内藤エスカルゴ - 現行作品一覧 - ( ^ω^)ブーン島のようです - スレ6
( ^ω^)ブーン島のようです
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:18:19.75 ID:NkzokRGR0

 -6- 猫


教室に入ってきた一匹の猫。
それが授業中ともなれば、それは絶好の授業中断のきっかけになる。


( ^ω^)「ぬこだお」


いち早く反応したのは、内藤ホライゾン。
それに続くクラスメイト達。


ξ゚ー゚)ξ「あ、ホントだ」

('A`)「ここ三階なのに。よく来たな」


既に席を離れ、猫に寄っていこうとする生徒達を見て溜息を漏らす担任の長岡。

  _
(;゚∀゚)「……お前ら、猫ぐらいでいちいち反応すんな。小学生か」

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:19:39.53 ID:NkzokRGR0
お久し振りですみません。

まとめは3年S組、カルゴ先生。
http://www.geocities.jp/local_boon/boon/Land/top.html

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:20:59.29 ID:NkzokRGR0
 
生徒たちの好意的な態度に反応するかのように、
皆の注目を集めながら、猫は少しずつ教室の中心部へと歩を進める。


(;'A`)「お。お。なんか来たぞ」


何を思ったのか、猫はドクオに向かっていた。
そして彼の足元まで着くとその額を彼の右足に摺り寄せる。


( ^ω^)「気にいられたみたいだお」

(;'A`)「うーん……」


困ったような返事をするドクオだったが、
それでも好かれているだけに悪い気もしない。


('A`)「……にしても最近、野良猫多いよな」

ξ゚听)ξ「ホントにね。『VIP』に限ったことなのかしら?」


ツンデレの言葉に、内藤が黙考する。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:21:48.82 ID:NkzokRGR0
 
確かにここ数年。数ヶ月の間に『VIP』では大量の野良猫が発生していた。
どこから来たのかは不明だが、そのまま居座るものもいればいつの間にか消えてしまったりと色々だ。


( ^ω^)「……多少なりとも『シベリア』や『格付け』にも出てきてるみたいだお」

ξ゚听)ξ「そうなんだ」

('A`)「まぁ旅行客みたいなもんだよな」


ドクオはそんなことを口にしながら、猫の頭を優しく撫でる。
当の猫は、気持ちよさそうに身を委ねる。既に懐いている様子だった。


ξ゚ー゚)ξ「人懐っこいのね」

('A`)「もうアレだな。俺が餌とかあげるべきだよな。ほら、ビーフジャーキーだ」

(;^ω^)「放っておけお」


内藤がドクオの伸ばした腕を制止する。


('A`)「何すんだ!」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:22:19.51 ID:Lun+PnB6O
やった!
支援

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:22:54.64 ID:NkzokRGR0
 
ドクオはそう言って内藤の制止を振り切る。
気付けば、いつの間にかドクオは完全に猫擁護派に回っていた。


(;^ω^)「野良猫に餌はあげちゃいけないんだお」

('A`)「冷たいぞ!」


ドクオだけでなく足元でじゃれていた猫までもが威嚇するように声を上げた。
言葉が通じるわけもないが、内藤はすっかり嫌われていた。

そんな様子を見るに見かねたツンデレが、仲裁に入る。


ξ゚听)ξ「どっちにしたってビーフジャーキーはやめておきなさい」

('A`)「っていってもなぁ……」


鞄の中を覗いてごそごそと探るが、他に目ぼしいものは見つからない。
暫くして、諦めるようにドクオはまた猫の頭を撫でていた。


( ^ω^)「…………」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:26:18.17 ID:NkzokRGR0
 
ξ゚听)ξ「珍しく厳しいわね。どうしたの?」


普段の気の抜けた内藤からは考えられない態度に、ツンデレが言い寄る。


(;^ω^)「いや、別に何でもないんだお」

ξ゚ー゚)ξ「ホントに?」

( ^ω^)「本当だお!」


そうこうしている間に、授業終了のチャイムが鳴った。
途端に自分達の席に戻っていく生徒達を見て、長岡は俯きながら言う。

  _
(;゚∀゚)「まーた授業が進まなかった……」

(*゚ー゚)「先生、実は諦めてませんか?」
  _
( ゚∀゚)「あ、バレてる」


しぃの視線が恐ろしく鋭くなるのを振り向くことなく察知、長岡は目を逸らして応戦する。
二人の間には言葉を不要とした『固有結界』が展開されていた。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:27:38.36 ID:NkzokRGR0
 
('A`)「長岡。この猫はクラスで飼えないのか?」
  _
( ゚∀゚)「無理に決まってるだろ。ここ高校だからな。小学校でも中学校でもないからな」


ξ゚听)ξ「長岡の家はダメなの?」
  _
( ゚∀゚)「ダメだよ。未亡人の大家さんに怒られちゃうもん」


( ^ω^)「長岡なら、長岡ならきっと何とかしてくれる」
  _
( ゚∀゚)「無理だよ。ここはジョルジュ相談所じゃないもん」


(*゚ー゚)「…………」
  _
(;゚∀゚)「怒らないで。次はちゃんと授業するから」


ひとしきりの返答を終えたところで、長岡が俯きながら教卓を手を置いた。
それを見た生徒たちは早々と教科書やノートを机にしまう。

  _
( ゚∀゚)「……っていうかさ」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:28:22.77 ID:RyGYR1/mO
違いのわかる>>1がいます
注文に答えてやってください

ツンデレ、デレ抜き一つください!!!!!
http://yutori.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1206016176/

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:28:50.50 ID:Ql+4HfzNO
ktkr!

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:29:38.23 ID:NkzokRGR0
 
羊、吠える。

  _
(#゚∀゚)「お前らわざとか! わざと呼び捨てしてんのか!」


向きなおす先、教室には誰もいない。
猫もいない。

  _
( ゚∀゚)「あれ?」


先ほどまで騒々しかった教室が今では静寂に包まれている。
時間割を見ると、次の授業は科学。おそらく授業が実験室で行われるのだろう。

一人納得する。

  _
( ゚∀゚)「……あぁ。そう」


長岡もまた、黒いアレを片手に教室を出た。
次は隣のクラスで授業となっている。教えている内容は同じはずなのに進行具合は全く違っていた。

彼の頬に何かが伝う。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:30:22.26 ID:NkzokRGR0
 
科学実験室。

委員長の号令がかかり、授業初めの挨拶を済ませる。
そしてセントジョーンズによる酸素とか二酸化マンガンとか、そんな感じの実験が始まった。


(’e’)「始めるよぉ」


癪に障るというか、耳に障るような声が教室中に響く。
生徒全員が嫌な顔をして黒板から顔を背けた。


(’e’)「各班にマッチを配りますよぉ」

(;^ω^)「!」

(;'A`)「!」


それを聞いた数人の男子達が勢いよく立ち上がる。
そして、配布されていくマッチ箱をいち早く手に取ると我が物顔で手元に置いた。


(*^ω^)「マッチは僕が擦るお!」

ξ;゚听)ξ「別に構わないけど」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:33:03.82 ID:NkzokRGR0
 
( ^ω^)「ツン。かけ声を頼むお」

ξ゚听)ξ「え?」

( ^ω^)「何でもいいお。カウントダウンでもレディーゴーでも」


妙に真剣な顔つきで頼んでくる内藤に、恥ずかしそうに目を逸らすツンデレ。
数秒考えた後、仕方ないと了承した。


ξ;゚听)ξ「それじゃ行くわよー。ヨーイ……ってあれ?」


自分から頼んでおきながら、彼らは合図を待たずして事を始めていた。
机の上に散らばった棒と左手に構えた小さな箱。


( ゚ω゚)「ふぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!11」

( ゚'A`゚)「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!11」


それらを勢いよく擦っていく二人。擦っては、投げ、繰り返す。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:34:12.55 ID:NkzokRGR0
 
内藤の手から離れたそれをツンデレが慌てて水の溜まったビーカーで受ける。
小さな音と立てて、マッチは鎮火した。


ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっと! 何やってんの!」

(#゚ω゚)「ふぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!11」


覚醒した内藤に、ツンデレの声は届かない。

残り数本。
もとより大した数は入っていなかったため、擦り終わるのも早かった。


(#゚ω゚)「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!11」


そして、最後の一本が擦り終わる。


(*^ω^)「……ふぅ」

(*'A`)「……たまんね」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:34:53.15 ID:NkzokRGR0
 
飛んでくる火を懸命に消化していたツンデレが、とうとうしゃがみこむ。
ステップを利かせて華麗に舞う姿は絵になっていた。


ξ; )ξ「…………」


毎度のように、ロクでもないことに付き合わされていながら
対処できない彼女こそある意味、重傷である。


(*'A`)「先生ー。俺らの班、マッチが足りないです」

(*^ω^)「こっちもだおー」

(’e’)「おかしいですねぇ」


そう言ってセントジョーンズから新品を受け取り、
何食わぬ顔で実験に取り掛かる二人。


ξ; )ξ「…………」


一方、ツンデレは呆れて言葉が出なかった。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:36:43.72 ID:NkzokRGR0
 
帰り道。

内藤とツンデレの二人は一緒に帰路についていた。
友人たちは気を利かせて、時間をずらしたり道を変えている。


(;^ω^)「…………」

ξ#゚听)ξ「…………」

(;^ω^)「……ツン?」


二人の様子から、当事者であるドクオを含めた友人達がいないのは
気を利かせた訳ではなく単にツンデレの逆鱗に触れたくないがためであることが分かる。


(;^ω^)「おっおっお。ツンさんや」


額に汗を掻きながら、ぎこちない笑みを向ける内藤。

阿修羅の降臨は免れないと察して、ならば黙っているよりも話しかけたほうが
事は穏便に済むのではないかと出来る限りのことをする。

この男、必死である。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:37:40.54 ID:NkzokRGR0
 
ξ゚听)ξ「……もういいや」

(;^ω^)「お?」


そう言われて暫く何も反応できなかった内藤だが
時間が経つにつれて、事の重大さに冷や汗が流れ肩が震える。

それは許しの言葉ではなく、見限られてしまったということである。


ξ゚听)ξ「はぁ……」

( ;ω;)「ツンごめんお! 許してお!」

ξ;゚听)ξ「……え、ちょっと何泣いてんのよ!」


恥ずかしげもなくその場で涙を流し始めるという内藤の突然の行動に、ツンデレがうろたえる。
原因は間違いなく彼にあるのだが、傍から見ればまるで逆だ。


ξ;゚听)ξ「ああもう! ちょっと走りなさい!」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:39:04.75 ID:Ql+4HfzNO
支援

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:39:26.37 ID:NkzokRGR0
 
内藤の腕を引き、およそ百メートル程を全力疾走してところで
肩で息をしたツンデレが膝に手をつき立ち止まる。一方内藤はまるで堪えていない様子だった。


ξ; )ξ「アンタ……足が早いのは知ってたけど、体力も、あるのね……」

(;^ω^)「日々の鍛錬だお」


すっかり涙も枯れて、いつもの内藤に戻っている。
そんな現金なところがまた頭にくるのだが、今は堪えることにした。


ξ゚听)ξ「さっきのは冗談よ」

( ^ω^)「お?」

ξ゚听)ξ「……けど、今のもそう、授業のこともそう。アンタは子供過ぎるのよ」


ツンデレが内藤の頭をぽんぽんと叩く。
叩くというよりも撫ぜるに近い程度の強さで、数度。

言葉とは裏腹に、それは幼い子供に対してするような動作だ。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:41:05.14 ID:NkzokRGR0
 
(;^ω^)「そ、そんなことないお。僕は演技派なんだお」


自身の頭を撫でるツンデレの腕を掴んで離し、手を離す。
一瞬驚いたような顔を見せるツンデレだったが、すぐに眉を顰めて反論する。


ξ;゚听)ξ「それならそれで釈然としないんだけど……」

(;^ω^)「ああ、いや。違うお。僕は純粋だお。だけど大人だお。ダンディズム溢れるお」

ξ;゚听)ξ「訳わかんないわ」


あたふたする内藤に溜息をつきながら、ツンデレは彼の手を引き走り出した。
それに抗うことなく内藤も走り出す。

二人の表情と速度。先ほどとは少しだけ違っていた。


ξ゚听)ξ「……ほら。行くわよ」

(;^ω^)「トゥメイトゥ」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:42:43.90 ID:NkzokRGR0
 
それが充てもなく走っているのではなく、
自身と彼女の家に向かっているのだと気付く頃には辺りもすっかり暗くなっていた。


ξ゚听)ξ「……そういえばさ」

( ^ω^)「お?」

ξ゚听)ξ「猫。どうしたかな」


今朝、一時限目の教室に侵入してきた猫のことだった。

ドクオが随分と気に入り、相手側も懐いていた様子だったが、
結局、ドクオが『男の別れ』と称して泣く泣く突き放すという形でお別れとなった。


( ^ω^)「その辺で寝てるんじゃないかお」

ξ゚听)ξ「冷たいわね」

( ^ω^)「ツンには優しいお」

ξ゚ー゚)ξ「何それ」


ツンデレが少しだけ微笑む。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:43:48.70 ID:NkzokRGR0
 
ξ゚听)ξ「別に私だって特別猫が好きってこともないけどさ」

( ^ω^)「お」

ξ゚听)ξ「どうしてそんなに嫌うの?」


そう言われて、内藤は言葉に詰まり返事に迷う。
一方でツンデレがじっと見つめており、少し唸ってようやく内藤が口を開いた。


( ^ω^)「前に雑誌を買ったお」

ξ゚听)ξ「雑誌?」

( ^ω^)「カラオケにいった日の夜だお。一緒に帰って、その途中に買ったお」


間を置いて、思い出したように声を上げてツンデレが頷く。


( ^ω^)「内容は『VIPの今後』だお」

ξ゚听)ξ「思い出したわ。やけにお堅い内容のものを読んでたのよね」

( ^ω^)「あれはたまたま目に付いただけで、普段は読まないお」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:45:02.08 ID:Ql+4HfzNO
支援

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:45:27.02 ID:NkzokRGR0
 
ξ゚听)ξ「それに、何が載ってたのよ?」

( ^ω^)「色々書いてあったお。一晩じゃ読みきれなくて三日ぐらいずっと読んでたお」

ξ゚听)ξ「……アンタにしては随分と熱心じゃない」


そんな話をしている間に、あのときの内藤が雑誌を買ったコンビニが近くに迫っていた。


( ^ω^)「ちょうどいいお」


そう言って内藤が小走りでコンビニに駆け込む。

慌ててツンデレが追いかけると、内藤は雑誌コーナーで何かを探していた。
おそらくは自身の買ったものと同じものを。


ξ゚听)ξ「あった?」

( ^ω^)「……ないみたいだお」


そう言うと、またも勝手にコンビニから出て行く内藤。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:46:35.79 ID:NkzokRGR0
 
ξ#゚听)ξ「アンタね……」

(;^ω^)「あ、ごめんお」


拳を握りしめたツンデレに、謝る内藤。


( ^ω^)「長いし上手く説明できないから貸すお」

ξ゚听)ξ「そう。ありがと」


ツンデレを残して自宅まで走り、ものの十数秒で戻ってくる内藤。
既に自宅までそれだけの距離になっていた。


ξ゚听)ξ「これね」

( ^ω^)「だお」


いつから。いつまで。

そんな明確な境はなく、彼らの日常は歪み蝕まれていた。

ゆっくりと、少しずつ、確実に。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:47:07.14 ID:NkzokRGR0
七話行きます( ^ω^)

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:47:55.19 ID:NkzokRGR0
 
 -7- 対


(;´_ゝ`)「ホントに助かりました。ありがとうございます」

(´・ω・`) 「いえいえ。構いませんよ」


五人乗りの車内に、大人が六人。

運転席にショボン。助手席にクーが座り、その後に後乗りの四人である。
非常に出狭ではあるが誰も文句一つ漏らさなかった。


从'ー'从「でも良かったよね。あんなところに私たち以外に人がいて」


それが昔からなのか、昨今のことなのか、定かではないが
少なくとも現在はダディ海は人が滅多に向かうような場所ではないため、二組が出会うことは非常に珍しかった。


('、`*川「そうそう。あんなところで何をしていたんですか?」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:48:38.87 ID:NkzokRGR0
 
(´・ω・`) 「うーん。何といったらいいものか」

川 ゚ -゚)「…………」


全てを説明するにはややこしく、興味がなければ長いだけ。
何か簡単に伝わる言葉を探していると、ふいにクーの視線を感じた。

しかし、振り向いてもクーはそっぽを向いている。


(´・ω・`)(……ん?)


気のせいだったのだろうか、と運転に集中しながら先ほどの質問の答えを模索する。
具体的なところをボカせば伝わるかもしれない、とショボンが口を開く。


(´・ω・`)「調べものをしていたんですよ」

从'ー'从「調べもの?」


鸚鵡返しで帰ってくる返事。ボカしすぎたか、とショボンは眉を顰める。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:49:35.55 ID:NkzokRGR0
 
(´・ω・`)「僕と彼女、クーさんは同じ大学に通っていまして」

川 ゚ -゚)「あ、はい。クーです。どうも」

(;´_ゝ`)「どうも……」


既に車内に乗り込んでから二十分程が経過していたのだが、
ずっとだんまりを決めていたクーがここでようやく初めて言葉を発した。

『やはり煙たがっているのだろうな』とずっと気負っていた兄者が最初に反応する。


(´・ω・`)「僕は雑弐区の歴史を調べているんです」

( ´_ゝ`)「なるほど。ダディ海に歴史が関係あるんですか?」

(´・ω・`)「あると思ってるんですけどね」


そう言ってショボンは苦笑した。
向かって左辺の冷たい空気と違い、右辺運転手との会話は和やかだった。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:50:19.39 ID:Ql+4HfzNO
支援

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:50:41.62 ID:NkzokRGR0
 
从 ゚∀从「俺は馬鹿だからよく分かんねーんだけどさ」


兄者、伊藤、渡辺の座る後部座席よりも後の荷物置き場。
そこに窓から見えないよう、隠れて座っていたハインが突然喋りだした。

彼女もまた、クー同様に車内に乗り込んでからは一度も会話に参加していなかった。


从 ゚∀从「歴史なんか調べて面白いか?」


ハインの言葉に車内が一瞬にして静まり返る。

すぐに渡辺がショボンに頭を下げて謝る。隣りでは伊藤が溜息をついている。
当の本人は『何で?』と言わんばかりの表情を浮かべていた。

そして、下唇を噛み締め必死に何かを堪えるクーには誰も気付かない。


(´・ω・`)「いえ、気にしないでください」


鏡越しに笑顔で返すショボン。言葉通り、彼は全く気にしていない様子だった。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:52:13.39 ID:NkzokRGR0
 
(´・ω・`)「そうですね。僕にとってはそれが生き甲斐です」


質問から少しの時間を置いて返される返答は、実に真面目で直向なものだった。
それを聞いて、小さく唸りながら納得したように笑うハイン。


从 ゚∀从「そっか」

(´・ω・`)「はい」


結果的に何のいざこざもなく切り抜けられたから良かったものの、
明らかに地雷を踏んでおきながら、それを平然と渡りきって何事もなかったかのように振舞うハイン。

そんな彼女を見て、渡辺は溜息をついた。


从;'ー'从(いい奴だけど、馬鹿なんだよね……)


地雷原を駆け回るハインをフォローするのが渡辺の役目だ。
その代わり、普段基本的には渡辺の我侭が通ることで二人の関係は成り立つ。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:53:20.57 ID:NkzokRGR0
 
一時間ほどが経ち、すっかり陽も沈んでようやく兄者の指定した駅に着く。

今しがた降りてきたであろう会社員でごった返しの改札口。
駅前のコンビニや信号を跨いだ大通り、細い路地裏と彼らの行き先は疎らだ。


( ´_ゝ`)「今日は本当に助かりました。ありがとうございます」

(´・ω・`)「いえいえ。構わないですよ」


その後も丁寧に会話を繋げる兄者。

つい先ほどまで伊藤と罵り合いを繰り広げていたとは思えないほどに真面目な男だった。
そんな彼の背中を眺めつつ、どうやって仲直りを切り出そうか模索する伊藤。


(´・ω・`)「……とりあえずならバッテリーに電気送るか、もしくは押しがけでもいいんですけど」

(´・ω・`)「それはあくまでその場凌ぎですから。やっぱり業者に頼んだほうがいいと思います」

( ´_ゝ`)「なるほど。明日連絡してみます」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:54:52.44 ID:NkzokRGR0
 
(´・ω・`)「それじゃあ僕もそろそろ失礼させていただきます」


そう言って駅前のロータリーに停めている車に向かうショボン。

中には、いつの間にか寝てしまったクーが一人乗っている。
『泳ぎ続けて疲れているのだろう』と彼女の身を按じたショボンの指示で、
彼女を起こさないよう五人は静かに車を降りた。


从'ー'从「ありがとうございましたー!」

('、`*川「ご迷惑をお掛けしまして……」

(´・ω・`)「いえー」


そうして彼らは別れ、それぞれ帰路につく。

ショボンが車に乗り込んでこちらの様子が見えなくなったことを確認すると、
それと同時に渡辺の回し蹴りがハインに脇腹に抉りこむ。


从#'ー'从「テメェはよォ―――ッ!」

从;゚∀从「痛ぇ! え、何。どうしたの?」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:54:59.54 ID:Ql+4HfzNO
支援

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:55:53.79 ID:Ned3ijoo0
支援

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:55:58.68 ID:NkzokRGR0
 
(´・ω・`)「……ふう。それじゃ今度はクーさんの家だな」


ようやく四人を送り出して、ショボンは一息入れる。
静かな車内でそう呟きつつエンジンを入れて、あることに気がつく。


(´・ω・`)「あ、クーさんの家知らないや」

川 ゚ -゚)「いえ。送っていただくのでしたら私が案内しますので」

(´・ω・`)「起きてたんだ」

川 ゚ -゚)「はい。……ずっと」


ショボンが車に戻ってもそのまま車窓にもたれかかって
目を瞑っていたため、てっきり彼女は寝ているものだと思っていた。


川 ゚ -゚)「最初、右です」

(´・ω・`)「分かった」


滞りなく発進するショボン車。
窓にもたれかかったまま、そのままの姿勢で指示を出すクーに素直に従う。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:57:28.96 ID:NkzokRGR0
 
川 ゚ -゚)「次。右です」

(´・ω・`)「うん」


目立った会話もなく、車は淡々と進み続ける。
やがて長い一本道に入り、ラジオや音楽も流さない車内は静寂に包まれた。

それを気にするようでもなく、ショボンは運転を続けていた。


川 ゚ -゚)「…………」

(´・ω・`)「…………」

川 ゚ -゚)「…………」


暫くしてクーの実家に到着。

最後まで見守ってから帰ろうと、長い運転の疲れからショボンが伸びをしていると、
礼を言って降りたクーが、玄関ではなく運転席のドアの前に向かっていることに気がつく。


(´・ω・`)「どうしたの?」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:59:07.57 ID:NkzokRGR0
 
急いでショボンが窓を開ける。
すると、クーがゆっくりと深呼吸をして言葉を放つ。


川 ゚ -゚)「一つ目に、私が臭いを気にしていたにも関わらず、他人を車に乗せたこと」


クーの唐突で脈絡のない切り出した方に意図を理解することが出来ず
苦笑しながらショボンが訪ねた。


(´・ω・`)「え、何が?」

川 ゚ -゚)「二つ目に、海で何をしていたかすぐに喋ってしまったこと」


ショボンが間に口を離す間もなく、間髪入れずにクーが言い続ける。
あくまで冷静に、しかし言葉には力強さが篭っていた。


川 ゚ -゚)「三つ目に、あの女の発言を許してしまったところ」


一通り言い終わったのか、深呼吸をして、もう一言。今度はトーンも大分下がっていつもの調子で言う。


川 ゚ -゚)「その三つに私は腹が立っています」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 22:59:52.63 ID:Ql+4HfzNO
支援

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 23:00:11.14 ID:NkzokRGR0
 
(;´・ω・`)「そ、そうか……」

川 ゚ -゚)「それでは、私はこれで。今日はありがとうございました」


そう言って家の中に入っていくクー。
あっけにとられてただただ後姿を眺めているショボン。


(;´・ω・`)(何か、不味いことをしたらしい……)

(;´・ω・`)(あんなクーさんは、初めてだ)


暫くは放心状態で、車の中で脱力していた。

それから十分ほどしてショボンはエンジンをかけて、車を発進させた。
家までは三十分程だ。


(;´・ω・`)(……うーん。何がいけなかったんだろう)


そのことばかりを考えながら運転を続けるショボン。
やがてあることに気がつき車を停め、そして声を上げる。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 23:01:48.88 ID:NkzokRGR0
 
(;´・ω・`)「そうか! 朝の遅刻がここにきて彼女を爆発させてしまったのか」


彼女が自分から三つ、理由を挙げているにもかかわらず
自己解釈で納得してしまうショボン。見当外れも甚だしい。


(;´・ω・`)「明日は学校か。早めにいって謝らないと」


また、ショボンは車を走らせた。





後日、荒巻の研究室に駆け込むと、いつも通り彼女の方が早く来ていた。
しまったと思いながらも先日の件について話し始めるショボン。

最終的に『昨日は遅れてごめん』という締めで頭を下げるショボンに、クーは溜息をついた。



43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 23:02:49.81 ID:NkzokRGR0
7話終わりで、今日の投下は終わりになります。
ありがとうございまっしたー!

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 23:05:16.12 ID:E6AkaCj2O


45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 23:06:06.71 ID:rR3+LQDu0
きてた

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 23:07:54.23 ID:Ned3ijoo0


47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 23:08:05.85 ID:Lun+PnB6O
乙!

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 23:08:10.00 ID:Ql+4HfzNO


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