内藤エスカルゴ - 現行作品一覧 - ( ^ω^)は街で狩りをするようです - 第7話「夕闇の街」
4 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 21:22:43.50 ID:l4Uj3RAS0
登場人物一覧

――― チーム・ディレイク ―――

( ^ω^)B00N-D1:通称ブーン、本名不明。年齢20歳。戦闘員。
      ウィルスに対する強い免疫を持つ数少ない人間の一人である彼は、
      自ら強化人間「システム・ディレイク」となってセカンドを狩る。
      兵器“BlueLazerCannon”を使用し、右腕を失う。

ξ゚听)ξツン・ディレイク:年齢19歳。チームリーダー。
     弱冠19歳の天才科学者少女。その頭脳でブーンを強化・修復などのサポートする。
     システム・ディレイク理論の提唱者である両親の命と自分の両腕をセカンドに奪われ、
     ブーンと共に復讐を誓う。嫌煙家。貧乳。ガキンチョ。

('A`)ドクオ・アーランドソン:年齢21歳。武器開発担当。
   油っこい長髪、病人のような顔色と不健康な外見の彼だが、それは「研究のし過ぎ」の為らしい。
   豊富なアイディアで強力な武器や乗り物を開発し、ブーンの戦闘をサポートする。
   ツンをからかうお調子者の変態。時には論理に囚われない人間性を見せることも。

5 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 21:23:49.95 ID:l4Uj3RAS0
――― チーム・アルドリッチ ―――

从 ゚∀从ハインリッヒ・アルドリッチ:年齢23歳。チームリーダー。
    対セカンド人型戦闘兵器「バトルスーツ」の理論提唱者であり、開発者である。
    ツンと並ぶ天才科学者なのだが、プライドの高い両者は犬猿のライバル。
    セカンドと化した実兄「ミルナ」を亡くす。
ハインリッヒ・アルドリッチ

( ゚∀゚)ジョルジュ・ジグラード:年齢35歳。戦闘員パイロット。
    プライド高き元アメリカ陸軍中尉。「命知らず」の勇敢な戦士である。
    現在は深紅のバトルスーツを操るバトルスーツ部隊隊長として活躍。
    任務中の戦闘で機体が操縦不能となる。
バトルスーツ

ガイル:年齢33歳。戦闘員パイロット。
    「ソニックブームのガイル」という異名を持つ、バトルスーツ部隊副隊長。
    髪形は変だが、話の分かる人間の出来た元空軍出の兵士。
    任務中の戦闘で機体が操縦不能となる。

7 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 21:24:58.12 ID:l4Uj3RAS0
――― その他 ―――

(´・ω・`)ショボン・トットマン:年齢25歳。バーテンダー。
     「ショボンのバーボンハウス」のガチムチダンディ店長。
     暗い世の中で生きる人々の憂い飛ばしたいと言う彼は1から酒作りを始めるも、
     彼の出す酒はどれも不味い。ブーン達の良き理解者でもある。

/ ,' 3荒巻・スカルチノフ:年齢63歳。セントラル議会・議会長。
   現議会長、元アメリカ空軍大佐。
   アルドリッチ&ディレイクによる衛星打ち上げミッションの総司令官を務める。
   任務中では、空軍大佐時代の豪快な一面も見せた。

( ・∀・)モララー・スタンレー:年齢30歳。セントラル議会・議会長補佐
    セントラルの若きイケメン実力者。
    バイオテクノロジーの権威ラウンジ社の元社員で、優れた科学者である。


まとめはコチラ
内藤エスカルゴさん
http://www.geocities.jp/local_boon/boon/Hunt/top.html

12 名前:いきなり猿った! ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 21:33:13.58 ID:l4Uj3RAS0
 第7話「夕闇の街」

いつの間にか、日が地平線に向かって沈み始めていた。
橙色の光が地上を照らし、空には紺色と赤の美麗なグラデーションが描かれている。
それらは荒れ果てた街と相俟って、とても切なく見える。
長く苛烈な戦いで傷心した者達の心情を、まるで映し出しているような、そんな光景だ。

( ^ω^)(煙草が美味いお)

ブーンは煙草を咥えながら、景色を見渡していた。
彼もまた、傷心に浸る者の一人であった。

( ゚∀゚)『ところでお前、そんな薄着で寒くねーのか?』

( ^ω^)「えぇ、僕は体の半分以上が機械なので、寒さを感じませんお」

( ゚∀゚)『便利な体だな』

( ^ω^)「そうでなくても、外は暖かいと思いますお。現に雪の一つも降りませんし。
       とてもニューヨークの冬とは思えませんお」

一見美しく見えるこの自然だが、長い間に渡って破壊の限りを尽くされたせいで、すっかり狂っていた。
本来なら1月のマンハッタン島はマイナス20℃が平均気温であり、何処も雪で覆われているのが普通であった。
しかし、今日は雪雲一つも無い晴天で、雪の欠片も見当たらなかった。
昨日も、そして明日もそうに違いないだろう。

14 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 21:36:41.55 ID:l4Uj3RAS0
『いつまでそうやって景色を眺めてるつもりかね?』

景色を眺めて無意識になっていたのを、荒巻の声で引き戻された。

(;^ω^)「ええっと…とりあえず一服させて欲しいですお……」

/ ,' 3『……回収部隊は送れん』

( ^ω^)「は?」

/ ,' 3『諸君らの回収は出来ない。そう言ったのだ。
    夜が近い。早く行動すべきじゃないのか?』

ブーンは自分の耳を疑った。
冗談でも言っているんじゃないだろうか。
この状況では「セントラル」に帰るどころか、生き残れるはずが無いのだ。

まず、素早い移動手段が無い。
クォッチとの戦闘でBLACK DOGは破壊され、バトルスーツは動かなくなった。
いくら早く走ってもクイーンズ区を抜ける前に「夜」を迎えてしまうだろう。

それから絶対的に食料が足りない。
もっとも、食料が切れる前にセカンドの餌になってしまうだろう。

そして何より、今の状態でセカンドに襲われては無事に済まないだろう。
ブーンは右腕を失い、体中に損傷を負っている。
ジョルジュやガイルも、唯一の戦力であるバトルスーツが操縦不能の状態だ。

16 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 21:40:01.74 ID:l4Uj3RAS0
『どういうつもりだ荒巻大佐!?』

『訳をおっしゃってくださいお!』

荒巻は眉を顰め、唇を強く噛んでいる。
クイーンズ区に残される彼等に対する心苦しさを、彼の顔が表していた。

/ ,' 3「…夜は危険過ぎる。
    私としてはこれ以上犠牲を増やしたくないのだ。
    自力で何とか帰還してくれたまえ……」

『てめえ! 見殺しにする気か!?』

ξ#゚听)ξ「荒巻総司令官! 彼等は『セントラル』にとって最も重要な戦闘員です!
       この状況じゃ無事に帰って来れる訳がありません!」

('A`)「そーだそーだ!!」

納得のいかないツンが、大声で訴えた。
その横でドクオも拳を振って、ツンを後押しする。

20 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 21:43:15.49 ID:l4Uj3RAS0
/ ,' 3「ここで多くの戦闘員を危険に晒し、失う事の方が痛手だ」

('A`)「そーだそーだ!!」


    貴様は黙っとれええええええ! ξ#゚听)三○)A`) 久々にきたああああああああああああ!


状況を弁えずおちょくってくるドクオを殴り飛ばす。
荒げた息を整え、ツンが静かな口調で切り出した。

ξ#゚听)ξ「……そうですか。ならば私達チーム・ディレイクが回収に向います」

(;'A`)「えええええええー――――ッ!?」

ツンの提案に、ドクオが反発の声を上げた。
同チームの他の研究員達も酷く動揺している。

22 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 21:46:33.13 ID:l4Uj3RAS0
『危険だお! ツン!』

ξ#゚听)ξ「危険なのは承知の上よ。
       荒巻司令官、ヘリを一機お借りしたいのですが?」

/;,' 3「何を馬鹿な事を言っている!?」

ξ#゚听)ξ「私は本気です、荒巻司令官」

危険である事はもちろんツンも分かっているだろう。
しかし、そのハッキリとした声から覚悟めいた物を窺える。

(#)A`) 「…まぁ、他にいないんなら俺らが行くしかないよな……」

ドクオが弱弱しい声で呟く。
言い出したのはツンだが、彼女だって不本意のはずだ。
恐ろしく、そして危険なのは承知の上。
それでも誰かが彼等を助けに行かなければ。

『荒巻大佐、このままでは何人も死んでしまうようだが?』

ジョルジュが荒巻を煽る。
回収が来なければ間違いなく死亡する。
何としてでも部隊を派遣させたいと、彼は焦っていた。

25 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 21:50:01.23 ID:l4Uj3RAS0
/;,' 3「むうう……」

( ・∀・)「議会長、彼等の意思は固い。止められないでしょう」

/ ,' 3「モララー…」

( ・∀・)『ツン・ディレイク、私の部隊を同行させよう』

ξ;゚听)ξ「へ?」

ツンが間抜けな声を出す。
モララー・スタンレーが科学者である事は周知であったが、戦闘員を有してる
という話は聞いた事が無かった。

/ ,' 3「すると、君が前に話していた『例の研究』は完成しているのかね?」

( ・∀・)「ええ。既にここへ呼びつけております。
      後ろで待機している『彼女達』がそうです」

荒巻は椅子を回転させて、モララーの視線の先を見た。

本部の出入り口には、同じ格好をした「人」が十数名立っていた。
白いマスクとスーツを身に纏い、全身を白で統一している。
胸の辺りが隆起しているので、中の人間が女であるという事だけ唯一分かる。

26 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 21:54:19.27 ID:l4Uj3RAS0
マスクには二筋の黒透明の線が引かれている。
他にもいくつか機械的な構造を持っているようだ。
それから目を引かれるのは、両腰にぶら下げている巨大な黒い銃だ。

(  〓 )「………」

10名程度いるが、誰一人として言葉を発さない。
殆ど白一色という外見もあって、機械のような無機質さを感じさせる。
直立不動の状態を維持している様から、荒巻は昔自分が在籍していた軍を想起した。

/ ,' 3(話には聞いていたが……彼女らがそうか……ふむ…)

少しの間、荒巻は眉根を寄せながら「白い兵隊」をまじまじと見ていた。
そして思い立ったように身を戻し、本部全員に指示を下した。

/ ,' 3「分かった。ツン・ディレイク、ヘリを出す。
    彼等を同行し、クイーンズ区にいる3名を回収しろ。
    他の者は引き続きサポートに徹する事。これで良いな?」

ξ゚听)ξ「ありがとうございます」

('A`)(得たいの知れない連中だな……中に入ってるの女みてーだし)

ドクオはツンの脇腹を肘で突付き、小声で話しかける。

ξ゚听)ξ(まぁいないよりはマシでしょう。それに、ちょっと強そうじゃないの)

('A`)(そうだな。ツンより遥かにおっぱい大きいし)

ξ )ξ「」

30 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 21:58:36.15 ID:l4Uj3RAS0


( ゚∀゚)『助けが来るみてーだな。見殺しにされるかと思ったぜ。
      しかし、モララー・スタンレーが戦闘部隊を編成してたってのは予想外だ」

( ^ω^)「でも、部隊が来るまで時間が掛かりますお。
       一度僕達3人も合流して、体勢を立て直すべきですお」

( ゚∀゚)『そうだな……方角的に俺のいる位置の方がマンハッタン島に近い。
      ここら辺だとケネディ国際空港は安全だったのを覚えている。
      そこで全員合流だ。回収ポイントもそこを指定しよう』

( ^ω^)「了解ですお。そこなら、ガイルさんの地点でしたら遠くありませんお。
       1時間程度の時間を見ておいてくださいお」

( ゚∀゚)『あぁ。なるべく早く来い。
      それと、ツン・ディレイクに回収ポイントを指示しておけ』

( ^ω^)「了解ですお。少ししたら、また連絡しますお」

ジョルジュが通信を切った。
戦いを通して少し距離感が縮まった気もするが、相変わらずぶっきら棒で威圧的だ。

32 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 22:01:09.44 ID:l4Uj3RAS0
( ^ω^)「って事だけど、ツン、分かったかお?」

ξ゚听)ξ『了解したわ。ヘリでケネディ国際空港に向かうわ。
      1時間後に回収ポイントに着くようにするわ』

(#)『ドゥーン! 夜は危険だ! 気をづけでくでお!!
   おでもさっぎ貧乳の化け物に攻撃されだ!! すげえパワーだ!!』

滑舌の悪いが、ドクオが何を言っているのかは大体分かった。
ドクオが攻撃されたというセカンドがツンだという事も分かる。

『このゴキブリ野郎! まだ生きてやがったのね!?』

攻撃をされるドクオも悪いが、ツンもツンだ。
というか、今度はツンに何をしたのだろうか。

『いだい!! ら、らめえ!! ドックンのタマタマ蹴っちゃらm―――
 あ、あ、あああアアアアアあいいい痛いけどおおおおン゙ギモ゙ヂィィイイイイイイイいいいい!!!』

『ガッデム!! ガッデム!!』

『あん! あーん!』

鈍い打撃音、呪う声、叫喚、悶え喘ぐ男の気持ち悪い声。
聞きがたい音声のパレードに耐え切れず、通信を切った。

( ^ω^)「早くしねばいいのに」

33 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 22:04:13.28 ID:l4Uj3RAS0
続いてブーンは、ガイル機に通信をする。
ガイル機の通信機器は故障し受信のみ可能であった為、確認する必要があった。

( ^ω^)「ガイルさん、聞こえましたかお?」

ガイル『あぁ、了解した!』

ガイルが機体の外部スピーカーを使って返事をする。
余りにも音声が大きく、ブーンはセカンドに悟られるんじゃないかと顔を顰めた。

(;^ω^)「セカンドに見つかるかもしれないので、もう音声は外に出さないように。
      今から僕がそちらに向いますんで、機体の中で待っててくださいお」

先ほどとは打って変わって無言。
何も言葉を発さないという事が了解の証だ。

ブーンは2本目の煙草をフィルターぎりぎりまで惜しまなく吸い終わり、
それを地面に落として足で踏み消した。
後ろに吹っ飛んでいたBlueLazerCannonを回収し、それを背中のホルダーに装着して背負う。

( ^ω^)(右腕は帰れば治るお…多分…)

一緒に転がっていたボロボロの右腕に一瞥する。
口惜しい気分を感じながらも、ブーンはその場を発った。

35 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 22:08:27.79 ID:l4Uj3RAS0
柵を乗り越え、屋上を飛び降りる。
短い滞空を終え、まだ水の溜まっている地面に降り立つが

( ゜ω゜)「アー――――ッ!!!」

小さなビルなので、着地の衝撃はそれほど無いと思ったのがいけなかった。
損傷している体では上手く衝撃を流す事が出来ず、酷い痛みを感じてしまうと同時に、
体勢を崩して頭から水を被ってしまった。

(;^ω^)「いででで……あぁ、ビショビショだお……」

まだ地上には足首をすっぽり隠す程度の水が溜まっていた。
水捌けは良いのだろうが、如何せん水量が多すぎたのだろう。
屋上まで水浸しになっているビルは多かった事が、津波の規模を物語っていた。

左手で頭を掻き毟るようにして水気を飛ばし、ブーンは歩き始めた。
崩れた建物の隙間からジャマイカ湾が見える。
その海を挟んだ向こう側に見える陸地に、合流ポイントであるケネディ空港が広く陣取っている。

37 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 22:11:38.46 ID:l4Uj3RAS0
(;^ω^)(迎えが来るっていっても、ヤバイ状況だお…)

まだ日は出ているが、すぐに日が落ちるだろう。

何故、皆が「夜」を恐れているのか。
それは、頭の悪いセカンドは日の光を恐れ、暗闇を好む習性があるのだ。

低知能のセカンドが日を恐れるのは、“太陽に体が焼かれるんだ”と本能的に認識しているせいらしい。
これはブーンの調査記録を参考に、ツンが述べた見解である。
言うまでも無いが、セカンドが太陽の光に弱いなどという特性は無い。

レーダーでセカンドを索敵する事は出来るが、屋内にいるセカンドにおいては発見する事が出来ない。
夜にならなければ、この辺りが安全なのかどうか分からない状況なのだ。
もっとも、夜になった時点で安全であるとは決して言えないのだが。

戦闘は避けられないと、ブーンは覚悟した。
一体にも見つからずに夜を過ごす事は絶対に無理だろう。

大型も恐ろしいが、この場合、一番脅威となるのは小型セカンドの群れだ。
セカンドの特徴や能力にも左右されるが、今の状態で群れを相手にするのは難しい。
数で翻弄されてしまうからだ。

ブーンは一応BlueBulletGunを左手に構えておいた。
今あるのはBBGun一丁に、BBBladeが2本。
サブマシンガンはクォッチとの戦いの時に、何処かに落とされてしまったようだ。
連射性と広範囲の武器であるだけに、手元に無いのが悔やまれる。

39 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 22:14:06.85 ID:l4Uj3RAS0
( ^ω^)「ジョルジュ隊長、何かあったらすぐに連絡を」

念の為、ジョルジュに注意を促そうと連絡した。
すぐにジョルジュが荒い口調で返してきた。

( ゚∀゚)『あ? この辺にゃセカンドいねーんだろ?
      やべーのは反対側の西岸じゃねーのか? 俺が結構やっちまったが』

( ^ω^)「クォッチみたいなデカイのは例外として、
       屋内や水中にいるセカンドは索敵できないんですお。
       なので気をつけてくださいお」

( ゚∀゚)『そうかいそうかい。世話好きなこって」

(#^ω^)「油断は禁物ですお」

( ゚∀゚)『別に俺は油断しているつもりはねーし、十分に気をつけてらぁ。
      ガイルと合流したら連絡してくれ。それまで機体に隠れている』

「了解ですお」と言い切る前に、通信回線を切られた。
改めて嫌な奴だとブーンは思うが、頼れる味方である事には間違いなかった。
この状況で冷静さを保っていられるのは流石と言うべきか。
若干だが、ブーンは不安さを拭えた気がした。

40 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 22:16:55.06 ID:l4Uj3RAS0
まだ夕陽の光が差す街の中、ブーンはガイル機を目指して歩いていた。
足をとられる水の抵抗が何となく気になる。

日の光があたらなくなって薄暗くなった街角も増えてきた。
地下を巡る電線は健在でも、発電所が機能しなくなったので街灯の光などは無い。
少し薄暗い無人の通りが、不気味だ。

遥か遠くの空はすっかりと暗くなっている。
あの方向の街では、セカンドが外に出始めているのだろうか。

ブーンは、なるべく瓦礫が多くて見通しの良い道を歩いた。
屋根があって綺麗な――日当たりの悪い――建物には、セカンドが棲んでいる事が多いからだ。
倒壊した建物、窓の多い建物など日当たりの良い所には、比較的セカンドは少ない。

これらは「頭の悪いセカンド」に限定されるが、
それでも調査などの際には安全な道選びの指標となっていた。

( ^ω^)(こっちの通りはかなり綺麗だお…。
       少し遠回りしてガイルさんの所に向かうべきかお……?)

故に、「巣」と思わしき建物と、暗がりを避けなければならなかった。

43 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 22:19:17.25 ID:l4Uj3RAS0
しかし、ブーンはどちらか一方を選択せざるを得なかった。

一歩歩く度に、少しずつ日の明るさが薄れてゆく気がしたのだ。
背後から急速に光が無くなってゆき、暗闇が広がったような、そんな感覚。

不意に空を見上げてみれば、赤と青のグラデーションの比率に偏りが生じ始めていた。
少ない赤に対し、紺色が7割ほど――つまり、夜が近づいてきているのだ。
日が落ちるのが思った以上に早い。

(;^ω^)(早くガイルさんと合流すべきだお)

焦燥感に煽られたブーンは、ガイル機への最短ルートである「巣と思わしき通り」を選んだ。

クォッチが高層ビルを切り崩してくれたおかげで、日あたりだけは良い。
クイーンズ区でなければ、今頃セカンドが出現していただろう。

まだ「巣」からセカンドが出る事は無いだろう。
ブーンはそう願った。

(;^ω^)(ここを真っ直ぐ行って、3つ目の大きな十字路を左だお)

ブーンは通りを走り始めた。
当然、通りには誰一人としておらず、ブーンの立てるジャバジャバという音だけが響いていた。

44 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 22:20:35.06 ID:l4Uj3RAS0
左目に何も反応が無いというのが、逆に恐怖であった。
壁などに遮断されている為に、屋内のセカンドは探知され難い。

この中に奴らはいるのか、いないのか、
ブーンは建物を一つ通りすがる度に、そう思った。

窓が多く日差しの良い建物でも、もしかしたら奥深くに潜んでいるのかもしれない。
見るからに光の一筋も通ってなさそうな廃墟には、絶対に潜んでいるのではないかと、
ブーンは既に四方を囲まれたような気分に陥る。

どこから奴らが現れるのか分からない状況だ。
一時たりとも気を抜けなかった。
不安を押し殺すように、BlueBulletGunを強く握り締める。

(;^ω^)(早く! 早く!)

刻々と日が落ちてゆく。
疲労ではなく、精神的なプレッシャーで出た汗が顔を濡らしていた。
強化されている足だがダメージが大きく、いつものように速く走れない。
昔の生身の体に戻ってしまったかのようで、もどかしい気分を感じる。

45 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 22:23:09.57 ID:l4Uj3RAS0
2つ目の十字路を過ぎ、更に奥へ進む。
不意に、背後に音が鳴った。水を跳ねる音だ。

( ^ω^)「―――?」

後ろを振り向くが、誰もいない。
水面に波紋が静かに広がっているだけだ。
建物が崩れて石か何かが落ちたのだろう。
ブーンは深く息を吐いて、激しく鼓動する心臓を宥めようとした。

だいぶ暗くなった事に気づいた。
建物と建物の隙間から差している僅かな光があるくらいだ。
黒く濁った青色の空が降りかかって街を色づけたような、そんな色合いだ。

寒気に衝動を駆られ、再び足を動かして走った。
とにかく、ガイルと合流したかった。
一人では不安に押し潰されそうな気分だ。

(;^ω^)(BLACK DOGが無いと不安だお…)

数年使い続けてきた愛機が無いのが、ブーンを堪らなく不安にさせていた。
街で夜を迎えた時は必ずバイクに乗っていたので、自分の足で夜の街を歩くのは今回が殆ど初めてだ。

仲間が欲しいとブーンは思う。
ガイルと合流すれば、いくらか精神的に余裕を持てるだろう。

46 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 22:26:02.63 ID:l4Uj3RAS0
3つ目の十字路を右に曲がった。
角を曲がった先は見通しの良い広場になっていた。
中央に噴水が設置してあり、それを中心に周りに建物が立てられている。
広場から出る数本の道の内、最も幅広い道を進んだ。

再び長い直線だ。
多くの建物が崩れているようなので、巣は少ないはずだ。
この通りをしばらく真っ直ぐ行けば、ガイル機のいる場所に辿り着ける。

日はまだ出ていたが、地平線に半分程その姿を沈めていた。
そして半月が淡い青空に浮かび、夜の訪れを告げていた。
言うなれば、夕闇という言い方が最も相応しい景色だ。

(;^ω^)(暗くなるのが早い気がするお)

奴らの時間が始まってしまう。急がなければ。

長い通りを真っ直ぐに突き進む。
ここは半壊したビルや建物が多く、宙に浮く粉塵も酷かった。
所々で小規模だが火災が起きており、煙も目立つ。
どうやらクォッチとの戦いで被害を受けた一箇所のようだ。

48 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 22:27:52.42 ID:l4Uj3RAS0
巻き上がる粉塵で辺りが灰色に見える。
これでは呼吸するのも敵わないと思ったブーンは、右耳のメカニック部分を弄くってマスクを展開させた。
輪郭に沿って付けられたプレートが動いて、目元まできっちり覆う銀色のマスクとなったのだ。

これで粉塵を通さず息を吸えるが、全身が埃っぽくなるのはどうしても避けられない。
とは言っても、既にお気に入りのジャケットやパンツは戦闘でボロボロになっているのだが。

長い通りをしばらく走ると、スクランブルの十字路が見えた。
ここを左に曲がると、少し先に瓦礫に腰掛けているバトルスーツが見えた。
ガイル機である。

(;^ω^)「ふぅ。まだ日も出てるお」

ブーンは安堵の溜息をついた。
バイクも無く傷ついた体で街を歩くのが、これほど恐怖だとは思っていなかった。

水音を立てながらブーンは走り寄った。
近くで見るガイル機の損傷は酷いものだった。
頭部が無く、四肢も2つ足らず、随所でバチバチと電気が弾ける音を鳴らしている。
瓦礫から生じる粉塵を被って、漆黒だったボディが灰色に汚れていた。

49 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 22:30:27.14 ID:l4Uj3RAS0
機体中央部分がゆっくりと開き、中からガイルと思わしき人が出てきた。
肌を一切見せない分厚い迷彩服と、マスクを装備している。

腰掛けた機体の形状に沿って、ゆっくりと歩いて降りてくるガイル。
機体の足の先まで歩くと、そこから地面に向って飛び降りた。
結構な高さがあったが、しっかりと膝を曲げて上手く着地し、平然と足を動かした。

ガイル「外は埃が酷いな。俺達が壊した建物も多いんだろうけどよ」

迷彩柄の分厚い服が屈強な戦士を思わせる雰囲気を醸し出している。
頭部を覆うマスクは、顔面の部分に半透明の黒いガラスのような物が張られていて、
何となく宇宙服を想起させられるデザインだ。

右手にはサブマシンガンが握られており、弾丸が襷にかけられている。
軍人らしい身なりだと、ブーンは思う。

( ^ω^)「バトルスーツは大きいですから仕方無いですお。
      それよりそのマスク、羨ましいですお」

ガイル「あぁ、別に粉塵を避けてるんじゃないんだがな。
     大そうなスーツだと思うだろうが、白兵戦やサバイバルを想定した装備でね。
     汚染された空気や水で感染するって噂もあるから、こんなスーツの着用を義務付けられているんだ」

( ^ω^)「ウィルスの感染経路ははっきりしてませんし、
      色々あるみたいですから用心するに越した事はないですお」

50 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 22:31:57.75 ID:l4Uj3RAS0
「そうだな」と、ガイルは相槌を打ち、空を見渡した。
つられてブーンも空を見上げると、空は更に暗みを増していた。
もうじき、日は見えなくなるだろう。

ガイル「のんびり話している場合じゃないな。さっさと行こうか。
    ここまで来る途中にセカンドは?」

( ^ω^)「一匹も遭わずに来れましたお。
       正直言って、ラッキーだったかもしれませんお」

ガイル「その幸運が続きゃいいんだがな。
    B00N-D1、一度ジョルジュ隊長に連絡をしてくれ」

ガイルに促され、ブーンはジョルジュのバトルスーツに通信する。

( ^ω^)「ジョルジュ隊長、ガイルさんと合流しましたお。
       これからポイントに向いますお」

( ゚∀゚)『了解だ。少し早いが、俺も今から空港に向う。
      冬は日が落ちるのが早いもんだな…奴らの餌になんなよ」

この世界において日の光の無い場所と時間帯は、恐怖であった。
刻々として光が失われてゆくのを、ジョルジュも不穏に感じているのだろう。

56 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 22:34:04.58 ID:l4Uj3RAS0
( ^ω^)「了解ですお。合流ポイントで会いましょう。
       ガイルさん、行きますお!」

ガイル「あぁ、行こう!」

ガイルが先頭を切って走り出した。
ブーンはガイルの後に付いて走るが、流石に軍人とはいえ速度は人のそれ。
負傷しているとはいえ、ガイルよりも遥かに速く走れるブーンは歯痒かった。

合流ポイントのケネディ国際空港までは少し距離がある。
この速度では、ポイントに到達するまで30分はかかるだろう。

暗闇が空を覆い始めてきた。
焦燥に駆られ、無意識に足が速まってしまう。
いつの間にかガイルを追い越してしまったので、ガイルにも着いて来れる程度の
速度を調節しながら足を動かした。

空から迫り来る闇から逃げるように、二人は街を走る。
一度暗みを帯びた空というのは、あっという間に光を失うらしく、
急速的に姿を夜へと変えようとしていた。

58 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 22:36:16.36 ID:l4Uj3RAS0
20分少々は走っただろうか。
それでもケネディ国際空港まではまだ距離がある。
着く前に夜を迎えてしまうだろう。

なるべく戦闘は避けたい。
左腕しか無く、全身の運動能力値が下がっている今、セカンドとまともに戦える自信は無かった。
ガイルも武装してはいるが、生身の人間がセカンドと対峙するのは危険すぎる。
その事は、数年前に軍や警察が身をもって証明していた。

ガイル「ちょ、ちょっと待ってくれ! 速すぎるぞ!」

( ^ω^)「あ、すみませんお」

ガイルの大声に呼び止められ、ハッとして声の方へ向く。
離れた所で、ガイルが膝に手を付いて息を荒げていた。
元軍人とはいえ、少し速いペースで走らせてしまったらしい。

ガイル「はぁはぁ……す、すまん、疲れた…ちょっと休憩で……」

(;^ω^)「仕方ないですお……少し歩きましょう」

59 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 22:38:59.06 ID:l4Uj3RAS0
街灯や建物から決して光が灯らない薄暗い街の中で、
ブーンの咥える煙草の僅かな光が一点だけ光っている。
今はそこまで暗くないが、彼等はそれぞれ暗視機能を持っているので暗闇を歩く事に問題は無い。

ガイル「B00…あぁ面倒臭い! ブーンでいいんだよな? 俺もそう呼ばせてもらうぜ。
     なぁブーン、俺にも一本吸わせてくれよ!
     それマルボロだろ? 久しく美味い煙草を吸ってないんだ」

ガイルが右手人差し指を立ててブーンに尋ねた。
半透明のマスク越しに見えるガイルの顔は、何とも物欲しそうである。
愛称で呼ばれたブーンも、上機嫌で笑顔を返した。

( ^ω^)「いいですけど、顔出して大丈夫ですかお?」

ブーンは腰にぶら下げたバックパックの中から銀のケースを取り出す。
ケースの中から一本だけつまみ上げ、それをガイルに手渡した。
こんな些細な動作でも、隻腕だと億劫になるものだ。

60 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 22:40:57.07 ID:l4Uj3RAS0
ガイル「多少だが俺にも免疫はある。
     棲み処の空気吸ったくらいじゃ、感染しないよ」

マスクのこめかみの辺りに付いたボタンに手を触れると、
半透明の黒い面が左右に分かれてマスクの中へ収納され、ガイルの顔が露になった。
厚い手袋に覆われた親指と人差し指で煙草を口元に持って行き、咥えた。

ガイル「お、悪いな」

ブーンはジッポライターを灯してガイルの煙草の先を燃やしてやった。
チリチリと音を立てながら赤く輝き、新たな一筋の煙が香ばしい匂いと共に漂い始める。
ガイルは満足そうな表情で、口から多量の煙を吐き出した。

ガイル「うまああああああいっ!!
     セントラルの不味い煙草とじゃ比べ物にならねーな!」

( ^ω^)「僕は街へ調査に行った時は、ついでに煙草を漁って帰るんですおっおっ。
      良かったら今度一箱差し上げますお」

ガイル「本当か!? そいつは嬉しいぜ!
     こりゃ、何としてでも生きて帰らないとな! へへ!」

( ^ω^)「ニコチン中毒ばっかりwwwwwwww」

61 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 22:43:13.79 ID:l4Uj3RAS0
2人が嬉々と話している最中、不意に左目が反応する。
驚いたブーンは、貴重な煙草を口から落としてしまった。

左目が宙に投影した小さなモニターには、
ブーン達の現在位置を中心としたクイーンズ区の地図が映し出されている。

(;^ω^)「う……」

ガイル「その反応ってもしかして……おいおい勘弁してくれよ!」

地図にセカンドを表す赤い点がポツポツと浮き出てきている。
徐々に、クイーンズ区のあらゆる箇所からセカンドが現れているようだ。
ブーンが通ってきた「巣」と思わしき通りにも、やはり反応が出ている。

(;^ω^)「のんびり歩いてる場合じゃないお…早く空港に逃げますお!」

ガイル「まだ日が落ちてないってのに、気が早い奴らめ!」

ガイルは手袋に守られた指先で煙草を押し付けて火を消すと、
まだ長い吸殻を慎重に胸のポケットに入れた。
どうやら吸い切れなかったのが惜しいようで、後で改めて吸うらしい。

63 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 22:45:22.88 ID:l4Uj3RAS0
ガイル「ヘヘッ。もったいねーからな。全部灰にするまで堪能するぜ」

(;^ω^)「また後であげますから、早く行きm――

突然モニターに点滅した赤い点は、ブーン達のすぐ近くに示されていた。
数メートル先に建っている赤茶色の小さなビルの出入り口に、何かがいる。
暗い建物の中から、赤い目が光っていた。

(;^ω^)「見、見つかったお……」

ガイル「や、やべえ……日があたってねぇのか……!」

気づけば、通りを照らす橙色の光が途切れてしまっていた。

ビルから人間の出来損ないのような異形が、暗くなった通りに出て来た。
1人出て来ると、それに続いてもう1人、また1人とぞろぞろ出て来る。
数えるのが恐ろしいほど多数のセカンドが小さなビルから現れた。

皆、頭髪は疎らで禿げており、頭から爪先までヘドロ色の皮膚で覆われている。
口周りは獲物を喰らった時に汚れたのか、血糊がこびりついている。
赤い両眼は焦点が合っておらず、どこを見ているの分からない。

何より恐ろしいのは、刃物のように鋭利で長い指。
それで何を切ったのか分からないが、全員の指が赤黒く染まっていた。

獲物を発見した「彼等」は、歓喜の声を上げた。
そして狂ったように叫び続け、ブーン達に向って走り始めた。

64 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 22:47:24.87 ID:l4Uj3RAS0
ガイル「ど、どうする!?」

(;^ω^)「逃げながら戦いますお!
       そこの路地に入って、日当たりの良い場所に移動しますお!」

近くの細い路地に2人は逃げ込んだ。
異形達も獲物を追って狭い路地へと押し込むように入ってゆく。

ブーンは走りながら、路地に入り込んで来たセカンドに向ってBluerBulletGunを発砲した。
弾丸は何体かのセカンドの頭をぶち抜いたが、セカンド達は怯まなかった。
後ろで支えて攻撃を免れていたセカンド達が、仲間の死体を飛び越えてブーンに襲い掛かる。

(;^ω^)「コイツら速いお!」

ブーンは急いで銃を振り下ろしてリロードする。
しかし、敵の速度に追いつかない。
咄嗟に頭を下げて身構えた瞬間、後ろから硬質な銃撃音が鳴り響いた。

ガイル「大丈夫か!?」

ブーンに飛び掛ったセカンドは、血を吹き上げながら地面に落ちた。
ガイルがマシンガンで援護してくれたのだ。

65 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 22:49:11.15 ID:l4Uj3RAS0
(;^ω^)「助かりましたお!」

だがセカンドは一息付く間さえ与えてくれなかった。
壁を蹴り、上から飛び降りて襲ってくる者もいれば、愚直に突進してくる者もいる。
狭い路地に、狂気に満ちたセカンドの叫び声が木霊す。

ガイル「死ね! この野郎ッ!!」

ガイルは次々と飛び掛ってくるセカンドを狙ってマシンガンの引き金を引くが、
弾丸はセカンドに命中する事無く、壁を貫いて粉塵を巻き起こすばかりだった。
動きが速く、近距離で撃っていても中々弾丸が当たらない。

ブーンも同様だった。
あえて細い路地を選び、敵の移動を制限したつもりだったが、あまり効果は無かったようだ。
こう上下左右に飛び交われては狙いが定まらない。
弾丸が穴を開けるのは、左右の壁ばかりだ。

(;^ω^)「分が悪いですお! 逃げますお!」

それに、体の至る所が故障している為、一つ一つの動作がスムーズじゃなかった。
素早い敵の動きに対応できず、どうしても翻弄されてしまう。

ガイル「あぁ!」

68 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/03/07(金) 22:51:24.67 ID:l4Uj3RAS0
二人は応戦する事を止め、踵を返して路地の出口を目指し走った。
しかし、数匹のセカンドが壁を伝い、出口側に立ち塞がるのだった。
完全に逃げ道を塞がれてしまった。

ガイル「は、挟まれちまった……」

喉がはち切れんばかりの甲高い笑い声と共に、
幾多の血を吸って赤くなった指先をキリキリと擦り合わせて、耳障りな音を奏でる。
耳を塞ぎたくなる死のオーケストラだ。

醜く邪悪な笑みを作るその口から、涎が絶え間なく流れ出ていた。
痩せ細った体からは腐った臭いが漂う。

色褪せ、薄汚れたボロ切れから、いきり立った一物が顔を覗かせていた。
久々の人間の血肉に興奮が止まない様子だ。

(;^ω^)「や、やばいお……」

気づけば、街を染めていた夕暮れの日が消えていた。
一面に広がる漆黒の空が、ニューヨーク中の異形達に狩りの時間を告げるのだった。


                              第7話「夕闇の街」終

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