内藤エスカルゴ - 現行作品一覧 - ( ^ω^)は街で狩りをするようです - 第1話「B00N-D1」

第1話「B00N-D1」

1 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 00:40:18.83 ID:gT/dKMY+0

― プロローグ ―


ビルの林を黒いバイクが走り抜ける。
バイクに乗っている男は、速度制限を促す標識を目に留める素振りも見せずにスピードを上げてゆく。
彼を追う警察のサイレンの音は聞こえず、劈くような男のバイクのエンジン音が街を響かせていた。

サイレンの代わりに街に鳴り響くのは、大地と大気を振るわせてしまうくらい大きな足音と咆哮だ。
これがライオンやチーターならまだ良いと、昔存在していた動物を懐かしむ。
男が追われているの動物ではなく、奇怪な容姿を持つ巨大な蜘蛛であった。

蜘蛛のような6本の長い足を運ぶ度にコンクリートの地面に穴が空いていく。
上半身には人間に似た腕や胸、首と顔を持っているが、昆虫のようなその顔は見れたもんじゃなかった。
豊満な胸があることから雌かもしれないが、性器を確認するには六本の足を掻い潜らなくてはならないようだ。
腕は人間と同じく2本、その爪が異常に長く、辺りのビルに大きな傷を残しながら進んでいた。

足から頭までの高さはおよそ5メートル程。
動きは素早くないが、巨大なので一歩が大きいのだ。
バイクの速度計は200kmを回っていたが、その化け物は遅れることなく着いて来ている。

2 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 00:41:01.89 ID:gT/dKMY+0
速度をほぼ落とさず地面スレスレの角度にバイクを傾けて十字路を曲がり、男は長い通りに出た。
通りの両脇には主を失った多くの店や自動車がいくつもある。
「蜘蛛」は自分の通り道に車がある事に気づいていないように、お構いなしに通りを進む。
時折、その鋼鉄のように堅い足が車を突き刺さると爆発が起こるが、歩く事に全く問題無い様子である。

男は左手でハンドルを握り、自分の太ももに付けてある大きなホルダーから、一丁の巨大な銃を取り出す。
それは現代の軍隊が使っているような重火器ではなく、発展した科学を軍事転用して出来た銃である。
ゲームに出てくるような外見の銃で、あちこちに機械仕掛けが施されており、作りが複雑そうだ。
薄紫と空色でペイントされており、中央には赤い宝石のような物が埋め込まれている。
トリガーの部分はコンパクトで片手持ちが可能だが、反して銃口は大きく、大人の腕一本入りそうだ。

バイクのバランスを保ちながら後ろを向き、銃に付けてあるスコープの中に「蜘蛛」の胴体を収めた。
トリガーの近くにあるスイッチを押すと、スコープが目標を捕らえようと標準を合わせている。
スコープ内の色がグリーンからレッドになったのは、銃が目標を捉えたという表示である。


「死ねおッ!!」


銃口から巨大な蒼い光弾が高速で発射され、「蜘蛛」の胴体を打ち抜いた。
「蜘蛛」の腹には大きな穴がポッカリと開き、「蜘蛛」は叫び声をあげて地面を震撼させた。
一瞬、開いた腹から風景が見えたが、すぐに多量の血と臓器が噴出して、辺りは赤一色に染まった。

3 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 00:43:41.25 ID:gT/dKMY+0
男はバイクを止め、銃をリロードする。
「蜘蛛」の頭に標準を合わせ、いざトリガーを引こうとした時、「蜘蛛」は口から大量の糸を吐き出した。
どす黒い血に染まった糸は辺りを全て覆えるくらい広がって男に降りかかった。
男は糸に捕われる寸での所で空中に飛び、回避した。

「今のは結構危なかったお」

空中で再度標準を「蜘蛛」の頭に合わせ、蒼い光弾を放った。
頭を打ちぬかれた「蜘蛛は」足の一本もピクリとも動かさず、沈黙した。

男は「蜘蛛」に近づきながら、銃を振り下ろしてリロードする。
もはや絶命しているであろう「蜘蛛」に、何度も銃を撃った。
男が光弾を撃つた度に肉塊が四方に飛び散り、「蜘蛛」は原型を留めていなかった。

「蜘蛛」が死んだせいなのか、辺りにぶち撒かれた糸は枯れたようだ。
通りを吹き抜ける風が、枯れた糸を何処かに持っていってしまった。
同時に男は、その風が凄惨な戦いを癒してくれているのだと、清々しく感じた。

4 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 00:44:36.85 ID:gT/dKMY+0
男は銃をホルダーに収めるとバイクに戻った。
まだハンドルや座席に残った糸の残骸を手でどけ、バイクに跨った。


( ^ω^)「まさか年の瀬にこんなデカブツに襲われるなんて思わなかったお」


男は「蜘蛛」の肉片に一瞥をくれてやると、エンジンをかける。
再び街は静寂となったが、バイクのエンジン音だけは鳴り響いていた。
それ以外に何も聞こえることなく。

( ^ω^)「朝だおっおっ」

気づけば朝を迎えていた。
太陽だけがいつまでも変わらずに地平線から昇り、街と自分を優しい光で包んでくれるのだ。

朝日が昇る度に自分は生きているんだとホッとするようになって、もう何年経つのか。
男は遠くの太陽を横目に、少し昔の地球を懐かしんだ。


( ^ω^)は街で狩りをするようです

11 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 01:29:37.90 ID:gT/dKMY+0

第1話「B00N-D1」

2040年代、高度に発達した科学により人類は癌を完全に克服した。
急速的に成長を続ける科学は現代の人類が描いた物を次々と生み出していったのだ。
そして遂には、人類の棲息範囲を宇宙へと拡大するのであった。

比較的地球に近いと言われていた火星に目を付けた人類は、優れた科学力を持って火星を人類に適化させたのである。
数年と経たず内に、火星でも地球と同じように宇宙服要らずの生活をする事が出来るようになったのだ。
そして次々に家やビル、病院やその他の施設を建設し、やがて「第二の地球」と言われる程にまで火星は発展していった。

火星でも社会が安定し始めた頃、人類は太陽系外の星にも調査を踏み込んでいったのだ。
幾つかの星は炎やガスなどで出来ていたが、やがて水分や酸素、微小であるが生命が存在する星を確認する。
人類はその星をセカンドアースと名づけた。

その星で発見された生物は極めて小さな生き物で、ミミズのような容姿を持っていた。
調査隊員は「ミミズ」を数匹捕獲したが、その際に隊員の一人がミミズに咬まれてしまったが、この時は誰も気に留めたりする事はなかったのだ。
それが後に恐ろしい結果を齎すとは知らずに…。

調査隊はその「ミミズ」を火星に持ち帰って、その生態を研究した。
研究の最初の段階で、「ミミズ」が“ウィルス”を持っている事に気づくが、その時の科学技術ではウィルスを解明する事は出来なかったのだ。

12 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 01:30:06.54 ID:gT/dKMY+0
セカンドアースの調査から半月経った頃、一人の調査隊員が高熱を訴えるようになった。
だがウィルスの撃退法も分からず手の施しようが無く、調査隊員は絶命した。
そして正体不明のウィルスは加速的に火星全体に蔓延し、火星の人間の殆どがウィルスに殺されていった。
急速的な勢力を持って火星を支配し始めたのは、ウィルスに感染した人間が姿を変えた化け物達であった。
正確には支配ではなく、ひたすら人間を喰い尽くすだけの制圧とも統治とも言えない、その化け物の本能による結果のことだ。

生き延びた僅かな人々は火星を脱出し、地球に戻った。
だが脱出者の中にウィルスの感染者がいたのだ。
感染者はすぐに姿を化け物へ変え、人々を襲っていった。

火星と同様にウィルスは猛威を振るい、地球の人間達を次々へと化け物にしていった。
人間がウィルスの対抗手段の開発に成功する頃には、世界の人口は僅か100万人となってしまったのだった。
生き延びた僅かな人々は、ウィルスに感染されて姿を変えた人々をセカンドと呼ぶようになった。
ウィルスが発見されたのがセカンドアースという星だったからなのか、人間が化け物に変わる様を見てセカンドとしたのかは分からない。

地球上のあらゆる都市や土地はセカンドに駆逐され、支配されてしまった。
残された資源や燃料で他に住める星を探す事は難しく、人々は地球での生活を余儀なくされたのだ。

13 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 01:31:48.86 ID:gT/dKMY+0


男は街を抜け、郊外へ出た。
見通しの良い田舎道がずっと真っ直ぐ伸びている。
今日は雲一つ無い天気だが、肌を突き刺すような冷たい風が吹いていた。
こんな天気に田舎道でバイクを走らせるのは気持ちが良いと男は思う。
戦闘で火照った顔の熱が、冷たい風に奪われてゆくのが何とも心地よかった。

田舎道を抜けると瓦礫だらけの街へ着いた。
街といっても、すっかり街の姿は失っているのだが。
元々は郊外にする金持ちの住宅街で、家の残骸にどこか気品や高級感が感じられる。
例えばオブジェクトの残骸だったり、やたら大仰な階段がそのまま残っていたりする。

この辺にセカンドが現れる事は無くなった。
というのも、この男がこの近くに出現したセカンドをことごとく駆逐しているからだ。
どんな生き物も自分よりも強い存在には本能的に近寄らないらしいが、それはセカンドも同様のようだ。

瓦礫の街を出て、再びしばらく走る。
男の家がある森が見える頃には、すっかり夕方になっていた。
森の近くには、木よりも遥かに高いビルが数え切れない程多く立っている。
セカンドが出現する前の大都市で、NYと呼ばれている。

森は元々NYの大きな公園だったのだが、何十年も放置されて深い森になってしまったのだ。
その公園がセントラルパークという名で市民に親しまれていたのは、昔の話だ。
だがこの場所が貴重に扱われているのは今も昔も同じで、今ではこの森は生き延びた人々の隠れ蓑になっている。
昔の名残もあって、人々が隠れ住むこの場所は「セントラル」と呼ばれている。

17 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 01:36:01.47 ID:gT/dKMY+0
男は森の奥深くまで進んだ。
森の中心の辺りに、堅い金属で出来た地面になっている場所がある。
そこが「セントラル」の入り口だ。

男はその場所まで行くとバイクを降りた。
男の立っている地面はエレベータのように昇降するようになっているのだ。
エレベータには小さな操作盤があり、そこで瞳の色彩と指紋、声紋を確認すると、エレベータが機能するのだ。

男は慣れた手付きで操作盤のパネルを指で指していく。
すると色彩や指紋の確認を促す機械の声がスピーカーから聞こえてきた。
男は照合を進める為にヘルメットを脱いだ。

金の長い髪が風になびく。
美しい堀の奥で少し細めの目が蒼と赤の2色を光らせている。
スラっと伸びた鼻筋にスッキリと細い口元などイケメンたるパーツを揃えている。

だが、赤い左目は機械の作り物であるし、輪郭と顎には銀色の薄いプレートが付けられている。
右耳にも決してヘッドフォンなどではない、複雑なメカニックを着けられている。
右耳を全て覆っているメカニックは頭の後頭部まで伸びているが、長い髪がそれを隠していた。

しかし、機械で出来た顔は人間のそれと比べても差ほど違和感が無い。
例えば左目は赤いだけで、機械的な構造の外見は持っていない。

「B00N-D1と確認しました。お帰りなさいませ」

ビーゼロゼロエヌ、ディーワン。
それが男の名前だ。

20 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 01:43:39.80 ID:gT/dKMY+0
( ^ω^)「2週間ぶりの我が家だお」

B00N-D1はバイクに乗り、煙草を胸ポケットから取り出して一本火をつけた。
長いドライブを終えて吸う煙草はB00N-D1の楽しみの一つだった。
静かな音でエレベータが起動し、下降が始まった。

エレベータは自動車を5台は降ろせる広さだ。
降車を始めるとすぐに地面のハッチが閉まり、斜めに高速で下降する設計だ。

この唯一の出入り口は一見して無防備に見るが、
セカンドの対策として多量の重火器が森中にある。
まだ一度も使ったことはないのだが。

「ブーン! エレベータで煙草吸うなって言ってるでしょ!!」

エレベータを降りている途中、何度か聞いた事のあるセリフと共に空中にモニターが展開された。
ちなみにブーンというのはB00N-D1の呼称で、英字と数字の並びで「ブーン」と読める事から付いた名だった。
皆が彼をブーンと呼び、正式なコードネームで呼ぶのは機械のアナウンスくらいだった。

モニターに映っている少女が、ブーンという呼称の名づけ親だ。
赤いリボンで結ったツインテールが愛らしい金髪の少女で、名前をツン・ディレイクと言う。
来年で20歳になる彼女だが、その体は控えめであまり大人らしいとは言えない。

ξ゚听)ξ『煙草くらい降りてから吸え! 我慢しなさい!』

( ^ω^)「ツン、このエレベータ長すぎるんだお。
       ニコチン中毒の僕には耐えられないおっおっ」

21 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 01:48:06.68 ID:gT/dKMY+0
ξ#゚听)ξ『吸うなら灰皿くらい使ってよ! 皆のエレベータなんだから!』

( ^ω^)「でも使ってるのは僅かな人だけだおーん」

するとツンはモニター越しに何かをしている。
取り出してブーンに見せたのは、マルボロのカートンだった。

ξ#゚∀゚)ξ『じゃーん! アンタの部屋にあったカートンよおおおおお!
         目の前で捨ててあげるわよおおおオッホッホッホオゴフッgホグgホ!!』

(;^ω^)「ああっ! 分かりましたお!!
      今度から絶対に灰皿を使いますお!」

ξ゚听)ξ『あぁん、もうダストシュートに投げちゃった♪』

( ;ω;)「おおおおおおおおおおん!!!!
      せっかく街から苦労して取ってきたのにいいいいいいいいいいいいいい」

会話だけで判断すれば性格も大人らしかぬツンだが、実は聡明な頭脳の持ち主だったりする。
このシェルターの機械構造や電気系統などの設計に彼女は携わった上、
何より対セカンド兵器の開発のチーフを勤める天才少女なのだ。

B00N-D1を“開発”したのも彼女だ。

23 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 01:57:48.48 ID:gT/dKMY+0
長い降車を終えたブーンを待っていたのは、先ほどの煙草の件で得意顔になっているツンだった。

ξ゚听)ξ「アンタが言う事聞かないから捨てちゃったわ♪」

あまり数の少ない嗜好品のストックを捨てたという現実を突きつけられ、ブーンは泣いた。
ブーンは煙草を少ない楽しみの一つだと言うが、既に楽しみの域を超えた中毒だ。
それを捨てられる事は、彼にとって重大な事だった。

(#;ω;)「僕が灰皿使うって言う前に捨ててたお!
       ツンのアホ! うんこ!! うんこおおおお!!」

ξ#゚听)ξ「うんこ? あたしの巻き毛が巻きグソみたいて言ったわね?」

( ^ω^)「いや、とてもウンコがしたいって思っただけだお」

ξ゚听)b「ならいいわ! 不問に処す!」

( ^ω^)b「もう、ツンちゃんの早とちりさん!」

ξ゚听)ξ「誰が早とちりさんよっ!
       さっさと研究所に行ってオーバーホールするわよ」

24 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 02:00:24.59 ID:gT/dKMY+0
( ^ω^)「イエッサ。ところで、マジで煙草捨てたのかお?
       あれが無いと僕は生きていけないんだお」

ツンは清々しい笑顔と共に振り返り、明るいトーンで言った。
それはもうこれ以上に無いというくらい、満足感の伝わる声のトーンだった。


ξ*゚听)ξ「グッチャ♪グッチャ♪にして捨てたわよォォオー――ン!」



(#゚ω゚)「こ、この巻きグソ女があああああああああああ!!」

26 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 02:25:59.07 ID:Um5zfaeK0


地下のシェルターは5つの層に分かれている。
層は5,6m程の分厚い金属プレートで守られいるが、万が一を備えて第1階層は迎撃システムを施している。
第1階層に来る時は点検の時くらいで、滅多に来る機会は無い。
第2階層は様々な電気系統やメカニックが迷路のように走り回っており、この層がシェルターの心臓部となっている。
第3階層は研究開発の為の層であり、多くの技術者が日夜ここで研究をしている。
兵器開発からシェルター内の生活に関する研究まで、ここで行われているのだ。

第4階層から第5階層は、人々が物を生産したり、生活をするスペースとなっており、ここに全人類100万人が居住している。

ブーンとツンは第3階層にあるツンのラボに来ていた。
既に研究室内には多くの人が研究活動に夢中になっている。
二人が部屋に入ると、だいぶ遅れて挨拶が聞こえてきた。

「ブーン! おかえりなさい!」

(#)ω^)「おっおっ。ただいまだお」

「ブーンどうした? 珍しく顔がボコボコじゃないか!」

(#)ω^)「世の中には恐ろしい人間がいるものだお」

('A`)「おう、ブーン」

わざわざ近寄って挨拶をしたのは、兵器開発チームの一人であるドクオ・アーランドソンだった。
研究のし過ぎなのか、それとも元々生まれつきなのか、とにかく顔色が悪い。
長くて油っこい髪と無精ヒゲが気になる清潔感の欠片も無い男だが、性格は意外に明朗だ。
だが特別人望が厚いわけでもなく、むしろ友達らしい友達は少ないのが、ドクオという男だ。

28 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 02:27:35.19 ID:Um5zfaeK0
('A`)「おかえりんこ」

( ^ω^)「ただいまんk


 えいやああ ξ゚听)三○)ω^)こえdrftyふじおkl


('A`)「まっくのーうち! まっくのーうち!」

ドクオの掛け声に合わせて、ツンは宙に∞を描くように上体を素早く振る。
振り子の原理で繰り出される左右のフックは実に強烈で、ブーンの頬や顎にヒットする度に脳を大きく揺らしていた。
気づけば痛々しく頬を膨らませたブーンが床に転がっていたのである。


(#)ω(#)「」


('A`)「相変わらず良く効く麻酔だな」


ξ゚听)ξ「アタシも腕だけは『機械』だからね。
      ドクオ、一通りオーバーホールが済んだら今日は終わりね」

('A`)「あいよ」

29 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 02:33:23.28 ID:Um5zfaeK0
*

4人係でブーンを持ち上げ、機械仕掛けの診察台にブーンを寝かせた。
今で言うCTスキャンのような装置も付いてあれば、空中に数台のモニターやパネルが浮いている。
ツンはモニターとパネルを自分の手元まで引っ張り、高速で操作する。

ちなみにドクオはというと、ブーンの服をひたすら脱がしていた。
一応記述しておくと、パンツは履かせたままだ。

('A`)「しにてえ」

露出されたブーンの体は、人間のそれと大分違っていた。
あらゆる部位が機械になっているのだ。
複雑なギミックを露出している訳ではないが、強固なプレートカヴァーを開ければ人間の人体とは違う中身が見えるだろう。

ξ゚听)ξ「ドクオ、始めるわよ」

('A`)「おう」

診察台の脇から管が伸び、ブーンの頭から爪先まで吸盤が取り付いた。
モニターには心拍数や脳波の他に、ブーンの体の内部が映し出されている。

ξ゚听)ξ「脳波、脈拍共に異常無し。
      プログラミング系統も正常に動いているわね」

('A`)「外部に損傷無し。頭部から順に体内をモニターに出すぜ」

長く活動する為に、筋肉や骨の代わりに機械で真似た機構がある。
心肺も人間とは大きく異なる。
ここがどういう構造なのか描写するのは難しいが、一応煙草を吸うのには問題無いらしい。

30 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 02:37:16.44 ID:Um5zfaeK0
あらゆる人間の弱点を補っている。
例えば皮膚も堅い物質で作られており、ちょっとやそっとじゃ破けないようになっている。
それから眼、耳、神経なども機械だ。

当然、脳も弄られている。
脳は原型を留めているが、随所にメカニックが施されている。
ブーンの体は半分以上が機械で出来た云わば強化人間なのだ。

('A`)「右腕に損傷あり。かなり激しい戦闘をやらかしたんだろうな。
    ドクオさんが新品のパーツに交換してやっからなぁ」

ξ゚听)ξ「45cmBlueBulletGunのエネルギーが尽きかけている…右腕で何度も撃ったのね。
      記憶素子から戦闘記録をモニターに映してくれる?」

銃器を持ち上げ、銃身に埋め込まれた透明な容器をツンがチェックした。
容器の中には蒼い光のような物がうっすら光っている。

('A`)「あいよ。一週間の戦闘データをモニターに出す」

ドクオがパネルを素早くタッチして、ブーンの記憶をモニターに映した。
モニターには巨大なセカンドとの戦闘シーンが繰り広げられている。
ブーンの目と耳で保存された映像は、ブーンの見たままの色や音の全てが鮮明に残るのだ。

34 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 02:42:24.92 ID:Um5zfaeK0

肌がどぶのように濁った色で、四肢がやたらと長いセカンドが映し出された。
溶かした後に棒で掻き回して固めたような頭部は、直視し難かった。
いくつかの臓器は外に露出しており、腸が腰から胸部に向かって何重にも巻かれている。
このタイプの化け物が20体以上、モニターに映し出されている。

ブーンはバイクから飛び、このセカンドの群れの頭上を舞っているようだ。
頭上から蒼い光弾を何度も打ち込んでセカンドの生命活動を停止させている。
映し出されている通りは血の海と化していた。

('A`)「ワシントンの方にはまだ大量にいるみたいだな」

次に映ったのは人間タイプではなく、動物タイプのセカンドだ。
ウィルスは人間の他に動物に感染もした為、あらゆるタイプが存在してしまったのだ。
元の動物が何なのか分からないが、巨大な一角を額の辺りに持っている。
瞳が無く、口と鼻のみの顔が不気味だ。
やたら小さな手足が多く生えており、映像を停止させて手足の数を数えるのは面倒な作業になりそうだ。

35 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 02:45:07.35 ID:Um5zfaeK0
ξ゚听)ξ「そうね…まだこの近くも安全とは言えないわね」

角を向けて迫り来るセカンドを、ブーンは冷静に銃口を向けて銃を放った。
セカンドは角の先から肉を失い、地面にはグロテスクな手足のみが残っている。

('A`)「最後はこれか…こんなにデカイのは久しぶりだなオイ」

ξ゚听)ξ「どれだけ生物を喰らったのかしらね」

「蜘蛛」との戦闘記録を見ている二人は感心するように呟いた。
セカンドは他の生物を喰らう事により、喰らった生物の特徴や能力を自身に取り込むのだ。
つまり、巨体で複雑な身体を持つセカンドは手強いのが多い。

しかしながら、同種の生物同士で共食いをする事は無く、喰うのは自身とは別種類の生物に限定されるようだ。
これはツンが解析した、ウィルスの習性だ。

36 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 02:48:25.70 ID:Um5zfaeK0
ウィルスはある程度の知能を持っているので、取り込むべき生物を選定しているのだとツンは述べている。
例えば鳥を何度も喰らっても飛行能力は飛行能力なので、それ以上に発展する事はないのだ。
ただし捕食の対象が人間においては、喰らった分だけ理性と知恵を付ける事が出来るのだという。
その為に人口はあっという間に減ってしまったというのが、ウィルス蔓延の原因の一つとされている。

知能が低いセカンドは本能的にしか活動する事が出来ない為、しばしば街を彷徨っていたりする。
しかし、“人類がセカンドに対する対抗手段を得たのを知っている”頭の良いセカンドは何処かに潜んでいるようだ。

そして、その対抗手段こそがB00N−D1のような強化人間――システム・ディレイクだ。

提唱者・開発者であるディレイク家の名を取って命名されたのだ。
システム・ディレイクとは、セカンドに対する免疫を持った人間を戦闘用に強化する理論、またはその強化人間のを指している。
身体の組織や機能を機械で強化する事で、あらゆる兵器の仕様に耐え得る体に仕立て上げるのだ。

兵器の一つとして45mmBlueBulletGunがある。
抽出された免疫を混ぜ合わせた特殊エネルギーを弾丸にして放ち、攻撃対象の肉体とウィルスを同時に消滅させる兵器だ。
その特殊エネルギーは美しい蒼色をしているので、ブルーエネルギーと呼ばれている。
他にもブルーエネルギーを利用した対セカンド兵器が多く存在するが、それは後のブーンの活躍と共に紹介したいと思う。

37 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 02:50:41.29 ID:Um5zfaeK0
('A`)「交換、補修全て完了だ」

ドクオは45mmBlueBulletGunをエネルギー補充用のホルダーにセットし、胸ポケットから煙草を一本取り出した。
ホルダーはちょうど銃身がすっぽりと収まる円筒上の機械で、これにセットしておけばエネルギーが自動で補充されるのだ。

ドクオはライターで煙草に火を付けようとしたが、ツンが「吸うなら外で」と睨みを効かせた。
煙草をしまうのが面倒なので口に咥えたままにし、後でブーンと吸う事にしておいた。
美味い煙草は大体ブーンが街に行って取って来たものだ。
一応「セントラル」でも酒や煙草などの嗜好品は作られているが、どれも味が悪いのだ。


 せいやあ ξ゚听)ξ三○)ω^) おぶうrtfぎぃうhさぢじょk


衝撃で気絶した者を起こすには衝撃が一番!
もとい、パンチにはパンチを!
普段からそう断言しているツンは、眠っているブーンに右ストレートを振り降ろし気味に放った。
堅い機械同士がぶつかり合って甲高い音が鳴り響き、ブーンは飛び上がるように眼を覚ました。

( ^ω^)「お? 終わったかお?」

ブーンは診察台から降りると体の調子を確かめるように軽く体操をした。
肩を回したり、腰を捻ったり、手をブラブラと振り回している。
診察台の近くに積まれている自分の衣服を取って、それに身を包む。
煙草を吸おうと思って取り出すが、ドクオと同じくツンに睨みを効かされて制されてしまった。

ξ゚听)ξ「右腕だけいくつかパーツを変えたわ。
      なるべく両手で撃つ様にしてちょーだい。片手だとショックを吸収し切れていないわ」

( ^ω^)「そんなこと言われても両手で持つ余裕が無かったんだお」

38 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 02:53:00.62 ID:Um5zfaeK0
そう言われたツンは、少しバツが悪そうな顔をした。
ブーンが手強い大型セカンドと戦ったことは、ツンも映像で知っている。
あれ程大きなセカンドを倒すには口径の大きい兵器を使わなければならない。
現代風に言うと、「銃」ではなく「砲」が必要ということだ。

ξ゚听)ξ「ま、別にいいわ。アンタを直すのが私の役目だし。
      でも、戦闘中に腕が故障するかもしれないって事くらい分かってよね?」

( ^ω^)「…分かってるお。なるべく無傷で帰ってくるようにするお」

いくら強化人間とはいえ、セカンドを相手に無傷で帰ってくるのは難しい。
小型の弱いセカンドでも群れを成せば厄介な相手なのだ。
ましてや今回の調査で出くわした大型セカンドの駆除となると、文字通り「骨を折る」作業である。

('A`)「そこでだ、ブーンにプレゼントを用意したんだぜ」

ドクオはパネルを操作し、3人の近くに浮いているモニターに映像を出した。
モニターに映し出されたのは短い棒である。
シンプルなデザインだが銀色の装飾とエネルギーシリンダーの蒼の色合いが綺麗だ。

ドクオがパネルを弾くと、モニターに映っている棒から蒼色の光が直線状に出てきた。
どうやら棒は柄になっており、柄の先端からブルーエネルギーを放出して刃を形成させるようだ。

39 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 02:55:08.96 ID:Um5zfaeK0
('A`)「名付けてドクオの剣だ」

( ^ω^)「いらないお」

          蒼炎の刃
('A`)「名付けてBlueBlazeBladeだ」


( ^ω^)「ありがとうだおドクオ!!!!」


ξ゚听)ξ「一度死んだ方がいいセンスね。エターナルツンブレードが良いと思うわ!」


('A`)「銃と違う所は、お前の力を十分に活かせる所だ。銃は威力が決まってるからな。
    要するに、力を込めればその分威力が増すってことさ。使い勝手は良さそうだろ?
    ガンホルダーを改造してコレも装着させておくから、次の時に試してみてくれ」

( ^ω^)「なるほど。剣みたいな獲物なら力の加減次第で負担を減らせるって事かお。
       おっおっ。ありがとうだおドクオ」

('∀`)「ヘヘッ!! 良いって事よ!!」

ξ゚听)ξ「ギガデインツンちゃんソードってのはどうk………あっ! どこ行くのよアンタ達!!
      もういいわよ、アタシ勝手に武器作っちゃうもん!!」

40 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 02:57:59.88 ID:Um5zfaeK0
二人はネーミングセンスの欠片も無いツンを無視し、ツンのラボを後にした。
自動ドアから通路に出ると、二人は兎にも角にも煙草に火をつけて、煙を肺に入れた。
再び横にスライドして閉まった自動ドアには、デカデカと「禁煙」のステッカーが貼ってあった。

('A`)「ラボの主が嫌煙家じゃなけりゃー最高なんだけどなぁ」

( ^ω^)「ココに配属を希望したのはドクオだお?」

('A`)「あぁ、ツンの技術と知識はすげーからな。
    盗もうと毎日頑張ってけど、追いつける気がしねーよ」

( ^ω^)「でも、僕はドクオの武器のおかげで死なずに帰って来れてるお」

「よせよ恥かしい」と頭を掻きながら照れるが、口元を釣り上げて得意気な笑みを浮かべて煙草を吸っている。
そんな彼の表情を見たブーンは笑顔を返しながらお決まりのセリフを言うのだ。


( ^ω^)b「飲みに行くお」


('A`)b「待ってました」

41 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 03:01:55.84 ID:Um5zfaeK0


ブーンとドクオはシェルターの第4階層に来ていた。
層から層へ移動する時は入り口のような巨大なエレベータは使用せず、小型のエレベータや乗り物で移動するのだ。
エレベータは透明な強化ガラスで出来ており、「セントラル」の街並みが眼下に見える。
この地下の世界にもビルや店などの建物が多く建っているのだ。
今もなお建設途中の建物が多い成長段階の世界である。

第4階層には娯楽施設も数多く存在している。
暗い世の中を少しでも明るく過ごしたいという人々の願いで作られたのだ。
他に病院などもあれば、政治を行う為の議会堂もある。
住居として主に機能しているのは第5階層で、第4階層は人々が働く公共の場となっている。
ここで人々の為の物資や食料を生産しているのだ。

ブーンとドクオは第4階層のとあるバーに来ていた。
酒が不味ければメシも不味く、人々は何故ここの店主はバーなど開いたんだと疑問に思っている。
ブーンとドクオは閑古鳥の鳴いた静かな店内が好きで、よくこのバーに来ているのだ。
ドアを開けるとベルが勢いよく鳴って、客が来た事を店主に伝えた。
「ショボンのバーボンハウス」、それが店名だ。

(´・ω・`)「おや、いらっしゃいブーン。
      今回も生きて帰って来れたんだね。本当に良かった」

店内は百年以上も前の音楽が流れている。
ジャズと呼ばれた音楽で、レトロな造りの店内にマッチしている。
カウンターには、長身でガタイの良い体付きをした男がグラスを磨いていた。
しょぼくれた顔をしているからショボンと呼ばれているが、本名はブーンとドクオも知らなかった。
彼が黒髪で短髪なのは飲食店を営む為ではなく、口元に生やした髭とのバランスの為だと本人は言う。

42 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 03:04:17.43 ID:Um5zfaeK0
( ^ω^)「ふひひ! ここの不味い酒を飲み尽くすまでは死なないおwww」

(´・ω・`)「ぶち殺すぞ。不味いは余計だ」

('A`)「まー結構美味い店になったと思うけどなぁ。
    いや、昔に比べての話だぞ? 一から酒を造るって事に感心してんだ」

フン、と鼻で笑い、ショボンは2つのグラスと1本の瓶を手元に用意した。
ブーンとドクオはカウンターの真ん中の席に腰掛ける。ここが彼等の定位置なのだ。

(´・ω・`)「その内とびっきりに美味い酒を振舞ってあげるつもりさ」

「ほら、サービスだ」と言って渡されたのは、グラス一杯に注がれたバーボンだった。
少し不透明な液体に氷の塊が浮いている。
ブーンはグラスを回した時になる氷の乾いた音が気に入っていた。
何か心地よい音で、グラスを口に付けていない時は常にカラカラと鳴らしたくなる。

43 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 03:06:52.38 ID:Um5zfaeK0
( ^ω^)「かあああああっwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

体のあらゆる所が機械になってしまったが、酒焼けするのが変わっていないのは有難かった。
強い酒を飲んだ時にだけ感じられる、この体が焼ける感覚が堪らないのだ。
一気に疲れが飛ぶような感じで気持ちが良い。
そして氷とグラスがぶつかり合う音が何とも良い音色で、気分をスッと落ち着かせてくれる。

('A`)「バーボンなんか飲めなかったけど、今じゃ仕事終わりに欠かせなくなっちまったな。
    ショボン、もうバーボン一杯くれ」

(´・ω・`)「今の暗い世の中、このくらい強い酒じゃないと憂いを飛ばせないんだよ。
      しかし不味いという割りにはよく飲むよね〜」

ショボンはドクオのグラスになみなみと酒を注いでやった。
自分もグラスを一つ取り出し、氷を一つ入れてバーボンを注いだ。
3人は改めて乾杯し、グラスの酒を一気に飲み干して幸福の溜息をついた。
「ここからは別途料金で」と言いながらショボンは、二人にウィスキー瓶を渡した。

45 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 03:08:45.46 ID:Um5zfaeK0
( ^ω^)「原料の穀物や果物が悪いのかお?」

(´・ω・`)「いや、そんな事無いよ。
      僕の製造方法が悪いんだろうね」

( ^ω^)「なんだ、やっぱりショボンが下手糞なだけかお」

(´・ω・`)「そんなに下手とか不味いとか言ってるとアナルに瓶をぶち込むぞ」

食料の代用としてエネルギー摂取のみに特化された液体化食料で補った時期もあった。
今は食物の生産環境が整ったので、人々は麦や野菜、果物を作って生活している。
田や畑を耕している分けではなく、バイオテクノロジーの粋というヤツだ。

しかし優れた食物があっても、酒というのは造るのが難しいようだ。
ワインやウイスキーは昔ながらの製造法などがあるのだろう。
残念な事に生き延びた人間の中に酒造りに精通した者もおらず、人々は外から集めた僅かな酒を飲んでいたのだ。

そこで立ち上がったのがショボンだった。
酒の知識は皆無だったが、常々「こんな世の中だからこそ、笑っていられる為に酒はもっと必要なんだ」と口にしている。
つまり人々に幸福感を与えたり憂いを飛ばしてやりたいが為に、バーを運営しながら酒造りに精を出す事にしたのだ。
今では酒のレパートリーも増え、バーボンの他にビールや葡萄酒、ウイスキーなどがある。
どれも味は大した事無く、まだ味を楽しめるような酒ではない。

('A`)「まぁ、俺は不味かろうが酔っ払えりゃいいんだけどな」

( ^ω^)「だおだおwwwwwうはwwwアルコールうめえwwwwwwwwwwwwwww」

(´・ω・`)「くっ……いつか絶対に『美味い』って言わせてやるからな!」

47 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 03:11:47.97 ID:Um5zfaeK0


(´・ω・`)「そろそろ帰るのかい?」

店内の時計は12時きっかりを指していた。
人気の無いこの店にもボチボチと客が入ってくる時間だが、二人が店を出る時間でもあった。
入れ替わるようにお客が出入りするのでショボンは寂しさを感じずに済んでいるのだが、内心は二人と朝まで語り明かしたいと思っている。

( ^ω^)「また明日も来るお」

('A`)「ってことだ。俺は明日も朝から仕事だしよ!」

(´・ω・`)「そうかい。まぁ、いつでも飲みに来ておくれよ」

( ^ω^)「おっおっ。明日はもっと美味い酒を飲ましてくれお」

(´・ω・`)「ふふ、極上の酒を用意して待ってるよ」

('A`)「いっつも同じ事言ってるじゃねーかwwwwww」

49 名前: ◆jVEgVW6U6s :2008/02/16(土) 03:12:49.41 ID:Um5zfaeK0
店を出ると、ドアに着けられたベルが甲高い音色を奏でた。
体が変わってから有機的な物や音が好きになったなと、ブーンは思う。
太陽の光や、グラスのと氷の音、ベルの音や煙草がチリチリと燃える音。
店内で流れていた管楽器の有機的な音色は、特に素晴らしかったとブーンは改めて感動した。

左目が捉えるのは実像を換算させた複雑な数式やデータなどの情報ばかり。
右耳で聞くのはラボからの通信や、戦闘や調査の際に聞こえる特殊な波長だ。

強靭な体を得た代償として、ブーンの五感は普通の人間の半分以下になってしまった。
全身で冬の寒さを感じない事を羨む人もいるが、ブーンは感覚が減った事を嘆いていた。
だから強い酒は好きなのだ。
体の中で確かな熱を感じられるからだ。

「憂いを飛ばす為に強くて美味い酒が必要なんだ」

店を構えるショボンのその理念や精神、情熱が、何よりブーンが好きな物だった。

                                      第1話「B00N-D1」 終


次へ

内藤エスカルゴ - 現行作品一覧 - ( ^ω^)は街で狩りをするようです - 第1話「B00N-D1」

inserted by FC2 system