2 :愛のVIP戦士:2007/02/04(日) 14:54:43.72 ID:OUYpjsax0
閑話


( -ω-)「はぁ、暇だお」

日曜日の昼過ぎ。

ここぞとばかり趣味に熱中する者、宿題が終らないと頭を抱える者、1日中寝てばっかりな者。
過ごし方は人によって様々ではあるが、まぁ平和と言っていい時が流れていた。

( -ω-)「なーんにもすることがないお……」

レースが中断されてから丸1日。
一気に増えた暇な時間を使い切れず、ただただボーっとするのみ。

いつレースが再開するのかはまだわからない。
だが、暫く先になるそうだ、という話だ。
つまり当分の間する事と言ったら、平日の仕事ぐらいしか無いということか。

3 :作者 :2007/02/04(日) 14:55:06.10 ID:OUYpjsax0
( ^ω^)「ゲームでもするお」

とにかく、もう少し有意義に時間を過ごしたい。
ゲームをするということが有意義なのかどうかは知らないが、何もしないよりはマシだろう。

棚の中に広がる、ソフトの海の中から適当なものはないかと漁る。
少しして、その中から大枚をはたいて買ったはいいものの、結局あまりやらなかったというブツを引っ張り出した。

( ;^ω^)「あれ、これ売ろうと思ってた筈なのに、結局そのままだったのかお」

まぁ、これも何かの縁だろう。
ということで、そのゲームをやる事にした。つまらなかったら改めて売ればいい。

4 :作者 :2007/02/04(日) 14:55:23.64 ID:OUYpjsax0
暫くの間、内藤はそのゲームに熱中し続けた。

( ^ω^)「やってみると結構面白いもんだお」

ある程度のところまで進めて、時計に目をやる。
もう、2時間ほど経っていた。

( ~ω~)「目が疲れてきたお……。この辺にしておくお」

目を擦りながら本体の電源をオフにする。
テレビの中に広がっていた広大なる空想の世界は、たちまちの内に消え失せた。

5 :作者 :2007/02/04(日) 14:55:46.43 ID:OUYpjsax0
( -ω-)「ふぅ………」

再びベットの上に倒れこむ。
夕飯まではまだ時間があるから、準備の必要も無い。

何の変哲も無い天井を眺めながら、内藤は静かに目を瞑った――


――どれくらい時間が経ったのか。

内藤は何かが鼓膜を震わせたような感じがして、ゆっくりと目を覚ました。

最初は朦朧としていた意識も徐々にはっきりとしてくる。
それにつれ、先程の音の正体もわかってきた。

6 :作者 :2007/02/04(日) 14:56:17.97 ID:OUYpjsax0

( ^ω^)「誰だお?」

インターホンが盛んに鳴らされていた。

音がまだ消えないうちに、次の音が鳴り響く。

( ^ω^)「はいはい今開けますおー」

騒がしい客だ。
内藤は軽く欠伸をしつつ、扉を開けた――


7 :作者 :2007/02/04(日) 14:57:11.23 ID:OUYpjsax0

「遅いー!」

(#)ω)「くぁwせdrftgyふじこlp」

少しだけ開かれた隙間から、
外の光と争うようにして中に入ってきたのはすらりとした長い足。

思い切り頬を蹴られた内藤はしばしの間悶絶、やがておどおどと自分を蹴った主を見た。


何と言うことか。
つい昨日あったばかりなのに、まるで別人のよう。

紅いレーサー服から、そこらへんの女子中学生が着る様な服に着替えた彼女がそこにいた。

9 :作者 :2007/02/04(日) 14:57:50.06 ID:OUYpjsax0

(;メ^ω^)「な、何でつーがここにいるんだお!」

(*゚∀゚)「あんたの友達らしい鬱男から居場所を聞いたんだよー」

どうやらドクオのことらしい。
赤の他人に鬱男と言われるとは。内藤はドクオを少し哀れんだ。

( ^ω^)「で、何の用だお」

そう尋ねられたつーの表情が強張る。
何かまずいことでも言ったのだろうか。

再び来るかもしれない蹴りに備えて数歩後ずさりする内藤。

10 :作者 :2007/02/04(日) 14:58:14.48 ID:OUYpjsax0
(*゚∀゚)「あんた……ちゃんと今日の新聞見たー?」

( ^ω^)「新聞? ………あ」

しばし考え込んでいた内藤は、思い出したように手を叩く。

( ^ω^)「そうだお! トイレットペーp」

 (*゚∀゚)⊃)゜ω゜)

不覚。今度は足ではなく拳が飛んできた。
あまりの痛みに蹲る。

11 :作者 :2007/02/04(日) 14:58:34.86 ID:OUYpjsax0
(;メメ^ω^)「ちょwwwまだ何にも言ってないおwww」

(*゚∀゚)「何を言いたかったのかは大体想像つくからねー」

と、つーはふいに、片手に持った紙切れを無造作に内藤に突き出した。
そこには文字がびっしりと並んでいる。

どうやら新聞の切抜きらしい。

( ^ω^)「お?」

(*゚∀゚)「見てみなー」

何か言うとまた殴られそうだったので、黙って見ることにした内藤。
最初は暢気そうだった表情も、徐々に驚きのそれへと変わっていった。


12 :作者 :2007/02/04(日) 14:58:59.61 ID:OUYpjsax0

( ;^ω^)「こ、これって……どういうことなんだお?」

その新聞の切抜きの見出しは、こうだった。


“男性2名の死体発見。被害者は元プロレーサー”


そして見出しの下には、被害者の写真が。
内藤はその男に見覚えがあった。つい昨日、会ったばかりの顔だ。

( ;^ω^)「弟者さん……!」


13 :作者 :2007/02/04(日) 14:59:27.80 ID:OUYpjsax0

しばしの間、沈黙が続いた。

内藤は何かを喋ろうとするが、声にならない。
ただ、魚のように口をパクパクと開閉させているだけだった。

やっとの思いで、叫ぶ。

( ;^ω^)「い、いいい一体これは何なんだお?」

(*゚∀゚)「知らんがな。……でもまぁ、ただ事ではないことは確かだけどねー」

ふぅ、と静かに息を吐くつー。
懐から煙草とライターを取り出し、すぱすぱと吸い始めた。

14 :作者 :2007/02/04(日) 15:00:15.65 ID:OUYpjsax0

(*゚∀゚)「さて、聞きたいんだけど」

少しの間を空けて、つーは尋ねてきた。

( ´ω`)「何だお……?」

(*゚∀゚)「あんた、弟者について何か知ってるんじゃないのー?」

( ;^ω^)「!?」

いきなり何を言い出すのかこの女は。
内藤はわけもわからずただ焦った。

15 :作者 :2007/02/04(日) 15:00:59.51 ID:OUYpjsax0

( ;ω;)「ぼ、僕を疑ってるのかお!? ひどい! 信じてたのに!」


(*゚∀゚)「キメェ黙れぶち殺すぞ」


( ;^ω^)「………」

予想外の反応をされ黙らざるを得ない内藤。
つーは別にあんたを疑ってるわけじゃないけど、と言ってから再度尋ねた。

(*゚∀゚)「あんた、あたしに会う以前から弟者のこと知ってたみたいね。……どこで知ったの?」

内藤の脳裏に、この間の出来事が浮かんだ。
謎の男に呼び出され、何となく100ccランク出場を受け、弟者と戦った、あの出来事。

隠してもしょうがない。
内藤は、つーに弟者との出会いの全てを話した。

( ^ω^)「実は……」


17 :作者 :2007/02/04(日) 15:01:33.87 ID:OUYpjsax0

(*゚∀゚)「バーの男、ねぇ」

つーは煙草を吸うのを止め、しばしの間空を仰いでいた。
ふざけた印象すら受ける青空が、延々と広がっている。

(*゚∀゚)「――仕方ないねー」

( ^ω^)「お?」

おもむろに、つーが内藤とは逆の方向に歩き始めた。
数回右と左の足をすれ違わせたところで、止まる。

そしてふいにこちらを向いて、言った。

(*゚∀゚)「道案内頼むよー。……その男ってのに会ってみたいから」

にぃ、とつーは笑った。


18 :作者 :2007/02/04(日) 15:01:59.76 ID:OUYpjsax0

バーの主人は、いつものようにグラスを洗っていた。

客は誰もいない。
置物の間にひっそりと設置されたラジカセから流れてくる音楽のみが、孤独感を紛らわしてくれる。
一通り洗い終えてから、主人はふっと息を吐いた。

特に今はすることが無い。
手を拭いた後、懐から本を取り出し読書に耽ることにした。


だが、数ページしか読み終えていないところで扉が開き、日の光が差し込んできた。

(´・ω・`)(やれやれ……。客ってのはどうしていつもこうなんだろうね)

内心で愚痴を吐きつつも、いつもどおりの挨拶をする。

(´・ω・`)「やぁ、ようこそバーボンハウスへ」

19 :作者 :2007/02/04(日) 15:02:31.70 ID:OUYpjsax0

しかし、その先の言葉を続けることは無かった。
入ってきた客が、意外な人物だったから。

(´・ω・`)「君は……」


( ^ω^)「お邪魔します、だお」

いつも殆ど動かない主人の目が、少しだけ驚きを帯びたような気がした。

そしてその状態のまま、黒い瞳が別の客の方へと動く。
視界に飛び込んできたのは、どこか見覚えのある女。

20 :作者 :2007/02/04(日) 15:03:04.27 ID:OUYpjsax0
(´・ω・`)「元、チャンピオンの人だよね」

(*゚∀゚)「え? 知ってるのー?」


つーは少し驚いたようだ。
しかし少し考えてみれば、知っていてもおかしくは無いかな、と思う。

元とは言え、自分は100ccの王者だったのだから。

(´・ω・`)「で、何の用だい。サービスのテキーラ目当てだったらお断りだよ」

( ;^ω^)「違いますお」

内藤は主人の目が少しだけ警戒心を秘めているような感じがして、少し後ろに下がった。
逆につーはずい、と前へ出る。

21 :作者 :2007/02/04(日) 15:03:26.95 ID:OUYpjsax0
(*゚∀゚)「この事件について知りたいんだよね。……あんた、こいつ等と知り合いだろ?」

主人の眼の前に新聞記事をつきつける。
さながら刑事のような動作だった。

しかし主人は慌てる様子も見せず、一言。

(´・ω・`)「何故だい?」

(*゚∀゚)「……?」

つーの手から記事を受け取り、逆にそれを見せ付けるようにして男は続ける。

(´・ω・`)「何故君は、この事件について知りたいんだい。どうでもいい話じゃないか」

22 :作者 :2007/02/04(日) 15:04:22.03 ID:OUYpjsax0

何故だろう。
内藤は、この感情の欠片すら篭っていない声を聞いて、少しだけ恐怖を覚えた。

彼には、男の声がとてつもなく凄みを帯びてるような感じがしてならなかったのだ。

(*゚∀゚)「別に。たいした理由じゃないよー。……ただ、あたしはちょっと好奇心が強くてさ」

続ける。

(*゚∀゚)「知ってる奴が殺されたのに黙って見ていることができるほど、大人しい人間じゃないのさ」

(*゚∀゚)「そいつが昨日、あたし達の手でレーサー権を剥奪された男なら、なおさらね」

23 :作者 :2007/02/04(日) 15:04:51.60 ID:OUYpjsax0

主人は黙ってそれを聞いていたが、やがて、笑い始めた。

(´・ω・`)「はははは……。そうか、君達だったのか」

やばい。内藤の勘がそう告げている。
何故かはわからないが、とにかくやばいのだ、この男。

(*゚∀゚)「教えてくれるー? こいつ等との関係」

つーがそう言ったところで、男の笑いは消えた。
そして一言、

(´・ω・`)「やだ」

25 :作者 :2007/02/04(日) 15:05:17.60 ID:OUYpjsax0
(;*゚∀゚)「な……」

同時に指を鳴らす。
刹那、内藤とつーの後ろに黒いスーツを着た、見るからに怪しい男達が現れた。

その数、10人ほど。

主人は再び、感情の篭っていない乾いた笑い声を響かせる。

(´・ω・`)「でも、チャンスならあげようか」

僅かに、男の口元に笑みが浮かぶ。
しかしそれもすぐに消え、代わりに言った。

26 :作者 :2007/02/04(日) 15:05:46.89 ID:OUYpjsax0
(´・ω・`)「奥へ連れて行け」

(;*゚∀゚)「ちょ、離せー! ――ってどさくさに紛れて変なとこ触るなー!」

ぎゃあぎゃあとつーが喚く。
しかし誰もそんなことを気にはしない。

( ;゜ω゜)「こ、これはどういうことですかお!」

男達に抱えられながらも内藤は必死に叫んだ。
――男は答えない。

27 :作者 :2007/02/04(日) 15:06:14.14 ID:OUYpjsax0

やがて、男の姿が殆ど見えなくなった時、彼はやっと口を開いた。


(´・ω・`)「言ったよね。“チャンスをあげる”って」


男は、消えた。


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