには、資金と資材が必要。
資金と資材を得るには、ブーンが必要。
そんな簡単な式が成り立つ為、ツンは早急にブーンを直さなければならないのだ。
いつ「セントラル議会」からミッションを言い渡されるのか判らないのだから、
常に準備万端でなければならない。
ξヽ゚听)ξ(そう。別にアンタの為に直してるんじゃないんだからね?
アタシのメンツと休みの為に、夜も寝ずに頑張ってるんだから!)
「ツンさん。感染者の5回目の身体検査の結果が出ました」
若い女の研究員が、手にモニターを持ってツンの元へやって来た。
ココアをテーブルに置き、不機嫌そうにモニターをひったくると、ツンは眉間に手を当てて熟考する。
- 21 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 13:38:17.85 ID:65+LAKSy0
-
ξヽ゚听)ξ「……やっぱり」
しばらくモニターを眺めた後、一言。
椅子を回し、体をガラス越しのブーンから研究員へと向けなおす。
ξヽ゚听)ξ「抗体を2時間おきに打つように」
きびきびとした口調が、事態の深刻さを物語っている。
恐る恐る、女は尋ねた。
「あの…、これって、やっぱりセカンド化しているのでしょうか…?」
一瞬、両者は沈黙する。
ツンは、切れ長の鋭い目付きを研究員に突きつけながら、冷淡に述べた。
ξヽ゚听)ξ「断定は出来ないわね。
ただし、依然として危険な状態だわ」
「セカンド化…もしくは、彼が死ぬと……?」
ξヽ゚听)ξ「ええ。彼にとっても、それからアタシ達にとっても危険ね。
突然暴れられたりなんかしたら大問題になるわ」
「麻酔も、このまま打ち続けるということで宜しいでしょうか?」
ξヽ゚听)ξ「そうね…とりあえずは眠らせてて頂戴。
ジョルジュさんに拘束衣を着衣させたら、起こすわ」
- 23 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 13:42:34.09 ID:65+LAKSy0
- ※
从;゚∀从「こ、拘束衣ィ?」
ハインリッヒが素っ頓狂な声を発する。
「アクセサー」を待つ周りの人間が、驚いて2人の方へ目を向けた。
('A`)「ああ。昨日の晩に、ツンからメールが来ててさ。
拘束衣を着ける必要があるかもしれないって内容なんだけど」
ドクオは腕に巻きつけた携帯端末を弄り、
メールに添付されたデータファイルを宙に出力して映像を出した。
「拘束衣」は、頭から爪先までしっかり覆った宇宙服のような形状だ。
とはいえ別に分厚いスーツではなく、着た者の体のラインくらいは分かるらしい。
また「拘束衣」といっても、昔ながらの両腕の自由を奪うような物ではないらしい。
五体を自由に動かす事が可能なようだ。
('A`)「万が一、セカンド化した時のジョルジュの力を、
本来の人間くらいの程度に抑える物だそうだ」
('A`)「ハインリッヒ。
抗体を注入してから数時間、ジョルジュの肉体に変化があったのは知ってるよね?」
一拍置いて、ドクオは質問する。
ハインリッヒは視線を「拘束衣」の映像に向けたまま、上の空で返事を返した。
- 24 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 13:45:28.71 ID:65+LAKSy0
-
('A`)「まず、見受けられたのが筋肉の異常な発達だ。骨格も若干変わりつつある。
もしかしたら精神異常の恐れもあるらしい。
危険かもしれないという事で考案されたのが、この拘束衣みたいだ」
从 ゚∀从「こんな物を作るって事は、
抗体はウィルスを消滅させるまで至らなかったって事なのか?」
ハインリッヒは視線をドクオの目へ移し、そして重々しい口調で問う。
('A`)「いや…それは判らない」
アクセサーに乗り込みながら、ドクオが呟く。
アクセサーの行き先を指定した後、自分の推測を述べ始める。
('A`)「現に、死滅したウィルスもあったのは、
ジョルジュの細胞の一部を観察して明らかになっているからな」
ドクオは続ける。
(;'A`)「しかしだよ、ハインリッヒ。
下がったと思ったジョルジュの体温は、再び上がり始めていた……。
体の部位によっては、セカンドの熱量と酷似していた所もあったし……」
- 26 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 13:47:58.30 ID:65+LAKSy0
-
从;゚∀从「や、やっぱり抗体は効いてないんじゃないのか!?」
焦りからか、一際大きな声でハインリッヒが聞き返した。
(;'A`)「でも、そうは断言出来ないんだ。
感染してから約10時間、抗体を投入し続けているジョルジュはセカンド化する気配が無い。
セカンド化に個人差はあるとはいえ、感染していれば腕の一本も変化してるはずなんだが…」
从;゚∀从「それって前向きに捉えていいんだよな?」
(;'A`)「うん、まぁ……多分」
そこで2人の会話は途切れた。
お互い、思案顔を浮かべており、特にハインリッヒは、
アクセサーのスピーカーから流れ出ている軽快なポップスすら耳に入っていない様子だ。
静かな低空飛行を終え、2人は少しばかり急ぎ足でツンのラボへ向かう。
別に話題が無い訳じゃないのだが、2人ともしばらく考えを巡らせていたかった。
- 28 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 13:49:56.28 ID:65+LAKSy0
- 道中、見覚えのある髪形が、通路に吹き抜く空調に煽られているのを発見する。
ブーンを助けた恩人の1人、ガイルだ。
从 ゚∀从「ようガイル。今来たのか?」
それまで閉じていた口を開け、明朗に挨拶をするハインリッヒ。
だが、ガイルも今朝は気分に優れない様子である。
ガイル「ああ。えっと…君、名前何だっけ?」
ガイルはドクオの顔を見て、声を上ずらせて申し訳無さそうに尋ねた。
('∀`)「ドクオですよ。昨日ヘリの中で自己紹介し合ったじゃないですか」
内心、「このDJテーブル頭が!!」と罵りながらも、
きもい笑顔を浮かべながら、あくまでフランクにドクオは返した。
ガイル「ああ、そうだった! ドクオ君だ!」
('∀`)(一日にこう何回も名前聞き返されると死にたくなってくるな!)
ドクオはそれでも元気一杯の笑顔を見せるのだった。
そんなきもいドクオの笑顔を脇目に、ガイルはハインリッヒに話しかける。
ガイル「そういえば、バトルスーツ隊はどうなるんだ?」
- 30 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 13:52:25.86 ID:65+LAKSy0
-
从 ゚∀从「実は、蓄えてある資材と資金がもう少なくってな。
今のままじゃ一機作るのが限界なんだよ。部隊の再編成は来週の予算会が終わってから考える。
また、どっかの街に行って“調達する”のもいいけど」
ガイル「パイロットも随分減っちまったしな……。
クイーンズに置いて来たバトルスーツはどうする?」
寂しげな表情を見せながら、ガイルは聞いた。
从 ゚∀从「回収は無理だろう。そのまま破棄せざるを得ないな。
ま、安心しろ。前よりも良いモン作ってやるからよ!」
ガイル「そうか。まぁ、ちょっと気になっただけだ。
セカンドと白兵戦するのはもう懲り懲りだ!」
ガイルの顔が綻んだ。
その笑顔に釣られ、ハインリッヒも笑った。
- 33 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 13:55:19.39 ID:65+LAKSy0
-
从 ゚∀从「なあ。お前の所は余裕あるの?」
ガイルから言葉が途切れると、ハインリッヒがドクオに向かって話しかけた。
ドクオは名前を呼ばれた事が嬉しかったのか、活き活きと話す。
('∀`)「余裕っちゃあ、余裕だよ。
ウチはお宅と違って、作る物はそれ程大きくないし」
从 ゚∀从「そっかそっか。にしても、他の兵器開発チームの連中はみんな血相変えてるぜ?
この前なんか、ラボ・マタンキが自分達で外行って資材取りに行ってたよ。失敗してたけど。
そんな中でウチとお前の所は、結構豊かっつーか」
そこで、ドクオが真面目な顔に戻す。
('A`)「結果を出せないチームは、議会にとって用無しになっちまうからなぁ……。
特に俺達のような兵器開発チームは、議会の作り出したシステムに従わざるを得ないって訳だ。
格差の無い社会のはずが、気がつけば資本主義ライクな風潮になっちまったな」
从 ゚∀从「当面のライバルは“都市開発”の連中かねー。
この5年間で人口が増えてきたから、建物を増やさなきゃならないだろうし。
それを憂慮すんのはどうかと思うけど…やっぱり素直に喜べないかもな」
- 35 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 13:57:24.63 ID:65+LAKSy0
- ※
暗闇。
目を凝らしても、手探りをしても、捉え所の無い闇だけで構成された空間。
気づけば、この暗闇だけの世界の中で、俺は当ても無く歩いていた。
クイーンズの街でセカンドに咬まれ、情けなくも汚らしいゴミ箱に逃げ込み、
そこから俺の記憶は曖昧になったままだ。
最後に聞いたのは、確かツン・ディレイクの甲高い声だったような気がするが、
それもうろ覚えで確かではない。
それに、あの時俺は目も満足に見えなくなっていた。それは覚えている。
これは夢なのだろうか。
いや、もしかしたら俺は死んでいるのかもしれない。
記憶が曖昧なのだから、その線も有り得るだろう。まあ、どれも可能性だけで確信は持てないが。
答えの出ない自問自答を早々と切り上げ、ジョルジュは無心で歩き続けた。
別に居心地が良い訳でもなく、かといって退屈でもないのが不思議だ。
「……?」
突然、空間の一部に、歪みが出来る。
ジョルジュがそこへ近づこうとした時、暗闇が動いて、何やら形を成そうとした。
- 39 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:00:15.27 ID:65+LAKSy0
- 面白い光景だ。
雲の動きを高速再生している映像を何となく思い出す。
黒い雲のような物が勝手に動いて、まるで粘土細工でも作っているかのようだ。
「はっはーん、これはこれは……」
闇は、俺の知っている生物の体を作り上げた。
顔面が崩壊したおぞましい表情、赤い野獣の目をした化け物の顔。
こいつの顔はよく知っている。
なんせこいつは、俺に咬み付いて、俺に殺されたセカンドだ。
( ゚∀゚)「何だ? まだ何か用があるのかよ?」
赤い目でじっとジョルジュを見つめる。
このセカンド、どうも俺の事が憎くて堪らないらしい。
そんな事を考えていると、そいつは叫び声を上げながら急に俺を襲ってきやがった。
あの時と同じように、血肉に欠乏した異常な声を撒き散らして。
( ;゚∀゚)「ちょ、待て!」
当然、待てなんか聞かない。
夢のような世界でも、俺は現実と同じようにコイツに噛み殺されてしまうのか。
いや、殺されて死んだのかどうかも知らないが。
- 41 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:01:58.41 ID:65+LAKSy0
- 人間如きがセカンドに敵うはずが無いと踏んだ俺は、無様に逃げた。
しかし、敵うはずが無い相手に逃げ切れるだろうか?
案の定、俺は捕まった。
( ;゚∀゚)「うおっ!? や、やめろ!!」
後ろから抱きつかれ、肩の肉をがぶり、また一口がぶり。
別に痛みは無いが、肩の肉が食われているのは事実。
このままでは毛の一本も無くなるまで喰われるだろう。
どうせ既に感染しているのだ。
自暴自棄になった俺は、試しにそいつの顔をぶん殴ってみた。
顔面は、まるで液体化食料のパックに詰ったゼリーのように、軟らかかった。
拳がめり込み、頭蓋を破壊してプルプルした脳ミソを蹴散らした。
そのまま後頭部の頭蓋骨と頭皮も突き破ると、脳漿と多量の血液が辺りに飛び散る。
例えようの無い悪臭が、その場に立ち込める。
そいつはビクンビクンと体を痙攣させ、力無く項垂れた。
脳漿と血液のプールの中にぷっかり浮かぶ目玉が気持ち悪い。
( ゚∀゚)「……訳が分からん」
俺の名はジョルジュ・ジグラード。今年で36歳になる、バトルスーツパイロット。
好きな物は豊満な乳と戦闘機各種、煙草、酒、ギャンブル。嫌いなヤツはB00N-D1。
うむ、俺は落ち着いている。
- 43 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:04:01.21 ID:65+LAKSy0
- もう一度、ジョルジュは自分が倒したセカンドの死体に目を向け、そして呟いた。
( ゚∀゚)「ああ、そうか」
そう、これは夢や幻想といった類の物に違いない。
白昼夢というやつだ。
じゃなければ、俺がこんな化け物を素手で倒せるはずがない。
暗闇は、懲りずにまた一匹、さっきと同じようなセカンドを作り出した。
汚らわしい涎を口から撒き散らしながら真正面からジョルジュに突っ込んでくる。
タイミングよく、ジョルジュは頭に浴びせ蹴りを放つと、頭がぽろりと落ちた。
胴体から外れた頭部は、まるで壊れた玩具みたいに、口をガタガタ動かして歯を鳴らしていた。
暗闇の地面に転がる生首を目で追うと、また新しいセカンドが闇から生まれていた。
同じような容姿に、同じような喚き声。
強い既視感に苛立ったジョルジュは、走ってセカンドに近づき、どてっ腹に思い切り蹴りをくれてやった。
ぐにゃ、と何とも言えない柔な感触が、俺の脚に纏わりつく。
( ゚∀゚)「ハハハハッ! こいつはちょっとした快感だな!」
長ったらしい腸や、腐った色をした内蔵が零れ落ちるのを両手で必死に押えていても、まだ生きていやがる。
ただその顔が何とも苦痛に満ちているので、俺は満足して嘲笑ってやった。いい気味だ。
一しきりに笑った後、周りの異常に気がついた。
いつの間にか、ジョルジュは暗闇が生み出した何百何千はいるであろうセカンドに取り囲まれていた。
( ゚∀゚)「寄ってたかって喰おうってつもりか!
でも今の俺はスーパーマンだぜ? ほら、かかって来い!」
- 46 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:06:13.67 ID:65+LAKSy0
- それから何時間経ったのだろうか。
この世界に時間の概念があればの話だが。
気が遠くなるような長い時間、戦い続けているような。
いや、実は戦い始めて間もないような。
( ;゚∀゚)「そんな事どうでもいい!
なんか疲れたような気がするから休ませろ!」
時間など、どうでも良かった。
相変わらずセカンド達は元気に俺を襲ってくる。
どうか、コイツらを止めてくれ。
もう何匹倒しただろうか? 俺の背後には死体の山が4つ程出来上がっていた。
いや、良く見ると、俺が立っている地面も死体で出来ているじゃないか。
臓物と血液が貯まって川まで出来てらぁ。
なるほど、こういうのが地獄ってヤツなのかもしれない。
( ;゚∀゚)「…………」
何故、俺は手を休めずに戦っているのだろう。
理由は分からないが、コイツらに全身喰い尽くされた瞬間、
俺は二度とこの暗闇の世界から脱出する事が出来ない気がする。
- 48 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:08:45.68 ID:65+LAKSy0
- ※
ξヽ゚听)ξ「遅かったわね。煙草でも吸ってたの? もう9時前よ」
3人ラボに入ると、「ミルクココア味」の“ゲロ”を片手に、フラフラした足取りで歩くツンが出迎えた。
(;'A`)「おま、大丈夫か!?
もしかして全然休まずに作業してたんだろ!?」
从;゚∀从「ツンちゃん……だよな……?」
――ふわふわの巻き毛、猫目の大きなくりくりした瞳。
頬はまるで北極の雪原のごとく美しい透明感を放ち、
唇は、ベーリング海峡から眺めた時の水平線に向かって落ちてゆく太陽の如く、情熱的な紅の色。
彼女の細身の何処に蓄えているのか、芳醇で甘美なその香りは高原に咲く花のよう以下略――
をしているのが普段のツンで、今日はそれとは正反対の有様であった。
――ぼろぼろの巻き毛、ただ目付きの悪い猫目。
頬も張りが無く、唇は乾燥してささくれをしている。なんかほんのり臭い――
(;'A`)(俺と比べても汚ないなぁ)
というのが、ドクオの正直な感想だった。
ドクオが、酔っ払う以外に変貌するツンを見るのは実に珍しい事で、
大抵その時は大きな問題が発生している場合が多い。
- 51 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:10:35.91 ID:65+LAKSy0
-
ξヽ゚听)ξ「あのね、アタシを舐めないで頂戴。いつも元気100%の超元気っ子、
“真冬に駆け回る半袖短パンのツン”とはアタシの事なのよ?」
(;'A`)「そんな格好したことねーだろうに」
ガイル「俺、いっつもタンクトップだぜ!」
ξヽ゚听)ξ「それより皆、こっちへ来て頂戴。
くだらないギャグをかましている場合じゃないわ」
ツンは指差して3人を奥の部屋へと促した。
だが3人は足を動かそうとはしない。
正確に言えば、何か不気味な雰囲気を醸し出すツンに近づこうとしなかった。
从;゚∀从「ちょっとツン……その前にシャワー浴びて来なよ」
ξヽ゚听)ξ「シャワー? そんなもん鳥のションベンで十分ね。
早く着いてきなさい。ほら、何もたもたしてんのよ?」
从;゚∀从「あ、はい。すみません」
意味が分からないセリフだったが妙な迫力に圧迫され、
ハインリッヒとガイルは、ツンに従った。
('A`)「普段はあんな子じゃないんだよ。あれ? でもどうだったか。
じゃ、俺はブーンの修理してるから、また後でな」
- 52 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:13:03.22 ID:65+LAKSy0
-
ツン、ハインリッヒ、ガイルは、幅の広い廊下を一列に並んで歩いてゆく。
資材の在庫が置いてある部屋、ブーンの使う兵器を収納している部屋。
それからサーバールーム、ツンの個室などを通る。
そして、ラボに備えてある4つの実験室の内、「隔離中」と警告表示してある部屋の前まで歩いた。
ξ゚听)ξ「ここからは真面目にやるわ。皆、マスクとスーツを着るように。
ジョルジュ隊長は隔離してあるけど、一応ね」
ツンは、壁に掛けられてあるマスクを指差した。
从;゚∀从「なあ、ジョルジュのウィルスはどうなってるんだ?
抗体で死滅しているんじゃないの?」
ガスマスクのような大きいマスクを取り、ハインリッヒが尋ねる。
ξ゚听)ξ「結果から言うと、抗体でウィルスを完全に死滅させるのは、無理だわ。
詳しいことは部屋に入ってから説明するわ」
ハインリッヒとガイルは唸り声を上げる。
彼等が言いたい事は無いと判断すると、ツンは続けた。
ξ゚听)ξ「ただ、抗体のおかげでセカンド化を防げているわ。
つまり抗体を打ち続けている限りは、ジョルジュ隊長はセカンド化しないってこと。
理論的には当然の結果なんだけど…まぁ、それも断定はできないわね」
- 57 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:16:04.56 ID:65+LAKSy0
-
从;゚∀从「じゃ、じゃあ、拘束衣を着ける理由は?
抗体を打ってればセカンド化しないんなら、不要なんじゃないの?」
ハインリッヒは、何か悪い予感を感じながらも質問した。
セカンド化しないのなら拘束する必要は無い。
それでもツンが拘束衣を考案したのには、何か理由があるのだろう。
ξ゚听)ξ「万が一、彼が『セントラル』の街中で暴れ出したりしたら困るじゃない。
油断禁物って意味で、拘束衣を作ってるところよ」
クイーンズでジョルジュを発見した時、少なくとも精神状態に異常が見受けられていた。
強い興奮状態であったのが、ツンは印象的であったのだ。
今にも暴れそうな、セカンド化を前兆しているような様子だった。
ξ゚听)ξ「まぁ……何にせよ着けると思うけど。
感染の拡大を未然に防ぐって意味でも、今作ってるスーツが有効なのよ」
ツンは2人に目を行き来させる。
大体着替え終わっただろうと確認し、ジョルジュを隔離した実験室のドアを開く。
重々しい音と共に開いたドアの先には、相変わらず診療台の上で寝ているジョルジュの姿があった。
ξ゚听)ξ「さ、2人とも着替えたわね? 入るわよ」
- 60 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:18:23.94 ID:65+LAKSy0
-
「ツ、ツン博士!」
ξ;゚听)ξ「わっ!?」
部屋に入るや否や、激突するかのような勢いで、研究員が慌しく飛んできた。
モニターを片手に、血相を変えてツンに説明を始める。
「先ほど、急激に脳波と呼吸、心拍数に異常が発生しました!
サーモグラフィで体温を見たところ、傷口を中心に体温が上昇しております!」
ξ;゚听)ξ「急激に!? どういうことよ!?」
「わ、わかりませんが、2,3分前に変化が現れまして……」
説明を聞きながら、ツンはツカツカと診療台へ進む。
ハインリッヒとガイルもツンの後に続き、ジョルジュの様子を伺った。
从;゚∀从「じょ、ジョルジュ!」
呼吸の仕方がおかしい。断続的に素早く胸を上下させている。
まるで痙攣を起こして体を震わせているかのような様子である。
ξ;゚听)ξ「抗体は打った!?」
「う、打っていません! に、2時間おきにと指示があったもので…」
ξ;゚听)ξ「だあああああああっ! 言われなくてもやっとれ!
今すぐ打つわよ! 早く用意して!」
- 63 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:20:25.38 ID:65+LAKSy0
-
ガイル「お、おい! ツン博士!」
一体何が起きたんだと叫んだガイルの声が、騒然した中に混じった。
診療台上のジョルジュは激しく呼吸をしているものの、相変わらず静かに寝ていた。
呼吸以外に、身体に異常は見受けられない。
ξ;゚听)ξ「とにかく抗体を打つわ!」
注射器を片手に、診療台近くのモニターやパネルを操作して、
ジョルジュを隔離している透明なカバーを開かせた。
その際、ジョルジュから数歩と間を開けない者から、数メートル離れた者までいる。
ハインリッヒとガイルは、覗き込むようにしてジョルジュの様子を伺っている。
2人が注目しているのは、注射器の先。
セカンドに咬まれた傷口の付近、つまり首筋の辺りに、注射器は打たれた。
容器の中の、青い液体のような物がスッと無くなってゆく。
液体が全て消えるのを確認すると、ツンは一度ジョルジュの様子を確かめた。
ξ;゚听)ξ「ウィルスの活動が治まらない! 抗体が足りないってこと!?」
ジョルジュを繋ぐモニターを見て、ツンは焦った。
じんわりと背や額に汗が吹き出てきたのも気づかず、夢中で2本目の注射を打った。
ジョルジュの顔が苦悶の表情へと変わり、呻き声を上げている。
抗体が全て注入された頃、ジョルジュの呼吸がペースを落とし始めた。
しかし激痛を感じているのか、痛々しい表情が変わらない。
ともかく、ツン達チーム・ディレイクの面々は、ほっと胸を撫で下ろした。
- 65 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:23:41.43 ID:65+LAKSy0
-
从;゚∀从「なあ。ウィルスを完全に死滅させるには、
単に大量の抗体を打てばいいんじゃないのか?」
ツン達と共に溜息をついた後、ハインリッヒが意見する。
科学者とはいえど、機械工学――特に軍事兵器――を専門としているので、生物学に関する知識は浅い。
ξ゚听)ξ「…その通りね。でも、ハイン。この映像を見て頂戴」
浮遊しているモニターにタッチし、画面を切り替える。
小さな画面の中に映し出されているのは、ジョルジュの全身の体温を可視化させたサーモグラフィである。
ガイル「……紫色だな」
映っている表示内容に対し、ガイルはそう呟いた。
青みがかった紫色が割合を大きく占めている。
从;゚∀从「これは確か、ウィルス感染した部位が発する熱量を示すんだったか?
それで、このデータが示す事って一体何なんだよ?」
その問いに、ツンは口元と目を一文字に堅く結び、沈黙する。
しかし、眉間の辺りに指先を置いていることから、ただの沈黙ではなく、思考する為の沈黙であるのが分かる。
だがハインリッヒは彼女のそんな癖を知りもしない。
- 67 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:25:58.15 ID:65+LAKSy0
- 从;゚∀从「ツンちゃん」
返答が来ず、ハインリッヒは耐え切れずに声を発した。
その催促の声を聞いた後、ツンは目をぱっちりと開いた。
ξ゚听)ξ「さっき、抗体を打つ前は赤色が多かったの。
つまり、セカンドに成りかけているんだと思うわ」
ガイル「成りかけ? どういうことだ?」
ξ゚听)ξ「抗体を一定期間に打たなければ、たちまち体内のウィルスが活動し始めるのよ。
体内にウィルスを増殖させてゆくような感じかしら……」
ξ゚听)ξ「ウィルスの増殖の度合いによっては、打つ抗体の量や時期も増えるわね。
でも、抗体でウィルスを死滅させる際には激痛が伴うの。
多く抗体を注入すれば、母体が耐え切れなくなるかもしれない」
ξ;゚听)ξ「いい? だから抗体で完全にウィルスを死滅させることは出来ないって、アタシは言ったの。
それに、母体が耐え切れなくなるくらいの抗体量が必要になったら…」
ツンは続きを述べず、そして3人は押し黙った。
从 ゚∀从「ねえ、ツンちゃん…」
しばらくして、ハインリッヒが声を発した。その暗いトーンが、彼女の不安さを表現している。
从 ゚∀从「ジョルジュが目覚めたら…どうなると思う?」
ξ゚听)ξ「そうね……拘束衣を着ている限り、万が一彼が暴れても人並みの力しか出せないわ。
拘束衣を着たとしても、人として真っ当な扱いはしてくれないかもね…特に、議会が…」
- 70 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:28:03.31 ID:65+LAKSy0
- ※
一方、ドクオとブーンはというと、
( ^ω^)「オハヨウゴザイマス、ゴシュジンサマ」
('A`)「目覚めたかね、B00N-D1…ブーンよ。今こそ悪から地球を救う時だ!」
サイボーグアニメごっこを繰り広げていた。
( ^ω^)「サンキューだお、ドクオ」
診療台からひょいと飛び降り、体の調子を確かめている。
「クォッチ」との苦闘で失った右腕も、新品の物が着けられている。
ブーンは特に右腕の調子を確かめようと肩や手首を回している。
('A`)「礼ならツンに言ってくれ。腹部から胸部にかけた損傷は深刻だったんだぞ?」
( ^ω^)「大変だったんじゃないのかお?」
修理箇所の辺りを手で擦り、笑顔を浮かべてブーンが聞く。
('∀`)「ああ。アイツ、お前をラボに運んだ後、一睡もしないで作業してたんだ。
右腕は俺が作ったんだけどな! ヘヘッ!」
- 72 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:30:15.31 ID:65+LAKSy0
-
( ^ω^)「ありがとうだお、ドクオ。
でも正直に言うと、右腕が何かおかしい気がするお……」
ブーンは怪訝な顔をしながら右手首をぶらぶら振った。
その様子に、ドクオはニンマリと笑みを浮かべる。
('∀`)「悪い悪い。そいつは今後調整していく予定だ。
右手が使えないと億劫だろ? だから着けるだけ着けておいたんだ。
何たって新しい武器だからな、そいつは!」
( ^ω^)「ちょ、人の体を勝手に…バズーガでも仕込んでくれたのかお?」
遂に体の一部まで攻撃兵器になったかと、何とも言えない気分である。
ただ、ドクオの考えた武器ならば、威力や使い勝手は保障されるだろう。
それでも、体に何か仕込むというのは、昔から違和を感じずにはいられなかった。
ブーンは顔を右腕から離して、慎重に様子を伺った。
('∀`)「クックック。そいつはまぁ、お楽しみってことで!
まだ、武器の起動プログラムやら神経系統の一部を作り終えてねーんだ」
( ^ω^)「早くしてくれおっおっ。
ってかお前、改造するなら一言断って欲しいお!」
('∀`)「ちなみに、ケツからは火が出ますぞ!」
( ^ω^)「ちょwwwwwwwwwww」
冗談冗談と言って、ドクオはおどけてみせた。
- 76 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:32:50.63 ID:65+LAKSy0
- 2人はジョルジュのいる部屋に向かった。
部屋に通ずる廊下を歩き始めたところで、ブーンが再び口を開いた。
( ^ω^)「それで、ジョルジュ隊長はどうなったんだお?」
('A`)「体内のウィルスを死滅させるには至らなかった。
どういうわけか筋力は依然発達を続けてるし、精神状態も不安定で危ういそうだ。
だから救出時から今にかけて、ずーっと麻酔で眠らせてるんだ」
( ^ω^)「つまり、治療は不完全、ってことかお…
いや、治療っていうよりはセカンド化を防いでいるだけかお。
筋肉が発達しているってのが、ちょっと引っかかったけど……」
部屋の前で立ち止まると同時に、ブーンは結論を述べた。
ドクオはいそいそと白衣を脱ぎ始める。
('A`)「ああ。だから今、ジョルジュの力を押さえ込む拘束衣を開発してるんだ。
しかも、ジョルジュからウィルスが感染しないように、頭から爪先まで隠すんだぜ?
さぞかし窮屈な生活になるだろうな」
ブーンは、ズボンを下ろすドクオから視線を逸らし、
入り口の重厚な機械仕掛けのドアを見据える。
( ^ω^)「それよりも、議会が今後どう判断するかだお。
荒巻・スカルチノフは僕達を見殺しにしようとしたんだお?
感染者をこのまま放って置くとは思えないお」
「完全にジョルジュ隊長を治すことが出来ない限りは」と、ブーンは言い足した。
- 79 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:34:37.89 ID:65+LAKSy0
- ドクオは、マスクで頭をすっぽりと覆い、こもった声で返した。
('A`)「少なくとも、セントラルから追放されるような事にはならないと思うな。
じゃなきゃあ救出作戦の時に、ジョルジュを置いていくように命じられたかもしれないし」
ドクオの意見も一理あるだろう。
自分の考えと統合して推測するに、何か理由があってジョルジュ救出を続行したのかもしれない。
その理由とは?
ブーンはいくら思考を廻らせようが、脳に積載する様々なシステムを活用しようが、
答えを導き出すには情報が少なすぎた。
( ^ω^)「……何かが一枚噛んでる気がするお」
('A`)「俺がちょっと調査してみるわ」
( ^ω^)「ドクオが? 大丈夫なのかお?」
('A`)「あ、いや、実際に俺が調査する訳じゃなくってさ。
信用できる奴に頼んでみようと思う」
( ^ω^)「誰だお?」
('A`)「悪いが、そいつは秘密だ」
- 82 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:37:32.41 ID:65+LAKSy0
-
( ^ω^)「何だお、僕にも教えられないような奴がいるのかお」
('A`)「まぁな。俺とは旧知の仲でな…都合があって素性を隠してるんだ。
何か分かったら、お前にも教えてやるって」
腑に落ちない表情を浮かべるブーン。
しかし、他ならぬドクオの言うことなので、素直に調査結果を待とうとブーンは思う。
('A`)(他にも個人的に調べたいことがあるしな…)
※
ドアを開けると、しんとした空気が流れ込んできた。
緊迫という形容が相応しく、「隔離中」を表示した実験室内で
良からぬ状況が発生していることを、ブーンとドクオはすぐに察知した。
( ^ω^)「一体どうしたんだお?」
('A`)「何があったんだ?」
- 84 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:39:58.16 ID:65+LAKSy0
-
2人が目を合わせて不思議がっていると、その間にツンの良く通る声が割り込んできた。
ξ゚听)ξ「ジョルジュさんのウィルスは、死滅させることが出来ないわ」
( ^ω^)「どうしてだお?」
すぐに、ブーンが聞き返した。
ξ゚听)ξ「抗体はウィルスの増殖や活動を押さえ込む力はあるわ。
でも、体内に巣食うウィルスを完全に死滅させるまで抗体を注入すれば、
母体が耐え切れなくなる。つまり、ジョルジュさん自身が死んでしまうわ」
('A`)「なるほど…な」
( ^ω^)「やっぱりそうなのかお……」
ジョルジュは、二度とウィルスの無い体に戻ることは出来ない。
天才科学者であるツンが述べる事実に、ブーンとドクオは否応無く納得せざるを得なかった。
それに元々、抗体はセカンドの動きを止めたりなど、弱体化に用いる事が多い。
多量に注入すれば死に至らすのも可能だという事は、実戦によって明らかになっていた。
- 86 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:41:32.59 ID:65+LAKSy0
- 皆が黙っていると、ガイルが口を挟んだ。
ガイル「それで、議会には何て報告するべきなんだ?
少なくとも、スカルチノフ大佐やモララー・スタンレーは、
隊長がウィルス感染していることを知っているぞ」
ガイルに対し、ハインリッヒが即答する。
从 ゚∀从「感染したっていう事実そのものを誤魔化すことは不可能だ。
だから、拘束衣の有効性を上手く伝える他、無いと思う」
('A`)「……んで、その拘束衣はいつ完成するんだ?」
一瞬、ドクオはブーンと視線を交し合った。
感染者ジョルジュを、『セントラル』まで連れて来た事に何らかの意図があるのでは?
何故そうしたのか分からないが、その推測は自分達の心の内に秘めることにしておいた。
ドクオは火の付いていない煙草を咥えた。
無論ここは禁煙だが、口元に何か無いと落ち着かないのだ。
ξ゚听)ξ「そうね…2時間後には完成するわ。んでもって着衣に2時間かかるわね。
着衣後、拘束衣のテストをしつつ、彼の精神分析を行うわ」
( ^ω^)「精神分析?」
ξ゚听)ξ「ええ。抗体を打つ前後の精神状態を見比べてみるわ。
といっても、しっかり話が出来ているかとか…良からぬことを考えていないとか、
その程度のことを調べるヒアリングみたいなもんよ」
- 88 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:43:58.21 ID:65+LAKSy0
-
('A`)「精神分析の結果、それから抗体とスーツの有効性か。
この3つがありゃ、何とか議会を言い包められるかもしれねーな」
ξ゚听)ξ「まぁ、ジョルジュさんの精神が不安定じゃなければ、ってことだけどね」
ガイル「でもよ、スーツを着てる限りは、誰かにウィルスを感染させるような事は無いんだろ?」
ジョルジュを覆う透明のカヴァーに手をあてて、ガイルが聞いた。
ξ゚听)ξ「当たり前です。その為に作ってるんですよ?
しかも、アタシだけが知っているパスワードを入力しない限りはスーツは脱げないし。
ただ、それだけで議会の許しを得るのは難しいって事よ」
从 ゚∀从「ま、とにかく、可能性は見えてきたってわけだ」
( ^ω^)「お? 何の可能性ですかお?」
ハインリッヒの和らいだ表情を見て、ブーンは思わず聞いてしまった。
从 ゚∀从「ジョルジュが『セントラル』で普通に生活出来るって可能性さ。
感染してるから追放される何て事は、もうまっぴらだからな」
感染の恐れがあるという理由で、北米の南方に住む人間達は、
軍や警察の「封鎖」を受け、街への進入を許されなかったのだ。
ハインリッヒも南に住んでいた人間の1人であるので、「封鎖」の経験がある。
- 90 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:45:52.05 ID:65+LAKSy0
-
『セントラル』には、そうやって虐げられた人間達も多く住んでいる。
しかしながら、セカンドウィルスに対して閉鎖的になるのは至極当然の事であろう。
『ウィルスが体内に存在しているだけで、感染させたりするような事は無い』
『スーツを着ていれば、普通の人間とほぼ同じ』
なんて事をセントラル議会に説明してやらなければ、早急にジョルジュは追放されてしまう。
逆に言えば、ジョルジュを『セントラル』に居させる事の出来るチャンスでもある。
ξ゚听)ξ「急がなくっちゃね。
いつ荒巻議会長やモララーがウチやハインの所に来てもおかしくないんだから、
怖い顔して『ジョルジュを追い出せ!』なんて言いかねないもの!」
ツンは眉間に皺を寄せ、厳格な荒巻・スカルチノフの顔を真似る。
从 ゚∀从「アタシもしばらくここで手伝うぜ」
ガイル「俺もそうするかな。何かあれば手伝わせてもらう。
バトルスーツは予算会まで御預けみたいだしな」
ξ゚听)ξ「2人とも有難いわ!
実は、最近3人もウチを辞めたから困ってたのよね!」
('A`)「そりゃ、お前のせいだ」
誰のせいだってえええ!? ξ#゚听)三○)A`) これが原因だろJKおおおおお!
- 93 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:48:16.17 ID:65+LAKSy0
-
ξ゚听)ξ「予算会といえばブーン!」
('A`)「何て速い会話の展開なんだ!!」
ドクオの発言を無視し、ツンは携帯端末を操作した。
ピコンッという送信音と共にブーンのコンピュータに送られたのは、
議会から言い渡された新たなミッションオペレーションだった。
(;^ω^)「ちょ、明後日ミッション開始かお!」
ブーンはミッション内容を左目から外部表示せず、左目の網膜に映し出している。
左目の視界には、2,3の文書ファイルが展開されている。
ξ゚∀゚)ξ「うん! 予算会前だし、アピールは多く作っておくべきだわ!
だから承諾しちゃったの♪ 頑張って行って来てね!」
( ^ω^)「……ってか、これって……!!」
開いていった文書ファイルの中に、驚くべき内容が記述された物を発見した。
ξ;゚听)ξ「そう。アルドボールの調査によって、ここ以外にも人間がいる事が分かったの!!
場所はボストン! ミッションは周辺のセカンド掃討と、彼等との接触よ!」
その文書ファイルの内容を、その場にいる全員に分かるよう、簡潔にツンが述べた。
すると、他の研究員も含め、部屋にいる全員が驚嘆の声を上げた。
- 97 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:51:22.02 ID:65+LAKSy0
-
从;゚∀从「生き残りって、マジかよ! しかもボストンって遠くねーじゃん!」
(;'A`)「待て待て! 生き残りがいるって事実にゃ俺も驚いた。
でも、何でハインリッヒが驚いてるんだよ? お前ん所が発見したんだろ?」
从;゚∀从「あ、いや、アルドボールはウチの管轄じゃなくなったからな。
開発から打ち上げがウチの仕事で、衛星を扱うのは違うチームになったんだ」
('A`)「それってどこよ?」
ガイル「セントラル議会の“人類保護委員会”、会長のモナーが有するチームだ」
セントラル議会は、幾つも存在する委員会によって構成される。
実際に名前を挙げると、人類保護委員会、都市開発委員会、予算委員会などだ。
( ^ω^)「何でそんなチームがアルドボールを?」
从 ゚∀从「元々アルドボールは、委員会からの請負で開発したもんだ。
世間的には、ウチが大型セカンド掃討の為に作ったなんて言われてるけど、
バトルスーツはデカイし、ウチには技術もあるってことで、委員会から依頼されたんだ」
ハインリッヒは続ける。
从 ゚∀从「開発目的は言うまでもないだろうが、セカンドの位置特定さ。
今まで曖昧なセカンド掃討任務が多かったのを、解消したかったそうだ」
- 99 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:52:58.55 ID:65+LAKSy0
-
('A`)「しっかり“人類保護”について定義されていないからな。
セカンドを殲滅することが人類を保護することである! なんて主張してるけどよ」
( ^ω^)「あそこが出すミッション内容がカオスだったお。
この前なんか、『ワシントンに行ってこい!』だったお」
ξ゚听)ξ「今度から『アルドボールのセカンド分布図やるから全部倒して来い』、になるわね。
ともかくブーン、ウチのラボの為にも、ミッション頑張ってね」
( ^ω^)「おっおっ。今度のミッションも任せておけお」
ξ゚听)ξ「じゃあ、アタシとハインとガイルさんは拘束衣の開発、それからジョルジュさんの看護。
ドクオとブーンは任務の準備をしておいて。
特に武器の幾つかは作り直さなきゃいけないでしょ?」
('A`)「BlueLazerCannon以外は予備がある。バイクもあるし。
ブーン自身の調整が済んだら、俺らは飲みにでも行くわ」
( ^ω^)b「それを待ってましたお!!」
ξ゚听)ξ「よし! 決まりね! 皆気合入れて頑張って!」
ツンが義手を叩き合わせ、ガンという硬質な音を部屋に鳴り響かせた。
- 103 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:54:56.30 ID:65+LAKSy0
- ※
第4階層に位置する議会長室。
暗く静かな部屋の中には、顔に傷を持った老人、そして白い兵士を従える白衣の男がいた。
「感染者、ジョルジュ・ジグラードの件だが、
彼を『セントラル』へ入れて良かったのか?」
重厚な機械仕掛けの机に肘をついた、顔面が傷だらけの初老の男が低い声で喋る。
白衣の男は、老人の前を左右に歩きながら、話を聞いていた。
「さすがに『セントラル』内で感染することはないでしょう。
セカンド感染者が今の『セントラル』の技術でどう対処されるのか、科学者として気になるのです。
私個人の好奇心であるのは承知しておりますが……」
足音は一切ならず、部屋には白衣の男の声だけが染み渡る。
「好奇心か…人間のその好奇心こそが、
人類を焼き尽くした業火の火種ともなったのだぞ?」
初老の男が、低く唸り、厳格に言った。
「はっ…重々承知しております。
しかしながら、セカンドに対抗するには、やはり好奇心も必要なのでは、と」
- 106 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/08/12(火) 14:56:50.25 ID:65+LAKSy0
- 白衣の男の言葉に、初老の男は沈黙する。
手元にある煙草を咥え、そして多量の煙を吐き出す。
「……確かに、その通りかもしれん。
しかしだ。もし、ツン・ディレイクの手に余るようだったら、どうするつもりだ?」
「その時は私が引き取ろうかと。HollowSoldierの技術を転用したいと考えております。
義体を用意し、そこにジョルジュ・ジグラードの思考パターンと記憶から構成される
システムを搭載するのが、最も安全な手段であるかと思われますが、如何でしょうか?」
「……被験者第8号、名前を何と言ったか? 君の部下だった女性だよ。
彼女が唯一の成功だったようだが、彼女自身は今どうしている?」
目を瞑り、思い出すような素振りをして、初老の男は聞いた。
「オリジナルの、クー・ルーレイロの事ですか?
彼女の肉体は、脳のみ保管しております。なんせ、システムの要ですからな」
「ところで、ボストンについてはどう対処されるのです?
まさか、『セントラル』以外に生き残りがいるだなんて、驚きました」
「うむ……それについては、既に、各部署に指示を通達してある。
まずはチーム・ディレイクのB00N-D1を向かわせ、現場の状況を確認させる。
その後に我々が取るべき対処は、議会で検討する」
第11話「抗体」終