第2話 「両立直」
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:20:36.13 ID:wRqqklJ6O
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「それで、これが純チャン。3飜だが喰い下がりで2飜役」
( ^ω^)「おー……」
ζ゚听)ζ「……?」
僕らに麻雀を教えてくれたのは、僕とツンの父さん。
2人は学生時代からの親友で、結婚してからもよく飲みに行く仲だ。
そんな2人の趣味は麻雀で、今でも雀荘に行っては勝って負けてを繰り返してる。
お互い母さんにはキツく言われてるらしく、次第に家で麻雀を行う計画を立て出した。
だが2人で打ったって面白くないし、母さん達は麻雀嫌い。
そこで白羽が立ったのが、一人っ子仲間の僕とツン。
小学校の頃から週に一度は、パパ貯金とかいうので買った自動卓を囲む。
正月にはいつもお年玉を使っての賭け麻雀。あの時ばかりは、2人の大人も真剣な目をしていた。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:24:15.47 ID:wRqqklJ6O
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(;^ω^)「えと……いーりゃんさんすー……うーろんちゃ?」
ζ;゚听)ζ「えと……親でさんはんだから……
ごっぱ、ちっち、くんろくで……」
ツンは僕より頭が良くて、僕がやっとポンやチーなどの基本を覚えた時には
既に役の名前、飜数をマスターしていて、鼻を伸ばし自慢してきた。
それで僕が役を覚えると、ツンは点数計算をツラツラと言い、
「これくらいできなきゃダメね!」と、覚えるまで馬鹿にされ続けた。
そんな僕ら、気付けば麻雀で特徴が生まれていた。
僕は手牌で役を作るのが得意なのに対し、ツンは鳴きや染めが主だ。
特にカンをすればまず和了するその現象を、僕は父さんの漫画から取って『哭きのツン』と呼んでいた。
……楽しかった、あの頃は本当に。
ツンは至極の負けず嫌いで、勝負になると一切の手は抜かない。
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:25:38.68 ID:wRqqklJ6O
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僕も勝てば嬉しいし負ければ悔しいが、ツン程じゃない。
少なくとも僕は八つ当りして他家にグーパンチしたり、点棒を握って粉々にしたりはしない。というか出来ない。
僕らにはそんな違いこそあれど、根本は同じだ。
麻雀が好き。そこには一寸の狂いもないと思う。
そして今も、ツンは麻雀が好きだ。
真剣な勝負をして、一つの勝ち負けにこだわる。
その姿勢はあの頃と何も変わってない。
なら僕は、僕はどうだろうか。
今もネットで対局するけど、所詮は暇潰しの遊びに終わる。
なら麻雀が嫌い? 違う。
嫌いじゃないけど、楽しくないんだ。
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:26:12.50 ID:wRqqklJ6O
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じゃあもしかしたら、もしかしたら僕は麻雀が好きなんじゃなくて、
ツンとする麻雀が、本当は好きなんじゃないだろうか。
だから僕は、今日あそこに行ったんじゃ――――――
第2話 「両立直」
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:28:31.08 ID:wRqqklJ6O
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( ω )「……ん」
お腹……減ったお……。
( うω^)「……寝てたのかお」
なんか、夢を見ていた気がする。
でも覚えてなくて、もどかしさを誤魔化し身体を起こす。
格好は学校のジャージにTシャツ。そうだ、帰ってきて直ぐに布団にダイブして……
( ^ω^)「……今何時だお」
枕元に放ってあった携帯を取って開いてみる。
だが時間よりもまず目に入ったのは、謎の数字だ。
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:29:51.49 ID:wRqqklJ6O
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着信数 86件
( ゚ω゚)
あ、新手のスパムかお……?
着信履歴
ツン
ツン
ツン
ツン
ツン
ツン
ツン
ツン
ツン
ツン
ツン
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:30:55.62 ID:wRqqklJ6O
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(;゚ω゚)「ギャァァァァア!!」
よく見ると、大体3分置きにツンからの電話が来ている。
てことは……86×3=258で÷60だから……
(;^ω^)「4時間!? 今何時だおッ!?」
22時38分。確か帰って来たのが18時くらいだったから……
(;^ω^)「うぉッ!?」
と、突然震え出す携帯。画面には着信 ツンの文字。
僕は震える指で、その電話に出た。
(;^ω^)「もしm」
『qぁwせdrftgyふじこlp;@:!!!!!!111』
(;^ω^)「ちょwwwwど、どうしたおッ!?」
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:33:12.87 ID:wRqqklJ6O
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『ア、アンタ……なんで電話出ないのよッ!!』
甲高い叫び声に、僕は思わず携帯を耳から遠ざけた。
(;^ω^)「……いやちょっと……寝てt」
『寝てたァ!? 人が心配してんのにアンタはッ!!』
(;^ω^)「ひッ、ごめんなさいお!」
心配……? 一体ツンが、何を心配するのだろうか……。
『まァ……いいわ。どうせそんな事だと思ってたしね』
(;^ω^)「お……」
ツンとの電話、これは別に珍しい事じゃない。
むしろ僕らは近づく事で互いの心が見えるから、こうして遠くから会話出来る電話は割りとする。
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:36:31.31 ID:wRqqklJ6O
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僕はそのたびに、まだツンに嫌われてない事を確認できて凄く安心する。
( ^ω^)「……ツン、今日はごめんお」
『……ま、アンタも反省してたみたいだし? 特別に許してあげるわ。
それに私もちょっとだけ……ちょっとだけ言い過ぎたし』
( ^ω^)「……ちょっとだけ?」
『なによ』
(;^ω^)「いえ……何でもないですお」
『第一ね、私と打ちたいならネットですればいいじゃない』
( ^ω^)「……まぁ、そりゃそうなんだけど」
『……今少し暇だから、特別に打ってあげてもいいけど』
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:37:33.97 ID:wRqqklJ6O
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( ^ω^)「え? いやでも、今お腹空いてるからご飯……」
『しながら食べれるでしょ!! 嫌なのッ!?』
(;^ω^)「いやそんな……嫌じゃないおッ!」
『ならとっとと準備ッ! さくさくしなさい、さくさくッ!!』
(;^ω^)「はいッ!」
ブツっと電話が切られると、僕は直ぐ様ベッドから飛び降りPCを点け、一階のキッチンへと走った。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:38:48.81 ID:wRqqklJ6O
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('A`) 「嗚呼ダルい……ダルいよブーン」
(;^ω^)「僕に言われても知ったこっちゃないお。
大体もう、後は帰るだけじゃないかお」
('A`) 「……帰るのもダルい」
( ^ω^)「本格的にダメだおね、ドクオは」
友人との、いつも通りの会話。
昨日は確かに変わった一日だったが、今日は至って普通。
朝寝坊して遅刻しそうになり、授業は退屈でほとんど覚えてない。
そんな一日も、終わりを告げ……
(*゚∀゚)ノシ 「なーいとーうくーんッ!!」
……なかった。
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:39:31.89 ID:wRqqklJ6O
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('A`) 「……お前か?」
(^ω^;)「さァ……知らない人だお。ささッ、とっとと帰るお」
教室の前の扉から姿を見せるつーさんを無視し、鞄で顔の右側を隠して早歩き。
?マークを浮かべるドクオを連れて、後ろの扉から廊下へと出た。
(#*゚∀゚) 「ちょっと内藤ォ!! 無視すんなッ!!」
(;^ω^)「ぐほッ!!」
左脇腹に激痛。恐らく蹴られた。
(;'A`) 「……」
(;^ω^)「な、なんですかお……?」
これ以上暴力を振られちゃ堪らない。僕は観念して、つーさんの方を見た。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:40:02.33 ID:zt0+Uo4EO
- 俺もツン:デレ=8:2くらいが好きだからよいな
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:41:09.17 ID:wRqqklJ6O
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(*゚∀゚) 「今日も一回ヤらない?」
(;'A`) (えぇぇぇぇぇぇぇぇぇええッ!?)
(;^ω^)「勘弁して下さいお……」
(;'A`) (断ったッ!?)
(*゚∀゚) 「いーじゃんかぁ、今日はツン居ないしー」
(;^ω^)「居ないなら居ないで魅力薄というか……」
(;'A`) (3P希望ッ!?)
( ^ω^)「大体僕より上手い人はいっぱい居ますお……」
(*゚∀゚) 「そんな事ないって! 昨日のも魅力なプレイだったしさッ!!」
(;'A`) (な、なんちゅう会話……畜生ッ……)
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:42:27.17 ID:wRqqklJ6O
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(*゚∀゚) 「今日も足りないんだよッ! お願いだから入ってッ!!」
(;'A`) (ちょwwwwwwww)
(;^ω^)「……」
(*゚∀゚) 「お願いッ! ホント今日だけだからッ!!」
また手を合わせ頭を下げるお願い……昨日も見たやつだ。
(;^ω^)「……ごめんなs」
(♯'A`) 「馬鹿野郎ォ!!」
(;^ω(♯)「うぼァッ!?」
ドクオの鉄拳が僕を襲う。……何故だお。
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:43:49.93 ID:wRqqklJ6O
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(♯;A;) 「てめッ……てめぇ女性にあんなッ……あんにゃ事言わせてッ!
こ、断るなんて……てめぇ仲間だと思ってたのにチクショウッ!!」
(;^ω(♯)「ド、ドクオ……?」
泣くほど僕に、麻雀をして貰いたいのかお……!?
(*゚∀゚) 「んじゃ、彼借りてくねー」
(♯;A;) 「どうぞッ! もう全部絞り取ってやってくらさいッ!!」
(;^ω(♯)「いや賭けはしな……ていうか何を勝手n」
(*゚∀゚) 「んじゃ貰ってきまーす」
(;^ω(♯)「あああぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
片腕を引っ張られ、ズリズリと廊下をコスりながら
今日もまた麻雀同好会の会室へと、僕は強制連行させられた。
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:45:34.77 ID:wRqqklJ6O
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(;^ω^)「はァ……」
(*゚∀゚) 「まぁまぁ、どうせ暇でしょー? 帰宅部らしいし」
(;^ω^)「いやまぁ暇ですけど……あれ、なんで帰宅部って知っt」
(*゚∀゚) 「さァ到着ーッ!! おいでませ麻雀同好会へー!!」
ガチャとドアが開けられて、薄暗い廊下に室内の光が差し込む。
昨日と同じように、部屋の真ん中には自動卓と、2人の女生徒。
川 ゚ -゚) 「やっと来たか……」
ξ;゚听)ξ「ブーン? なにやってんのよアンタッ!」
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:47:16.04 ID:wRqqklJ6O
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(;^ω^)「ツ、ツン……?」
居ないと聞いていた筈のツンが居る。これはつまり……騙された。
(*゚∀゚) 「アヒャヒャ、んじゃ打とうかッ!」
背を押し座るように促すつーさんだが、僕を睨むツンを見て、とてもじゃないが席に付きたいとは思わない。
不思議な事につーさんへの憤慨よりも、ツンに嫌われるのが恐いという気持ちの方が大きかった。
ξ゚听)ξ「……つーさん」
(;*゚∀゚) 「そんな睨まないでよ……今日は昨日と違うからさッ」
( ^ω^)「え……?」
(*゚∀゚) 「タッグ打ちさ! タッグ打ちッ!!
ツンとブーンくん、私とクーのタッグ勝負ッ!!」
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:50:12.02 ID:wRqqklJ6O
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ξ゚听)ξ「タッグ……ねぇ」
まぁそれなら……いやそれよりも。
( ^ω^)「ブーンくんtt」
(*゚∀゚) 「それならいいでしょ、ツンもッ!」
ξ゚听)ξ「……嫌です。有利すぎますから。
大体クーさんだって、簡単に話に乗らないで下さいよッ」
川 ゚ー゚) 「しょうがないじゃないか、それしかないならば。
私は有利不利に関わらず、したい時にしたい事をさせて貰うよ」
そう言い、フッと笑った。
(*゚∀゚) 「ならハンデも付けるからッ! 頼むよッ!」
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:52:06.10 ID:wRqqklJ6O
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ξ゚听)ξ「……」
( ^ω^)「……ツン」
ごめん、ツン。正直僕は、やってみたい。
ξ゚听)ξ「……一回だけですよ」
(*゚∀゚) 「アヒャヒャ! ありがとねッ!」
スキップしながらつーさんは、黒髪のクーさんの前に座った。
( ^ω^)「……ありがとだお」
ξ゚听)ξ「いいからとっとと座りなさい」
アゴで対面の席を指すツン。
内心かなりホッとしながら、僕は空いた椅子に腰を落とした。
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:53:05.75 ID:wRqqklJ6O
-
……。
……。
お、おいすー。
チャットみたいに使うな。
……ごめん。
(*゚∀゚) 「んじゃとりあえず大本のルールから。
勝負は半荘一回勝負で、終了時点でトップ者の居るチームの勝ちッ!」
川 ゚ -゚) 「合計でなくトップ者か」
(*゚∀゚) 「うんッ、その代わり今回は箱割れ清算は無しッ!
払える分だけ払ってトんでもらうよッ! いいねブーンちゃんッ!」
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:54:48.28 ID:wRqqklJ6O
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(;^ω^)「僕前提ですかお……てゆかブーンちゃんt」
(*゚∀゚) 「そしてそして、トビが出たチームは即負けだからッ!
あとはオカウマ無しのアリアリ、赤3枚に喰いかえ無し。
九種九牌は場流しのみで、他2つは親流れねッ!」
川 ゚ -゚) 「ふむ……了解した」
トビで負けに、箱割れ清算無し。これはつまり……。
ξ゚听)ξ「ま、昨日のを考えれば妥当なルールですね」
(*゚∀゚) 「アヒャヒャ、おkかなッ!?」
川 ゚ -゚) 「あぁ、構わんよ」
(;^ω^)「は、はい……」
ξ゚听)ξ「……足りません」
- 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:56:43.97 ID:wRqqklJ6O
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(*゚∀゚) 「へ?」
ξ゚听)ξ「ハンデ、ありませんよ?」
(;^ω^)「ちょ、ツン……!」
ξ゚听)ξ「私達の一万五千、先輩達に渡します」
(;^ω^)「うぇえッ!? ツ、ツン、何を!?」
(*゚∀゚) 「アヒャヒャヒャヒャ! いいねツンッ!」
川 ゚ -゚) 「随分と君は……」
一万五千あげるって事は、僕らは10000、つーさん達は40000でのスタートという事。
しかもそれを、たった半荘一回での勝負で……。
(;^ω^)(そりゃアンタ、無謀ってもんだぜ……)