内藤エスカルゴ - 現行作品一覧 - ( ^ω^)は自分が何なのかを知るようです - スレ1
( ^ω^)は自分が何なのかを知るようです
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 22:44:58.26 ID:KSXakjeh0
 
 
 
 
 
 赤。
 
 黒と赤。
 
 ドロドロとした、わだかまり。
 
 ぬちゃぬちゃとした、水たまり。
 
 
 キラキラとした、水しぶきは、空にある時はこんなにも綺麗なのに。
 
 地面に落ちると、途端に汚くなる。
 
 なぜだろう。
 
 わからない。
 
 わからないから、僕はまた水しぶきをあげる。
 
 なぜなのかを、理解するために。
 

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 22:47:20.62 ID:KSXakjeh0
 
 
 
 
 
 腕をふるうだけで、いくつもの赤い水しぶきがあがった。
 
 とても、とても綺麗だ。
 
 もっとよく、もっとたくさん、見たい。
 
 右に、左に、何度も、何度も。
 
 腕をふり、人形達をなでていく。
 
 ひとなでで、人形達は水しぶきを上げて、動かなくなる。
 
 もしかしたら、そこに理由があるのかも。
 
 人形が動かなくなる前の、最後のきらめき。
 
 多分それが、綺麗なんだ。
 
 でもやっぱり、その時だけ。
 
 地面に落ちると、途端に汚くなった。
 

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 22:49:21.66 ID:KSXakjeh0
 
 
 
 
 
 足にねっとりと、手にじっとりと纏わり付いて、きもちわるい。
 
 でも僕は、腕をふりつづけた。
 
 赤い水しぶきを、生みつづけた。
 
 そうしないと、僕が壊れてしまうから。
 
 そんな気がするだけだけど、それがとても怖かった。
 
 目の前には、人形達がまだいっぱい。
 
 手にきらきらとした棒をもって、僕に向かってくる。
 
 それをそっと、撫でてあげる。
 
 それだけで、棒が折れ、手が飛んで、胴体が飛んで、頭が飛んで。
 
 なんて脆い、人形なんだろう。
 

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 22:51:22.07 ID:KSXakjeh0
 
 
 
 
 
 すると、人形達の動きがとまった。
 
 水しぶきをあげていないのに、なぜ。
 
 僕が近づくと、人形達は怖がって後ろにさがる。
 
 どうして、もっと見せてよ。水しぶきを。
 
 人形達が、左右によけて道ができた。
 
 その向こうに、一人の黒い影があった。
 
 それだけで、僕はもう人形に興味をもたなくなった。
 
 あの黒い影が、とても気になったから。
 
 不思議と、他の人形達と変わらない大きさだったのに。
 
 僕にはなぜか、それが人形に思えなかった。
 

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 22:53:22.92 ID:KSXakjeh0
 
 影が、近づく。
 
 僕に向かって、真っ直ぐに。
 
 
 
 あぁ────
 
 
 この影の赤い水しぶきを浴びれば────
 
 
 僕はきっと、満たされる────
 
 
 そう思った時、目の前にソイツの顔が現れた。
 
 
 
从 ゚∀从
 
 
 

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 22:55:23.94 ID:KSXakjeh0
 
 一気に僕に近づいたソイツは、ふわりと髪が肩まで落ちる前に。
 
 薄ら笑いをしながら、僕に言った。
 
 
 
从 ゚∀从「お仕置きの時間だ」
 
 
 
 おしおき?
 
 どうして。僕はただ、人形で遊んでいただけなのに。
 
 そう言おうとした、次の瞬間。
 
 ソイツの腹の辺りから、何かが伸びた気がした。
 
 
 
 
 そこで、僕の意識は途切れた…………
 
 
 
 

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 22:55:47.76 ID:KSXakjeh0
 
 
 
 
 ( ^ω^)は自分が何なのかを知るようです
 
 
 
 
    第一幕────
    
    
    
    
    
    

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 22:57:49.33 ID:KSXakjeh0
 
 少し、眩暈がした。
 
 朝起きていきなり立ち上がった時にふらつくあれに似た、軽い目眩。
 最近よく、この目眩に見舞われる事が多い。
 でもそれも、時間にして五秒程度で消えるから、特に気にしてない。
 
 ほら、もう。
 
( ^ω^)「んー…………はぁっ」
 
 全身に綺麗な空気を送り込み、一気に吐いた。
 それだけで頭がスッキリとして、気分は最高だ。
 
 周りには、青々と茂った草と、瑞々しい葉を風に揺らす木々。
 春の暖かな風が、僕の頬も優しく撫でてくれた。
 
 こんなに綺麗な自然の中で、目眩がどうのなんて考えるだけ損だ。
 
 自然の祝福を全身に感じながら。
 
( ^ω^)「よっとお」
 
 僕は両腕を掲げて。
 

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 22:59:49.44 ID:KSXakjeh0
 
 自然に大きな感謝をしながら。
 
( ^ω^)「せーのっ」
 
 木に斧を、叩きつけた。
 
 渇いた高い音を響かせて、薪が半分に割れ、転がる。
 今日もなかなかに、調子がいい。
 
 薪割りは、勢いが大事だ。
 進入角度や、斧の切れ味なんかもそりゃ大事だけど、全ては勢い。
 
 戸惑ったら、斧は途中で止まり、手を傷めてしまう。
 
 なんて、偉そうなことを言ってるけど、僕も最初は苦労したんだ。
 初めの一ヵ月なんて、手のひらと手首が痛くて痛くて、ろくに眠れなかった。
 
( ^ω^)「ふー こんなもんかお」
 
 実はその一撃で、今日のノルマは達成だ。
 後一本、というところで、急に目眩に襲われてしまった。
 それでも、最初の事を思うと作業スピードも段違いに上がっていた。
 

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:01:31.57 ID:Ns38uzLHO
(´□(⊂(`;ω;´)⊃)□`川
     にょ〜どう!!

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:01:57.61 ID:KSXakjeh0

 薪割りを始めて、もう十年になる。
 それだけやっていれば、嫌でもコツは覚えてしまう。
 
 割った薪達を集め、きつく縄で縛り、リヤカーの荷台に積む。
 こいつも十年来の付き合いで、積む度にどこかしらが軋む音を立て、少し頼りない。
 
 今度、作り直してやろうかな、そう思った時。
 
「お兄ちゃああぁぁぁぁぁん!!」
 
 遠くから叫ぶ、女の子の声がした。
 声の主を一度で理解した僕は、顔を上げてそちらを見た。
 
ノハ*゚听)
 
 真赤な背中辺りまでの髪を左右に揺らしながら、駆けよる少女。
 ピンと頭のてっぺんからはねた一本の髪が特徴的だ。
 妹の、ヒートだった。
 
( ^ω^)「転ぶなおー!」
 
 いつものことだけど、足元をまったく気にせず走ってくるので、先に言っておいた。
 
 
 あ、転んだ。
 

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:04:03.06 ID:KSXakjeh0
 
ノハ*゚听)
 
 しかしすぐに立ち上がり、また僕めがけて走り出した。
 
 ヒートは一日数回転ぶ。面白いくらい、転ぶ。
 だから当人も、もう慣れているのだろう。
 
 だから僕も、ヒートが転んでも慌てる事はもうなかった。
 
 
 
 あ、転んだ。
 
 
 
( ^ω^)「大丈夫かお?」
 
ノハ*゚听)「大丈夫だぞ!」
 
 後少しのとこで転んだヒートを見下ろす僕。
 
 すぐに勢いよく顔を上げて返事をするヒート。
 
 少し笑って、僕は手を伸ばした。
 

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:06:10.26 ID:KSXakjeh0
 
ノハ*゚听)「ありがとう! 薪割りはもう終わったのか!?」
 
( ^ω^)「終わったお 今から戻るとこだお」
 
ノハ*゚听)「早くなったなぁぁぁぁ! さすが!さすがだ!」
 
( ^ω^)「おっおっ 手伝いにきてくれたのに、悪かったお」
 
ノパ听)「ふっふー 実は! それだけじゃないんだなぁ!」
 
( ^ω^)「おっ? なんかあったのかお?」
 
ノハ*゚听)つ□「これだ!」
 
( ^ω^)「おー……手紙かお 珍しいおね」
 
 この地域は自然に溢れ、平和な姿を保っている。
 しかし、一度人のいる街へ出ると、そこはもう、違う世界だ。
 
 よくわからないが、国と国の大きな戦が行われているらしい。
 他国に比べるとこの国……ニューソクは治安が良いと聞いている。
 しかしどうしても、戦争をするために民は税を課せられている。
 
 それにより、貧富の差は当然生まれ、国の目の届かない所で、地は乱れていた。
 

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:06:19.97 ID:6VbmQYwN0
wkwk

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:09:07.85 ID:KSXakjeh0
 
 そんな中で、配達屋が狙われることも稀にあった。
 野盗に捕まれば、まず命はない。
 
 そんなリスクを負ってまで配達業を営む者は、少なかった。
 その中で、人里離れた山中のこの家に手紙が届くのは、珍しい。
 
 もしかしたら。
 
( ^ω^)「…………」
 
 ヒートから手紙を受け取り、封筒を見た。
 薄く、安っぽい紙と、差出人の名前が、僕の心配を掻き消してくれた。
 
ノパ听)「? どうした?」
 
( ^ω^)「おっ なんでもないお」
 
 顔に出ていたのか、ヒートを少し心配させてしまったようだ。
 
 もしかしたら徴兵関係の国からの手紙かと思ったが、どうやらそれはないようだ。
 
 気にしすぎだったと伝えるように、ヒートに差出人の名前を教える。
 
 その名を聞けば、ヒートも安心することだろう。
 

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:11:54.04 ID:KSXakjeh0
 
( ^ω^)「クーからだお」
 
ノハ*゚听)「ほんとかぁぁぁぁ! クー姉からかぁぁぁ!!」
 
 くせっ毛をピンピンと立てて、ヒートは喜んだ。
 そんなヒートを見て、僕も嬉しくなってしまう。
 勿論、手紙がきたことも純粋に嬉しかった。
 
 
 
 差出人、クー・アジタリア
 
 
 
 ヒートの姉、クーからだった。
 
ノハ*゚听)「なんて! なんて書いてあるんだ!?」
 
( ^ω^)「帰りながら読むお」
 
ノパ听)「おおっ! 了解だっ!」
 
 するとヒートはぴょんとリヤカーの荷台の端に座った。
 

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:14:38.42 ID:KSXakjeh0
 
ノパ听)「いけー! 兄ちゃん! でっぱーつ!!」
 
 なんとも、元気のいい子である。
 
 ヒートはずっとこの山にある家で過ごしてきた為に、字が読めない。
 クーと、後一人ヒートの妹がいるが、財政的に余裕がなく、学校に行くことはできなかった。
 僕が教えてやろうにも、ヒートは勉強をとても嫌い、そこまでに至らなかったのだ。
 
ノパ听)「う〜……兄ちゃんに字を教えてもらえばよかった……」
 
 元気のない声に、くせっ毛も萎れてしまっていた。
 
( ^ω^)「おっおっ 兄ちゃんが読んでやるお」
 
ノハ*゚听)「さすが兄ちゃん! 大好きだぞ!」
 
 静かに笑った後、少し錆びたリヤカーのパイプ、ハンドル部分を片手で握り、進み出す。
 
( ^ω^)「ヒート 中身を出してくれお」
 
 後ろを見ないまま、手だけを後ろにやって手紙を渡す。
 ヒートが手紙を受け取り、ビリビリと少し不安な音が聞こえた。
 
 中身まで破らなければいいけど……。
 

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:18:00.22 ID:KSXakjeh0
 
( ^ω^)「シューはどうしたんだお?」
 
 前を見ながら、聞いた。
 
 もう一人の末っ子、シュー。
 彼女は熱心に僕から文字を教わっていたから、手紙は読めるはずだ。
 クーを尊敬し、規則正しい生活をしている彼女に限って、今家に居ない事はないだろうに。
 
ノパ听)「シューはお昼ごはんを作ってたぞ!」
 
( ^ω^)「おっおっ それで台所から追い出されたのかお?」
 
ノハ;゚听)「う〜……なんでわかるんだぁ……」
 
 十年も一緒にいたら、そんなやり取りはすぐに浮かんでしまう。
 基本、仲はいいのだけど、シューはヒートに厳しいから、邪魔をするなと言われたのだろう。
 と言う事は、困った挙句に僕の所に訪れたというわけだ。
 
 手紙の主が、クーということを知ったら、シューはその場で読んだかもしれない。
 いや違う、確実に読んだと思う。
 
 クーはそれほど、二人に愛されていた。
 

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:20:54.08 ID:KSXakjeh0
 
ノパ听)つ□「兄ちゃん! 出したぞ!」
 
( ^ω^)「ありがとうだお」
 
 手紙を受け取る。一目で、クーだとわかった。
 綺麗な文字が、彼女を彷彿とさせる。
 
( ^ω^)「じゃあ、読むお」
 
ノハ*゚听)「わくわく! わくわく!」
 
 片手でパイプを握り、もう片方の手で手紙を持って、読み始めた。
 
( ^ω^)「やぁ、ヒート、シュー、そしてブーン 元気か?」
 
ノハ*゚听)「元気だぞおおおぉぉぉぉ! シューも兄ちゃんも元気だぁぁぁぁぁ!」

( ^ω^)「私は元気だ 心配しなくていいぞ」
 
ノハ*゚听)「クー姉も元気かぁぁぁぁぁ! よかった! よかった!」
 
( ^ω^)「少し余裕が出来たから、手紙を書こうと思ったんだ」
 
( ^ω^)「心配してると思ってたしな」
 

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:23:41.28 ID:KSXakjeh0
 
ノパ听)「心配してたぞぉ……でもよかった!」
 
( ^ω^)「今月末に、そちらへまた戻る 実は、それを伝えたかっただけなんだ」
 
ノハ*゚听)「おおおおおおお!! 戻ってくるのかぁぁぁぁ!」
 
( ^ω^)「それまではブーン、ヒートとシューを頼んだぞ」
 
ノパ听)「頼まれるぞぉぉぉぉ!」
 
( ^ω^)「おっおっ 任せとけお」
 
 ヒートにならって、僕も返事をした。
 本当に嬉しそうな彼女の姿を見て、僕も嬉しくなる。
 
( ^ω^)「それじゃ、話したい事は帰った時までにとっておく」
 
ノパ听)「残念だけど了解した!」
 
( ^ω^)「では、今度は顔を会わせて、話そうじゃないか またな」
 
ノパ听)「クー姉! またなぁぁぁぁ!」
 

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:26:50.52 ID:KSXakjeh0
 
( ^ω^)「で、終わりだお」
 
ノハ*゚听)「うおおおぉぉぉ! ありがとう! 兄ちゃん!」
 
( ^ω^)「おっおっ 僕も嬉しいからいいお」
 
ノハ*゚听)「ふふふ〜ん♪」
 
 ご機嫌なヒートは、鼻歌を歌い出した。
 僕はそれに耳を傾けながら、クーの事を思う。
 
 クーが帰ってくる。
 
 五年前、十八になったクーは近くの街で働くようになった。
 彼女達の父親は、国軍にいる。
 結構な立場にいるようで、生活にはさほど、困ってはいなかった。
 
 母親は、いない。
 クーが十二の時に、突然居なくなったそうだ。
 その時ヒートは、六歳。シューに至っては、四歳だ。
 
 仕送りがあるとはいえ、あまりに、酷い。
 

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:29:51.96 ID:KSXakjeh0
 
 しかしクーは、父にそのことを報告せずに、一人でヒート達の面倒を見てきた。
 その時のクーの心情は、一体どれ程のものだったのか。
 
 僕には到底、計り得る事が出来ない。
 
 でも……。
 
ノハ*゚听)「ふふふんふ〜ん♪」
 
 今のヒートを、そして、家で待っているシューの事を思うと。
 両親と共に暮らせないことなど、なんの苦にも感じていないと言った様子だ。
 
 それでもきっと、寂しい時はあるのだろう。
 泣きたい時だって、あるのだろう。
 
 でも、十年一緒にいた僕でも、その事で彼女達が泣いている所は見た事がない。
 
 泣く暇があったら、楽しい事を考えろ。
 
 クーの言葉だ。

 そう思った時は、挫けずに自分を育てた偉大な姉のことを思い出し、止まっていたのだろう。
 
 その結果、二人は立派に、大きく育っていた。
 

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:32:54.28 ID:KSXakjeh0
 
 クーの母親がいなくなった半年後に、僕はここを訪れた。
 最初はやはり警戒されたが、次第に打ち解ける事が出来た。
 僕の事を、突拍子のない話を、信じてくれたのだ。
 
 僕には、ここに来る以前の記憶がない。
 
 なぜここに、どうやってここにきたのか。
 それは僕自身、まったくわからない。
 
 思い出そうとしても、何を思い出せばいいのかすら、わからない。
 そんな僕に、クーはよくしてくれた。
 
 僕は感謝して、何かできないかとクーに進言し、先程の薪割り作業に就いた。
 どうやらこの山一つがクーの父の物らしく、薪には困らない。
 自分達の分を確保し、余りは近くの家々に売って、生活の足しにしていた。
 
 そうしているうちに、僕はもう、どうでもよくなった。
 
 この子達の笑顔を、守る事ができれば。
 
 自分の記憶なんて、どうでもいい。
 
 言うなればこれは、僕の運命なんだ。
 彼女達を守る為に、僕はこの地にやってきたんだ。
 

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:33:46.51 ID:Ns38uzLHO
すべてのブーン系ファンの皆様へ
モバゲーのクリエーター名検索
 
らふめいかー
 
みんなこいつのこの言いぐさをみてくれ
こいつの12/24のニュースを
こいつだけは許せない

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:36:14.15 ID:KSXakjeh0
 
 僕が街に出ると言った言葉を、クーは遮った。
 君はあくまで客人だ。薪割りをさせることすら、心苦しい、と言った。
 
 本当に、何故この子はこんなにも真っ直ぐなのだろうと。
 あの時は、ヒートとシューがいたにも関わらず、涙した。
 相当にからかわれたが、嫌な気はまったくしなかった。
 
 あの時の、クーの言葉。
 
 

 
 
川 ゚ -゚)『君にもしもの事があったら、私が悲しいからだめだ』
 
 

 
 
 その言葉で僕は、決意した。
 
 この子達の為に、生きようと。
 

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:39:51.38 ID:KSXakjeh0
 
 ヒートの鼻歌が、風に流れる。
 
 
ノパ听)「ふふんふ〜ん♪」
 
 
 
 なんだ────
 
 
 
ノパ听)「ふんふんふん〜♪」
 
 
 
 何かが、浮かぶ───……
 
 
 
ノパ听)「ふふふ〜ん♪」
 
 
 

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:42:40.57 ID:KSXakjeh0
 
ノパ听)「ふふふふ〜ん♪」
 
 
 
 ………手を……って……
 
 
 
ノパ听)「ふんふんふ〜ん♪」
 
 
 
 ……すべ…………て……を……
 
 
 
ノパ听)「ふふふ〜ん♪」
 
 
 
 ………ちか……ら……で……
 

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:45:53.17 ID:KSXakjeh0
 
 
 
 
 
 
 
ノパ听)「ふふんふふ〜ん♪」
 
 
 
 
 
 
 ────滅ぼせ────…………
 
 
 
 
 
 
 
 

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:46:05.06 ID:gJgJJb5p0


30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:47:37.10 ID:26j1v5s1O
支援

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:47:50.38 ID:26j1v5s1O
支援

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:47:54.51 ID:KSXakjeh0
 
 
 じわりと、嫌な汗が、背中を伝う。
 
 
 なんだ、今のは。
 
 
 ヒートの鼻歌に合わせて……
 
 
 メロディーに合わせて……
 
 
 あれは……歌詞……?
 
 
 なんで、こんな、はっきりと。
 
 
 なぜ、どうして、滅ぼせって、何だ。
 
 

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:49:14.45 ID:26j1v5s1O
支援

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:50:18.56 ID:26j1v5s1O
支援

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:50:46.64 ID:KSXakjeh0
 
(  ω )「ヒート」

ノパ听)「ふんっ どーした?」

(  ω )「その歌、どこで覚えたんだお?」

ノパ听)「歌? よくわからないぞ」

(  ω )「鼻歌、歌ってなかったかお?」

ノパ听)「はなうた……? 知らないぞー?」

(  ω )「……そう……かお……」

ノパ听)「どーした? 兄ちゃん調子悪いのか?」

(  ω )「……なん……でも……」

 僕はゆっくりと、ヒートの方を振り返る。
 
 いつもの笑顔で、安心させるように。
 
 いつもと、変わらない、笑顔のつもりで。
 
 振り返った。
 

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:53:02.24 ID:26j1v5s1O
支援

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:53:22.55 ID:KSXakjeh0
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(    )「なんでもないお」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:54:10.21 ID:26j1v5s1O
支援

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:55:00.21 ID:KSXakjeh0
 
ノパ听)「…………」
 
 数瞬の、間。
 
ノパ听)「なーんだ 安心したぞ!」
 
( ^ω^)「おっおっ ごめんお」
 
ノパ听)「変な兄ちゃんだな!」
 
 どうやら僕は、いつもの笑顔でいれたようだった。
 ヒートの返事が、それを証明している。
 
 
 しかし、今のは一体。
 
 
 一瞬また、目眩がした。
 
 浮かぶのは、忘れていたこと。
 
 そしてもう一つ、忘れかけていたこと。
 

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:57:16.88 ID:26j1v5s1O
支援

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:57:26.32 ID:KSXakjeh0
 
 
 
 一つ目は、ここへ来る前の記憶。
 
 
 
 
 そしてもう一つは、それを思い出そうとする事。
 
 
 
 
 ヒートの歌に乗せて。
 
 
 
 
 それはゆっくりと、僕に近づいてきていた。
 
 
 
 
 第一幕───終。
 
 


42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:57:35.55 ID:26j1v5s1O
支援

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:59:13.19 ID:KSXakjeh0
終わりです


ではまた

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/06(火) 23:59:47.48 ID:26j1v5s1O
乙でした!

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/07(水) 00:00:23.39 ID:YiaABivg0


46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/07(水) 00:05:45.05 ID:4VqRo/MwO
これは期待せざるを得ない…

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/07(水) 00:14:15.19 ID:GXwa+BygO
よむほ

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