( ^ω^)ブーン島のようです
- 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 00:02:30.15 ID:ixZt9WUW0
- 何とか29日に間に合わせようと思ったのですが、残念。
3話投下しますー。
- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 00:03:28.91 ID:ixZt9WUW0
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-3- 携
(´・ω・`)「僕はこれを『ブーン小説』と呼んでいます」
静かな部屋に、ショボンの言葉が虚しく響く。
それは、彼と荒巻との温度差を改めて感じさせるものとなっていた。
/ ,' 3「それで、どうするんだね」
(´・ω・`)「はい?」
荒巻の突然の問い掛けに聞き返すショボン。
/ ,' 3「仮に『VIP』があったとしよう。そこに『ブーン小説』があったとしよう」
/ ,' 3「それで、君はどうしたい?」
窓から前よりも少しだけ強い風が入ってくる。
一度飛ばされ、何とかクーによって集められた書類やらがまた吹き飛んだ。
散らかったこの部屋では、二度は見つけきれないだろう。
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 00:05:46.94 ID:ixZt9WUW0
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追求することに意味があって意義があるのだ、と思っていたショボンには
返す言葉を持ち合わせていなかった。
代わりに答えたのは、それまで会話に参加していなかったクーだった。
川 ゚ -゚)「どうしたい、というのは少し変ではないでしょうか」
/ ,' 3「ほう。それは何故かな?」
予想していなかったクーの反論に興味を示す荒巻。
目の前に置かれた自分で淹れた急須ではなく、
わざわざ部屋の奥に置いてあるクーの淹れた急須を取りに行く辺り、よほど美味しかったのだろう。
川 ゚ -゚)「ただの学生で、助手のお手伝いすら儘ならない私が言うのもなんですが……」
/ ,' 3「いや、現役の君の方が私よりもずっと優秀だと思うがね」
ボサボサに伸びきった髪を手で直そうとする。
荒巻なりの照れ隠しの表現だった。
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 00:06:24.93 ID:jJMDWH0u0
- 支援逃げ
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 00:08:29.47 ID:ixZt9WUW0
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川 ゚ -゚)「僭越ながら。……発見し追及する、その先が必要でしょうか?」
クーの言葉に、俯き考えていたショボンがハッと頭を上げる。
そして次の言葉を待った。
川 ゚ -゚)「何か劇的な結末や目標がなければならない、なんてことは無いと思います」
川 ゚ -゚)「私は探し求めること、そのものに生き甲斐を感じますし、この先もそうだと信じています」
/ ,' 3「そう言いきれる根拠は、あるかね?」
ショボンとクーの二人が今までで何度かされた、荒巻の中で最もクドい質問。
小学生のときに意地の悪いクラスメイトに聞かれたような言葉だった。
川 ゚ -゚)「はい」
しかしクーはしっかりと頷き、荒巻の問い掛けにさらりと答える。
川 ゚ -゚)「私が、荒巻教授の助手であるショボン君のお手伝いだからです」
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 00:12:22.31 ID:ixZt9WUW0
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/ ,' 3「そうか」
手に持っていた湯飲みを机に置き、荒巻がゆっくりと立ち上がった。
その様子をお茶を啜りながら、横目で覗くショボンにはどこかよそよそしさがある。
/ ,' 3「鍵は閉めて、いつのものところに戻しておいてくれ」
川 ゚ -゚)「はい」
/ ,' 3「それじゃ、また明日。ショボン君は遅刻しないようにね」
部屋に一つしかない古びたドアを引きながら、荒巻はそんなことを呟いた。
そう言われてショボンが思い出す。
今朝、彼は所定の時刻に、時計の針で90度分ほど遅刻をしていたのだ。
(´・ω・`)「あ、はい。スミマセン……」
ショボンが言い終える前に部屋のドアは軋みながら閉まり、
そして散らかった部屋にはショボンとクーの二人きりになった。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 00:14:36.37 ID:ixZt9WUW0
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二人の間に会話はなく、ただ流れてくる緩やかな風を感じながら
何も無い時間を過ごしていると、不意に、クーが勢いよく立ち上がった。
鞄の中に私物をしまい、支度を始める様子に、ショボンが言葉をかける。
(´・ω・`)「どうしたの?」
川 ゚ -゚)「いえ、まだ何か出来そうなので」
(´・ω・`)「はぁ……」
抽象的な返事に、クーが戸惑う。
その間にも、何を急いでいるのかと思うほどに早々と準備を済ませ部屋を出ようとするショボン。
そしておそらく最後の一つと思われるノートを丁寧に鞄にしまいこむと、鞄を片手に椅子を机にしまう。
(´・ω・`)「あ、これ」
もう一冊残っていた。
さきほど荒巻に見せた見つかったばかりのものだった。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 00:15:12.08 ID:ixZt9WUW0
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川 ゚ -゚)「いえ、それはここに置いておきます」
(´・ω・`)「そっか。……それで、どうしたの?」
ショボンは再度、同じことを聞いてみた。
違う返事をもらえそうな気がしてのことだったが、事実、クーの言葉は違っていた。
川 ゚ -゚)「さっき、荒巻教授に偉そうなことを言ってしまったので……」
(´・ω・`)「あぁ、そういえば」
川 ゚ -゚)「?」
手渡された最後の一冊を、ショボンが部屋の書類棚に丁寧にしまいながら、
クーの返事を聞き終える前にショボンが言葉を挟む。
(´・ω・`)「教授、随分と悔しそうな顔してたね」
さも愉快そうにショボンが頬を吊上げて笑っていることにクーは驚いていた。
ショボンの笑う顔を、初めて見たからだ。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 00:17:51.18 ID:ixZt9WUW0
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川 ゚ -゚)「悔しそうな顔……ですか?」
ショボンの表情に加え、その口から発せられた荒巻のこと。
特に意識して見ていた訳ではなかったが、荒巻にどこか変わった様子は無かった。
しかし腹を抱えながら、笑いを堪えるショボンの様子を見ていると、どうやら本当らしい。
川 ゚ -゚)「何故でしょう」
(;´・ω・`)「え、何が?」
川 ゚ -゚)「どうして教授は悔しそうな表情をしていたのですか?」
笑い疲れたのか、机に両手を伸ばしてだれるショボン。
普段とまるで雰囲気が違っていた。
(;´・ω・`)「何故って、君に言い負かされたからだよ」
川;゚ -゚)「言い負かされた?」
いつの間にか注ぎ足されていたお茶を口に含む。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 00:21:35.98 ID:ixZt9WUW0
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ショボンがようやく落ち着いてきたと思える状態になると
今度は楽しそうに話し始める。
(´・ω・`)「根拠に自分を持ってこられたら、言いようが無いと思うよ」
川 ゚ -゚)「はぁ」
(´・ω・`)「嬉しいやら、恥ずかしいやら、だったんじゃないかな」
特に考えて言ったわけではなかったため理解するのに苦しんだが、
自分よりも教授と知り合って長い彼が、ショボンがそういうのだから、と納得した。
(´・ω・`)「……ふぅ。それじゃ、僕も行こうかな」
川 ゚ -゚)「そうですか。なら鍵は私が」
(´・ω・`)「うん、ありがとう」
荷物をまとめ終えていたクーは、ショボンの支度を待ちつつ
お茶の残った急須をコーナーの上で引っ繰り返し、中身を捨てて水に漬ける。
あまり私物を持ち歩かないショボンはすぐに準備を終えた。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 00:22:07.65 ID:ixZt9WUW0
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(´・ω・`)「それじゃ、お疲れ様」
川 ゚ -゚)「お疲れ様です」
そう言ってゆっくりと歩き離れていくショボンの後姿を見て、
咄嗟に、そうだと思いつき彼を呼び止める。
川 ゚ -゚)「あ、ショボン君」
(´・ω・`)「何?」
川 ゚ -゚)「来週末の予定はどうなってますか?」
そう言われてショボンは携帯を取り出し、スケジュール欄を見つめる。
穴埋めされ所々にある空白。それを確認して一つ頷き答える。
(´・ω・`)「日曜だったら空いてるけど」
川 ゚ -゚)「だったら、アレ。探しに行きませんか?」
アレ、とは彼の言う『ブーン小説』の記されたノート。
ニュー速市、南部に属する位置にある沿岸。その付近で、それは見つかる。
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 00:24:16.29 ID:ixZt9WUW0
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(´・ω・`)「いいね。行こうか」
川 ゚ -゚)「午前からじゃ起きれないでしょうし、午後からでいいですよね」
(´・ω・`)「耳が痛いね」
しかし今朝のことがあるため、ショボンには何も言えない。
実際、当日も彼が目を覚ましたとき、時計の針は午前と午後の間を跨ごうとしていた。
(´・ω・`)「けど見つかったばかりなのに、そんなすぐにまた見つかるかな」
鍵を閉めるクーの後でそんなことを呟いていると、
ちゃんと閉まっているかどうか、ドアノブを二度三度回して確認していたクーが振り返り、こう言った。
川 ゚ -゚)「それは経過論ですよ」
(´・ω・`)「……耳が痛いね」
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 00:27:03.56 ID:ixZt9WUW0
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彼女が風呂から上がり、のぼせ気味な頭をフラフラさせながら
ベッドに転がると携帯のサブ画面が点灯していた。
从*゚∀从「ん、渡辺からメール入ってんじゃん」
从 ゚∀从「……この前言ってた逆ナンのことか。アイツも本当に好きだね」
絵文字や、絵文字に記号を足して可愛らしく、華々しくデコレートされたいかにも女子らしい渡辺からのメール。
それを眺めていた彼女の動きが止まる。
そして淑女、ハインリッヒ高岡は臨戦態勢に入った。
从 ゚∀从「いざ」
高速で携帯の番号タブを押し続けるハインの親指。
その様は誰の目にも追いつけないほどに素早く、的確に獲物を狩っていく。本人ですら追いつけないほどに。
デタラメな文字列が三行分ほど溜まったところで、ハインは携帯を投げ捨てた。
从;゚∀从「……メールなんか打てねぇ」
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 00:27:41.92 ID:ixZt9WUW0
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部屋の隅に転がっていった、最新モデルから随分と取り残された
シンプルなデザインの携帯を手に取り電話帳を開くと渡辺の欄を探す。
从 ゚∀从「携帯電話だもんな。これ、電話だもんな」
そして渡辺に向けて、電話を掛ける。
すると2秒ほどで相手に繋がった。実に素早い応答だ。
从'ー'从「あーもう! やっぱり電話で来たよこの人!」
テンション高く、大そうご立腹な様子で受ける渡辺。
ハインに送ったメールの返事は、電話で返ってくることを知っていたため構えていたようだ。
从 ゚∀从「だってメールってよく分からないんだもん。電話のほうが早いしさぁ……」
从'ー'从「私がいつ掛けられても電話に出られるとは限らないでしょ!」
从 ゚∀从「でも大体すぐに出ますよね」
从'ー'从「暇ですから」
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 00:29:50.61 ID:ixZt9WUW0
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从 ゚∀从「彼氏作ればいいのに」
从'ー'从「実際居ると面倒くさいからいらなーい」
从 ゚∀从「あぁ、そう」
ハインは、これまで何かと理由をつけては渡辺に振られてきた男達に同情した。
彼らに原因があったのではなく、単に彼女の気まぐれに振り回されていただけだ。
それは何となく自分も当てはまるようで、考えるのを止めた。
从 ゚∀从「それで?」
从'ー'从「へ?」
从 ゚∀从「メールしてきたってことは用があったんだろ?」
从'ー'从「……あのさぁ」
渡辺の声色が少しずつ変わっていく。それも、悪い方へ。
从;'ー'从「メール、読んだよね? 読んだから電話してきたんだよね?」
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 00:30:33.88 ID:ixZt9WUW0
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从 ゚∀从「見たよ。流しで。けど大体の意味合いは理解したから」
読んだのではなく見た。
しかも流しで。
渡辺、爆発。
从#'ー'从「ちょっと! 何で読まないのよ、せっかく送ったのに!」
しかし、ハインにも言い分がある。
从;゚∀从「えー。だって携帯の文字って読みにくいんだもん。活字なら読めるけど」
だがそれでは渡辺も納得しない。
从#'ー'从「読みやすくデコメにしたじゃん!」
从;゚∀从「ふん、あの程度で俺が読むとでも?」
从#'ー'从「逆切れしないでよ!」
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 00:31:05.47 ID:ixZt9WUW0
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およそ10分。怒涛の口喧嘩を終えると、またいつの間にか普段の二人の会話に戻っていた。
その怒声を聞きつけ慌ててリビングから二回まで上り
一部始終をドアの隙間から覗き見ていた渡辺の弟には、何のことかサッパリ分からなかった。
从'ー'从「そんでね、伊藤とその彼氏も行きたいとか言っててさ」
从 ゚∀从「それ邪魔じゃないのか。俺達」
从'ー'从「伊藤の彼氏が言ってるんだって。車だから、どうせなら一緒に行こうって」
从 ゚∀从「へぇ」
いつの間にか用意していたジュースの入ったコップを片手に、渡辺の話に耳を傾ける。
从'ー'从「男一人に女三人」
从 ゚∀从「これはいかんですね」
そう言うと、コップに残ったジュースを一気に飲み干す。
空になったコップを机の上に置くと携帯を耳に当てたままベッドの上に横になる。
从 ゚∀从「まぁ、いいんじゃないか?」
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 00:31:37.44 ID:ixZt9WUW0
-
从'ー'从「さっすが! ハインは話が分かる!」
从;゚∀从「ですよねー」
話が分かっても、分からなくても。結果的にはどうせ一緒に行くことになるのだ。
要は自分の意思で行くかどうかの違い。事実、既に渡辺はその持ちかけを了承していた。
そんなやりとりにどこかデジャヴを感じながら、目を擦りハインは言った。
从 ゚∀从「それじゃ、眠いから寝るわ」
从'ー'从「うん。分かった」
ハインの眠そうな声が電話越しに伝わる。
そう言われた渡辺が部屋の時計を見ると、随分と早い時間だった。
从;'ー'从「まだ九時だよ」
从 ゚∀从「いつもこんなもんだよ。早寝遅起」
从;'ー'从「素敵な生活送ってるね」
从 ゚∀从「だろ」
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 00:34:00.63 ID:ixZt9WUW0
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親の仕送りで成り立った一人暮らし。
代わりに身の回りのこと全てを自分一人でやらなくてはならなかったが、
これくらい我慢する程のことでもない、と充実した生活を送っていた。
(´・ω・`)「いただきます」
電子レンジ暖めたコンビニ弁当を食べていると、携帯が鳴り始める。
機械的な電子音が鞄の中で響く。
(´・ω・`)「ん。メールか」
相手は、クー。
(´・ω・`)「来週のことか」
(´・ω・`)「…………」
(´・ω・`)「……メールなんて打てないな」
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 00:35:00.64 ID:ixZt9WUW0
- 三話終わりで投下終わりです。
http://www.geocities.jp/local_boon/boon/land/top.html
まとめ張り忘れてましたー。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 00:45:56.20 ID:F8GDf4b/0
- 乙。
なんか>>7が変な感じがするけど