6 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:09:41.89 ID:acgNlUDUO





9 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:13:58.71 ID:acgNlUDUO



僕の体よりも一回り大きい、その小汚ない鍋は、ボコボコと音を立て血を沸かしている。

/ ,' 3 「ブーン、暑いな」

荒巻は首に掛けたボロ切れで額の汗を拭った。

( ^ω^) 「こんな狭い部屋で、こんなデカい鍋を沸かしてんだから当たり前だお」

「至極当然だ」と僕は嫌味に笑う。
煉瓦造りの、この狭い部屋には、数十年前から荒巻が作り続けて来た刀が所狭しと置かれていた。



10 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:18:43.12 ID:acgNlUDUO

( ^ω^) 「こんなに刀ばっかり作ってどうするんだお?」

「馬鹿らしい」と僕は皮肉る。

/ ,' 3 「売る」

返って来た単純な答えに、僕は被せる様、単純な質問をぶつける。

( ^ω^) 「誰にだお?」

/ ,' 3 「軍」

荒巻の答えは、いつも単純で、簡潔なものだった。


世界は、無知な僕を置き去りにした。
荒巻は、置き去りにされた僕を拾い上げてくれた。

教養のない僕に、一片の知識を与えたのが、他でもない荒巻だった。



11 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:20:01.05 ID:acgNlUDUO



作り続けるだけでは、いつか、部屋は刀で溢れ返る。
そう考えると納得出来た。

/ ,' 3 「ちょこちょこ軍の人間が来て、刀を持っていってる」

「いつの間に」と僕は首をかしげる。

/ ,' 3 「まぁ、ブーンはその時間は仕事をしている最中か」

仕事は仕事であって、仕事でない。
仕事と呼ぶには程遠い。

( ^ω^) 「それなら僕には関係ないお」

無機質に言う。

/ ,' 3 「連れないな。
それに、明日からは関係なくはないだろ」

荒巻は笑う。小さく笑う。



13 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:21:53.46 ID:acgNlUDUO

/ ,' 3 「血の一滴は鉄の一塊」

突然、真面目な顔して荒巻は言う。

( ^ω^) 「お?」

/ ,' 3 「血の一滴は魂の破片」

荒巻は、呆気に取られている僕を置き去りにし、続ける。

/ ,' 3 「鉄の一塊は魂の破片」

そこまで言って、荒巻はコーヒーをすすった。

/ ,' 3 「ブーンも飲むか?」

手を振り、拒否の意を伝える。

( ^ω^) 「明日は朝早いからコーヒーは止めておくお」

/ ,' 3 「連れないな」

また、荒巻は小さく笑った。



14 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:22:54.02 ID:acgNlUDUO

( ^ω^) 「今日はもう帰るお」

部屋を出る際、「またな」と聞こえた。
何も返さなかった。

明日からはもう来れない。
単純な答えが、僕の中に宙ぶらりんとなる。

決意を二度言うための決意がない。

僕はただ、夜空の星を見ながら家路に着くだけだ。



15 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:23:55.04 ID:acgNlUDUO



家の扉を開け、広間まで進む。

家と言えど、それは朽ち果てたボロ小屋に過ぎず、広間と言えど、それは非常に小さな空間でしかない。

J( 'ー`)し 「ブーン…死のうか…」

死に迫る母の、頬を、僕は無言で殴り飛ばした。
母の頬が血で塗れている様に、僕の頬は涙で塗れていた。

( ^ω^) 「これでしばらくは死なないで済むお」

そう言って、嗚咽する母に銀貨を一枚見せる。



17 名前: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/09/15(土) 19:24:53.58 ID:acgNlUDUO

J( 'ー`)し 「金だ…金だ!」

母は卑しく銀貨にたかった。糞にたかる蠅の様に、それは酷く汚らしい様だった。

( ^ω^) 「あなたを恨みますお」

( ^ω^) 「あなたを憎みますお」

( ^ω^) 「あなたを愛しますお」

夜は果てしなく、長い。




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