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- 3 :閉鎖まであと 10日と 2時間:2007/01/13(土) 18:29:37.06 ID:66jl9Qcj0
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意識が戻ってくるなんてことが起こりうるなんて考えもしなかった。
蛍光灯の明かりがぼくの目を刺激している。
ここは天国なのだろうか。それとも地獄なのだろうか。
「う……ん……?」
次第に頭がはっきりしてきて、ぼくは大きな広間の中にいることがわかった。
しかし、広間の中にほかに数人いるのに気づくのはもう少し時間が必要だった。
なんだ。これは。ぼくは死んだんじゃなかったのか。
頭が混乱する。
『みなさん、お目覚めかね?』
どこともなく、声が響いた。
設置してあったスピーカーから音が流れ出しているらしい。
('A`)「なんだ、これは。ふざけてるのか」
広間の中にいた醜い小男が叫んだ。出した声はある業種特有の凄みがあったが、声の主はすこしも動じなかった。
『君たちにはゲームをしてもらう』
声は小男を無視するように続けた。
- 4 :閉鎖まであと 10日と 2時間:2007/01/13(土) 18:29:57.25 ID:66jl9Qcj0
- 『君たちは死刑を執行された囚人であり、戸籍上死亡した人間だ。よって君たちには憲法が保障する基本的人権は適応されない』
川 ゚ -゚)「なるほど。死刑囚だから何をしてもかまわない、と」
ぼくのそばにいた長身の女性が立ちあがって、いった。
年は20前後だろうか、端正な顔だちをしている。
こんなきれいな女性が死刑囚なんて、にわかには信じられなかった。
『また、このゲームを拒否することは許されていない』
(´・ω・`)「クックック……こいつは面白い」
部屋の片隅で、うずくまっていたおとこが、ぶきみに笑った。
どこかで見たことがある顔だったが、どうも思い出せない。
死刑になるくらいだから、テレビの報道でうつっていたのだろう。
『さてゲームのルールを説明しよう。君たちのズボンのポケットに小型の機械が入ってるだろう?』
声はさらに続ける。
ぼくはすぐ自分のポケットを確認した。
声のいうとおり、確かに、はいっていた。
携帯電話のような大きさで、黒と白の二つのボタンがあり、液晶画面に大きく3の文字が表示されている。
- 5 :閉鎖まであと 10日と 2時間:2007/01/13(土) 18:30:11.55 ID:66jl9Qcj0
- 『その3という数値は君たちのポイントだ。0になったらゲームオーバーを意味する』
ゲームオーバーが何を意味するかはいうまでもない、と、いった感じであった。
『君たちはその数値と機械をつかって心理戦を行ってもらう』
心理戦、ということばが気にかかった。
お世辞にも頭がいいといえないぼくに、勝ち目はあるのか。
( ゚∀゚)「難しいことはよくわかんねぇんだがな。中卒だからな」
今まで沈黙を守っていたおとこが、発言した。
自分以外にも、頭のわるいやつがいることに、少し安堵した。
『心配するな長岡、ルールは簡単だ。君たちはスイッチのどちらかをおすだけだ。
5人全員がスイッチをおした時点で1ターン終了。全員の押した結果でポイントが変動する』
ターン制なんて、カードゲームのようだと思った。
命がかかっているのに馬鹿げている。
もう死んだ人間だから、その命をどう使おうが自由ってことか。
- 6 :閉鎖まであと 10日と 2時間:2007/01/13(土) 18:30:45.28 ID:66jl9Qcj0
- 『時間制限はない。また腹がへったりトイレに行きたくなったら自由にいってよい。
場所は広間の扉をでたらすぐわかるだろう』
『禁止するのは直接的な暴力行為だ。もし暴力をはたらいた場合、行為者のポイントが0になる』
『また、他人のボタンをおす行為を妨害しても同様だ。
人のボタンを勝手におすなどの、意図的な悪意はこの妨害にあたる』
『暴力以外の話しあいならいくらでもしてもらってかまわない。むしろ推奨している』
『また、これ以外の行為についてはそのつど検討させてもらう』
( ゚∀゚)「あー、あまりに長くて、よくわかんねぇが、とにかくボタンをおせばいいんだな?」
『ああ』
と声は答える。
川 ゚ -゚)「質問だ。レイプは直接的な暴力行為に入るんだろうな?」
レイプ。そんなこと起こる可能性を考えてはいなかった。
しかし、ここにいるのは死刑囚だ。あり得る。
5人の中で唯一の女だから、気にしているのだろうが、ぼくだって掘られる可能性もある。
それは御免こうむりたい。
- 7 :閉鎖まであと 10日と 2時間:2007/01/13(土) 18:33:38.84 ID:66jl9Qcj0
- 『もちろんだ。だが和姦とみなせるものにかんしてはその限りでない。須名、君はおとこを操ることにかけては一流だからな』
川 ゚ -゚)「フン、それで十分だ」
男を操る、という言葉が気にかかった。
たしかに彼女からは妖艶さが感じられる。
『さて、ここからポイントの変動に関するルールを説明しよう。規則は簡単だ』
『基本はおしたボタンの種類の、少数派が+1、多数派が−1となる。
例えば3人が黒を、2人が白をおしたら、白をおした2人が+1、黒をおした3人が−1、といった感じだ』
『また特殊な場合として、全員が黒をおしたら全員−2、全員が白をおしたら全員が+1だ。
これを何ターンかやってもらう。
最終的に1人になるか、終了時にポイントが1以上あるものがゲームクリアというわけだ』
('A`)「つまり負け抜け制だな」
負けたものは、死ぬ、ということは聞くまでもなかった。
一度死んだはずとはいえ、死は、怖かった。
絞首台にたった時のことは思いだしたくもない。
- 8 :閉鎖まであと 10日と 2時間:2007/01/13(土) 18:35:22.79 ID:66jl9Qcj0
- 『そうだ。ポイントが0になったものからゲームを抜けてもらう。0になったものが出たらこちらから迎えをよこそう』
( ^ω^)「じ、じゃあ、もし引き分けになったらどうするお」
ぼくは恐怖から逃れようと、苦しまぎれの質問をした。
引き分けを続ければ生き延びれるかもしれない、なんて、希望的な観測は、すぐに打ち砕かれた。
『説明し忘れるところだったよ。感謝する、内藤。引き分けの場合は黒の方が有利だ。黒をおしたものが+1、白をおしたものが−1となる』
(´・ω・`)「……囚人のジレンマか。こんな悪趣味なこと考えたのはどこの教授さんですかね」
男は、聞きなれない単語を発した。囚人のジレンマ。そんな言葉きいたこともない。
言動からして、彼は相当、頭が良いのだろう。知能犯といったところか。
『ショボン、お前は評判どおり頭がキレるな。そう、変則的な囚人のジレンマともいえるだろう』
( ゚∀゚)「むずかしいことばっか言っててわからねぇよ。ぶっちゃけ全員が白をおし続けてれば全員助かるんだろ?」
『そうだ』
( ゚∀゚)「なら簡単じゃねぇか。白をおし続けりゃいいんだ」
そんなうまくいくはずがない。平穏な人間ならともかく、みんな死刑囚なんだ。
みな1人だけでも生き残ろうとするだろう。
一筋縄ではいかない。
- 13 :閉鎖まであと 10日と 2時間:2007/01/13(土) 18:38:33.29 ID:66jl9Qcj0
- 川 ゚ -゚)「もし絶滅した場合はどうなるんだ」
『絶滅は、絶滅だ。つまり全員がゲームオーバーってことになる』
絶滅、という言葉に底知れない恐怖を覚えた。
そうだ。これは、生き残りをかけた、ゲームなんだ。
('A`)「最短2ターンでみんなお陀仏ってことかい。いったい何ターンで終わるんだ」
『それは告知できないな、ドクオ』
少なくとも、2ターン未満ってことはないだろう、とぼくは思った。
それじゃあ意味がない。
( ゚∀゚)「ところであんたが長々と喋るから、ルール忘れちまった」
『心配するな。ルールはいつでも読めるようにしておく。また細かいことも書いてあるのでよく読んだほうがいい』
ルールを覚え切れていないぼくは、すこしほっとした。
まもなくして、広間の扉があいた。黒服で顔をかくしたおとこたちがホワイトボードを運んでくる。
おとこたちは銃で武装している。ぼくらを警戒してのことだろう。
そして、おとこたちが広間からでていき、広間にはぼくたち5人とホワイトボードが残された。
- 15 :閉鎖まであと 10日と 2時間:2007/01/13(土) 18:38:59.69 ID:66jl9Qcj0
- 〜ルール〜
手持ちの機械でボタンをおす。
全員がボタンをおした時点で1ターンとする。
ボタンの種類は2種類。
白(協調)と黒(非協調)である。
・一般的な場合
おした色の合計が少ないほうは1ポイントプラス
おした色の合計が多いほうは1ポイントマイナス
・全員が同じ色をおした場合
白(協調)であれば全員が1ポイントプラス
黒(非協調)であれば全員が2ポイントマイナス
・おした色の合計が同じ場合
白(協調)が1ポイントマイナス
黒(非協調)が1ポイントプラス
ターンが終わるごとに、ターン終了のアナウンスが入る
自分のポイントは自分の機械に表示される
最初の持ちポイントは3
- 17 :閉鎖まであと 10日と 2時間:2007/01/13(土) 18:39:39.83 ID:66jl9Qcj0
- ポイントが0になった時点で負け
退場となる
直接的な暴力行為、他人の妨害は認めない
もし行った場合、行為者はゲームオーバーとなる
ただし、意図的でない場合などその他の行為はこちらで判断する
特に、正当防衛とみなされる場合は、ペナルティは課せられない
ゲームが終了するときはターン終了のアナウンス時に知らせる
何ターンで終了するかを事前に伝えることはない
またゲームは、1人になった時点で強制的に終了する。
終了時にポイントが1以上持っているものがゲームクリアとなる。
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