内藤エスカルゴ - 完結作品一覧 - ( ^ω^)は合成士のようです - 9話
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 21:12:33.87 ID:kcUox5xo0

いつもとは違うくすんだ色の天井。
友人のいない部屋。
暇をもてあましているところに訪ねてきたのは先刻、行動を共にした女性。

lw´- _-ノv「右腕の調子はどうですか?」

布団の中から右腕を取り出す。

( ^ω^)「傷跡がまったく残ってないお」

痛みもまったくない。

lw´- _-ノv「それはよかったです」

( ^ω^)「あいつは、どうなったんですか?」

lw´- _-ノv「ハイン警部が仲間に連絡されて、現在監禁してます」

( ^ω^)「そうですかお・・・・・・」

lw´- _-ノv「VIP島に連絡し許可をとった後に、この国の法によって裁かれるでしょう。
すでにハイン警部が連絡していると思いますよ」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 21:14:09.84 ID:kcUox5xo0

( ^ω^)「シュールさん、これから時間ありますか?」

lw´- _-ノv「ええ」

( ^ω^)「合成の鍛錬に付き合ってほしいですお」

lw´- _-ノv「あまり無理をしないほうが良いのですが・・・・・・」

( ^ω^)「今のうちに感覚を覚えておきたいんですお」

困った顔をするシュールさん。

lw´- _-ノv「わかりました。それでは、街の外でやりましょう。
人がいるところだと恐れられてしまうでしょうから」

シュールさんが扉を開けて待っている。
病院着のまま部屋の外に出た。

lw´- _-ノv「下に車がとめてありますから、それで外に出ます。街から少し離れたところで降りて、そこで少しだけ」

( ^ω^)「わかりましたお。ところでシュールさんの合成は戦闘的な応用は可能なんですかお?」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 21:17:13.10 ID:kcUox5xo0

lw´- _-ノv「VIP学園を卒業した後、少数の人間はさらに上級の【失楽園】へと進級します。
そこは万が一のときのために、合成能力の高い生徒を戦闘に特化させるため場所です」

( ^ω^)「聞いたことありますお。合成能力が高くないと進めないクラスがあるって・・・・・・」

lw´- _-ノv「そこで1年間合成術の様々な戦闘的応用を学びます」

と、いうことは

( ^ω^)「シュールさんはそこの生徒だったんですか」

lw´- _-ノv「そうですよ。ですから、心配は要りません」

ニコッ、と暗黒的な微笑を浴びせられた。冷や汗が出てくる。

( ^ω^)「べ、べつに侮っているわけじゃないですお」

lw´- _-ノv「大丈夫です、戦ってみれば解りますから」

無言になった僕らが乗った車は、街の外に出た。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 21:20:24.72 ID:kcUox5xo0

lw´- _-ノv「さて、この辺でいいですかね」

シュールさんは街から少し離れたとこに車を止めた。
車から降りて車と十分な距離とる。

lw´- _-ノv「始めましょうか。いつでもどうぞ」

シュールさんは楽に立っている。

( ^ω^)「行きますお」

先の戦闘で使った砂の刃を四つ、生み出す。
それぞれをシュールさんに向けて飛ばす。

が、

砂の刃は生み出された位置から動かない。

lw´- _-ノv「その程度ですか?」

( ^ω^)「お?」

いったん合成を解除し、砂の棘を作り出した。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 21:22:46.07 ID:kcUox5xo0

( ^ω^)「行くお!」

猛スピードで砂の棘を伸ばす。

万一に備えて先を丸めていた棘も寸前で止められてしまった。

lw´- _-ノv「君の弱点は、その空っぽの身体」

棘を避けてシュールさんは歩み寄ってくる。

( ^ω^)「まだだお!」

シュールさんの両サイドに砂の壁を立ち上げる。
そのまま壁を狭めていく。

音もなく砂の壁は閉じた。

(;^ω^)「ふぅ。だ、大丈夫かお・・・・・・?」

土煙でシュールさんがまったく見えない。

     「君の合成はこの程度?」

(;^ω^)「!?」

舞い上がる土煙の中から少しの砂もかぶらずに出てきた。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 21:25:54.07 ID:kcUox5xo0

lw´- _-ノv「さて、もうおしまい?」

数歩先にシュールさんがいる。これでは合成して意識を失うことはできない。
距離をとろうと振り向こうとしたがまったく動けない。
どんどんシュールさんは近づいてくる。

lw´- _-ノv「残念でした」

目と鼻の先でシュールさんが笑う。

lw´- _-ノv「私が悪人だったら、ここでブーン君の人生は終わりだね。グサッと一突き」

笑いながら恐ろしいことを言ってくる。

lw´- _-ノv「さて、何が悪かったと思う?」

(;^ω^)「うーん・・・・・・。わからないですお」

lw´- _-ノv「まず、相手の合成を見くびっちゃ駄目。次に不自由な身体まで近づかれたら駄目、特にブーン君はね。
さっきだって、目の前に砂の壁を作り出すことぐらいは出来たと思うよ」

( ^ω^)「はいですお」

lw´- _-ノv「あとはもっと早く合成をすること。相手が剣を振るうよりも早く、引き金を引くよりも早く、ね。
それだけで十分敵はいない」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 21:28:24.39 ID:kcUox5xo0

( ^ω^)「どうやったら早く合成できるんですかお?」

lw´- _-ノv「反復練習が一番」

( ^ω^)「今度から、練習しますお」

lw´- _-ノv「毎日、朝起きてから数十回かやるだけで全然違うよ」

( ^ω^)「お?」

街のほうから車がこっちに向かって来ていた。

从;゚∀从「おーい!」

ハイン警部がこっちに向かって叫んでる。

lw´- _-ノv「どうしたんでしょうね」

車から降りてきたハイン警部はひどくあせってるように見える。

从;゚∀从「ふたりとも聞いてくれ、やべぇんだ」

( ^ω^)「何があったんですかお?」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 21:31:40.67 ID:kcUox5xo0

从;゚∀从「VIP島が攻撃されてる!」

( ^ω^)「お?」

ハインさんの言うことの意味はすぐには理解できなかった。

lw´- _-ノv「どういうこと!?」

シュールさんの発言で、事の大きさに気づいた。

(;^ω^)「どど、どういうことだお?」

从;゚∀从「わからねぇ。ただ、数日前に出たVIP島行きの船が帰ってきたんだ。
軍艦何隻かから攻撃を受けてたらしい」

lw´- _-ノv「そんなっ!」

(;^ω^)「すぐにVIP島に連れて行ってくださいお!」

lw´- _-ノv「ブーン君はここでまってて。私が行ってくる」

(;^ω^)「嫌ですお! ブーンも一緒に戦わせてくださいお!」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 21:33:20.27 ID:kcUox5xo0

lw´- _-ノv「私に触れることすらできなかったのに?」

返ってきたのは、否。

lw´- _-ノv「どんな凄い合成が出来ても、あなたはまだ子供。危険な目にあわせるわけにはいかない」

(;^ω^)「たくさんの大事な人が、島にいるんですお!」

ドクオが、ヒートが、ジョルジュが苦しんでるかもしれない。
今度は自分の合成で助けてやれるのだ。

(;^ω^)「お願いですお」

lw´- _-ノv「駄目。それに、島には他にも訓練を受けた人間がいる。子供は・・・・・・」

(;^ω^)「子供は逃がしている、って言うつもりですかお? 急に攻められたらそんなこと出来ますかお?」

lw´- _-ノv「どうしても、と言うのなら。それなら一度だけチャンスをあげます」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 21:35:18.14 ID:kcUox5xo0

(;^ω^)「どうすればいいんですかお?」

lw´- _-ノv「私に膝をつかせたら、同行を許します。私の手があなたに触れたら終了です」

(;^ω^)「いきますお・・・・・・」

lw´- _-ノv「こんなに近いとブーン君が不利ですからね」

先刻と同じくらいの距離をとる。

lw´- _-ノv「時間が惜しい、始めて」

( ^ω^)(絶対、みんなのとこに行くお!)

( ^ω^)「いくお!」

シュールさんの周りに砂のブロックを生み出す。
それらを同時に動かす。ただ一直線に向けるのではなく、シュールさんを中心に天体のような軌道を作る。
当の彼女は、その中を平然と一歩ずつこちらに向かってくる。
後ろから一つの塊を接近させた。だが、直前で何かにぶつかったかのようにはじけた。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 21:38:31.03 ID:kcUox5xo0

( ^ω^)(これじゃあ、さっきと同じだお・・・・・・。それなら・・・・・・)

砂のブロックをシュールさんの頭上で一つに固めて、一気に落とした。
それも直前で何かにぶつかり動きを止める。

一歩、一歩とシュールさんは確実に近寄ってくる。

走って近づいてこないのは優しさからか?

一旦、砂の合成を解いた。その時、こぼれた砂がはじかれ、答えに気づいた。
零れ落ちた砂はシュールさんの左右に落ちた。それは砂のかまくらと言ったところか。
彼女は自分の周りの空気を合成して壁を作っていた。だから合成に集中していたせいで、走って近づくことも出来なかった。

( ^ω^)(あんな合成をしてたのかお・・・・・・)

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 21:41:23.12 ID:kcUox5xo0

考えろ。合成が解けるのはどういったときだ?
合成士の精神的疲労がピークに達したとき?

−この程度の合成で疲れるはずがない。

だったら、合成士が合成をやめた時?

−今、この時に合成をやめる筈がない。

集中が解けたとき?

−彼女の集中力が切れるのを待つか? いや、切らせればいい。

どうやって?

シュールさんはすでに50メートルほどの距離にいる。

( ^ω^)「これで、どうだお!」

再び砂を巻き上げる。さっきとは比べ物にならないほど圧倒的な量を。
そして、彼女を砂のドームに閉じ込めた。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 21:43:46.40 ID:kcUox5xo0

(;^ω^)「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」

圧倒的な量の合成で、精神力が削れていく。

(;−ω−)「・・・・・・」

身体に残っているわずかな意識をドームの下の地面と合成する。

(;−ω−)(シュールさんの足がある部分は・・・・・・ここだお)

その一点にのみ意識を集中し、突き上げた。勝利を確信した安堵で砂のドームは崩落する。

そのなかで、シュールさんは平然と立っていた。

(;^ω^)「!?」

lw´- _-ノv「今のは惜しかった。急な暗闇で集中力が乱されて、合成も不安定だった。
ただ、勝ったと思った瞬間に気を緩ませちゃいけない」

(;^ω^)「確かに、足を持ち上げたはずだお」

lw´- _-ノv「惜しかった、と言ったじゃないですか。足は上がりましたよ。
すぐ自分の身体と周りの空気を合成しただけです。あなたが、ドームを解いてくれなければそれも難しかったのですが」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 21:47:09.50 ID:kcUox5xo0

(;^ω^)「そんな・・・・・・」

足に力が入らず膝をつく。一歩一歩確実に近づいてくるシュールさん。

(;^ω^)(もう・・・・・・駄目かお?)

目の前にきたシュールさんは手を伸ばしてくる。動作がスローモーションに感じる。

(;^ω^)(これで、最後だお)

小さな、小さな砂の塊を二つ彼女の後ろから膝の裏にぶつけた。

lw´- _-ノv「っ!」

悪あがきだ。
バランスを崩すことだけをねらった。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 21:50:33.26 ID:kcUox5xo0

そのまま倒れそうになったシュールさんは、膝が地面の数センチ上で止まった。

lw´- _-ノv「今のも非常に惜しかったですよ」

その右手がブーンに触れた。

(;^ω^)「ブーンの負け、かお・・・・・・」

lw´- _-ノv「約束ですからね、ブーン君を連れて行くことは出来ません」

(;^ω^)「島のみんなをお願いしますお」

lw´- _-ノv「ええ、必ず」

从;゚∀从「終わったのか?」

安全地帯に非難していたであろうハイン警部が駆け寄ってきた。

从;゚∀从「いやー、すげぇな。合成士ってのは。とりあえず、街に帰ろうか」

lw´- _-ノv「はい。ブーン君、立てる?」

差し出された右手を取り、立ち上がる。

(;^ω^)「大丈夫ですお」

lw´- _-ノv「じゃあ、帰ろう」

街に入るまでは終始無言だった。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 21:51:53.35 ID:kcUox5xo0


lw´- _-ノv「さて、宿はどこをとってるの?」

( ^ω^)「民宿≪ンポ≫ですお」

lw´- _-ノv「そう。どの辺りか覚えてる?」

( ^ω^)「はい」

lw´- _-ノv「それじゃあ、道案内よろしくね」

宿にはすぐに着いた。駐車場なる所に車を止めてもらい、車から降りた。

lw´- _-ノv「島は絶対大丈夫だから。信じて待ってて」

( ´ω`)「わかりましたお」

シュールさんは車を出発させた。
ブーンはそれを見送ることしかできなかった。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 21:54:41.17 ID:kcUox5xo0


なにもすることなく、一週間が過ぎた。
未だに連絡は来ない。
幸いお金はあったので暮らすことは出来た。
宿で食事をし、昼間は街中をフラフラと移動し、時間をつぶした。
しだいに寒さが和らいで来た。もうすぐ冬が終わる。春までには島に帰れるだろうか・・・・・・。


( ^ω^)「一体いつまで待てばいいんだお・・・・・・」

街の最南端に港はある。
この街に来て初めて港まで来た。大きな船が数隻、泊まっている。

( ^ω^)「みんな、無事かお・・・・・・」

シュールさんと別れた日から毎日欠かさず鍛錬をしている。
八本柱の人は無事なんだろうか・・・・・・。
VIP島が攻撃を受けた、ということは計画がバレたのかもしれない。
クックルさんは、あの二人は、父さんと母さんは・・・・・・。

( ^ω^)「・・・・・・帰るお」

港を後にした。
街の人は誰も島の話をしない。田舎の島がどうなろうと興味がないのだろう。
そういえば、最初の頃、島を知っている人にあったな。

( ^ω^)「帰りにちょっと寄ってみるお」

ちょうど来たバスに乗ってお土産屋に向かった。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 21:57:10.03 ID:kcUox5xo0


「・・・・・・やっとついたわね」

ブーンが去った港に男が一人上陸した。

「早く彼を探さないと・・・・・・」

男は歩いて街に向かった。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 21:59:28.47 ID:kcUox5xo0


( ^ω^)「こんにちは」

お土産屋はバス停から少し離れたとこにあった。

川д川「いらっしゃぁ・・・・・・あなたですか。どうされたんですか?」

( ^ω^)「お・・・・・・特になんでもないですお」

川д川「島が攻撃されていることですか?」

( ^ω^)「!?」

川д川「少し前に聞いたわよぅ。どうして帰らないのぉ?」

( ^ω^)「知り合いの人に、危険だから帰ってくるな、と言われたんですお。
実力を証明することもできませんでしたお」

川д川「そう。私は合成術に関して書物でしか読んだことないからねぇ。
便利だなぁ、とは思ったけどぉ」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 22:02:14.01 ID:kcUox5xo0

( ^ω^)「合成術は万能ではないんですお。術士の力に左右されるんですお」

川д川「あなたは帰りたいんでしょぉ?」

( ^ω^)「当然ですお! 島には友達がいるんですお」

川д川「帰りたいなら帰るべきよぉ。後で後悔したくないかならねぇ」

( ^ω^)「でも・・・・・・・」

シュールさんには帰るな、と言われた。
あの兄弟も帰ってくるな、と言っていた。
そんなに自分には力はないのか?
あれだけの合成が出来る同い年なんか数えるほどしかいないはずだ。

( ^ω^)「でも、帰り方がわからないですお。島への定期船は止まっていますお」

川д川「ホントに帰りたいと思うんなら、いくらでも方法はあると思うけどぉ」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 22:05:08.33 ID:kcUox5xo0

そう言われると、辛い。
結局、自分が帰るのを躊躇っているのだ。
戦争が怖い。死ぬのが怖い。何も出来ないのが怖い。

川д川「そういえば・・・・・・うちは何代も前からここを経営してるんだけど、おもしろい家宝があってね」

店の女の人は奥に入っていった。
少しして一冊の本を持ってきた。しかし、本と呼ぶにはあまりにも大きかった。

川д川「数百年以上前のものらしいんだけど。これと一緒にある言葉が伝わっててね。確か・・・・・・『合わせる者に見せよ。さすれば再びあいまみん』だったかな」

( ^ω^)「どういうことですかお?」

川д川「私にも分からないわぁ。ただ、もう一つ伝えられてることがあって、
この本を預けた人は奇跡を起こした、ってね。開いてみたらどぉ?
ちなみに私の一族は誰一人開けなかったのよぉ」

ブーンは本を手に取り、恐る恐る開いた

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 22:08:24.44 ID:kcUox5xo0

( ^ω^)「・・・・・・白紙ですおぅ?」

目の前に世界が構築された。はるか昔の世界だろう。高い建物がまったくない。
なぜかその世界には友人がいた。

( ^ω^)「ドクオ!」

見覚えのある後姿に声をかける。

('A`)「ん? あぁ。長かったな。さて、身体を借りようか」

振り向いたドクオに違和感を感じる。

( ^ω^)「ドク・・・・・・オ?」

('A`)「だれだそりゃ? ・・・・・・あぁ、俺の子孫か。すまねぇが身体をもらうぞ。
子孫の友人から取るのは気が引けるが」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 22:10:45.86 ID:kcUox5xo0

子孫? 身体をもらう?
一体何を言ってるんだ?

('A`)「一応説明してやる。お前が開いた本は俺の意思を封じ込めたものだ。
VIP島の将来を知りたかった。何せ初代だからな」

( ^ω^)「合成士一族はどうやって生まれたんですかお?」

('A`)「ん? それか。さてねぇ。初代だっていっても【島を作った】初代だからな」

( ^ω^)「お? じゃあ、そんな昔から合成士はいたんですかお?」

('A`)「おお。いたぜ。まぁ、みんなよえっちかったがな。おそらく俺が最強の合成士だったろうな」

( ^ω^)「そうなんですかお・・・・・・。どうして島を作ったんですかお?」

('A`)「天変地異がな、起きたんだ。海が二つに割れた。いや、正確には割れようとしていた、か。
俺はもてる全精神をつかって島を創造した。世界を救うために。島を楔にして世界をつないだ」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 22:13:43.48 ID:kcUox5xo0

胡散臭い、と思っていたが話に引き込まれていく。
あの人の話はあながち嘘じゃなかったのか・・・・・・。

( ^ω^)「どうなったんですかお?」

('A`)「今のてめぇの存在が答えじゃねぇか。俺が死んで、世界は助かった」

( ^ω^)「死んだのにどうしてここに?」

('A`)「精神を一部、別媒体に封印しておいたのさ。万が一に備えてな。まさか役に立つとは思わなかったが」

( ^ω^)「で、どうするつもりなんですかお?」

('A`)「おいおい、さっき言ったじゃねぇか」

めんどくさそうに頭をかく。
見目はドクオそっくりだが仕草がドクオとは全然違う。

('A`)「お前の身体をもらう。精神体だけじゃあ復活できないからな」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 22:20:35.56 ID:kcUox5xo0

(;^ω^)「どどど、どういうことですかお?」

('A`)「そのまんまの意味だよ」

(;^ω^)「ブーンはどうなるんだお?」

('A`)「シラネ。俺だってこんなの初めてだしなぁ」

(;^ω^)「この身体はあげることは出来ないお。友達だってたくさんいるんだお」

('A`)「まぁ、そうなるわな。・・・・・・ここで」

森林の中のような、落ち葉が散乱している地面が現れた。

('A`)「俺と」

木がまばらに生えてきた、。

('A`)「戦って」

背景の空白部分がなくなった。

('A`)「お前が勝ったらおとなしく消えよう」

新たな一つの世界が出来ていた。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 22:24:50.05 ID:kcUox5xo0

(;^ω^)「・・・・・・むちゃくちゃだお。そもそも、あなたは最強の合成士じゃないですかお」

('A`)「やってみないことにはわからないよ」

(;^ω^)「困りますお!」

('A`)「やれやれ・・・・・・。なら、身体をもらうだけだが・・・・・・?
まぁいい。ハンデだ。俺の合成はこれだ。」

そう言ってドクオの祖先らしい人は腕をまくった。
そこにある不思議な形の痣。

(;^ω^)「それがなんなんだお?」

('A`)「ありゃ? 俺の時代の人間は、この腕の痣で情報がわかるんだがなぁ」

(;^ω^)「今は、そんな痣できませんお。それにあなたは何でも合成できる、って話ですお。
それじゃあヒントにもならないですお」

('A`)「正確には何でも合成できるわけじゃないだがな・・・・・・。まぁ、いいや。はじめるぞ」

初代は土を持ち上げた。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 22:30:49.62 ID:kcUox5xo0

(;^ω^)「えぇお!」

同様に土の塊を持ち上げた。

('A`)「おもしろいな。どんな情報なんだ?」

初代の操る土の塊が槍になってブーンに迫る。
同様に土を操作し、相殺した。
すぐに第二、第三の槍が飛んでくる。
合成を解いて横に転がって避けた。

(;^ω^)(早いお)

('A`)「ちなみに、この世界で死ねば、精神体は消滅する」

初代が話しながら、次々と槍を伸ばしてくる。

(;^ω^)(ありえないお! 何を合成したらこんな風になるんだお)

数十本の槍が辺りの木や地面を貫いて動きを止める。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 22:32:46.02 ID:kcUox5xo0

('A`)「逃げてばっかりじゃあ勝てないぜ」

(;^ω^)「おおぉ!」

こちらも土を合成して応戦する。
ただ、細かい粒にしてスピードを最大まで上げた。

('A`)「ふむ」

その弾丸は突如現れた壁に阻まれた。

('A`)「まさか・・・・・・な」

(;^ω^)「これでっ!」

シュールさんの時に使った、砂の壁を生み出し初代を覆った。

('A`)「遅い!」

砂のドームは内側からの棘による攻撃でその形を失った。

('A`)「どうして合成するときに動かない? それとも動けないのか?」

(;^ω^)「・・・・・・」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 22:37:02.30 ID:kcUox5xo0

('A`)「あまり時間をかけると身体に負担がかかるから、もう本気でいかせてもらう」

初代の周りに数十の砂の塊が浮かぶ。

(;^ω^)「このっ」

同様に砂の塊を作り出したが、5個を操作するので限界だった。
すべての塊がブーンの周りを囲うように浮かぶ。

('A`)「すまないな」


どおおおおおおおおおおおお

数十の砂の塊が槍になって同時に迫ってくる。
5個の砂の塊を壁のように張り巡らした。
圧倒的な密度の違いで壁は突き破られ、槍の雨が降り注いだ。
槍になった砂は固まりに戻って、再び槍になって降り注ぐ。
終わることのない危険極まりない豪雨。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 22:39:50.27 ID:kcUox5xo0

(;^ω^)「おおおおぉぉぉ!!!」

('A`;)「なっ!」

初代の後ろから素手で殴りかかったが、すんでのところで避けられた

('A`;)「いつの間に!」

(;^ω^)「そんなの教えるわけないお」

('A`)「・・・・・・なるほどな。壁で俺から姿を隠して、その後地中を移動したって訳か」

(;^ω^)(合成士としてじゃあかなわないお)

('A`)「今度は逃がさない」

(;^ω^)「!?」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 22:43:29.62 ID:kcUox5xo0

足が砂に捕らえられた。
先ほどの砂の塊が一つに集まり、巨大な刃が出来上がる。
まるで中世の処刑用具のようなそれは一気に距離をつめてくる

(;^ω^)「ああぁぁぁ」

砂の塊で受けた。刃は止まったかのように見えた

('A`)「これで、終わりだ」

止まった刃は動き出した。

回転を加えて。

ジャリジャリジャリ、と防御のために合成した砂が削れていく。
ふっと、意識が途切れた。当然、砂は霧散し刃は容赦なくブーンの首を断った。

('A`)「思ったより出来る奴だったが・・・・・・まだ子供か」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 22:48:53.95 ID:kcUox5xo0


( ^ω^)「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!! 首! 首! がぁぁ!」

(;'A`)「嘘だろ・・・・・・どうして生きてるんだ?」

( ^ω^)「・・・・・・・・・・・・?」

確かに首は切断されたはずだ。その痛みだってはっきり覚えている。
だが、今の自分は首がしっかりついている。

( ^ω^)「どういうこと・・・・・・だお?」

(;'A`)「こっちが聞きたい! 何をした?」

( ^ω^)「ブーンはただ死にたくない、っと思ってただけだお」

(;'A`)「・・・・・・。ここはお前の精神世界、ということか。
身体を奪うためにはお前の心を折らないと駄目なようだな・・・・・・」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 22:52:07.04 ID:kcUox5xo0

( ^ω^)「ブーンは絶対負けないお! 負けられないんだお!」

(;'A`)「死に続ければ、そのうち嫌になるさ・・・・・・おらぁ!」

迫ってくる砂の槍の合成は安定していない。

( ^ω^)(これならっ)

相打ち覚悟で木の葉を高速振動させて飛ばした。

(;'A`)「がぁぁ!」

(;^ω^)「おぉぉ!」

木の葉は初代に直撃しその左腕を真っ赤に染め、砂の槍はブーンの右腕を貫いた。

(;'A`)「このガキぃぃぃ」

合成は相手のほうが圧倒的に早い。気づいたときには自分の足元から生まれた棘が自分を貫いていた。

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 22:55:33.03 ID:kcUox5xo0

(;^ω^)「ごぽぅ」

血を吐いて意識が落ちた。
すぐに無理やり引っ張られるように目が覚める。

(;'A`)「こっちは回復しないのか・・・・・・なんてチートだ」

朝目が覚めたときのように平然と、無傷の状態でそこにいた。

( ^ω^)「もう終わりかお?」

(;'A`)「なめんなぁぁぁぁ!!!!」

復活しては殺され、殺されては復活し、
その合間合間に確実に疲労とダメージを蓄積させてやった。

(;'Aメ)「はぁ・・・・・・。はぁ・・・・・・」

(;^ω^)「もう、あきらめるお」

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 22:59:46.34 ID:kcUox5xo0

毎回殺されるのだって楽じゃない。いつ本当に死ぬか分からない。さっさと勝負を決めたかった。

(;'Aメ)「まさか、こんな事態になるとはな」

(;^ω^)「早く消えてくださいお」

(;'Aメ)「・・・・・・俺の負けだよ。お前の身体を奪うのは諦めた。お前の精神力にも完敗だよ」

負けを認めた瞬間から初代の姿がぼやけていく。

(;^ω^)「意外に、あきらめがいいお」

(;'Aメ)「無駄なことはしねぇ主義だ。最期だ。おもしろい話を聞かせてやるよ」

(;^ω^)「な、なんだお?」

(;'Aメ)「この痣は、生まれたときからついてた。合成士の力の元は精神力。合成士の強さの元は想像力、だ」

(;^ω^)「学校で習った記憶がありますお」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 23:02:46.81 ID:kcUox5xo0

(;'Aメ)「ははっ、そんな有名になっていたとは」

乾いた笑い声を出す初代は友人そっくりだった

(;'Aメ)「この痣のおかげで、よくわからないんだが、合成するときに短い時間でより深く集中できるような気がするんだ」

(;'Aメ)「俺はお前に負けた。俺の力の一部はお前に移る。どうせだから、お前にも同じのをやるよ。
俺を負かした証だ。右腕を出せ」

(;^ω^)「でも、それで情報がわかるんですおね? ブーンの情報とあなたの情報が違ったら」

(;'Aメ)「素直に出せ。それに・・・・・・いや、なんでもない」

殆ど輪郭のない手で触られた右腕に痣が生まれた。

「じゃあな」

意識が薄くなり、目が覚めたときには例のお土産屋で横に倒れていた。

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/22(木) 23:09:10.89 ID:kcUox5xo0

手に入れた力は気持ちの強さ。
苦難を乗り越えるために。


to be continued...





今回も長い間お付き合いいただきありがとうございました。
支援ありがとうございました。

それでは、質問、ご指摘があればどうぞ気楽に書き込んでください。

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内藤エスカルゴ - 完結作品一覧 - ( ^ω^)は合成士のようです - 9話
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