内藤エスカルゴ - 完結作品一覧 - ( ^ω^)は合成士のようです - 第14話
3 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 20:21:46.69 ID:Dgp4lyuR0

景色が過ぎ去っていく。
空に溶け込むように、ただ何も考えないように飛んでいた。

(  ω )「」

体の感覚が薄れてきて、吐き気がし、飛ぶのをやめた。
目の前に、ただ青い空と海が広がる。

(  ω )「あああああああああああああああああああああああ!!」

叫んだ。
胸の中の暗い気持ちを吐き出したくて。

憎い、でも何もできない。
そんな気持ちが体の中を走り回る。

楽になりたかった。
でも、合成を解くことはできなかった。

(  ω )「父さん・・・母さん・・・」

顔も思い出すことができない。
自分の両親なのに、だ。
胸が苦しくて、目は熱い。



4 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 20:23:29.34 ID:Dgp4lyuR0

下は海。落ちれば死ねる。両親に会える。
そんなことが次々と頭に浮かんでくる。
どうやって死ぬのが楽か。

このまま海に沈むのか。
陸地の上まで戻って、墜落するのか。

方法がいくら浮かんできても、実行する勇気がないことはわかっていた。

( ;ω;)「ああ・・・・・・ああ・・・・・・・」

ただ、蹲ることしかできなかった。
大気に包まれて、体の節々を丸める。

考えることをやめ、合成を解いた。
体は風を切り、海が近づいてくる。

  「戦わないのか? 腹が立たないのか? 悔しくないのか?」

脳内に木霊する声。
それはVIP島を作り出したその人のものだ。

(  ω )「許せないですお。悔しいですお」

拳を強く握りしめ、歯を食いしばる。
そのたった一言で、怒りがこころを喰い尽すのを感じた。
涙は、もう流れていない。


5 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 20:25:53.13 ID:Dgp4lyuR0

落下を徐々に緩やかにし、上昇に転じる。

(  ω )「・・・・・・絶対にたどりついてやるお」

  「一人で行く気か?」

初代さんの声は続ける。

  「さっきのところに戻りな。友人も一緒に連れて行ってやるよ」

ニヤリ、と笑っているのが想像できる。
2人を巻き込むわけにはいかない、という気持ちが浮かび上がってくる。
だが、二人も北の国に行く理由はある。
北の国に行くということは、友人を危険に曝してしまうことになる。

せめて、聞くだけでも、と来た道を全速力で飛び戻る。

(  ω )「どうやってやるんだお?」

  「何、俺の精神力を使ってやるだけさ」

(  ω )「できるのですかお?」

  「前に行ったろ? お前の【情報】と俺の【情報】は似ている。間違いなくできるね」

(  ω )「なら、お願いしますお」


6 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 20:27:50.45 ID:Dgp4lyuR0

さらに速度を上げる。早すぎて、前を向くことはできない。
飛び去った時より早く、戻ってくる。
  _
( ゚∀゚)「ブーン!」

目的の人物はすぐに見つけることができた。

(  ω )「ジョルジュ」
  _
( ゚∀゚)「心配したんだぜ?」

ジョルジュのすぐ隣に着地する。

(  ω )「ドクオは?」
  _
( ゚∀゚)「あ、ああ施設にいるぜ」

返事もせずに、施設に向かった。
そこにドクオがいるのなら、一緒に話した方が早い。

一歩後ろをジョルジュがついてくる。
その足音にさえ腹が立ってしまう。



7 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 20:32:01.13 ID:Dgp4lyuR0


ドクオはすぐに見つけることができた。

('A`)「ブーン、どこに行ってたんだ? 心配したんだぜ?」

(  ω )「すまんお・・・・・・」

続くはずの言葉が途切れた。
少しの間考える。
  _
( ゚∀゚)「しっかし、北の国まで飛んでいっちまうのかと思ったぜ」

('A`)「できるのか?」
  _
( ゚∀゚)「無理だろ。できたら、とっくに乗り込んでるよ」

('A`)「そうだよなぁ・・・・・・」

何を悩んでいるんだ僕は。
もう、答えは出てるだろう。あとは、僕自身の問題だ。
この友人たちを巻き込めるのか?

(  ω )「二人とも・・・・・・北の国に行けるとすれば、どうするお?」

('A`)「どうするって、行くに決まってるだろ」
  _
( ゚∀゚)「それ、聞く必要があるか?」



8 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 20:35:17.60 ID:Dgp4lyuR0

思っていた通りの返事だ。
でも・・・・・・

(  ω )「死ぬかもしれないお?」

('A`)「死なないようにするだけだ」
  _
( ゚∀゚)「一般兵なんかにやられるほどヤワじゃねーよ」

心の中の炎が強く、強く燃え上がる。

   「なんだ、根性あるじゃねぇか」

(  ω )「お願いしますお、初代さん」

( ^ω^)「ブーン達を、北の国に!」

   「任せろ。ただし、帰りは無理だ。この一回の合成で俺の精神は消えちまう」

( ^ω^)「構わないですお」

体の中の力を、外から操られているような不快感を感じる。

( ^ω^)「空間合成」
   「空間合成」


12 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 20:40:25.10 ID:Dgp4lyuR0
  _
( ゚∀゚)「おい・・・・・・これは・・・・・・」

目の前に、空間の裂け目が生まれていた。

( ^ω^)「・・・・・・これが、北の国への道だお」

光の割れ目の向こうに見えるのは、北の国だろう。

('A`)「この先、なんだな?」

( ^ω^)「そうだお、そのはずだお」

僕らは、その裂け目をくぐった。

僕らの前に現れたのは、巨大な塔と、それを囲うように立っている家々。
周囲には高すぎる塀。
その都市のあまりの大きさに、心を呑まれそうになっていた。

( ^ω^)「・・・・・・すごいお」

('A`)「でけぇな・・・・・・」
  _
( ゚∀゚)「あそこに、ヒートが?」

ジョルジュの指差す先には、中心の黒い塔。


13 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 20:44:10.38 ID:Dgp4lyuR0

( ^ω^)「わかんないお・・・・・・」

('A`)「しっかし、勢いで来たが、敵の強さがわからなければ、むやみに突撃できないな」

ドクオの言う通りだ。
避難所に来た子供たちでさえ、恐ろしい強さだった。
  _
( ゚∀゚)「関係ねぇ、いこうや」

( ^ω^)「待つお、ジョルジュ」

今すぐにでも飛んでいきそうなジョルジュの肩を押さえる。

( ^ω^)「ブーンたちがVIP島の人間だってばれてないはずだお。
      だから、まずは、町で様子を見るお」

('A`)「賛成だ」
  _
( ゚∀゚)「・・・・・・わかった」

小高い丘から、駆け下りれば門はすぐに見えた。
門番が二人、暇そうに突っ立っているのが見える。

( ^ω^)「ご苦労様ですお〜」



14 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 20:47:52.54 ID:Dgp4lyuR0

門番1「おい、ちょっと待て。どこから来た?」

(;^ω^)「お? えっと・・・・・・」

門番2「今日は誰も出ていないはずだが・・・・・・」

('A`)(まずいな・・・・・・飾りだと思ってた)
  _
( ゚∀゚)「ちょっと、ごめんなさい」

一瞬で男二人がひっくり返った。
方向を操るジョルジュの合成だろう。

('A`)「おいおい・・・・・・」

後頭部を打ったのか、視線が彷徨ってる。

(;^ω^)「今のうちだお!」

門の中に駆け込み、できるだけ門から離れた。

(;^ω^)「はぁ、はぁ・・・・・・ここまで来れば」



16 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 20:52:11.48 ID:Dgp4lyuR0

(;'A`)「ったく、誰だよ、大丈夫なんて言ってたやつ」
  _
(;゚∀゚)「まあ、いいんじゃね? で、どうするよ」

人通りは少ない。
住宅街なのだろうか、一戸建ての家がきれいに並んでいる。

(;'A`)「情報って言ったら、どっかの店だろうなぁ」

周りを見回してみるが、人が集まりそうな場所はなかった。

(;^ω^)「少し歩いてみるお、あっちに高い建物もあるお」

塔を囲うように、ここよりも高い建物が立っている。
光る文字も見えるし、レストランなんかもあるかもしれない。
  _
(;゚∀゚)「どうしてこんなに人通りがすくねえんだ?」

(;^ω^)「わからないお・・・・・・とりあえず、中心に向かっていくお」

嫌な汗が流れ出てくる。
これだけ広い都市で誰もいない道。
漠然とした不安が脳内をよぎる。

17 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 20:55:43.23 ID:Dgp4lyuR0

言葉なく歩き続けた。
何時間か歩いているが、まだ三分の一も来てないだろう。

(;'A`)「駄目だ、休憩しよう」

最初に根を上げたのは、ドクオだった。
もっとも、僕もかなり限界に近いところまで来てたのだけれど。

とある家の塀にもたれかかって休むことにした。

(;^ω^)「遠いお・・・・・・・」

(;'A`)「もう昼頃だし、腹も減ってきたなぁ」

|(●),  、(●)、|「何してるんだ?」
  _
(;゚∀゚)(;'A`)(;^ω^)「!?」

いきなり後ろから声をかけられたかと思うと、巨大な顔の男がいた。

|(●),  、(●)、|「どこの家の子だ?」

(;^ω^)「いや、あの・・・・・・」



18 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 20:58:09.59 ID:Dgp4lyuR0

うまくすれば、現在の状況を聞けるかもしれない。
いったん落ち着こうと、深呼吸した。

|(●),  、(●)、|「ストリートチルドレン? にしちゃ、恰好が小奇麗な・・・・・・」

(;'A`)「どうして、こう、人がいないんですか?」

|(●),  、(●)、|「戦争が始まるからな。犠牲になりたくなければ、家の中にいろ、と。
          とりあえず、うちに入りなさい。話はそれから」

半ば引っ張られるようにして、家の中に入った。

(;^ω^)「えっと、ブーンたちを怪しいと思わないのですかお?」

こんな時、子供たちだけで、外をうろついていれば、怪しいと思うのが当然だろう。

|(●),  、(●)、|「子供を助けるのが大人の役目だよ。子供に罪はない」

(;'A`)「俺達、仲間を探してるんです!」

(;^ω^)「ドクオ!」

制止したが、間に合わなかった。
それは、会ってすぐの人間に話すことじゃない。



19 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 21:01:25.27 ID:Dgp4lyuR0

|(●),  、(●)、|「・・・・・・最近、中心部で子供たちをよく見るって話を聞いたことがあるけど、彼女達?」

(;^ω^)「会ったんですか!?」

|(●),  、(●)、|「話に聞いただけだ」
  _
(;゚∀゚)「おっさん、中心部まで連れて行ってくれ!」

まずい、と思った。
ジョルジュの目が据わっている。

|(●),  、(●)、|「それはできない」
  _
(;゚∀゚)「なら仕方ねぇ・・・・・・」

(;^ω^)「ジョルジュやめるお!」

後ろから両腕を押さえ、視界を奪った。
これで何もできないと思う。

|(●),  、(●)、|「はぁ・・・・・・」

でかい顔から出るため息は、相応にでかい気がした。



20 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 21:04:52.05 ID:Dgp4lyuR0

|(●),  、(●)、|「できないことはない、しかしその理由を話してもらおう」

(;^ω^)「・・・・・・っ!」

話せば確実に連れて行ってもらえるという保証はないだろう。
最悪の場合、兵を呼ばれてしまう。

ジョルジュもドクオも黙った。
この賭けの分の悪さに気づいてるだろう。

|(●),  、(●)、|「話さないのなら、連れていけないな。こっちも危険なわけだから」

(;^ω^)「・・・・・・・」
  _
(;゚∀゚)「俺達は・・・・・・VIP島の人間だ」

言った。
これでもう後戻りはできない。
最悪、屋敷の主人を倒してでも逃げなければ。
しかし、杞憂に終わった。

|(●),  、(●)、|「で、その幼馴染を助けるためにわざわざ?」
  _
(;゚∀゚)「ああ、そういうことだ。約束を果たしてくれないか?」



21 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 21:07:55.03 ID:Dgp4lyuR0

男の顔を見つめる。

首が縦に振られた。

|(●),  、(●)、|「ついてこい。中央区のある旅館で子供たちを保護しているって話だ」

男は車のエンジンを入れる。
乗れ、と手で合図され、僕らは後ろの席に乗り込んだ。

|(●),  、(●)、|「他に車は走ってないしな、行くぜ?」

急に後ろに引っ張られる。
空いたままの窓からは強い風が入り込んでくる。

|(●),  、(●)、|「すぐに着く」

景色がどんどん過ぎ去っていく。

(;'A`)「うっぷ・・・・・・」

|(●),  、(●)、|「吐くなよ?」

(;'A`)「う、うん」

ドクオが頷いた途端、爆発音と同時に、車が大きく揺れた。



23 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 21:10:57.15 ID:Dgp4lyuR0

(;^ω^)「なんだお!?」

急停車で前に放り投げられそうになった。

|(●),  、(●)、|「塔が・・・・・・」

塔の一部から火の手が上がり、崩落していく。

(;^ω^)「どういうことだお?」

車から降りて、合成に集中する。
求めるのは、ここから崩落部分を見えるほどの視力。

( ^ω^)「【視力】と【距離】の合成!」

思いつきの【情報】だ。うまくいくかどうかなんてわからない。
ただ、やってみる価値はあると思った。

( ^ω^)「!」

視界が急激に広がったせいで眩暈を起こしそうだった。
だが、確かに見えた。
戦闘しているクックルさんが。

( ^ω^)「ブーンは塔に行くお」



26 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 21:13:26.09 ID:Dgp4lyuR0

('A`)「どうしたんだ? 何が見えた?」

車の中からドクオが聞いてくる。

( ^ω^)「合成士が闘ってたお。ブーンは協力しに行くお」

一瞬だけ見えた、合成士は二人。クックルさんと、もう一人。
当然、見たことはなかったが、胸の奥底が熱くなっていくのを感じる。
  _
( ゚∀゚)「俺も行こう!」

('A`)「俺も」

( ^ω^)「駄目だお! 危ないお」

2人の合成のレベルはよく分かる。
単純に見積もっても、僕の半分ぐらいだと思う。
  _
( ゚∀゚)「危険は承知でここに来た!」

( ^ω^)「でもだお・・・・・・」



27 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 21:16:32.80 ID:Dgp4lyuR0

|(●),  、(●)、|「他の子供はどうするつもりだ?」
  _
( ゚∀゚)「全部終わったら迎えに行くさ!」

|(●),  、(●)、|「欲張りだな・・・・・・だが、そういうのは嫌いじゃない。まかせな」

車は猛スピードで走り始めた。
僕の心はすでに復讐に囚われていた。


────────時間を少し遡る────────


爪'ー`)y‐「さて、ここまでは計画通りですね」

真っ暗の夜。街からは灯りはほとんど消えていた。
三人が現れたのは、使われていない小屋。
道路に面した窓ガラスは粉々に吹き飛んでいる。

( ゚∋゚)「塔内に直接つないでくれればよかったのに・・・・・・」

爪'ー`)y‐「まぁ、センサーみたいなものを仕掛けられてたらどうしようもありませんからね
      昼間に堂々と乗り込む方が安全でしょう」



28 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 21:19:46.56 ID:Dgp4lyuR0

lw´‐ _‐ノv「では、見張りを決めて寝ましょうか」

爪'ー`)y‐「私が見張りましょう。2人とも休んでくださって結構です」

( ゚∋゚)「なら、お願いね」

壁にもたれて目を閉じた。
シュールも地面に横になっている。

爪'ー`)y‐「明日、全て終わらせましょう・・・・・・」

──────

────

──

太陽が世界の中心になり、幾分か経った頃。
特別な形状をしたマントを羽織って、塔の前に立っていた。

それは黒く、地面を引きずるほど長い。
両手もすっぽり隠れるている。
最も特徴的なのは襟から二本の細い布が垂れていることだ。

門の前の大通り。
人通りはなく、不気味に静まり返っている。



29 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 21:22:59.23 ID:Dgp4lyuR0

( ゚∋゚)「とっとと捻り潰して、帰るか」

lw´‐ _‐ノv「正面からですか?」

爪'ー`)y‐「正面からで十分でしょう。この城にいる程度の数なら余裕で殲滅できるでしょうから」

では、と中でも一番年をとっているように見える男が門の前で拳を構える。
ゆっくりとその拳を後ろに引く。

爪'ー`)y‐「【拳】と【砕ける】の合成」

突き出された拳は決して早いとは言えない速度。
しかし扉に触れたとたん、薄いガラスであったかのように粉々に砕けっ散った。

爪'ー`)y‐「おっと、気づいていたのですか」

扉を破壊して見えたのは、銃口が蜂の巣のように並んでいる光景。

( ゚∋゚)「オサムは頂上の部屋にいますので、先に行かせてもらいます」

銃弾が放たれる前に、クックルは頂上に向けて落下していった。



32 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 21:25:27.19 ID:Dgp4lyuR0

爪'ー`)y‐「螺旋階段状になっていると、一気に上に行けて便利ですね」

lw´‐ _‐ノv「フォックスさんも行ってください。ここは私が片付けておき」

シュールが言い終わる前に発砲音が鳴り響く。
それを皮切りに、十数秒の間、絶え間なくなり続ける。
音が鳴り止んだとき、そこには一つの影しかなかった。

lw´‐ _‐ノv「うーん、素晴らしい」

シュールはただ立っていただけだった。
鉄より堅いマントに行く先を阻まれた、無数の銃弾が足元に転がっている。

lw´‐ _‐ノv「怪我をしたくなければ帰って下さい」

丁寧な警告、しかし包囲網は崩れない。

lw´‐ _‐ノv「では。【空気】と【空気】の合成」

兵士達を囲うように柔らかい壁が出来上がる。それは、箱のように組み上げられた。
もちろんその壁は目に見えない。
中の兵士たちは、壁に突撃したり、発砲したりしている。

lw´‐ _‐ノv「無駄です。では」



33 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 21:28:00.00 ID:Dgp4lyuR0

エレベーターに向かおうと、奥に続く廊下に向かう。

lw´‐ _‐ノv「ん?」

背中に違和感を感じて振り向く。
視界に入ったのは、銃口。
服の襟には階級を表すバッチが光っている。

lw´‐ _‐ノv「うまく逃れたようですね・・・・・・」

(’e’) 「合成に関しては、聞き及んでいましたから」

lw´‐ _‐ノv「その武器では、このマントを破れません。やめた方がいいですよ」

そう言われても男は狙いを外さない。

(’e’)「その位、わかりますよ。ですが、マントのないところは?」

シュールは発砲される直前に頭を下げ、フードで覆う。
弾は甲高い音をたて、虚空へ消えていった。

(’e’)「頭を下げる必要がある、ということは、あなたは自分の体を強化できない、もしくは銃弾を止めるほどの力はない、と」



35 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 21:31:04.52 ID:Dgp4lyuR0

シュールは返事の代わりに空気の壁を作ろうとする。
男は右に左に、すばやくランダムに動く。
まるで閉じ込められるのを解っているかのようだった。

(’e’)「先ほどと同じことを?」

lw´‐ _‐ノv(面倒ですね・・・・・・一気に行きますか)

男が動いている範囲よりも大きく取り、壁を作ろうとした。

(’e’)「させませんよ」

合成するタイミングが分かっているかのように、男はシュールの懐に飛び込む。
取り出したナイフでフードの隙間を狙う。
シュールはバックステップで距離をとった。

lw´‐ _‐ノv「どうして・・・わかるのですか?」

(’e’)「合成なんてのは自然の法則を乱すものです。感覚を研ぎ澄ませれば、何かをしようとしてるのはすぐに分かります」

言い終えると、男は再び構える。
若干前に伸ばした右手には銃、その後ろの左手にナイフを構える。



36 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 21:38:56.22 ID:Dgp4lyuR0

lw´‐ _‐ノv「【マント】と【両腕】を合成」

マントの裾の一部が彼女の両拳を覆う。

(’e’)「肉弾戦もできるのですか?」

lw´‐ _‐ノv「ゆっくりしている時間もないので・・・」

まっすぐに振り下ろされる手刀。
鉄の硬さでコーティングされたそれは命を奪う鈍器となる。

が、男は覆われていない腕の部分を受け、ナイフでフードの隙間を狙う。
眼前に迫ったナイフを掴むシュール。

受け止められた部分を起点にして、滑らすように手刀を突き出す。
それを顔を動かすだけで避け、握られたままのナイフを離し、胸倉を掴み投げの動きに入る。

シュールは一瞬で足を刈られ宙を舞う。
投げ切られる前にナイフを握った拳で男の額を狙った。

それをよける動作で、掴んだ襟を離す。
叩きつけられることを免れ、すぐさま距離をとる。

lw´‐ _‐ノv「っと、かなりできますね」

(’e’)「自己流ですよっと」


37 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 21:41:40.37 ID:Dgp4lyuR0

男の左手には新たなナイフが握られていた。

男はナイフを投擲する。
それを屈んで避け、距離を詰め、下から拳を振り上げる。
男は一歩下がり、その勢いで浮いたフードの中を狙って弾丸が撃ち込む。

が、その一発で彼女の頭が弾けることはなかった。
強化された反対側の手が、弾丸を阻む。

上昇運動を無理やり横回転に持っていき、反回転して蹴りを放つ。

(’e’)「っと・・・」

蹴りは男を捉えたが、数歩下がるだけで留まった。

lw´‐ _‐ノv「やはり、強化してなければ駄目ですか」

(’e’)「いくら鍛えてもあなたは女性ですよ」

マントの届かない足元を狙う銃口。
シュールはすぐに飛ぶ。
銃弾は地面を削ることはなかった。
跳躍を予想していた男は、すぐに角度を修正。顔を狙って数発。



38 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 21:45:51.92 ID:Dgp4lyuR0

対して、両手を前に出してそれを防ぐ。
それは同時に彼女の視界を塞ぐ。

男はその一瞬で距離を詰め、突進する。
地面に叩きつけ、ナイフを振り下ろした。

lw;´‐ _‐ノv「っ!」

勢いのついたナイフを両手で押さえる。
男は勝ち誇った顔で銃の照準を合わせた。


(’e’)「がぁ!」


銃弾が発射されることはなかった。
襟の布が男の胸を貫いていたからだ。

lw;´‐ _‐ノv「はぁ・・・・・・思ったより苦戦してしまいましたね。何とかできる、と思うのは悪い癖です。
     次は最初っからこれを使うことにしましょう」

シュールはエレベーターに向かって、さらに奥に進んで行った。



39 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 21:48:54.59 ID:Dgp4lyuR0

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「こんにちわー」

声の元は、小さな少女。

lw´‐ _‐ノv「そこをどいてくれるかな?」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「人を通したらめ!」

ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「やっつけないの?」

後ろからの声に振り向くシュール。
そこには、同じ服を着た少女がいた。

lw´‐ _‐ノv「通してくれないかなぁ?」

一歩ずつゆっくりと近寄る。

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「それ以上近寄ったらめ! その襟の布。合成してるでしょ?」

lw´‐ _‐ノv「!」

足が止まる。



40 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 21:52:33.92 ID:Dgp4lyuR0

ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「やっつけちゃおうよ!」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「えー乱暴なのは、め」

ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「大丈夫だから! いっくよー!」

片方の少女が勢いよく両手を上げる。

lw´‐ _‐ノv「?」

ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「お人形さーん!」

(//‰ ゚)(//‰ ゚)(//‰ ゚)(//‰ ゚)(//‰ ゚)
(//‰ ゚)(//‰ ゚)(//‰ ゚)(//‰ ゚)(//‰ ゚)


lw´‐ _‐ノv「!」

飛ぶように人形が集まってきた。
布を使っていたり、金属を使っていたり、不格好なものだ。

その数、ざっと10。
構えるが、人形は動かない。

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「むぅ・・・じゃあ、ちょっとだけだよ」



42 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 21:57:36.06 ID:Dgp4lyuR0

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「【人形】と【命】の合成」

(//‰ ゚)(//‰ ゚)(//‰ ゚)(//‰ ゚)(//‰ ゚)
(//‰ ゚)(//‰ ゚)(//‰ ゚)(//‰ ゚)(//‰ ゚)

ただ重なっていただけの人形が立ち上がり、列に並ぶ。
それぞれが刃物を持っている。

lw´‐ _‐ノv「二人で、一人ですか」

ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「そういうこと。私が容れ物を作り、彼女が操る」

lw´‐ _‐ノv「私が勝ったら通してね」

塔一階で合成士の闘いが始まった。

────────

────────


43 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 22:00:31.75 ID:Dgp4lyuR0

( ゚∋゚)「とりあえず、王座の間でも行きましょうかね」

螺旋階段の中心を落下、否、上昇していく。

( ゚∋゚)「!?」

とっさに方向転換し、階段に着地した。
武装した兵が待ち伏せしていたからだ。

   「大人しく投降しろ」

拡声器を通して聞こえてくる無機質な声。

( ゚∋゚)「ど阿呆ね」

拳を強く握り込み、傍の壁を殴った。
上の方から悲鳴が聞こえてくる。

( ゚∋゚)「ぴったり」

螺旋階段上部では、壁の一部が内側に突き出ていた。
それに弾き飛ばされ、真下に落下していく人間。



44 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 22:05:34.18 ID:Dgp4lyuR0

再び、合成で上昇していく。
たどり着いたのは円形の部屋。

( ゚∋゚)「これで半分か・・・・・・」

(゜д゜@「動くな!」

部屋の隅に無数の重火器が並べたてられている。

(゜д゜@「動けば、肉片も残さん」

( ゚∋゚)「その程度? 足りないわよ」

数多くの重火器を前にして顔色一つ変えない。

(゜д゜@「くそがぁぁぁ!!!」

それが気に障ったのだろう。
リモコンと思わしきもののスイッチを押そうとする。

しかし、それが押される前に爆発音が響いた。
重火器それ自体が爆発した音だ。

爪'ー`)y‐「けっほ」



45 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 22:06:53.21 ID:Dgp4lyuR0

煙が晴れ、フォックスが現れる。
ほとんどの重火器はひん曲り、使えなくなっていた。

(゜д゜@「な・・・に?」

( ゚∋゚)「では」

フォックスとクックルは地面に座り込んだ男を無視し、さらに上に向かうための合成をし始める。

( ゚∋゚)「!?」

横から飛んできたコンクリの塊を弾く。

ハハ ロ -ロ)ハ「いい反応ですね」

( ゚∋゚)「・・・・・・ハロ。フォックス、ここは私がやる」

爪'ー`)y‐「では、お任せします」

飛び立つフォックスに向かって瓦礫が飛ぶ。

( ゚∋゚)「あんたの相手はこっち!」

砕け散った重火器の破片を横からぶつけ、フォックスから逸らす。

ハハ ロ -ロ)ハ「まぁ、いいですか。上にはオサム殿もいますし」

( ゚∋゚)「積もる話もあるけど、それはすべて終わってからね」

46 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 22:08:37.55 ID:Dgp4lyuR0

塔のちょうど真ん中。
螺旋階段が途切れ、丸い部屋が広がる階。
【方向】の【情報】を持つ2人の合成士がぶつかった。

────────

────────

(´<_` )「来たな」

( ・∀  ∀・)「ええ」

オトジャとモラズは北部の二ヶ所にテントを張り、待機していた。
二つのテントは【空間】合成で連絡ができるようにつながっている。

(´<_` )「思ったよりも早かったな」

( ・∀  ∀・)「すぐに攻撃しますか?」「仕掛けますか?」

通信穴から二つの声が同時に聞こえてくる。

(´<_` )「すまん、話すのはどっちかにしてくれ」

( ・∀  ∀・)「ああ、すいません」

('(゚∀゚∩「あんな船ごとき、すぐに潰してきますよ」


47 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 22:10:34.96 ID:Dgp4lyuR0

オトジャのもとに届くのは血気はやる声。

(´<_` )「待て。相手の動きを見てから」

( ・∀  ∀・)「すいません、行ってしまいました・・・・・・」

テントから飛び出して行ったナオルヨは上空にに飛び上がる。
若くして類まれなる才能を開花させた彼は、同年代でもっとも強い合成士だった。

('(゚∀゚∩「いっくぜぇ・・・・・・【俺】と【想像】を合成」

彼の想いが現実になる。
人が彼を言葉で表現するのなら、天使、だろう。
真っ白な翼を生やし、大空に飛び立った。

('(゚∀゚∩「【俺】と【想像】を合成」

突き出した右腕が巨大な鉄の塊となる。

('(゚∀゚∩「おりゃあああああ」

それを船に向けて振り下ろす。
軍艦の先端が砕け、沈んでいく。

('(゚∀゚∩「次だ、次」



48 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 22:15:11.49 ID:Dgp4lyuR0

海を埋め尽くすかと思われるほどの船。
一つ沈めたぐらいでは、大した損害ではないだろう。
攻撃に気づいた他の船から砲撃が始まる

('(゚∀゚∩「あったんねぇー」

空を駆け、数度、右手を振り下ろす。
その度に船が潰れて沈んでいく。

('(゚∀゚∩「やべっ!」

一つの弾丸が羽を貫く。
浮力を失い真っ逆さまに落下していくナオルヨ。

('(゚∀゚;∩「まじぃな・・・合成間に合わない・・・か」

水面にぶつかると思われたが、直前に彼はその場から消えた。

(´<_` )「ったく、こっちの言うことを聞け」

彼が目を開けた時に最初に見たのはオトジャの顔だった。

('(゚∀゚∩「??」





49 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 22:19:51.91 ID:Dgp4lyuR0

ナオルヨが現れたのはオトジャ側のテント。

(´<_` )「いいか、次は助けられるかどうかわからんぞ?」

強い言葉で念を押すオトジャ。
黙ったまま頷く。

('(゚∀゚∩「すいませんでした・・・・・・」

頭を下げるとテントを出て行った。

( ´_ゝ`)「しっかし、向こうの合成士は数が少ないのか?」

(´<_` )「今の相手の動きを見ると、数は少ないようだな」

( ´_ゝ`)「近づける前に、多少なりとも数を減らしてやった方がいいな。
       【方向】合成士と船を沈められる合成士をセットで送ることにしよう」

(´<_` )「賛成だ。聞こえていたかモラズ?」

向こうから聞こえてきた声は肯定だった。
呼びだされた合成士たちは海岸に並ぶ。
2人組のペアが、モラズ側で5、オトジャ側に7組出来上がった。

( ・∀  ∀・)(´<_` )「行け!」

一斉に12組の合成士が飛び立つ。
雲の上まで飛翔する者。
海面すれすれを移動する者。

51 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 22:23:10.20 ID:Dgp4lyuR0

それぞれが様々な軌道を描く。

一瞬後、爆音とともに水柱が立ちあがる。

( ´_ゝ`)「いい調子だな。このままいけば、島に来る前に全滅か?」

海が元に戻った時は十数の戦艦が沈みかけていた。

(´<_` )「合成士は来てないのか?」

( ´_ゝ`)「そうかもしれ・・・ちょっと待て!」

机の上にある地図、その上を動く12の小さな置物。
それが一つずつ動かなくなっていく。

(;´_ゝ`)「まずい、合成士だ。間違いない。オトジャ!」

(´<_`;)「わかってる!」

地図上を動き回る置物は一つ、また一つと動きを止めていく。

(´<_`;)(くそ、動きすぎだ。狙いが絞れない・・・・・・)

(;´_ゝ`)「・・・・・・」(´<_`;)

最後の一つが、止まった。



53 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 22:30:52.70 ID:Dgp4lyuR0

(#´_ゝ`)「くそ! 全滅か・・・・・・」

強く机を叩くアニジャ。
その勢いで置物がこぼれる。

(´<_`;)「すまない・・・・・・」

(;´_ゝ`)「いや、どうしようもなかった。問題は、こいつがこちらに来るってことだ」

(´<_`;)「ナオルヨ達に迎え撃たせよう。そちらも気をつけてくれ、モラズ」

( ・∀  ∀・)「わかりました」

連絡を終えてテントを出たオトジャ。
そこにはナオルヨが立っていた。

(´<_` )「そういうことだ。ナオルヨ、今度こそしっかり頼むぞ」

('(゚∀゚∩「はいッ! 【俺】と【想像】の合成!」

再び翼を生やしたナオルヨはまっすぐ飛びあがり、敵を見下ろす。
船に向かい降下しようとしたところで、目の前の空間が歪んでいることに気づく。

('(゚∀゚∩「・・・・・・オトジャさん?」

〈::゚−゚〉「雑魚か・・・・・・」



54 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 22:33:35.27 ID:Dgp4lyuR0

歪みが割け、そこから大男が現れた。

('(゚∀゚∩「合成士か!」

〈::゚−゚〉「お前に用はない。通してもらおう」

大男は両手を広げ、合成を始めた。

────────

────────

爪'ー`)y‐「逃げないのですね」

塔の頂上。わずかな明かりしかなく、非常に暗い。
が、男はその奥の王座に座っていた。

【+  】ゞ゚)「逃げる、必要があるか?」

爪'ー`)y‐「ただ王座に座っているだけの人間に何ができるのですか?」

【+  】ゞ゚)「自分達だけが特別だと思わぬことだ」

ゆっくりと立ち上がるオサム。

【+  】ゞ゚)「【自身】と【王座】の合成」

派手な装飾の椅子が形を変え、オサムの体に纏わりついていく。
足が、腕が、覆われていく。

55 名前: ◆gMIGdyOjeA :2009/07/14(火) 22:34:57.21 ID:Dgp4lyuR0

爪'ー`)y‐「!」

【+  】ゞ゚)「王であるから、闘えないと? そんなことは、ない」

巨大な鎧は薄明かりに照らされ、わずかに輝いている。

爪'ー`)y‐「どのみち、あなたを倒さなければなりませんので」

フォックスは地を蹴り、距離を詰めた。





to be continued...


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内藤エスカルゴ - 完結作品一覧 - ( ^ω^)は合成士のようです - 第14話
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