( ,,゚Д゚)ギコの大地は乾かないようです
- 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 00:27:03.88 ID:mgFcggUc0
-
1
カラン、という涼しい音をたてて、グラスの中で積み重なっていた歪な氷達が列を乱した。
しぃは、気だるそうにストローで氷を弄ぶと、もう一度コーラを口に含んだ。
ほとんど溶けてしまった氷の水分が、コーラの味を曖昧にする。
(*゚ー゚)「別れて欲しいの」
いつもは耳障りだと感じる蝉の声が、何故か一瞬だけ聞こえなくなった。
クーラーの効いた喫茶店の中では感じられない熱風を、何故か感じた。
しぃの表情が、グラスの周りに凝結して出てきた水滴よりも、冷たい。
( ,,゚Д゚) 「どうしてだよ」
ギコは、しぃの目を睨むようにして言った。
しぃはギコを見ようともしないで、まだ氷を弄んでいる。
- 2 名前:1 ◆NscXkUt6VE :2007/07/12(木) 00:28:42.43 ID:mgFcggUc0
-
(*゚ー゚)「ほら、私達受験生だし、もうすぐ夏休みに入るでしょ?」
( ,,゚Д゚) 「だから、なんだよ」
(*゚ー゚)「そろそろ私も勉強に専念しないとな、って思い始めて。
そりゃギコ君は頭いいから大丈夫かもしれないけど、私はそうはいかないの」
しぃの泳いでいる目を見ていると、全てが言い訳のように聞こえてしょうがない。
せめて、俺の目を見て話してくれ。
ギコがそう願うたびに、しぃの視線は外れていくような気がした。
- 3 名前:1 ◆NscXkUt6VE :2007/07/12(木) 00:30:52.17 ID:mgFcggUc0
-
(*゚ー゚)「もうメールしたり電話したり、こうやって会ったりだとか、
そういう時間はとれないから、だから」
しぃは、何かに妥協したかのような溜め息を、グラスに吹きかけた。
ふわり、と白く曇ったグラスは、数秒も経たないうちに元の透明さを取り戻す。
(*゚ー゚)「別れて欲しいの」
( ,,゚Д゚) 「受験だからって別れる必要はないだろ。
メールだって電話だって、時間を減らせばいいだけのことだし」
(*゚ー゚)「それでも私はギコ君のこと考えちゃうから。
勉強とか、集中出来無いから」
何かを責めたてるようなしぃの言葉は、無駄に説得力があった。
そう言われてしまっては、ギコもどう返していいかわからない。
からんからん。
喫茶店のドアが開く音がした。
そういえば、俺達は今どれくらいの声量で別れ話をしているのだろうか。
蝉の声など、もう耳に届いていない。
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 00:31:38.82 ID:oURwX8t9O
- 鳥バレしたってことは別人か
- 5 名前:1 ◆NscXkUt6VE :2007/07/12(木) 00:32:19.69 ID:mgFcggUc0
-
(*゚ー゚)「だから……ホント、ごめん」
しぃはそう言うと、ガタンと音を鳴らし席を立った。
ギコの前には、しぃの残したコーラと自分が頼んだ麦茶だけが残っていた。
微かに残っているかに見えたしぃの残像は、人工的なクーラーの風に流されて、消えた。
( ,,゚Д゚)「……」
きっとはじめからうまくいかなかったんだ、と言い聞かす自分だけが、酷くその場に浮き彫りにされた。
- 6 名前:1 ◆NscXkUt6VE :2007/07/12(木) 00:34:02.57 ID:mgFcggUc0
- ※
机に向かっていると、夏の風物詩とされる蝉の声でさえ耳障りに聞こえる。
景色が、熱による波に揺れている。
白いコンクリートを突き刺す太陽の光が、目に痛い。
( ,,゚Д゚)「はぁ……」
中学三年生の夏。
そろそろ受験生だということを実感しなければならないことを、一番実感したくない季節だ。
もう子供ではない。だけど、こんな気持ち大人にはわからない。
( ,,゚Д゚)(眠ぃ……)
教室の前方では、社会の教師が教科書の内容をそのまま黒板に書いている。
「えー、で、あるからして、詳しいことは教科書の〜……」
( ,,゚Д゚)「はぁ〜……」
湿気を帯びた風が、ギコの制服を優しく撫でた。
公民なんて、あんな板書をされたら遠い世界にしか見えない。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 00:35:28.22 ID:DOJ3kvrx0
- ペン!! 支援
- 8 名前:1 ◆NscXkUt6VE :2007/07/12(木) 00:36:16.22 ID:mgFcggUc0
-
/ ,' 3「教科書の45ページから……ペニサスさん」
('、`*川「はい」
不意に、隣の席から凛とした声が聞こえた。
夏の湿気を追い払うような、涼しげな声。
クラスメイトのペニサスだ。
ペニサスは教科書の内容をすらすらと読み、席に座る。
('、`*川「ギコ君、今凄いぼーっとしてたでしょ」
ペニサスはくすくす笑いながらそう言った。
( ,,゚Д゚)「だって、公民とかつまんなくね?」
('、`*川「まあ確かにそうだけど。私、前の期末で公民が一番やばかったからさ。
今回は頑張んないと」
ペニサスは、左手を机に肘をつき、小さな掌に顎を載せた。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 00:37:33.97 ID:q/DRo8TM0
- これ以上脱がせるつもりかい?
,. -‐ ァ ー─- 、
/ l \
/ 」 _ ヽ
l _,. -‐'´ `ヽ、 ヘ
_ノ´ __ _> 、_}
L_ィ7´ニ、_`7ー=ニ¨ー、个17ハ
ハli{ ィrュ、{ __イヱュ、 川 l l|
lrく ヒfリT¨「 ヽしリィーイ¨Yリ
{`二´ノ `ー--‐′/ ノ
`! 、 ` ´ _, ,イ´
ヽ、  ̄ ̄ / |
` ト、 __ ,./ \
// | ',
| /、 ̄二ニィ‐、 ̄ ̄ ̄`ヽ、
r" ト 、>'´ ヽ ̄ ̄ ̄`ヽi,
! r'// i
__|/ /| l |
/ ___/ | ! | |
/ / | | ,' / !
/ / ! | / l /
/ | l | ノ ` ,′
l l! l i /
ヽ ヽ__ノ ', l /
ト | ! | /〈
l∧ヽ l レ/`-/
jヽ、 \ _ l |ノ〃
- 10 名前:1 ◆NscXkUt6VE :2007/07/12(木) 00:38:16.63 ID:mgFcggUc0
-
('、`*川「あんな家庭の私が公民苦手とか、ちょっとばかみたいだよね」
と、シャープペンシルを弄びながら、ペニサスはグラウンドに目をやった。
ギコとペニサスは、まるで間に鏡を挟んでいるかのように、対照的な姿勢をとっていた。
('、`*川「ギコ君は頭いいから良いけどさー、私ら凡人はやばいんだよね。
特に私は親がうるさいし。前の模試だって、ギコ君は北高A判定だったんでしょ?」
( ,,゚Д゚)「……どうだったかな」
('、`*川「ギコ君が、私ん家の子供だったらよかったのかもね」
ペニサスは独り言のようにそう呟くと、寂しそうに目を伏せた。
その、汗の滲み出た焦げた肌の色は、消えかかっていたしぃの残像を蘇らせるには充分だった。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 00:38:42.95 ID:GMtMCsBeO
- 誰だよ
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 00:40:23.88 ID:zORoPpwUO
- 以前酉を盗んで某スレでガンを批判してたアンチの奴か?
- 13 名前:1 ◆NscXkUt6VE :2007/07/12(木) 00:40:27.52 ID:mgFcggUc0
-
( ,,゚Д゚)「やっぱり、親うるさいのか?」
('、`*川「当たり前じゃない。お前がちゃんとしていないと俺は街を歩けないんだー、って。
いっそのこと私グレて、親が部屋に引き篭もるくらいにしてやろうかと思ったくらいよ」
( ,,゚Д゚)「ペニサスがグレてる姿かぁ。ちょっと見てみたいかも」
ギコは少し笑ったが、ペニサスは何も言わないまま顔を前に向けた。
窓から流れ込むあたたかな風が、ペニサスの高い鼻を象っている輪郭線を撫でる。
空気と、肌との境目を見出せなくなる程の、自然なライン。
空気へと融けこんでしまいそうなペニサスの横顔は、存在というものを漠然と表している。
グラウンドからは、黄色い声をあげながらハードルを飛び越える、一年生女子の活気が漂ってくる。
キャッキャ、と戯れながら細い足がハードルを飛び越えていく。
悩みなど何も感じない、満たされた夏の時間。
羨望に似た憎しみのようなものが、ギコの心にぽっかりと穴を開けた。
( ,,゚Д゚)(最近、あんな風に思いっきり笑ったこと、あったかな……?)
人差し指と中指の間で、持ちなれたペンを回してみても、答えは見つからなかった。
- 14 名前:1 ◆NscXkUt6VE :2007/07/12(木) 00:42:20.82 ID:mgFcggUc0
- ※
( ,,゚Д゚)「ふぃー、疲れた疲れた」
ギコは鞄を放り投げ、Myパソコンを起動する。
帰宅したら、まずパソコンをチェックすることが日課になっている。
( ,,゚Д゚)「新着メール、っと。……あー、また迷惑メール溜まってらぁ」
ぶつぶつと呟きながら、新着メールをチェックする。
( ,,゚Д゚)「ふぅ」
メールをチェックし終えると、ベットに寝転がった。
予め開けておいた窓からの風が、酷く心地よい。
授業中に感じる風の心地よさとは、全く違う心地よさだ。
コンコン
J( 'ー`)し「ギコ」
返事も待たずに、母はドアを開ける。
まるでノックの意味が無い。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 00:42:31.30 ID:ZHHxe5IJO
- ペンさん、久しぶり。
ん? まさか偽者ってことは無いよな?
- 16 名前:1 ◆NscXkUt6VE :2007/07/12(木) 00:44:10.55 ID:mgFcggUc0
-
J( 'ー`)し「来たわよ。前の模試の結果」
母はそう言いながら、ギコの傍に腰を下ろした。
母は必ず、こうしてギコの部屋に来ると、何かとパソコンを凝視する。
勉強の邪魔だ、という怨念にも似た視線が毎回注がれるパソコンが、いつか壊れてしまわないかと不安になる。
( ,,゚Д゚)「結果、もう見たんだろ?どうだった?」
J( 'ー`)し「判定はAだったけれど……前より点数も順位も下がっていたわ」
母は封筒の中に入っていたであろう、結果の書かれた用紙を広げながら、そう言った。
がさがさと音を立てながら開かれていくそれは、あまりに白く、決して嘘など表記されていないといった感じだった。
J( 'ー`)し「ほら、特に理科の地学の部分かしらね……」
( ,,゚Д゚)「……」
母は、それぞれの教科の単元ごとに正答率が分析されている部分を指差して、続けた。
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 00:44:36.20 ID:mKhbKIu+O
- >>14
あるあるwwww
支援
- 18 名前:1 ◆NscXkUt6VE :2007/07/12(木) 00:46:01.14 ID:mgFcggUc0
-
J( 'ー`)し「ここはいつも間違えているわ……しっかりがんばりなさいね」
ギコが全く視線を合わそうとしないことに気付いたのか、母は足早に部屋から立ち去った。
( ,,゚Д゚)「……チッ」
母のいう「がんばりなさいね」は、全く応援の台詞に聞こえない。
背中に背負う荷物が、どんどん増えていく感触がする。
「がんばれ」と言われた事は何百回とある。
だけれど、「がんばったね」と言われた事は一度も無かった。
- 19 名前:1 ◆NscXkUt6VE :2007/07/12(木) 00:47:27.88 ID:mgFcggUc0
-
前に、母がギコの部屋から立ち去る際、母はギコのバッシュを部屋から持ち出した。
鞄に立てかけていたバッシュの濁った影は、部屋から消えた。
確か、あれは期末テストの結果を報告した時だったか。
その頃には、三年生はもう部活も引退してしまっていた。
母はきっと、勉強の妨げになると思ったのだろう。
母は、もう何も関係の無いものよねと言わんばかりの無表情で、それを部屋から持ち出した。
確かに、自分が所属していたバスケ部は弱小で、今年も地区大会で敗退してしまった。
けれども、ギコはまだボールの感触や、バッシュによる夏らしい足音に浸っていた。
少なくとも、バスケをしている時は、勉強とは違い、確かな何かを掴んでいるような気がしていた。
- 20 名前:1 ◆NscXkUt6VE :2007/07/12(木) 00:49:11.56 ID:mgFcggUc0
-
( ,,゚Д゚)「……ほい、っと」
模試の結果表を、くしゃくしゃに丸めてゴミ箱へ投げ込んだ。
それは綺麗に弧を描き、紙切れの群れの中へと消えた。
どうしてだろう。何も掴んでいる気がしない。
むしろ、スリーポイントが決まった時のようなあの感触は、掌から零れ落ちてしまっているような気がした。
いくら良い順位をとっても、A判定を貰っていても、何かを掴んでいる感触は、まるで無かった。
自分が今どうするべきなのか、解っているけれど解らない振りをしているかのような、
ぽっかりとした虚無が、今のギコを満たしていた。
- 21 名前:1 ◆NscXkUt6VE :2007/07/12(木) 00:51:26.90 ID:mgFcggUc0
- ※
('、`*川「……あぁ、そういうのわかる」
銀色をしたシャーペンの先端部分から伸びる、おしゃれなチェーンを掌で弄びながら、ペニサスは言った。
('、`*川「何かがカラッポなんだよね。いくら勉強がんばっててもさ」
さらさらと繊細な字を、ノートに走らせるペニサスの長い睫毛が、頬にかかる。
('、`*川「でもそれは親にはわからないんだよね。
うまく言葉にできないし、できたとしても絶対わかってもらえないよ」
親は成績しか見てないんだから、そう言いながら、ペニサスは二回、シャーペンをノックした。
( ,,゚Д゚)「どんなにいい成績とったとしても、何か足りないんだよな。
部活やってた時には、凄い体中が何かに漲ってたのに」
ギコが遠い目をしながら呟くそうにそう言うと、ペニサスは黙って頷いた。
( ,,゚Д゚)「部活やってたときは、シュート入れる度に何かを掴んでいける気がしたし、一秒一秒が凄く満たされてた。
結果が出た時には皆で喜んだり、出なかった時には皆で泣いたり……。
そういう中で、足りないものなんかひとつもなかったのに」
- 22 名前:1 ◆NscXkUt6VE :2007/07/12(木) 00:53:17.89 ID:mgFcggUc0
-
ギコはそう言いながら、バレー部のキャプテンだったペニサスの姿を思い出していた。
同じ体育館部活だったため、ペニサスの部活姿は何度も目にしていた。
声を張り上げてボールを追いかけるペニサスの姿は、とても瑞々しかった。
('、`*川「引退してからは、もうそんな気持ち忘れちゃったな」
なんてね、と、ペニサスは笑ったが、目元は笑っていなかった。
記憶の隙間を垣間見て、ギコも少し、物悲しくなる。
あの更衣室の匂いに顔を歪める事も、もう無い。
遠くの煙突から出る煙が、空を覆う。徐々に穢されていく、雲の住み処。
('、`*川「いつからこんなカラッポの世界になっちゃったんだろうね」
ペニサスは、続ける。
空から、雲が消えたような気がした。
澱みが広がり、空が落ちてきそうなほどに、見ていて酷く重い。
('、`*川「一度、全く違う世界に行ってみたいな」
音も無く、雨は降り始めた。
- 23 名前:1 ◆NscXkUt6VE :2007/07/12(木) 00:54:43.86 ID:mgFcggUc0
- ※
錆び付いたチャイムの音が、授業時間の終わりを告げた。
降り始めた雨が、街を濡らす。
ギコは、降り始めの雨による街の匂いが、嫌いだった。
埃っぽいようで、鼻につく。
ミ,,゚Д゚彡「俺も、この匂い嫌い」
フサギコが、さっきまでペニサスが座っていた椅子に、どかっと腰を下ろした。
ミ,,゚Д゚彡「ったく、荒巻の授業ほんとやる気無くすわww」
( ,,゚Д゚)「俺も、って……なんで俺がこの匂い嫌いってわかったんだよ」
ギコは立ち上がり、開いていた窓を閉め、席に座った。
ギコとフサギコは、隣同士の席に座っている。
ミ,,゚Д゚彡「だってギコ、顔をすげぇしかめるんだもん。誰だってわかるよ」
からからと軽いフサギコの笑い声は、聞いていて気持ちが良い。
晴れ渡った夏の空というよりは、風の駆ける五月の空といった感じだ。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 00:54:52.34 ID:F78BvlHYO
- 支援
- 25 名前:1 ◆NscXkUt6VE :2007/07/12(木) 00:56:09.33 ID:mgFcggUc0
-
ミ,,゚Д゚彡「ギコはいつも、気持ちが顔に出るんだよ」
と言いながら、フサギコはもう一度小さく笑った。
ミ,,゚Д゚彡「ところで、俺新しい彼女できたよ」
フサギコの話はいつも唐突だ。
( ,,゚Д゚)「は?もう出来たの?前のと別れてまだ二週間経ってねぇよ」
ミ,,゚Д゚彡「来る者拒まず去る者追わず」
( ,,゚Д゚)「最悪だな」
ミ,,゚Д゚彡「こんな俺だって知ってただろ?」
フサギコとの会話のキャッチボールは、卓球のピンポン玉のように軽やかに進む。
ミ,,゚Д゚彡「ギコは最近、しぃちゃんとどうなの?」
不意に、ピンポン玉は小さなラケットの淵に当たって、どこかへ飛んでいった。
黄色く跳ねるピンポン玉を、身体をたたんで拾うように、ギコは項垂れた。
- 26 名前:1 ◆NscXkUt6VE :2007/07/12(木) 00:57:21.89 ID:mgFcggUc0
-
( ,,゚Д゚)「あー……振られたよ」
ミ,,゚Д゚彡「……そっか。きっと何か考える事があったんだろうな」
フサギコはそれだけ言うと、もうなにも追求してこなかった。
フサギコは、人を傷付けることがない。
それは、他人に遠慮しているわけでもなく、酷く自然な行為だった。
フサギコは、俺の中身を知っている、とギコは感じた。
どこまでが共有できる領域で、どこからが自分自身の領域なのかを、フサギコは知っている。
絶妙な位置に立ち続けるフサギコの言葉が、ギコは好きだった。
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 00:58:25.87 ID:F78BvlHYO
- wktk
- 28 名前:1 ◆NscXkUt6VE :2007/07/12(木) 00:58:33.67 ID:mgFcggUc0
-
( ,,゚Д゚)「……なあ、最近どう?」
ミ,,゚Д゚彡「え、なにその主婦仲間のような話題の提示方は」
( ,,゚Д゚)「いいから。最近どうよ?」
ギコは、両腕を机の上に投げ出した。
ミ,,゚Д゚彡「どうって、何がどうなの?」
( ,,゚Д゚)「んー……だからさ、部活も終わったわけだし、夏休みだって勉強ばっかだなーみたいな。
そういう感じは、どうって聞いてんの」
我ながら言っている事が漠然としすぎているなと感じたが、ギコはフサギコの言葉を待った。
フサギコが天井を見つめる時は、言葉を選んでいる時だ。
ミ,,゚Д゚彡「俺はもともと帰宅部だし、部活のことはわからんけど、もうなんかこんな状況は嫌!って感じ。
勉強ばっかで逃げ出したいー」
フサギコはそう言いながら、ギコのように両手を机の上に投げ出した。
ふたりは隣同士、全く同じ体勢をとっている。
- 29 名前:1 ◆NscXkUt6VE :2007/07/12(木) 01:00:28.21 ID:mgFcggUc0
-
( ,,゚Д゚)「さっき、ペニサスともそういう話しててさぁ」
ミ,,゚Д゚彡「しぃサンの次はペニサスサンですか」
( ,,゚Д゚)「俺は、最近自分がカラッポだ、って言ったんだよ」
ミ,,゚Д゚彡「無視ですか」
( ,,゚Д゚)「そしたらペニサスは、私もって言ったあとに、
全く違う世界に行ってみたいって言ったんだよな」
ミ,,゚Д゚彡「全く違う世界?」
フサギコは、そう聞き返しながら顔をあげた。
( ,,゚Д゚)「そう、全く違う世界……俺、なんかすごい納得っていうか、行きてーなって思った」
ギコがそう言うと、フサギコは自分の腕の中に顎を埋め、黙った。
ギコの言葉の意味を、少しずつ噛み砕いているようだった。
授業中にも、そういう心構えで臨めば良いのに、と思ったが、口には出さなかった。
- 30 名前:1 ◆NscXkUt6VE :2007/07/12(木) 01:01:18.24 ID:mgFcggUc0
-
やがてフサギコは口を開き、
ミ,,゚Д゚彡「全く違う……って例えば、どんな感じ?」
と、顎を腕の中に埋めたまま、言った。
( ,,゚Д゚)「例えばぁ?……まず、住む場所は家じゃだめってことは確か。
束縛されることがなにひとつないっていうか……
勉強以外にやりたいって思っていたことが、出来る世界?」
ミ,,゚Д゚彡「いや、最終的に質問されても」
- 31 名前:1 ◆NscXkUt6VE :2007/07/12(木) 01:02:21.81 ID:mgFcggUc0
-
ギコは両手を組み、それを頭の後ろへと持っていった。
椅子の背に体重をかける。
椅子の前足二本が浮き、後ろ足二本だけで絶妙なバランスを取る。
かすかに前後に揺れながら、空気が揺らぐような感触を楽しむ。
ミ,,゚Д゚彡「でも、住む場所が家じゃだめっていうの、わかる」
フサギコは、続ける。
ミ,,゚Д゚彡「もうすぐ夏休みだし、一泊くらい旅行でも行くかぁ?」
ギコは、一瞬、自分の胸が跳ねたのを感じたが、それはすぐに萎んでいった。
( ,,゚Д゚)「でもそれって、たった一日の現実逃避だよな」
ミ,,゚Д゚彡「……」
フサギコは、頭の後ろをかきながら「難しいねぇ」と呟いた。
――続
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 01:02:30.65 ID:68A3Ef4MO
- 支援
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 01:03:43.40 ID:F78BvlHYO
- >>31
今日はここまでかしら?
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 01:06:48.05 ID:DOJ3kvrx0
- 乙!
- 35 名前:1 ◆NscXkUt6VE :2007/07/12(木) 01:08:16.65 ID:mgFcggUc0
- これで一話目の投下は終了です。
読んで下さった方、支援してくださった方、ありがとうございました。
以前、何者かに酉バレしちゃってるので、酉を変えようと思ってます。
私が◆NscXkUt6VEと証明できるものはありませんが、たいして重要じゃないことでしょう。
自分の作品が、誰かの暇つぶしになってくれてるならば、酉は何でもいいのです。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 01:09:41.53 ID:AFpMO48XO
- >>35
随分と紳士的ですね
素敵だと思います
- 37 名前:1 ◆Cc1bIwcvOk :2007/07/12(木) 01:10:45.05 ID:mgFcggUc0
- と、いうわけで酉変更です。
2話目は近いうちに投下できると思います。
時間帯は21時頃を目安にしております。では。
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 01:11:21.03 ID:zORoPpwUO
- >自分の作品が、誰かの暇つぶしになってくれてるならば、酉は何でもいいのです。
ならいっそ酉付けなきゃいいのに
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 01:20:42.21 ID:dh/PYU9f0
- >>38
そりゃそうだ
まあ酉バレした後だからわざとやったんじゃないの?
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 01:22:51.60 ID:RjMXuRIoO
- 読む保守
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 01:26:09.55 ID:NTez4LutO
- たけしの酉を出してみろ
戻る