- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/13(火) 17:27:28.04 ID:yq5SqlGBO
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第10R - 「展望」
ペースは至って平均的であった、元来ペース展開は不問な馬であるが、出来れば速い方が良い。
内藤が冷静になれていたならば、今頃は徐々に進出を始めるタイミングであるが、今回ばかしは少し違った。
( ゚ω゚)「………」
真横を走るオースミラスカルを、外へ出さないようにとブロックしながら走っているのだ。
オースミラスカルは、中団からだんだんと位置取りを上げて行き、早め先頭から押しきるレースが得意だ。
今回はそれをブロックしつつ、直線勝負へと持ち込むのだろう。
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/13(火) 17:30:04.45 ID:yq5SqlGBO
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その作戦だけは完璧に遂行出来そうだが、不安なことは勝ち負けだ。
馬群のペース自体は、淀みのない流れであるが、全体のペースで見れば超ハイペースなのである。
何故なら、先頭を走るフルシーズンが逃亡劇を展開しているからだ、既に後続との差は10馬身程度にも開こうとしている。
粘りきるとは思わないが、今までのレースぶりを見ると粘る可能性もある。
勝ちを狙うのであれば、それは危険な状況である。
(,,゚Д゚)「おいおい……、差しきれんのか?
頼むぜ、内藤」
菊へのステップと言えど、勝利はやはり欲しい。
そのためか、思わず不安を漏らしていた。
(#,_ノ` )「………」
そして、恐い顔をした渋澤を横目で捉え、今度は溜め息を漏らした。
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/13(火) 17:33:04.89 ID:yq5SqlGBO
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完璧なまでに愛馬をブロックし、自分の馬に競馬をさせようとしない内藤を見る。
あまりにも見事な騎乗ぶりに、やはり彼は巧いなと思うと同時に、
拳を握りしめて、怒り顕に貧乏ゆすりをする自分に気付いた。
(#,_ノ` )oO(ガラじゃねぇな………)
クールでダンディが持ち味な自分が、貧乏ゆすりをしている事実に悪態をつく。
クールな自分が感情を顕にしてしまう程、内藤のブロックは完璧であった。
(#,_ノ` )oO(煙草吸いてぇーっ!!)
勝ちには拘る理由、それはオースミラスカルで最優秀長距離馬を狙っているからだ。
すると当然、GUの阪神MRは落とせないのだ。
イライラが半ば頂点へと達し、爆発寸前なところではあるが、レースは未だ半分ほどである。
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/13(火) 17:36:24.31 ID:yq5SqlGBO
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そしてその、イライラが頂点へと達した理由はもう一つある。
それこそがもう一頭の管理馬、フルシーズンである。
(#,_ノ` )oO(鬱田ァァッ!作戦も守れねぇのか……ゴミ屑がッッ!!)
長距離戦にしてはかなり速いペースで逃げるフルシーズン鬱田には、確かに中団待機から臨機応変に動けと指示をした。
もちろん、出来るだけオースミラスカルをサポートする様に指示をした訳だ。
が、この様だ。
鬱田は自分の指示を完全に無視し、勝てるとも限らないペースで逃げ、作戦自体もぶち壊してしまっている。
淀みない流れからのロングスパートで真価を発揮するラスカルからすれば、
あまりにも離れ過ぎているフルシーズンを捉えるのは賭けにもなる。
(#,_ノ` )oO(アァァァッ!!)
様々なことが悪く傾いている、どれも鬱田のせいだ。
馬主からの指示で鬱田を乗せているが、それも限界であった。
(#,_ノ` )oO(絶対……降ろしてやっかんな………)
静かに決めた。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/13(火) 17:39:12.63 ID:yq5SqlGBO
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渋澤が冷たい決意をしたことも露知らず、ドクオはマイペースなレースを続けていた。
長く乗り続けた愛馬の、その無限の可能性を感じながらの騎乗だった。
馬に任せ逃げており、どの程度のペースかは掴めないがとても速いのだろうと感じる。
それでいて、レースの半分を過ぎても馬の息はまだ上がっていない。
後続との差は凡そ10馬身、レースが半分過ぎてこの差だ、かなり飛ばしているのだろう。
('A`)oO(まっ…お前を信じてるがな。
間違いねぇ、お前は………)
今この瞬間にも、互いの仲が引き裂かれるとは知らず、ドクオは愛馬へと更に想いを募らせる。
今までに数々の馬に転々と乗り続けたドクオだが、初めて主戦として騎乗し続ける愛馬は…
ドクオにとって理想の――――
最高の相棒であった。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/13(火) 17:42:13.61 ID:yq5SqlGBO
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その頃ブーンは―――
( ゚ω゚)「ヒャハハッ」
――――――壊れていた。
愛馬ホライゾンへの想いが強すぎるがため―――
元より誰よりも馬が好きで、愛情を持って接しているブーンが故に……
愛馬を駄馬と言い捨てた渋澤を、管理馬にさえ愛情を持たない渋澤を、ブーンは赦せないのだ。
ブーンの心は完全に、勝ち負けを意識していなかった。
先頭を走るフルシーズンを追いかけなくてはいけない状況でも、
標準は完全に真横を走るオースミラスカルへと向けているのだから。
( ゚ω゚)「フヒ、フフ、フヒヒッ」
完璧なブロックをし続け、既に負かした気でいる…
そこいるのは、馬を愛する狂人であった。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/13(火) 17:45:07.89 ID:yq5SqlGBO
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テレビの中継を見ながら、愛馬の姿をじっくりと追う。
残り1000m、それでも決して焦ることはなかった。
从 ゚∀从「………」
先頭を走るフルシーズンと愛馬ホライゾンとの差は、あまりにも離れているが、不安はない。
馬主業を始めてから幾つかは重賞を制した、だからこそGTの称号が欲しい。
そしてその、GTの称号に手が届く馬がホライゾンだ。
調教師も、騎手も、生産者も…、そして自分も大きな期待を抱く愛馬だ。
きっと差しきってくれる、一番強いのは―――
―――私の馬だ。
そう信じる気持ちは強い。
だからこそか……
从 ゚∀从「……頑張れ」
テレビ越しにレースを見守り、届かない応援しか出来ない自分が、不甲斐なかった。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/13(火) 17:48:30.23 ID:yq5SqlGBO
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中団からややポジションを落とし、内のオースミラスカルをブロックすることに専念していたブーンは、残り600mハロン棒を過ぎたところで
ふと我に返った。
自然と馬群がペースアップしており、
前のフルシーズンとの差はジワジワと詰まっているが、それでも差は大きい。
( ^ω^)oO(エキサイティングしてもうたwwww
そろそろ…進出するかお)
隣のオースミラスカルを意識するあまり、レースを見失っていた。
騎手失格の烙印をおされても仕方ないレースぶりだった、その点は大きく反省し、次を見据える。
もうラスカルのレースは終わらせた、後はホライゾンの力を発揮し勝利をもぎ取るだけだ。
( ^ω^)「ちょっとだけ…
ポジション上げるかお!」
鞭を見せる、残り600m。
が、爆発はまだ…先だ。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/13(火) 17:51:27.39 ID:yq5SqlGBO
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残り600mを過ぎたとこか、3000mを馬任せに走ったことで勢いは徐々に衰えていた。
それでも後少しは持つ、いや…持たせる。
それが主戦として、愛馬に出来ることだとドクオは思う。
生粋のステイヤーとは言い難い血統ならば、よく持ったと思う。
菊へのメドは十分。
後はこの、阪神MRの称号を与えるだけだ。
('A`)「さて…もう一踏ん張りだ。
行くぜ、相棒!」
愛馬に感じる可能性が己に告げた、まだやれると。
ならば自分は更なる課題を与えたい。
焦りでも、確かな勝算でもない。
が、ドクオは賭ける
その可能性に。
(#'A`)「行くぜッ!!」
そして、鞭を振るう。
それは明らかな早仕掛け、主戦騎手として、愛馬にしてやれることを悟ったが故の…
愛のムチである。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/13(火) 17:54:11.90 ID:yq5SqlGBO
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(,,゚Д゚)「よおしッ!」
三角から徐々に捲り、直線で鞭が入ると
前を走るフルシーズンを猛追する愛馬の姿を見て思わず叫ぶ。
(#,_ノ` )「ラスカァァァルッッ!!」
隣の渋澤も、自分のレースがさせてもらえずに力を発揮出来ず、未だ中団から抜け出すのに苦労している愛馬に激を飛ばした。
一気に猛追するホライゾンだが、前でフルシーズンも必死に粘っていた。
最終コーナーで鞭が入り、
誰の目から見ても直線に向いた時には、足が鈍っていたにも関わらずだ。
フルシーズンが坂を登り始め更に脚色が鈍る。
それを尻目にホライゾンは更に差を縮める。
(,,゚Д゚)「来いやァァッ!!」
思わず拳を作り、叫びをあげる。
差しきれる、ギコはそう思った。
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/13(火) 17:57:05.87 ID:yq5SqlGBO
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直線ギリギリまで我慢し、中団で溜めに溜めた末脚。
その切れ味は凄まじいものであった。
切れるタイプではないものの、これ程の切れ味を発揮出来るのは確かな能力故。
かつて自分が見込んだ能力の片鱗、それも確かであった。
( ゚ω゚)「ブチ抜けぇぇぇッッ!!」
振るいに振るう鞭、それに呼応する様に前のフルシーズンとの差をグングン縮めて行く。
だが、差しきれるかは……微妙だった。
差は縮めているものの、先に言った通り、切れるタイプではないのだ。
前に行って押しきる競馬の方が得意なのである、その証拠に、脚色が鈍る。
坂を登りきると、今までの勢いは感じられなくなった。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/13(火) 18:00:11.34 ID:yq5SqlGBO
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(;゚ω゚)oO(ここまで……かお)
諦めが頭を過る、それはフルシーズンの脚色が想像以上に良いことも起因している。
もっとバテると思っていたが、よく持っている。
(#'A`)「アァァァァッ!」
フルシーズンに鞭を飛ばすドクオの気迫も、GUとは思えないほど力強かった。
一馬身ほどにまで迫り、よく追い詰めているが一歩及ばない。
純粋な力ならば一枚上手だろうが、展開と位置取りの差は長距離戦において相当に大きい。
( -ω-)「及ばないかお…」
僅かに及ばない差に絶望しながら項垂れると、そこはもうゴール板だった。
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- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/13(火) 18:06:26.44 ID:yq5SqlGBO
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阪神MR後――
決してレース内容自体は悪いものではなかった、位置取りの差が着差に出ただけだ。
(,,-Д-)「まぁ…位置取りの差かな……」
内藤も同じことを感じているだろうが、師として言うこともある。
( ´ω`)「はい、力負けではないですお。
この差は位置取り次第で簡単に詰まりますお…」
だが次の本番では、距離も短縮され良い材料ばかりではない。
(,,゚Д゚)「確かにそうだが、今回は距離が味方した。
菊は短くなる、良い材料ばかりじゃないぞ。
作戦は、あるか?」
純粋な疑問であった、血統的には如何にもステイヤーのホライゾン。
だがフルシーズンは中距離がベストの血統である。
3600mでこの差だが3000mになった時、位置取り次第で逆転出来るかは疑問だった。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/13(火) 18:08:28.23 ID:yq5SqlGBO
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今回は重賞のタイトルを取り逃したものの、次回は負けられない闘いなのだ。
だがそんな不安を感じていても、それを吹き飛ばすかのように、内藤はヘラヘラと笑いながら言う。
( ^ω^)「フルシーズンを潰し、尚且つ勝つ作戦がありますお。
まぁ、ホライゾンの力をフルに発揮出来れば……」
――――絶対に負けませんお。
そう笑う愛弟子の顔は、とても頼もしいものだった。
(,,^Д^)「ハハハハハッ!
それもそうだ!」
連れて自分も笑う。
よくここまで、立ち直ってくれたと。
一時は死んだとも思ったが、自分の想いに良く応えてくれたと。
そう…想いをこめて。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/13(火) 18:09:00.15 ID:yq5SqlGBO
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今回は重賞のタイトルを取り逃したものの、次回は負けられない闘いなのだ。
だがそんな不安を感じていても、それを吹き飛ばすかのように、内藤はヘラヘラと笑いながら言う。
( ^ω^)「フルシーズンを潰し、尚且つ勝つ作戦がありますお。
まぁ、ホライゾンの力をフルに発揮出来れば……」
――――絶対に負けませんお。
そう笑う愛弟子の顔は、とても頼もしいものだった。
(,,^Д^)「ハハハハハッ!
それもそうだ!」
連れて自分も笑う。
よくここまで、立ち直ってくれたと。
一時は死んだとも思ったが、自分の想いに良く応えてくれたと。
そう…想いをこめて。
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