( ,,゚Д゚)ギコの大地は乾かないようです

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/14(土) 22:44:48.20 ID:Xqk4xbFn0
代理


2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/14(土) 22:45:34.51 ID:FFyL5lElO
N O  T H A N K  Y O U !

       .n:n    nn
      nf|||    | | |^!n
      f|.| | ∩  ∩|..| |.|
      |: ::  ! }  {! ::: :|
      ヽ  ,イ__ヽ  :イ
     / /    ヽ ::: \
     | (●), 、(●)、 |
     |  ,,ノ(、_, )ヽ、,,   |
     |   ,;‐=‐ヽ   .:::::|
     \  `ニニ´  .:::/
     /`ー‐--‐‐―´´\

3 名前:1 ◆Cc1bIwcvOk :2007/07/14(土) 22:46:49.82 ID:U8mqJwA80
いきなりPCが落ちてしまい、さっきは途中までしか投下出来ませんでした。
申し訳ないです。

まとめサイトさん「内藤エスカルゴ」

http://www.geocities.jp/local_boon/giko_Daichi/top.html

改めまして、第四話投下します。


4 名前:1 ◆Cc1bIwcvOk :2007/07/14(土) 22:48:52.23 ID:U8mqJwA80




(;゚∀゚)「ていうか、なんで俺……」

懐中電灯で照らす道の先は、どうしても不安の塊にしか見えない。
ひとりごとのように呟きながら、ジョルジュは印刷室へと歩いていた。

自分自身で言葉を発したりしながら、自分の存在を確かめていないと、
この異様な雰囲気に呑まれてしまうような気がした。

夜の学校って、こんなに恐いんだな……。

( ゚∀゚)「お、あったあった」

やがて見えてきた印刷室の扉から、中を覗いた。真っ暗だ。
暗く狭い場所なので、廊下よりも尚更真っ暗に見える。

ピアノの黒鍵の黒さとは違い、どろどろとした墨汁のような黒さだった。

(;゚∀゚)(あーもう絶対嫌。入るの、絶対嫌なんですけど)



5 名前:1 ◆Cc1bIwcvOk :2007/07/14(土) 22:52:06.29 ID:U8mqJwA80

そんなとき、背中に冷たい風がふいた。

(;゚∀゚)「ひぃぃぃぃっ!」

冷静に考えれば、ただの隙間風だということに気付けるのだが、こんな状況にこんな小心者だ。

(;゚∀゚)(悪魔の吐息だぁぁぁぁ!)

意味のわからない考えがジョルジュの脳内を駆け抜け、ジョルジュは迷わず印刷室の扉に手をかけた。

(;゚∀゚)(逃げなきゃ、絶対逃げなきゃ)

ガラリ。

扉を開ける感触は、ジョルジュの家とそっくりだった。
電気もついていない、真っ暗になった部屋。

おかえりなさいの言葉も、もう無い。

もう二度と、聞く事は無い。

懐中電灯で照らされる、印刷室の一部。
そこに映った白い壁が、家の壁の色と重なった。



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/14(土) 22:54:47.26 ID:LEb2558aO
ktkr支援

7 名前:1 ◆Cc1bIwcvOk :2007/07/14(土) 22:55:07.10 ID:U8mqJwA80
( ゚∀゚)「……」


――キキキキキ。


耳を劈くような車のブレーキ音と、枯れた薔薇のようにして泣く母の涙声が、蘇った。

そしてあの日もこうやって、ひとり家の扉を開けた。


 ――ジョルジュ、ごめんなさい。お母さんは、もう無理です――


( ゚∀゚)「チッ」

もう忘れたはずだった、ピアスの穴の痛みが、突然ずきずきと悲鳴をあげた。
懐中電灯を口にくわえ、ゴミ箱の中を照らしながら、両手でがむしゃらに紙の山をあさった。

( ゚∀゚)「ん、これか」

その中から、くしゃくしゃになった印刷ミスの表を引っ掴むと、懐中電灯で先を照らさずに走った。

何かから、逃げるように。
ジョルジュは保健室へ走っていった。



8 名前:1 ◆Cc1bIwcvOk :2007/07/14(土) 22:57:08.13 ID:U8mqJwA80



('、`*川「……なんていうか、この表には本当に印刷をミスしました、という気持ちが出ているわね」

ペニサスはそういいながら、くしゃくしゃになった紙を丁寧に広げた。
ギコがそれを覗くと、そこには黒インクが颯爽と走り去りましたといったような状況が広がっていた。

ミセ*゚ー゚)リ「だけど、読めないこともないよ。ほら、今日はクックル先生だったみたいだし」

ギコの隣から紙をのぞいでいたミセリが、今日の部分を指差して言う。

( ,,゚Д゚)「おいおいおい、今日はクックルだったのかよ。
     今日早速見つかっていたら完全に終わりだったな」

ミ,,゚Д゚彡「なあ、これ見やすいようにちゃんと書きなおして、壁に貼っとこうぜ」

フサギコは、人ごみの中心にある紙をひょいと持っていってしまうと、早速新しい紙に定規で線を引き出した。

不意に紙を持って行かれたときの、「あっ」というミセリの声がなんだかかわいくて、
フサギコはちょっと躊躇ったようだった。

そういう、なんでもないちょっとした場面が妙におかしくて、ギコは小さく笑った。



9 名前:1 ◆Cc1bIwcvOk :2007/07/14(土) 23:00:01.58 ID:U8mqJwA80

ξ゚听)ξ「ねー、明日の日直と部活はなに?」

ミ,,゚Д゚彡「えっと、日直はやまちで部活はハンドボール。
     ちなみにハンドボールは中体連まで毎日来ます」

( ゚∀゚)「……」


ジョルジュは、印刷室から帰ってくるなり、「これ」とだけ言って表をペニサスに渡すと、
ベッドに寝転がってしゃべらなくなってしまった。

両足を投げ出すようにし、両手は頭の後ろに置いている。

どこか一点を見つめるような視線と、なんともいえない雰囲気から、誰もジョルジュに話しかけなかった。

ξ゚听)ξ「本当に幽霊でも見たんじゃないの」

からかうようにそういうツンを、ペニサスが咎めるように見つめた。



10 名前:1 ◆Cc1bIwcvOk :2007/07/14(土) 23:02:00.10 ID:U8mqJwA80

それぞれが抱えているものの重さなんて、誰にも測れない。
見る事も出来無いし、きっと一緒に抱え込む事も出来無いだろう。

それぞれが、違う大きさの掌に、それぞれの、荷物を抱えている。
きっとそれは無駄に干渉していいものではないし、自分としても勝手に詮索されたくないものだろう。

だけどこのままでは、持て余していたはずの両手はどんどんそれに蝕まれていってしまう。
掴めるものももう掴めなくなってしまうかもしれない。

だけど誰かに頼る事も、出来無い。

誰かの両手を蝕んでいい権利なんて、誰も持ち合わせていない。

誰とも手を繋ぐ事の無いままに、時は過ぎていく。


ミセ*゚ー゚)リ「……痛い、って誰にも言えない事が、一番痛いんじゃないのかな」

ミセリが、ぽつりと呟くようにそう言った。
その声は、小さく舞う花弁のように、心地よく鼓膜を震わす。


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/14(土) 23:02:42.30 ID:AqlajXgS0
支援

12 名前:1 ◆Cc1bIwcvOk :2007/07/14(土) 23:04:06.79 ID:U8mqJwA80

ミセ*゚ー゚)リ「誰にも言えない事って、誰でも持ってると思うんだ。もちろん、ジョルジュ君だって。
      ジョルジュ君は普段あんなに明るいから、尚更誰にも言えなくなってるんだと思う……。
      それってなによりも、痛い……よね」

ミセリは、まるで自分自身に言い聞かせているようにして、そう言った。
ミセリの声が温度をもって、ひとつひとつ香り始める。

ξ゚听)ξ「誰にも言えない事、か」

ツンがそう言いながら、入り口の脇にあるタンスのようなクローゼットのようなものの扉を開ける。
案の定、そこには何枚かの薄い布団が入っていた。

ξ゚听)ξ「床で寝る人は、これで寝るしかしょうがないわね」

フサギコが、ツンから受け取った布団を床に敷き始める。
ギコもそれに続く。

('、`*川「今日は私が床で寝るわ」

ジョルジュをちらりと見て、ペニサスも布団を受け取った。

なぜだか、誰も何も喋らなかった。



13 名前:1 ◆Cc1bIwcvOk :2007/07/14(土) 23:06:17.55 ID:U8mqJwA80



まるで修学旅行の夜のような、映像だった。
布団が並べられており、その周りには大きな鞄が適当に置かれている。

今年の五月に行った修学旅行。

( ,,゚Д゚)(なにもわからない都会に戸惑いながら、ネズミーランドまで辿り着いたんだっけ……)

ギコは、今自分がいる場所が学校だということを、なかなか実感できないで居た。
なんだか、みんなでもう一度旅行にでも来ているみたいだ。

ミ,,゚Д゚彡「枕はどうする?」

('、`*川「あの中にないの?」

ミ,,゚Д゚彡「ない」

('、`*川「……今日のところは鞄で我慢しようよ」

ペニサスとフサギコの会話を片耳で受け取る。
三人は、暗闇の中でごそごそと自分の鞄を探し出し、自ら頭の下にそれを置いた。


14 名前:1 ◆Cc1bIwcvOk :2007/07/14(土) 23:08:16.30 ID:U8mqJwA80

薄い布団でからだを包み、天井を見上げる。

普段、保健室に来た時にはなんて白いんだろうと思っていた天井も、今は闇に霞んでいる。

閉めればいいのに、誰も閉めなかったカーテン。
窓から差し込む星、そして月の光が、六人の輪郭線を保っていた。

ペニサスの形のいい鼻、フサギコのつんつんに尖った髪の毛が、昼間よりも余計艶っぽく見える。

( ゚∀゚)「……なぁ」

ふと、ジョルジュの声が聞こえた。
少しずつ降りてきていたギコの瞼は、ぴたりと動きを止めた。

( ゚∀゚)「皆は、何か人に言えない事を抱えて、ここに来たのか?
     ここに来た理由、みたいなものは、あるのか?」

ジョルジュは、自分自身、一言一言の意味をじっくりと噛み砕いていた。

理由。
ここに来た、理由。

ここに来なければ、自分自身ではどうしようもなかった、理由。



15 名前:1 ◆Cc1bIwcvOk :2007/07/14(土) 23:10:41.19 ID:U8mqJwA80

ミセ*゚ー゚)リ「ジョルジュ君には、あるんでしょう?」

ミセリの、ハープのような声が聞こえてきた。
夜の闇の中で聞くミセリの声は、子守唄のように暖かかった。

ミセ*゚ー゚)リ「ジョルジュ君には、ひとりじゃどうしようもなくて、だけど誰にも言えない事があったから、
      ここに来たんでしょう? さっき、そんな目してた」

ξ゚听)ξ「水臭いじゃん」

凛、と響いてきたのは、ツンの声。

ξ゚听)ξ「言っちゃえば? ここに集まったのもなんかの縁だしさ。この際みんな言っちゃおうよ。
     その方がこれからの生活もしやすいって」

ツンは言い捨てるかのようにそういうと、自らさっさと話し始めた。

ξ゚听)ξ「あたしがこれに参加した直接的な理由は、家族……ていうか、父親なんだ。
     あたしの父親、ちょっとおかしくって、休みの日とか一日中一緒にいるわけじゃん?」

しん、と静まり返った保健室に、ツンの声が響く。



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/14(土) 23:11:25.47 ID:/G7N3R5QO
支援

17 名前:1 ◆Cc1bIwcvOk :2007/07/14(土) 23:12:22.07 ID:U8mqJwA80

ξ゚听)ξ「そんなのあたしには到底耐えられないから、ここに来ちゃったんだよね。
     忘れなきゃいけないこともあるし、ちょっと父親から離れようかなって感じかな」

言い終わるや否や「ハイ、じゃあ次は誰?」と言葉を投げかけるツン。

みんな言っちゃおう、といったツンでさえ、何かを覆い隠しているかのような話し方だった。
重要なところが何一つ話されていない。
ツンがたくさん言葉を発すたびに、その言葉が余計壁を作っているような気がした。

やはり全ては、明かせないのだろうか。


ミ,,゚Д゚彡「じゃあ次は俺が言うわ」

フサギコが、ツンの言葉を受け取った。

ミ,,゚Д゚彡「俺も、言ってしまえば家族が原因なんだよね」

ぽつり、と呟くように言う。


18 名前:1 ◆Cc1bIwcvOk :2007/07/14(土) 23:14:10.09 ID:U8mqJwA80

ミ,,゚Д゚彡「俺、こんなナリじゃん? 茶髪ピアス煙草……まぁスキでこうなったわけじゃないんだけどさ。
      俺の場合、ツンとは違って、忘れちゃいけないことがあるんだ。
      だけど、あの家族の中に居たらそれを忘れてしまいそうだから、ここに来た。
      もっともっと、再確認しなければならないことが、あるんだ」


少し照れくさそうに話す、フサギコの胸の内は酷く新鮮だった。
フサギコが他人に、自分自身について話すことを見たことは一度も無かった。

しかしやはり、核となる部分を覆い隠していたが、それだけでギコは嬉しかった。

ミ,,゚Д゚彡「次は誰だ? ギコか?」

フサギコがそう言うので、ギコはバトンを受け取る。

( ,,゚Д゚)「言い出しっぺの俺は、もうとにかく全然違う世界に飛び出したかったからなんだ。
     勉強ばっかの日々、同じ服同じ髪型同じルールでの生活……
     部活も終わったし、自分自身がどこにいるかわからなくなってたんだ」



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/14(土) 23:14:24.96 ID:/G7N3R5QO
支援

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/14(土) 23:15:12.65 ID:M8BCRX9lO
お笑い板のカネミノブは衝撃

21 名前:1 ◆Cc1bIwcvOk :2007/07/14(土) 23:15:46.32 ID:U8mqJwA80

( ,,゚Д゚)「俺の親は、成績さえよければ子供なんて誰でもいいって考え方だしさ。
     そんな世界から、思いきって飛び出してみたかったんだ」

ギコは自分で話しながら、鼓動が速くなっていくのを感じていた。
さっき、フサギコが他人に自分のことを話しているのを見て嬉しく感じたが、
自分自身、自分のことをこれだけ他人に話したのは初めてかもしれなかった。

今まできっと、こんなことを真剣に聞いてくれる人なんていないと思っていた。

だけど今は、隣で頷いてくれる誰かがいる。鼓動は、高鳴る。

('、`*川「じゃあ次は私ね」

ペニサスの声が聞こえた。


('、`*川「私……の父親は、国会議員なんだ。だからなんていうの? いわゆる堅物ってやつね。
     理想の娘像ってのを、私にぶつけてくるの。学力、成績はもちろん、生活態度、服装、言葉づかい、髪型。
     もうやってらんないっての。お前がちゃんとしなきゃ、俺は街を歩けないんだ。なんて言うんだから。
     じゃあ一生引き篭もってろって感じ。今までは頑張ってこれたんだけどね、ちょっとパンク寸前かな。
     もう、無理……もう嫌なの、あんな生活は」


自分で話しながら、親への怒りが再び沸いてきたのだろうか。
ペニサスの声の蕾は少しずつ開いていき、感情の高ぶりは溢れんばかりに蕾の中へ蓄積されていた。

ペニサスは、今までずっと心に溜まっていた何かを言葉にすることで蕾を開こうとしているように、見えた。



22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/14(土) 23:16:35.64 ID:/G7N3R5QO
支援

23 名前:1 ◆Cc1bIwcvOk :2007/07/14(土) 23:18:08.11 ID:U8mqJwA80

('、`*川「じゃあ次は、ミセリちゃんだね」

ペニサスがそう言うと、ミセリは小さく息を吸った。
その呼吸の響きは、ただ淡々とミセリが生きているということを伝えていた。


ミセ*゚ー゚)リ「……私は、生まれつきからだが弱くて、昔から入退院を繰り返す生活を続けていたんだ。
      だから学校も途切れ途切れにしか行けなくて、……友達とか、全然いなくて。
      毎日がずっと同じだった。楽しい事なんて何一つ無くて、毎日まずい薬ばっかり飲まされて、
      そんな日々から抜け出したかった。だけど、その日々から抜け出すってことは、
      私にとっては死を意味してるの」

ミセリのか細い声が繋がって、一本の線となる。

ミセ*゚ー゚)リ「一日でいい。一日でいいから、友達と一緒に笑い合いながら過ごす日々が欲しかったの。
      親は日に日に強烈な過保護になっていって、休みの日になっても私を家から出してくれなくなった。
      ……でも、中学二年生の頃からはからだも安定してきて、学校にも長期間行けるようになったんだ。
      だから夏休みの期間くらいは大丈夫。親は絶対反対するだろうから、家出同然で出てきちゃった。
      ……たった一日で良かったんだけどね、初めは」

言葉が点として存在し、そしてその点と点が繋がって線になるのなら、すべての点には意味がある。
たった一日が点として存在し、そしてその点と点が繋がって理想の日々を描けるのなら、一日一日は意味がある。



24 名前:1 ◆Cc1bIwcvOk :2007/07/14(土) 23:20:25.90 ID:U8mqJwA80

ξ゚听)ξ「じゃあ次は、ジョルジュだよ」

ミセリの話が終わり、重くなった空気を割ったのは、ツンの声だった。
それは、ジョルジュに何か決意を迫るような、むしろ安心して話すことを促すようにも、聞こえた。

( ゚∀゚)「……俺には」

ジョルジュの低い声が、闇を切り裂いた。

( ゚∀゚)「俺には、両親がいないんだ。俺が小さい頃に、父は交通事故で他界して……。
     女手ひとつで、母さんは俺を育ててくれたんだ。
     安い給料で、だけど頑張って切り詰めて切り詰めて、俺を育ててきてくれた。
     だけど俺は、そんな母さんの苦労も知らずに、非行に走った」

ジョルジュのピアスが、月の光を浴びてきらりと光った。

( ゚∀゚)「ピアスを開けたのは中一のころだった。友達とピアッサーを買ってきて、学校で開けた。
     痛くて痛くてどうしようもなかったけど、皆には痛くないって言ってたりして……馬鹿だったな。
     それからはそういうヤツらとしかツルまなくなって、集会にもたくさん出たし薬に手を出したこともあった」



25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/14(土) 23:21:11.83 ID:/G7N3R5QO
支援

26 名前:1 ◆Cc1bIwcvOk :2007/07/14(土) 23:22:10.00 ID:U8mqJwA80

ジョルジュの声の震えが、空気に波を創り出す。
それすらも優しく照らし出す月の光が、涙の水面を攫って行く。

( ゚∀゚)「俺は母さんを、何度も何度も警察へ行かせてしまった。
     補導された俺を迎えに来させる為に。母さんはいつも笑っていた。
     髪の毛を振り乱して、汚れた作業着で警察まで走ってきた」

静寂の中、ジョルジュの声だけが室内に響き渡る。

( ゚∀゚)「だけど、落ちるところまで落ちた俺を見て、毎回こう言うんだ。
     よかった。ジョルジュまで交通事故に遭ったのかと思ったって……。
     安心したように、笑いながら、言うんだ」

ああ、そうか。

ギコは悟った。
ジョルジュが今まで、許せない、絶対に許せないと感じ、誰にも話すことのなかった事実。
それは、自分自身のことだったのか。

だから今まで誰にも言えずに、全てを背負っていたのか。

水面に一石を投じたあと、じわじわと広がる波紋のように、ジョルジュの声の震えがゆっくりと保健室を満たす。



27 名前:1 ◆Cc1bIwcvOk :2007/07/14(土) 23:24:11.39 ID:U8mqJwA80

ξ゚听)ξ「ねえ、でも、お母さんは頑張って頑張って、今までジョルジュを育ててきたんでしょ?
     今のジョルジュはそんな薬とかやってるように見えないし、補導されるようにも見えないし……
     これから、これからジョルジュが母さんを助けていけばいいんじゃ……」

ツンは、自分の言葉を自分で封じた。
気付いたのだ。ジョルジュが、一番はじめに言った言葉を。

( ゚∀゚)「……母さんは、もういないんだ。
     日に日に手に負えなくなった俺を置いて、どこかへ行ってしまった。
     今生きているか死んでいるかもわからない。
     俺が仲間とツルんで帰りが真夜中になったとき、真っ暗の部屋の中に置手紙が一枚置いてあったんだ。
     そこには、『ジョルジュ、ごめんなさい。お母さんは、もう無理です』……それだけ書かれていた。
     母さんの服も鞄も写真も何もかも、母さんの存在を示すものは全部、母さんが持っていってしまった」

ジョルジュの声は、淡々としていた。
だがそれは、隠しきれないほどに震えていた。

ジョルジュの視線は天井を越え、闇を見透かしているようだった。
その向こうに見えるのは母の幻影なのか、自分の罪なのかは誰にもわからない。



28 名前:1 ◆Cc1bIwcvOk :2007/07/14(土) 23:25:53.16 ID:U8mqJwA80

( ;∀;)「どうして俺は、こんなことになっちまったんだろう。どこから間違っちまったんだろう。
      ひとりで家にいると、どうしても耐えられない。見えるんだ、俺には。
      もうここにはいないはずの母さんが、父の胸を叩きながら泣いている姿が。
      どうしてあんな子供になってしまったの、あなたのせいよ、って叫びながら泣いている姿が。
      あの家で一ヶ月もひとりで過ごすなんて、俺には出来無いんだ」

ギコは、目を閉じていた。
瞼の裏で鮮明に思い描かれる、ジョルジュの姿。
学校が終わり、夜にひとり帰宅しても、家に迎え入れてくれる存在はない。

いつも笑っていたはずの母親の、泣き顔しかもう見えない。
その感情の痛みはすべて、自分に帰ってくる。
もう小さな自分のからだでは、抱えきれない。


もう、抱えきれない。




29 名前:1 ◆Cc1bIwcvOk :2007/07/14(土) 23:28:02.46 ID:U8mqJwA80

ミ,,゚Д゚彡「――ジョルジュは、大丈夫だよ」

それは突然だった。
突然、フサギコのはっきりとした声が聞こえてきた。

ミ,,゚Д゚彡「ジョルジュは大丈夫だよ。自分の弱さを自分で認められるやつは、その時点で自分に勝ってんだよ。
      そんだけ悪いって思ってんなら、これからジョルジュはどうにだって変われる。
      ほら、人って高く飛ぼうとするとしゃがむじゃん。今ジョルジュは、しゃがんでんだよ」

ミセ*゚ー゚)リ「……私も、そう思う」

フサギコの言葉を受けて、ミセリが続けた。

ミセ*゚ー゚)リ「私は逆に、親が異常なほど過保護だから、親の愛情がうざったいなって思うときもあったんだけどさ。
      ジョルジュ君の話聞くと、やっぱり家族ってかけがえのないものなんだなって思えた。
      それってやっぱりジョルジュ君が一番わかってることだと思う。
      だから、これからはそれを誰かに向けていこうよ。
      誰か、かけがえのないひとりの人を見つけて、その人と、今度は自分が家族を作っていくの」

どことなく夢を見ているかのようなミセリの口調は、なぜだか自然と頷いてしまうほどの説得力を持っていた。
ジョルジュが布団の中に顔をうずめた。
ギコはそれ以上、ジョルジュを見ないようにした。



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/14(土) 23:29:14.18 ID:/G7N3R5QO
支援

31 名前:1 ◆Cc1bIwcvOk :2007/07/14(土) 23:29:44.48 ID:U8mqJwA80

ξ゚听)ξ「ジョルジュは、いい父親になれるっしょ!」

ツンが、学校全体に響き渡るほどの大声でそう叫んだ。
からだを横にしているからか自然と腹式呼吸になり、声も酷く大きくなる。

('、`*川「ちょっとツンなにしてんの」

ξ゚听)ξ「いいじゃん別に。こんな時間だったら絶対誰もいないし。ペニサスはやっぱり頭がかたいのね。親譲り?」

('、`*川「あっむかつく。ツンのファザコン!」

ペニサスも負けずに大声で叫ぶ。

ξ゚听)ξ「待ってあたしがいつファザコンだなんて言った!?」

ジョルジュは、布団の中に顔をうずめており、表情を読み取る事は出来ない。
しかし、かすかに聞こえてくる小刻みな嗚咽と、小さく震える肩の動きから、
ジョルジュの溢れるような感情は手に取るようにしてわかった。



32 名前:1 ◆Cc1bIwcvOk :2007/07/14(土) 23:30:59.74 ID:U8mqJwA80

ギコをはじめとする五人はそれに気付いたうえで、自然に会話を繋げていた。
誰もジョルジュに対して粘っこい同情の視線を送ることもなければ、頭を撫でてやるようなこともなかった。

きっとそれが、一番の優しさだった。

( ,,゚Д゚)「そろそろ、寝よっか」

ギコがそう言うと、「はぁい」と言って、ミセリがカーテンを閉めた。
月の光が遮られ、保健室は完全な闇と化す。

ミセ*゚ー゚)リ「待って、こんなに真っ暗になると私ベッドに戻れないんだけど」

ミ,,;゚Д゚彡「痛ッ! 誰か俺の足踏んだべ!」

ミセ*;゚ー゚)リ「ごめんフサギコ君、今足踏んだかも」

そう呟くミセリの姿がおかしくて、ギコは少し笑った。





――続


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/14(土) 23:32:17.03 ID:/G7N3R5QO
乙です

34 名前:1 ◆Cc1bIwcvOk :2007/07/14(土) 23:32:25.57 ID:U8mqJwA80
第四話の投下は以上です。
読んで下さった方、ありがとうございました。

戻る

inserted by FC2 system