- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/02(月) 19:13:02.06 ID:w+4jMBFTO
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第11Rパドック - 『衝撃』
カコン、と調教用に被っていたメットが、コンクリと接吻し音をたてた。
あまりにも突然の出来事に、目をパチクリさせて立ち尽くす事しか出来ない。
( ,_ノ` )『聞こえなかったか?ならもう一度言うが……
フルシーズンからは降りてもらう、以上だ』
渋澤が放った言葉は深く心を抉った、間違った騎乗はしていない、結果もしっかり出せている。
(;'A`)『ハハ…ハ……冗談ですよね、先生………』
では何故、何故………
自分がフルシーズンから降ろされるのだろうか、胸の中には理由を聞きたい気持ちがある反面、
聞かなくとも理解している自分がいた。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/02(月) 19:15:24.07 ID:w+4jMBFTO
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( ,_ノ` )『馬主さんも渋々了解してくれたよ
「指示の無視を繰り返す彼は、信頼出来ません」
って言ったらね』
(;'A`)『そ、そんな……あの馬を誰よりも知ってるのは…自分です。
自分でなくては力をフルに発揮出来ませんよ…』
渋澤の言葉は、結果主義の男から発せられるとは信じ難い言葉だった。
結果を出せば文句は言わない人間が、結果を出した自分を非難している。
どう考えても、単に自分のことを嫌っての言葉だろう。
( ,_ノ` )『いいや、違うね。
残念だが……君は失格だよ』
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/02(月) 19:18:05.58 ID:w+4jMBFTO
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( A )『そ…んな……』
( ,_ノ` )『本当に残念だが事実だ、今回は運が無かったんだよ。
ハハハ、もう君には用は無いからね、行った行った…ッ!』
自分の夢で、希望にもなっていた愛馬が…自分の手元を離れる。
しばらくは事実を受け止められずにいた。
しかし、これが現実だと自分に理解させたのは、渋澤に押された身体が地に手を付いた時だった。
( A )『な…なんで…』
一瞬で暗い闇に包まれ、目の前が真っ暗になっても悪魔は言葉を紡ぐ。
( ,_ノ` )『もうさ、みっともないから…早く消えてくんないかなぁ…ッ!』
渋澤の足が腹に食い込み、2、3回ほど地を転がる。
熱くなる目頭を押さえながら、歯を喰い縛る。
いくら悔しさを口にしようと、鉄の香りが、不快な砂利の感触が、自らを取り巻く感情が、消えることはなかった……
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- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/02(月) 19:21:05.68 ID:w+4jMBFTO
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2032年・秋 - 社団F
(;・∀・)『………』
(;,゚Д゚)『………』
_
( -∀-)『………』
( ゚ω゚)『………』
日本を代表する調教師でもある義児と津出は、聞かされた壮大なプランに唖然としている。
騎手であるジョルジュは、目を閉じ瞑想し。
ブーンは驚愕の二文字を表情に貼り付け、ただ愕然としていた。
(´・ω・`)『まぁ…僕も最初は驚いたさ。
でも、当然なのかも知れないからね、ベストは尽くしたいよ』
一人、場違いな緒本牧場のショボンだけは至極落ち着いていた。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/02(月) 19:24:28.87 ID:w+4jMBFTO
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それも無理は無いだろう、日本競馬を牛耳っていると言っても過言ではないホースマンの中のホースマン。
(`・ω・´)
社団Fもとい、社団グループ代表。
吉田社京、その人が突拍子もない事を言うのだから。
余談ではあるが、ショボンとシャキンは歳も近く、幼少時代から弱小牧場と大牧場との垣根を越えた付き合いをしている。
シャキンはショボンを弟のように思い、ショボンはシャキンを兄のように慕っていたのだ。
(`・ω・´)『なんだ、みんな唖然として…素晴らしい話ではないか、喜ばしいことだよ』
(;・∀・)『あ…えっと……』
(;,゚Д゚)『ゴゴ、ゴルァ…』
_
( ゚∀゚)『まぁ……』
( ゚ω゚)『…………』
日本一のホースマンを前にして緊張するのは無理もないが、彼等がこうも取り乱すのには訳がある。
(`・ω・´)『なら、もう一度言おう』
コホン、と咳払いをしシャキンは言う。
(`・ω・´)『先日、ダーレーグループ代表のモハメッド殿下から一通の手紙が届いた、その内容はこうだ…』
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/02(月) 19:27:10.73 ID:w+4jMBFTO
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『米・仏・英・伊・独・日・豪・UAE。
以上の国は、どの国も世界に誇る名馬を輩出した競馬先進国だ。
綺羅星の如く輝きを放つ名馬が数多く輩出された。
しかしその中で、未だかつて確固たる最強の地位を築いた馬は、国はない。
そこで私は考えついた、最強が決まらないのであれば…決めればいいと。
よって私はWCRCなるものを開催する。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/02(月) 19:31:40.68 ID:w+4jMBFTO
- Round・1 2033年3月
ドバイワールドカップ
(4歳上ダート2000m)
ドバイシーマクラシック
(4歳上芝2400m)
ドバイデューティフリー
(4歳上芝1777m)
ドバイゴールデンシャヒーン
(4歳上ダート1200m)
2033年4月
ドバイマイルカップ
(4歳上ダート1600m)
ドバイスプリントカップ
(4歳上芝1200m)
ドバイ2000ギニー
(3歳芝1600m)
ドバイフォーチュン
(3歳ダート1800m)
2033年5月
ミドルマスターズ
(4歳上芝2000m)
クラシックチャンプ
(4歳上ダート2400m)
UAEダートダービー
(3歳ダート2000m)
UAEダービー
(3歳芝2400m)
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/02(月) 19:33:07.41 ID:w+4jMBFTO
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Round・2
2033年7月
ドバイワールドクラシック
(3歳上ダート2000m)
ドバイワールドターフ
(3歳上芝2000m)
ドバイワールドスプリント
(3歳上ダート1400m)
ドバイワールドマイル
(3歳上芝1600m)
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/02(月) 19:36:06.99 ID:w+4jMBFTO
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Final Round
2033年8月
チャンプオブクラシック
(3歳上芝・ダート2400m)
チャンプオブダート
(3歳上芝・ダート2000m)
チャンプオブスプリンター
(3歳上芝・ダート1200m)
チャンプオブマイラー
(3歳上芝・ダート1600m)
チャンプオプステイヤー
(3歳上芝・ダート4000m)
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/02(月) 19:39:04.56 ID:w+4jMBFTO
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Round・1では各R2 頭の出走を認め、着順に応じたポイント制で上位5ヶ国までにRound・2出場権を与える。
Round・2では各R3頭の出走を認め、着順に応じたポイント制で上位3ヶ国までにFinal Round出場権を与える。
Final Roundでは各R3頭を出走させること、優勝馬を現役最強と、Round・1からの獲得ポイントトップを最優秀国とする』
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/02(月) 19:42:07.75 ID:w+4jMBFTO
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手紙の内容を一字一句間違わずに読み上げたところで、シャキンは大きく溜め息をつく。
(`・ω・´)『ふぅ…と言うことなんだ、もちろん私は参加するつもりだ、代表馬は後々決めるとして、派遣メンバーは早めに決めようと思ってな……』
( ・∀・)『それで…僕達が呼ばれたと……』
津出が全員の気持ちを代弁し、疲れたと言いたげなシャキンに答えを求める。
案外シャキンは、適当な性格なのかもしれない。
(`・ω・´)『その通りだ、流石だね津出君』
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/02(月) 19:45:18.34 ID:w+4jMBFTO
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そして、とシャキンは言葉を続け………
(*`・ω・´*)『実はもう、メンバー決めちゃった』
(;・∀・)(;,゚Д゚)『ハァァァッ!?』(゚∀゚;)(゚ω゚;)
と、幼い少女よろしく、言った。
『エヘヘ…』と照れるシャキンを片目にショボンが口を開く。
(´・ω・`)『調教師団は津出君、義児君』
(´・ω・`)『騎手団は内藤君、長岡君、鬱田君、茂名君、津出さんにお願いするよ』
それを聞いて目を丸くする一同に、シャキンは『エヘヘ』と照れた。
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/02(月) 19:48:19.47 ID:w+4jMBFTO
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(,,゚Д゚)『それはもう、決定事項なのか?』
(´・ω・`)『もちろん、君達が日本の代表だ。
名実共にその評価は妥当だよ』
( ^ω^)『そうですかお…』
名実共に妥当と言うが、果たしてそうだろうか……
自分はまだまだ未熟だと思っているし、何より長期戦線離脱していたのだ。
(´・ω・`)『日本の夢をかけて……頑張ろう』
頬を赤らめるシャキンには目もくれず、ショボンは力強く言った。
皆は黙ってそれに頷いたが、ブーンの顔は曇ったままだった。
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- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/02(月) 19:51:08.33 ID:w+4jMBFTO
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京都競馬場 - 菊花賞当日 メイクデビュー
渾身の右ムチが唸り、内藤が乗る馬は後続をグングンと突き放す。
圧倒的とも言えるレースだが、歓声は息を飲み競馬場は不気味な程に静かだった。
(;゚ω゚)「お……」
後続を千切っているにも関わらず、ブーンは顔面を真っ白にして馬を追い続けている。
1800mを走ってきて、残り400m程度で10馬身近く突き放せば余裕も生まれるのだが、今回ばかしは違う。
調教の手応えも、レースでの手応えもかなりの素質を感じさせるものがあった。
それでいて何故…
何故―――――――
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/02(月) 19:55:08.10 ID:w+4jMBFTO
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―――――前を走る馬との差が縮まらないのだ!
(実 ・ o ・ )「…っあ……………」
実況は声を絞り出すのがやっとだった、長らく競馬専門で実況をしていた、幾多のレースを見てきた。
しかし、見たこともない衝撃に声を失った。
観衆も同じだった。
(;゚ω゚)「ありえ…ねぇお……」
ブーンもそう呟くのがやっとだった。
遥か彼方で突き上げられた拳は、悪夢のように思えた。
記録されたその差は、30馬身。
最強世代に、もう一つの綺羅星が生まれた。
その名を――――――――マテリアル
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